よう。俺は異世界トレーナー。スマホに吸い込まれ、ウマ娘の世界にやってきた。そして10年経っていた。俺は30歳。いろんな人が協力してくれて俺を元の世界に帰そうと尽力してくれた。そしてついこないだ。元々持っていた俺のスマホが。わずかながら5G通信をしていることがわかり、それを辿ってついに俺の住んでいた世界を特定した。そしてシュガーライツ博士、アグネスタキオン、マンハッタンカフェの協力の下異世界ゲートを生成する機械を開発。ゲートを開くのは一回キリという条件で俺は帰還を果たす事になったのだ。
「漸くか・・・」
「うむ・・・トレーナー君。10年もの長い間、ご苦労だった。」
「いえいえこちらこそお世話になりました。」
秋川やよい理事長他、お世話になったみんなが集結する。ここは体育館。人払いをして俺の帰還の時が近づいていた。
「じゃあ、トレーナー君。ゲートを開くよ。」
ゴウンゴウンと機械が動き出し、中央トレセンの全電力が集まる。機械の音が大きくなり、遂に時空間の裂け目が出来た。向こう側に・・・俺の家が見える。
「それじゃトレーナーさん。お疲れ様でした。」
「寂しくなるねぇトレーナー君・・・」
「そうだな・・・アグネスタキオン君、マンハッタンカフェ君。寂しいがトレーナー君は元の世界に戻った方が良いのだ。」
お別れは5人だけ。理事長、たづなさん、タキオン、カフェ、シュガーライツ博士だけ。こちらの世界に未練がないわけじゃない。思い出もある。だけど・・・やっぱり元の世界が恋しかった。家族と一緒にいたかった。元の世界に帰れば・・・無職になってしまうけど、トレーナーの経験は色んなものに活かせると思う。
「それじゃトレーナー君。これは餞別だ。」
「ありがとうございます。」
渡された物・・・それはこちらで稼いだ給料を全部金塊に変えたものだった。およそ50キロの金。向こうでも金になる物と言ったらこれになった。
「じゃあ・・・理事長、たづなさん、タキオン、カフェ、博士、さようなら。」
「ああ・・・」
「トレーナーさん・・・」
「トレーナー君・・・」
「トレーナー・・・さん・・・」
「トレーナー君・・・」
俺が次元の裂け目に入ろうとした・・・次の瞬間。
「とりゃあああああああああ!!!!!」
「!?」
「なんだ!?」
体育館のドアを突き破って、アグネスデジタルが飛び込んで来て・・・俺の首根っこを掴み、次元の裂け目に同時に飛び込んだ。
「理事長さん!!!すみません!!!」
「待っ・・・!!!!」
辺りが光に包まれ・・・俺は・・・
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俺が帰れるとなった時、もちろん担当には説明した。俺の担当は5人いた。
「そうか・・・トレーナー君が決めたのなら・・・仕方がないね。」
「すまないな。」
1人目、アグネスタキオン。思えばこいつの実験に何度付き合った事か。まぁでも全部笑える範囲で済ませてくれたので楽しかった。
「トレーナー・・・さん・・・寂しく・・・なります。」
「そうだな・・・でも俺はやっぱ・・・家にいたいよ。」
2人目、マンハッタンカフェ。金色の瞳を潤ませて、別れを悲しんでいる。カフェと一緒に作ったコーヒーは美味かった。最初は失敗ばかりで苦過ぎたり酸っぱ過ぎたりするものがあったが。今では美味しいコーヒーを作り出せる。
「トレーナーさん・・・向こうに帰っても・・・私の事、忘れないでくださいね。」
「ああ、忘れないよフラッシュ。」
3人目、エイシンフラッシュ。フラッシュは・・・なんか怒られてばかりだった気がする。それでも信頼関係は築けてたし、お互い好意が無かったわけじゃない。涙を拭いながらの別れの挨拶は辛かった。
「トレーナーさん・・・向こうに帰っても、健康には気をつけてくださいね?』
「ああ。わかってるよグラス。」
4人目、グラスワンダー。グラスとは何度も指導内容でぶつかった。だけどもぶつかっただけではなく、改善案を模索し、勝利した時には抱き合って喜びあった。そして5人目・・・
「あれ・・・来ませんね。」
「どうしたのかな?」
「まぁいつものでしょう。」
「あはは・・・」
5人目・・・1番長い付き合いで・・・最初の3年間を過ぎて更に2年。脅威のG1を8連勝という不動の記録を作り、芝ダート問わず、更に国内国外も問わなかった、驚天動地、画竜点睛、天下無双の足を持った担当。まぁこいつは、軽く見送ってくれるだろうと確信はあった。
「すみましぇ〜ん・・・遅れました〜〜〜」
「お、来たかデジタル。」
「遅いですよ。」
「デジタル君どうしたんだい?」
「大事な話って言ったじゃないですか。」
「もう、真剣さが足りませんよ?」
「あはは・・・ほんとしゅみましぇん・・・向かうがてらスカーレットしゃんとウオッカしゃんの喧嘩を目撃しまして・・・」
そう、5人目はアグネスデジタル。そそくさと入って来て椅子に座った。オタクで、気さくで、竹を割った様なデジタルは問題無いだろう・・・そう思っていた、自分がいた。
「それじゃな・・・デジタル、大事な話だが・・・」
「そうですか〜あたしも引退ですし、引退会見とかですか?」
「え?違う。」
「・・・え?」
仄かに・・・デジタルの雰囲気が変わる。大事な話が自分の予想とは違った事に、なにやら察知したらしい。
「俺、帰る事にしたから。」
「・・・え?帰るって・・・?トレーナーさんは・・・異世界から・・・」
「そう、だから元の世界に帰れるってなったから。帰るよ。」
そう話したら少し間を置いて、理解したのかデジタルの尻尾が伸び切り、豹変した。
「は、え、嘘、え?帰る?トレーナーさんが?」
「そうだ。」
「え、え、え、え。」
「すまんなデジタル・・・引退は・・・」
「嫌ですッッッ!!!!!」
デジタルは椅子を蹴飛ばして立ち上がった。
「嫌です!!!嫌です嫌です!!!」
「ちょ・・・デジタル君?」
「デジタル・・・さん・・・?」
「え・・・?」
「!?」
「嫌ですトレーナーさんッ!!!帰らないでください!!!!」
「い、いや・・・でも・・・」
「言ったじゃないですか!!!!東京大賞典の前、オグリさんとの対決で・・・!!!ずっと、あたしと一緒にいてくれるって!!!あれは嘘だったんですか!?!?!?」
「いや・・・そうだな・・・結果的に・・・嘘になる・・・」
「嘘つき!!!嘘つき嘘つき!!!あたしが嫌いになったんですか!?!?あたし、頑張ったじゃないですか!!!いっぱいレース走って、いっぱい勝って、トレーナーさんに!!!喜んで欲しくて・・・!!!」
「デジタル・・・」
「嫌ですよぉ・・・!!!トレーナーさん・・・!!!行かないでくださいぃ・・・!!!」
「・・・それは出来ないデジタル。」
「どうして・・・!!!」
「いろんな人が協力してくれてる。俺を、元の世界に帰す為に、いっぱい考えて、いろいろ試して、頑張ってくれてる人がいる。急に取りやめて、それを裏切る事は出来ない。」
「なら!!!!あたしは裏切って良いって言うんですか!?!?寂しくないんですか!?!?私たち、こんなに一緒にやってきたのに!!!!」
「デジタルさん!!!!」
フラッシュが、デジタルの前に立ち塞がる。
「トレーナーさんが・・・寂しくないわけないじゃないですか!!!」
「フラッシュさん・・・」
「私だって寂しいです・・・でも、もう会えないと思っていた家族に、友人に、また会えるチャンスなんですよ!!それを不意にさせるんですか!!!デジタルさん!!!」
「あ、え、う・・・」
「デジタル君。トレーナー君の為だ。受け入れなきゃ、いけないんだよ。」
「た、タキオンさ・・・」
「デジタルさん・・・」
「カフェ・・・さん・・・」
「寂しいです・・・私も・・・でも・・・トレーナーさんは・・・もっと寂しい思いをして・・・家族と別れたんです・・・帰る、べきなんです・・・」
「あ・・・う・・・」
「デジタルさん。」
「グラスさん・・・」
「トレーナーさんは・・・もう十分頑張ったじゃないですか。私達と、栄光の道を駆け抜けたじゃないですか、私達は出会って数年ですが・・・トレーナーさんは10年です。10年も・・・我慢したんです・・・もう・・・ぐす・・・いいじゃないですか・・・ぐす・・・もう解放してあげましょう・・・」
「う・・・あ・・・え・・・う・・・」
「デジタル君・・・」
「デジタルさん!!」
「デジタル・・・さん・・・」
「デジタルさん・・・」
「うううう・・・・やだ・・・嫌・・・嫌・・・!!!嫌ぁぁぁぁああああああーーーーーー!!!!」
デジタルは叫びながら走り去ってしまった。これが、帰還の一週間前、機械の完成の二日前である。それからデジタルと会う事は、無かった。
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俺は・・・次元の裂け目を通った。デジタルと。光が収まり、目を開けるそこには・・・
「あ・・・母ちゃん。」
「う、うそ・・・」
目を見開いて驚く少し老けた母親とペットの猫がいた。俺の、俺の家だ。間違い無い。ちょうど居間に出たらしい。持ち物は・・・ある。荷物も、持ってきた金塊も。そして・・・
「いたたた・・・」
「デジタル・・・」
「いてて・・・あっ・・・ふふふ・・・トレーナーさん。」
俺の背中から立ち上がったデジタルはてへと舌を出しながら、こう言った。
「来ちゃいました⭐︎」
「まじかよ・・・」
つづく。