俺が帰ってきて、おデジがこっちに来てから1週間が過ぎた。特におデジについてお上から何か言われると言うこともなく、平穏に過ごしている。俺はその間、向こうから持ってきた金塊を換金する為奔走した。地元の金の買い取りもしている金券ショップでは流石に50キロの金塊は換金出来ず、大手の金買い取り業者に取り継いでもらい、出張買い取りしてもらった。全部で7億8000万円。俺たった10年でこんだけ稼いだの?やばくない?
「はーすごい大金ですねぇ。」
「いや、おデジ。お前がレースで稼いだ金の方がすごいかんな?」
「いやそれはそうなんですけど。」
これで俺は無職でも何とかなる。父ちゃんも会社の偉い人でかなり稼いでいるが父ちゃんの生涯年収並の金額を俺は持ってきたのだ。父ちゃんには働かなくていいよと言ったんだが仕事が生き甲斐だからと続けている。
「とりあえずお金の心配は無くなった。あとは・・・」
「あたし・・・ですね。」
「ああ。先生に頼んだがどうなることやら・・・」
弁護士の先生におデジの処遇について頼んだがどうなるかわからない。心配だが待つしかないのだ。
「じゃーあたしはまたパソコン借りますね〜」
「おう。」
おデジは精力的にイラストや漫画を描いている。まぁそれは向こうからやってるライフワークだし、止める理由も無いしな。
「さて・・・」
まずは・・・俺の秘密基地、離れの片付けをしよう。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
更に1週間が過ぎた。そして弁護士の先生から連絡が来た。おデジを連れて向かう。事務所に着くといつもの先生の他に2人、1人は男性でグレーのスーツを着ている。もう1人は女性、丸メガネを掛けていて俺と同世代くらい。
「先生どうでしたか。」
「大変良い結果になりましたよ。こちら仙台に事務所を構えている藤村弁護士です。藤村弁護士は日本でも特に口が硬い弁護士として有名でして。まぁ弁護士は口が硬いのは当然なんですけど。情報秘匿の為に秘書も置かず事務員もたった2人のみという厳格な体制を敷いている弁護士です。」」
「藤村です。よろしくお願いします。」
「こちらは盛岡に事務所を構えている中野弁護士です。中野弁護士は女性問題に強い弁護士でして、伝慈子さんが特殊な女性と言うことで力になりたいと申し出てくれた弁護士です。」
「中野です。よろしくお願いしますね。」
「よろしくお願いします。」
「よろしく、お願いします。」
「さて、伝慈子さんの扱いですが・・・」
「ごくり・・・」
「まず、日本国籍を持っていること。戸籍謄本があること。住民票もあること。これらから日本国民として認められる事になります。ここまではよろしいですか?」
「はい。」
「そして。戸籍謄本の実家住所・・・こちら調べましたが存在しています。」
「え?」
「へ?」
「阿久津伝慈子さんの出生を証明出来ます。」
「あたしの・・・実家?」
「ええ。」
「・・・?」
「あたし実家あるんですか?」
「ありますね。」
「全く覚えがないんですけど・・・」
「そうでしょう・・・この実家、家族の住民票や戸籍はありますか家族の所在は確認できません。」
「はぁ?どういう・・・」
「ええ?」
「架空の、実在する家族、と言うことになってます。まぁ見つかったらいいんですけど・・・」
「見つかっても問題じゃないですか?おデジは異世界から来たんですよ?」
「ですよね・・・所在がわかったら問題になりそうですが・・・行方不明届も出てませんし・・・」
「えええ・・・?」
「ははぁ。」
「で、ですね。伝慈子さんは異世界で神隠しに相当するものに遭遇し、こちらに来た。というわけですが。事実はどうあれ戸籍、住民票があることから日本人になります。そして行方不明届もないので、伝慈子さんは保護では無く、貴方と同居している、と捉える事が出来ます。」
「なるほど・・・」
「ただそれでも実家は存在して出生も確認できますが家族は未確認とされているので事件性があると捜査されれば伝慈子さんが獣人である、と言うことが露見するかもしれません。」
「それは・・・困りますね。」
「ですねぇ・・・」
「とりあえず。伝慈子さんは貴方の家から出ず、秘匿し続ける限り無事は保証出来ます。」
「わかりました。」
「次は私から。」
次は藤村先生が話し始める。
「阿久津伝慈子さんの事を調べました。生まれはアメリカ。国籍は日本。育ちは北海道の日高と経歴は日本人としてなんら怪しい点はありません。ですが高校が中退となっており、最終学歴は中卒となっています。」
「まぁ・・あたしは向こうでも高等部2年でしたしね・・・」
「高校中退してからの経歴が不明でどうやってここまで来たか突かれると怪しまれるかと思います。カバーストーリーを考えておくといいでしょう。」
「はい。」
「わかりました。」
「他に調べてわかった事は・・・伝慈子さん、福長奏一さん・・・という方はご存知ですか?」
「ふくながそういち・・・?いえ知らないです。」
「こちらの男性が行方不明の家族の他に身元引受人となっているのです。本当にご存知無い?」
「無いですね。」
「そうですか・・・とりあえず、これは置いて置きましょう。他に調べた事と言いますと、友人関係です。伝慈子さん、帽子を取って、私に獣人であるという事を見せてもらえませんか?」
「はい。」
おデジは帽子を取って藤村先生と中野先生に耳を見せる。動かしても見せたのでおお、と驚嘆の声があがった。
「ありがとうございます。尻尾・・・もあるとお聞きしました。それも見せていただく事は・・・?」
「あ、あの・・・それは・・・スカートを脱がなければならないので・・・先っちょだけでいいですか?」
「ああ、これは・・・失礼しました。結構です。」
「すみません・・・」
「いえ・・・こちらも配慮が足りませんでした。」
「とりあえず、あるという事だけでも。」
おデジは立ち上がり、後ろを見せてフリフリとスカートの中で尻尾を振って見せる。ううむと藤村先生は唸った。
「ありがとうございます。これで伝慈子さんが獣人であるという確認も取れました。それで獣人である・・・異世界人である・・・という事も踏まえて、不思議な事があるんです。」
「不思議なことですか?」
「はい。北海道日高に、阿久津伝慈子さんの小学校の同級生を名乗る人物が複数確認されているんです。」
「ええええ!?!?」
「先生・・・それはいったいどういう・・・」
「わかりません・・・ですが、耳と尻尾を除いた身体的特徴は一致します。身長は低め、走るのが速くて、お絵描きが好き。合っていますか?」
「あ、合っています。」
「小学校の同級生、◯◯さんと××さんと△△さん。ご存知ですか?」
「し、知りません・・・」
「わかりました・・・」
「は、はぁ〜〜〜〜???」
「とりあえず、この事から阿久津伝慈子という少女は昔から日本で暮らしていた、と証明出来る様になりました。私からは以上です。」
「はい・・・」
「次は私からですね。」
「はい。」
「中野先生は何を?」
「私はですね。もし、獣人との結婚について考えてきました。伝慈子さんは結婚に意欲的だと聞きましたので。」
「うぇ!?!?」
「確かにそれは備えておいた方がいいですねぇ。」
「まずですね。獣人との結婚を阻む法律は存在しません。そして阿久津伝慈子さんは日本国民として認められる十分な根拠があります。なので結婚については問題ありません。」
「おおお!!!あなた!結婚出来ますよ!!!」
「やだぁ・・・」
「ただし!」
「へ?」
「ん?」
「四年前に法改定され、女性は結婚出来る年齢を16歳から18歳に引き上げられています。伝慈子さんは17歳ですよね?」
「そ、そうです・・・」
「これは異世界から来た獣人としてなら権利保護の為に18歳以下でも認められると思いますが伝慈子さんは日本国民としての戸籍と国籍があります。よって日本国憲法が適用される為結婚は18歳になってからです。」
「がーーーーーーーーん!!!!!!!!」
「ほっ・・・」
「あと1年。待ってくださいね。」
「ぐす・・・はい・・・」
「一年しか猶予が無いのか・・・」
「あはは・・・後は・・・そうですね・・・結婚なんですが・・・18歳になったらすぐ、の方が良いと思われます。」
「え!?」
「やった!」
「理由を言いますと戸籍、住民票などあって日本国民と証明は出来るんですが経歴、家族構成が異質です。ちょっと普通の日本人とは言えません。」
「ええ・・・?」
「家族全員が行方不明。小学校、中学校の様子は調べるとそんなに調べが付かない希薄な存在となっています。獣人だと気づかれてしまう可能性が高くなります。」
「なるほど・・・」
「では・・・?」
「最も良い手段は、弁護士3人も揃っている状況で婚約をして、準備しておいた方が良いと思います。」
「はーい!はいはい!婚約します!」
「えええええ!!!???」
「婚約して、結婚する事で義務も生じますが結構守ってくれる権利が強いです。なので異世界人、獣人として保護するなら結婚を勧めます。」
「ほら!ほらほら!あなた!」
「ううう・・・やだ・・・うう・・・」
「やだじゃありませんよ!先生もこう言ってます!早く婚約して結婚しましょう!」
「焦るな・・・焦るな・・・」
「嫌です!!!もう結婚したいです!!!」
「落ち着けぇ。」
「あはは・・・まぁ気持ちはわかりますが。まだ1年我慢ですよ伝慈子さん。」
「ぐぬぬ・・・」
「はぁ・・・」
「とりあえず、後は私達3人で異世界人であること、獣人であることがバレた際の権利保護の資料を作っておきます。」
「何分初めての事ですが、一度こう言う事に関わって見たかったんですよ。」
「伝慈子さんは子供である事から様々な点で法律で守る事が出来ると思います。」
「はい、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします!」
「いえいえ貴方はうちの優良客ですからね。協力は惜しまないですよ。」
「先生・・・ありがとうございます。」
「また何かありましたら連絡しますね。」
「はい。」
こうして先生達の話しは終わった。そして帰宅。
「いやー助かりましたね・・・」
「そうだな。」
「結婚、勧められちゃいましたね♡」
「そうだな・・・」
教え子との結婚なんて嫌だ・・・だが、おデジを守る為には必要かもしれない・・・はぁ・・・指輪用意しておかないとな。