「ハーブ〜今日の配達先ってドコだっけ?」
「ん…ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部だってさ〜」
「ミレニアムかぁ、あそこの技術って便利だよねぇ」
この車に使われてるナビゲーションとかも殆どがミレニアム製らしいんだよね。よく分からないけど。
「……それで、私たちってイマ、ミレニアムのドコに居るんだい?」
「分からない、これって迷子になったってことじゃないかな〜」
「だよねぇ…誰かに聞こうかな、出来ればゲーム開発部を知ってる人が見つかると良いんだけど」
学校の中まで入ったことなんて無かったから道が分からなくなっちゃったよ。周りの人も見たところ忙しそうだし、声を掛けづらい。
結局人に声を掛けることなんて出来ずに棒立ちになってるとハーブが突然そこら辺に落ちていた枝を拾った。
「こう言う時は…運試し〜」
「確かに、ハーブの運なら見つかるかもね!」
「そ〜れ!」
彼女が投げた枝はクルクルと回って地面に落下し、一回跳ねてからその動きを止めた。私たちは枝の向いてる方向に向かって歩いているとメイド服にスカジャンを着たなんとも不思議なファッションをしている生徒を見つけた。多分あの人なら聞けそう。
「あの〜」
「あん?」
あ、もしかしてこの人結構怖い?
振り返った時の鋭い目付きを見てそう思った。けどハーブの見つけた人だから…見た目が怖いだけで良い人…かな?
「えっと、ゲヘナ学園バイト部部長の嘘字盡ノクスと言います!ゲーム開発部にお届け物があってキタのですが場所はドコでしょうか!」
「……迷子か?」
「は、はい」
不審者でも見るような目で私を見てる。疑われてる?
「配達って割には荷物、持ってねえ様に見えるぞ」
「あまり大きな荷物では無いのでこちらの鞄に入れてます…」
「確認しても良いか?」
「あ、どうぞ」
これ完全に検問だね。メイドの見た目をした風紀委員なのかなこの人…物凄く手際が良いよ。
「………はぁ、問題はねえな。じゃああいつらのとこまで案内してやるよ。こっちだ」
「ありがとうございます?」
私も中身は知らないけど物凄く軽かったし、何が入ってたんだろう…中身を見た瞬間呆れたようなため息を吐いたよ?
「ハーブ、彼女はミレニアムの風紀委員なのかい?」
「ど〜して私に聞くのさ」
「キミはミレニアムの方面を担当するコトが多かったじゃないか。だから知ってるかなと」
私はまだミレニアムには両手の指で数える程度しか来たことないからこの自治区について詳しくないんだよね。去年はゲヘナとトリニティを中心にバイトしてたし。
「私も噂くらいしか知らないよ〜…服装的にCleaning&Clearingって部活じゃないかな」
「Cleaning&Clearing?洗濯と掃除部?」
「聞いた話だと奉仕活動をメインにした部活だってさ〜」
「奉仕活動…つまりメイド部ってコトだね!」
箒捌きとか窓拭きが凄いのかな。メイドと言うことだから料理も出来たり?あんなに不良っぽい子でも掃除が上手なんだろうな〜そう考えたら凄いじゃないかメイド部!私も彼女たちの掃除技術を学べないかな!
「着いたぜ。次は迷子になるなよ〜」
「助かりました!」
「またね〜」
うん、人は見掛けじゃ判断できないね!今度から気を付けなくちゃ。
「失礼します!荷物の配達に来ました!」
「待ってました!いや〜距離が遠くて買いに行けなかったんだよね!ありがとう!配達員さん!」
「いえいえ!今後ともゲヘナ学園バイト部を御贔屓に!失礼しました!」
中から元気いっぱいの子が出てきてそのドアの隙間から中が見えた。中にはなんだか古そうなゲーム機やゲームソフトが置いてあった。今時レトロなゲームをあんなにたくさん持ってる子なんて珍しいなと思いつつサインをもらって荷物を渡す。
「うわっ!お姉ちゃん!お姉ちゃん!アレが出たよ!」
「うそ!?いま!?」
うん?なんだか様子が変だね。アレが出た?CMでも見てたのかな。でもそうだとしたら慌て方が嫌なモノが出てきたみたいな驚き方だけど……。
「おや?ドアが開いて…」
「お姉ちゃん!そっち行った!」
中からそっくりな子が見えてその子の視線を追うと足元に例の黒光りするアレが走っていた。
「う「キャアアアアア!?」配達員さん!?」
「ハーブ!ハーブ!デタ!デタよ!」
「ちょっと、人前なんだから落ち着いてよ〜」
「ムリムリムリムリ!アレだけは絶対ムリ!助けてハーブぅ!」
私は大慌てでハーブの後ろに隠れて尻尾でアレを牽制する。でもアレにあまり効果はないようでカサカサと音を立てながらこっちに向かって疾走してきた。
「イヤアアア!?キテる!こっちに来ないでよ!!!」
「えい」プチッ
ハーブが手慣れた手付きで鞄から虫叩きを出してアレを叩き潰した。そして部屋の中の子からティッシュを貰ってそれに包んでゴミ箱にポイっと捨てた。私はアレの脅威から救われたみたい。
「相変わらずク〜ちゃんはゴキブリが苦手だね〜…苦手って言うより怖い?」
「ハーブには分からないだろうね。何十匹ものアレがこっちに向かって飛んでくるアノ悍ましい光景なんて」
怖かった。本当に怖かったんだあの光景。
「配達員さん大丈夫!?」
「あ、すみませんお恥ずかしいところをお見せして…」
「大丈夫、気持ちはすっごい分かるから…!」
「あ、あはは…それでは今度こそ失礼しました」
技術がどれだけ凄くても、アレは何処に出るんだなと私は悟った。
−−−今度から虫除けを必需品に加えておこう