憑依先の悪役将軍の立ち回りが地獄過ぎる件   作:Mind β

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今回は短めです。次回が突入直前、その次から戦闘が始まります。
本当は補習授業や他のトリニティの生徒の戦闘描写も均等に散りばめたいのですが、これはカイザー主体の小説(正直に言えば執筆の労力的な話)ですので、ある程度省略させて頂きます(泣)


第22話:合同作戦会議

 

 聖堂付随・戦略会議室

 

 かつて宗教会議にでも使われていたのかと疑いたくなるほど荘厳な造りで、天井には聖人のモザイク、壁には祈りのレリーフ。その中央に鎮座しているのは、最新式の戦略卓だ。

 

 装飾と武力が混在する妙な部屋だが、トリニティらしいと言えば、トリニティらしい。

 

 俺が席に着いた瞬間、同席していた救護騎士団団長であるミネが軽く頭を下げ、正義実現委員会のツルギとマシロは静かに背筋を伸ばした。

 

 と、扉が開く。

 

「失礼します……先生、こちらへどうぞ」

 

 ナギサが直々にシャーレの先生を招き入れた。

 先生は一瞬だけ周囲を見渡し、緊張と疲労を隠すように小さく笑う。

 

 (……まだ顔色が戻っていないな。あの時よりはマシだが)

 

「では、始めましょうか」

 

 ナギサの一声で、作戦会議は幕を開けた。

 戦略卓にアリウス自治区の立体マップが投影され、入り組んだ市街地構造、旧聖堂群、地下通路の網が浮かび上がる。

 

「まず、現状を確認します」

 

 ナギサが手元のスレートを操作し、マップに赤い層が重なる。

 

「この赤い領域がアリウス自治区を覆う概念的障壁。従来の航空偵察も衛星観測も無効化されており、地上からの突入は不可能です」

 

「障壁の発生源は聖遺物だな。確保した情報では三基。そのうち一基が主動力、残り二基は補助的役割――だったな?」

 

「はい、将軍。その通りです」

 

 ナギサは静かに頷き、つづける。

 

「主動力を破壊すれば、障壁は解除され、カイザー本隊ならびにトリニティ正規戦力の投入が可能になります。第一段階は、その主動力の破壊――すなわち、少数精鋭によるカタコンベからの潜入作戦となります」

 

 戦略卓に表示されるのは、カイザー特殊作戦中隊、PMC即応機動2個中隊、正義実現委員会の精鋭部隊、救護騎士団前衛隊。

 その横に、ぽつんと一つ、名前が追加される。

 

『シャーレ:先生』

 

 会議室の空気が少しだけ揺れた。

 

 先生は、自分の名前が浮かび上がった瞬間、わずかに肩を硬直させた。

 

 俺はその反応を見逃さなかった。

 

「……先生を作戦に投入する、ということで間違いないのか?」

 

「はい、将軍」

 

 ナギサは迷いなく答えた。

 その声音には政治的決断の重みがある。

 

「先生は、キヴォトスでの問題解決の実績が最も多く、加えてアビドス自治区やゲヘナ、ミレニアムなどの様々な学園を訪れ、誰よりも子供に寄り添える大人です。そして、今回のアリウス自治区制圧では戦闘だけでなく生徒たちの保護が重要になります」

 

 ナギサが少しだけ視線を落とす。

 

「……私は、先生以上の適任者を知りません」

 

 先生はその言葉に困惑し、視線を宙に泳がせていた。

 

 確かにそれはそうだ。別に便宜上アリウス自治区にツケを払わせろ、とプレジデントから命じられているわけで、あの中年女以外はできる限り保護するのが良いだろう。

 

「……確かに、アビドスでの対応は見事だった。恐らくアリウスのような閉鎖空間で最も効果的に動けるのは、貴方のような人間だろう」

 

 先生は言葉を返そうとして――返せなかった。

 その代わりに、ナギサが静かに補足した。

 

「もちろん軍事行動の主導は私たちが担います。先生には、必要な場面で必要な行動を。決して無理を強いるつもりはありません」

 

 そして、ナギサがスイッチを操作すると、外周で待機していた複数の大規模部隊の編成図が展開された。

 

「では次に、障壁破壊後の第二段階に移ります」

 

 カイザーのヘリボーン部隊や即応機動旅団の主力、ティーパーティーの私兵部隊に砲兵部隊。

 それらがアリウス自治区を囲むように展開している。

 

 俺は続けた。

 

「障壁が落ち次第、我が社の空中機動部隊が即座に制圧区域に展開する。後続として重歩兵、AMP部隊が市街地を掃討。トリニティのティーパーティー私兵部隊には、後方治安維持と重要拠点の確保を任せる」

 

 ユニットが矢印通りに動き、アリウス内部に突入していく。

 勿論、突入には先日構想した対学園防衛戦略構想のドクトリンを活躍した戦術を採用する。自治区とはいえ、市街地を主体に構成される一つの学園。良いデモンストレーションにもなるだろう。

 

「質問のある方は?」

 

 俺がそう問うと、ゆっくりとツルギが手を挙げた。

 無言で頷くと、彼女は言う。

 

「突入の際の指揮系統はどうなる? カイザーとトリニティで別物とすれば混乱を招く可能性があると思うが」

 

「それについては心配無用だ。既に両者間でトリニティ・カイザー統合作戦司令室(TKJOCR)の設立が進んでいるうえに、現場には先生もいる。そこは柔軟に対応すべきだと考えている」

 

 俺がそう説明すると、彼女は納得したように目を伏せた。

 

 数十秒の沈黙、質問がないことを確認した俺は、椅子から立ち上がり、会議の締めを宣言した。

 

「カイザーとトリニティの共同作戦は史上初だ。だが――やるしかない」

 

 会議室の空気が引き締まる。

 

「以上で、アリウス自治区突入作戦会議を終了する。各自、配置へ戻れ」

 

 先生だけが、まだ席を立てずにいた。

 政治に押され、軍事に巻き込まれ、心は疲れ切っている。だからこそ、去り際に俺は小さく一言だけ声をかけた。

 

「……大丈夫です。貴方が居るだけで、多くが救われる」

 

 先生は、驚いたようにこちらを向いた。

 その瞳に、ほんのわずか――光が戻った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

公的軍事文書(CLASSIFIED)

 

件名:OPORD 03-14 Operation SEVERANCE

発令元:トリニティ・カイザー統合作戦司令室/TKJOCR

発令日:XXXX年X月X日

分類:公開/公式連携任務

 

参加兵力

 

◉カイザー・コーポレーション

 ◎カイザー本社直轄戦力

  ・カイザー特殊作戦部隊第2中隊

 ◎カイザーPMC

  ・即応機動旅団(全部隊)

  ・攻撃航空連隊(全部隊)

  ・トリニティ第1及び第2警備大隊

  ・統合砲兵大隊(隷下3個中隊)

 ◎カイザー・セキュリティ

  ・トリニティ支部緊急対応チーム

 

◉トリニティ総合学園

 ◎ティーパーティー

  ・フィリウス分派私兵部隊

 ◎正義実現委員会

  ・臨時突入チーム(特別編成)

  ・東部地区対応部隊

 ◎救護騎士団

  ・臨時野戦医療部隊(特別編成)

 ◎補習授業部

  ・各部隊に分散配置

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