「えへ・・・えへへ・・・」
俺の実家の居間でによによ身悶えするアグネスデジタル。まじでこいつどうすんだ。次元超えやがったぞ。
「えへ・・・えへへへへ・・・」
母ちゃんがデジタルにお茶のおかわりを注ぐ。母ちゃんは最初こそウマ耳の女の子にビビっていたが会話が出来るなら無問題とさっさと慣らし切っていた。こいつ・・・
「あにょ〜・・・トレーナーさん。」
「おいデジタル。」
「へ?」
「どうする気だ。」
「え、えと・・・」
「この世界でお前は異物だ。人間ならまだしもウマ娘。宇宙人が攻めて来たって方がまだ理解出来る。」
「・・・。」
「帰れないし、どこに行くことも出来ない。最悪、実験動物なんだぞ。」
「・・・。」
「わかってるのか。理事長にも。いろんな人にも迷惑を掛けてる。改めて聞く。どうする気だ。」
「・・・。」
「デジタル。」
「・・・ぐす。」
「・・・。」
「だって・・・だって・・・あなたといる為なら・・・こうするしか無かったんですもん・・・こうすることでしか・・・あなたといれなかったんですもん・・・」
「俺は言った筈だ。教えた筈だぞ。手段は問うな。だがやっていい事と悪い事の線引きはしろと。」
「ぐす・・・」
「お前はラインを超えた。」
「・・・!」
「もう、俺の手には負えんよ・・・」
「・・・そんなぁ。」
沈黙が居間を包む。デジタルはしくしくと泣いている。俺は今後どうするか考えた。このウマ耳の少女を放っておくとどうなるか。異次元人として保護されるならまだいい。俺には一生会えなくなるだろうが。だが闇に葬られたら・・・?死ぬよりも辛いめにあう。
「・・・。」
「うぐ・・・ぐす・・・トレーナーさぁん・・・」
「はぁ・・・」
「うぇ・・・うぇえ・・・やだ・・・見捨てないで・・・」
「・・・。」
「トレーナーさぁん・・・」
「・・・デジタル。」
「うえ・・・うぇぇん・・・」
「・・・とりあえず。なんとかする。」
「え・・・?」
「こんなこと・・・もう突拍子もなくて、どうしよもうなくて手の打ちようがないけど・・・デジタルが安全に暮らせるようにする。」
「わ、わぁ・・・!」
「とりあえず・・・ウチにいろ。」
「は、はい!ありがとうございます!!」
「はぁ・・・もう・・・お前・・・」
「あ、あはは・・・」
「とりあえずは外出禁止だ。それどころか部屋から出るの禁止。バレたら、どうなるかわからない。」
「そ、そうですよね・・・」
「はぁ・・・」
そして俺は荷物を片付け始める。持ってきた物は・・・まぁ写真とかのアルバムとかと・・・みんなからもらった蹄鉄。そんなものだ。あと金塊。金塊を見たら母ちゃんは目を輝かせていたが。
「デジタル。とりあえずお前の部屋を用意するから。母ちゃん。2階の部屋一つ空いてるよな?」
空いてるよーでも物置との返事。片付けるか。
「デジタル手伝ってくれ。」
「はい!」
部屋を片付ける。俺の部屋どうなってる?ついでに確認するとそのまま。パソコンもそのまま。だが10年も経ってたら型落ちだ。使えるか?
「トレーナーさん・・・?おお!ここがトレーナーさんの部屋!」
「ああ・・・あんまいじくんなよ。」
「ふむふむ・・・なるほどぉ・・・お!?これはペンタブ!?」
「ああ。もう古いけどな。」
「使えますか!?」
「ああ・・・多分・・・」
パソコンを起動する。お、まだ動くな。よし。
「おお・・・ふぅん・・・向こうのと大差無いですね。」
「まぁな。」
「ペイントソフトとかもありますか?」
「あるぞこれだ。」
「お、おおーーーーー!すごーーーい!!!デジタルペイントソフト!!!」
「もうだいぶ古いと思うけど・・・アップデートしよ。」
「うわ。34GBとかもありますよ。」
「そりゃそうだ10年放っておいたんだから。」
「あの!あのあのあの!あたしに使わせてもらっても・・・?」
「いいぞ。」
「やった!今までアナログだったんですよ!デジタル憧れてたんですよね〜」
「ああ・・・そう。」
「ふふ・・・!」
「まぁそれは置いといて、部屋片付けるぞ。」
「はぁーい!」
空いていた部屋ものの見事に物置。とりあえず離れに運ぶか。
「デジタルこれ持って。これも。これもこれも。」
「おっとっと・・・はい。」
荷物を積み上げたデジタルを見た母ちゃんが悲鳴を上げる。バシンと頭を叩かれ女の子に何させるんだ!!!と怒られた。ウマ娘は力持ちだと説明したが問答無用。俺も持つ。
「運ぶぞ。」
「はーい。」
外の離れに荷物を運んだ。よし布団敷けるな。
「よし。ここをデジタルの部屋にする。狭いが我慢してくれ。」
「十分ですよぉ〜」
「そういえば・・・デジタル、荷物って何持ってきたんだ?」
「えーっとですね。着替えでしょ?一応シューズでしょ?あと・・・え?」
「どうした?」
「なに・・・これ。」
「?」
デジタルが取り出したのは何か茶色い封筒。A4サイズ。
「こんなの荷物に入れてません・・・」
「漫画の原稿とかじゃないのか?」
「いえ・・・全て置いて来たので・・・」
デジタルはカサカサと封筒を開ける。そしてデジタルは更に首を傾げた。
「なんです・・・?これ・・・戸籍・・・謄本・・・?」
「は?」
デジタルから書類を受け取る。それは戸籍謄本だった。マジもんの。というか父とか属柄とかどうなってるんだ。これ。偽造・・・?
「住民票も出て来ましたよ。」
「は?」
「あとなんかカード・・・」
「カード・・・」
それはマイナンバーカードだった。そんなものまであんの!?
「なん・・・なんだこれ・・・」
「これ・・・こっちの世界の物・・・ですよね?」
「ああ・・・俺があっちで作ってもらった物と違う。」
「ええ・・・なんでしょう・・・無から湧いたんですかこれ・・・」
「尋常じゃないぞ・・・」
「あ、保険証も出て来ましたよ。」
「嘘だろ・・・」
ガサガサと封筒をひっくり返すデジタル。そうしたらひらりと封筒が出てきた。
「封筒?」
「開けてみ?」
「はい。」
「えーと・・・なになに・・・?」
そっちで必要なもの!用意しといたわよ♡
ゴドルフィンバルブ♡
「誰だこいつ・・・」
「あたしも知りません・・・」
「というか・・・名前・・・」
「これあたしの名前なんですか?やっぱり。」
「そうだろう。戸籍謄本に載ってるんだから。」
阿久津 伝慈子。これがこっちでのデジタルの名前らしい。
「あは♡」
「どうした?」
「これがあるってことは・・・結婚できますね?あたし達!」
「嘘だろ・・・」
俺教え子と結婚すんの・・・?やだ・・・デジタル17歳だよ・・・?俺30歳・・・
「なんで嫌な顔するんですか!」
「やだよ・・・」
「いいじゃないですか!その為にこっち来たんですよあたしは!!!」
「やだ・・・ボインのお姉さんがいい・・・」
「言いましたね!?!?」
ガツガツとふとももをどつかれる。めちゃ痛い(泣)
「ふー!!!」
「母ちゃん何笑って・・・どうせ結婚出来ないんだからすればいい?ふざけんなよ。」
「ですよねー♡お義母さん♡」
母ちゃんとデジタルは早速仲良くなってる。味方がいねぇ!!!こうなったら父ちゃんに反対してもらおう・・・
「はぁ・・・」
「ため息つかないでくださいよぉ。いいでしょ?若い体ですよ?」
「おデジのは子供体型って言うの。」
「この!この!!!」
「痛い・・・」
母ちゃんはおデジちゃんお茶しましょーと1階へ行ってしまう。くそぉ・・・
「はぁーあ・・・」
まぁでも・・・帰ってきた感じあるな。俺のコレクションのプラモも捨てないでいてくれたみたいだし。良かった。
「ははは・・・」
自分の部屋に戻ってベッドに寝転がる。ホコリくさ。洗濯しなきゃ。
「はははは・・・」
帰ってきた・・・帰ってきたんだ!!!俺は!!!帰って来たぞーーーー!!!!
「ちょっとトレーナーさんおやつですってよーーー!!」
「はいはい。」
まぁいいか・・・デジタルとの結婚は御免だが。隠し通して墓場まで持って行こう。それと・・・どうにかして、帰せれば、いいな。無理だろうけど。