海馬瀬人は異世界転生でも全速前進DA!   作:Red_stone

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第2話 聖杯の手がかり

 

 

 海馬とエリアは近くの寂れた街に着いていた。明日になればもっと大きな街へ行くつもりだったが……まずは飯だ。

 適当なバーを見繕って銀貨をカウンターに放り投げた。

 

「店主、これで飯を」

 

 まともな倫理観があればゴブリンの財布を使うことにためらいもあるだろうが、海馬にそんなセンチメンタリズムはない。

 

「……ここはバーだぜ。お子様の、それも人間の来るところじゃねえ」

「ふん。ならばミルクでももらおうか」

 

「テメエ……!」

「――か、海馬さん。あんまりもめ事を起こすのは……」

 

「……ッ! 人間、そいつをどこで拾った?」

 

 その銀貨はゴブリンのものだった。店主はその銀貨と財布を見て、すぐに誰のものかを察したのだ。

 まあ、闇のデュエルの戦利品だからそれを使うことに異論があるはずもないのだが。それはそれとして、この人間もまたそういうやつだということだ。

 

「デュエリスト未満の雑魚の行く末など、俺の知ったことではないな」

「ばかな。――こんなガキが、あのゴブリン突撃部隊を倒したって言うのかよ」

 

 店主はあんぐりと口を開ける。別に倒されたことも、財布の中身を使われたことにもどうとも思っていない。こんな治安の悪い都市では、まあ普通だ。

 だが、目の前のデュエリストの腕前はとんでもねえかもしれねえと息を呑んだ。

 

「……ピッ、ピッ、ピッ。データのないデュエリストを確認」

 

 機械サソリ――青い兵器としか呼べない凶悪なロボットが店の外から海馬を睨みつけている。機械であるからには感情は無いはずだが、警戒とそれにもまして破壊衝動が感じられる。……精霊界では現実とは違うということかもしれないが。

 

「なんだ、貴様は」

「……デ、デス・シザーズ。機械帝国の尖兵がなんでこんな場所に……!」

 

 店主は慄いている。そう、ゴブリン突撃部隊は泣く子も黙るギャングだが、所詮はその程度。暴れられてケガさせられても困るという、ある種野生動物並みの扱いだ。

 だが、目の前のこれは違う。チンピラの力自慢ではない、”本物”のギャングとでもいうような。

 

「例の聖杯を狙っている勢力とやらか。だが、貴様らに聖杯が渡ることはない」

「――ピ。疑問を提示、機械帝国が聖杯を入手できナイ理由」

 

「なぜなら、この俺が聖杯を()るからだ!」

「更に疑問を提示。ここで倒れるお前が、どのように聖杯を見ると言うのか?」

 

 両者が暫し睨み合う。張り詰めた糸のように緊張感が場に満ちる。

 

「……ひ」

 

 エリアが後じさった。その足音が開始の合図となった。

 

「「――デュエル!」」

 

 海馬がデュエルディスクをセット、そしてサソリ型ロボットはカシャリと腕を展開してカードを引いた。

 

「俺の先行! 俺は手札から〈正義の味方カイバーマン〉を召喚!」

「――たかが攻撃力200の分際で」

 

「か……カイバーマン? 海馬さんに、似て……る? かな?」

 

「俺はカイバーマンの効果を発動! 自身をリリースし、手札から〈青眼の白龍〉を特殊召喚!」

「なんだと。――まさか、1ターンでレベル8モンスターを召喚するとは」

 

・青眼の白龍 ATK:3000

 

「ふん、素人には理解できんさ。俺はカードを1枚伏せてターンを終了」

「ならば、こちらのターン。カードをドロー」

 

 サソリ型ロボットは暫し自分の手札を眺めた。

 

「ふっ、我がブルーアイズに敵うモンスターなど居ない。せいぜいモンスターを守備表示で出して敗北へのカウントダウンでも数えるがいい」

「……我が手札は、完璧な、手札。貴様の勝利はありえナイ。――私はモンスターと伏せカードをセットしてターンを終了」

 

・裏守備モンスター1体

 

「ワハハハハハ! 威勢が良い事を言っても、壁を立てるだけで終わりだとは臆病なことだ! どんなモンスターもブルーアイズの圧倒的なパワーの前には無力!」

「――」

 

 哄笑する海馬を前に、サソリ型ロボットはどんな感情かも分からない。

 

「俺のターン、ドロー。俺は〈ブラッド・ヴォルス〉を召喚、守備モンスターを粉砕せよ――【デーモン・スラッシュ】!」

「キラー・トマトの守備力は1100、そのまま破壊される」

 

◆ブラッド・ヴォルスATK:1900 VS キラー・トマトDEF:1100

 

 筋骨隆々の魔獣人が伏せカードを切り裂く。それはキラー・トマトで、赤い果汁が周りに飛び散った。が……血のような残骸からまた植物が生えてくる。

 

「キラー・トマトの効果発動、デッキからキラー・トマトを特殊召喚する」

 

 倒してもまたもや現れたキラー・トマト。だが、海馬はひるまず攻撃する。

 

「だが、そいつは攻撃表示。ダメージは受けてもらう、【滅びのバーストストリーム】!」

「――ダメージ確認、軽微。警戒体制へ移行」

 

◆青眼の白龍 ATK:3000 VS キラー・トマト ATK:1400

〇デス・シザース LP:4000⇒2400

 

「私は、デッキから〈KA-2 デス・シザース〉を特殊召喚」

 

・KA-2 デス・シザース AYK:1000

 

「ワハハハハ! キラー・トマトはデッキから尽きたか? それとも……攻撃力1000の弱小モンスターをフィールドに残す必要でもあったか」

「――貴様の攻撃は終わった。ターン終了宣言を要請」

 

 くっくっく、と海馬は含み笑いを漏らす。

 

「攻撃力が低くても警戒が必要なモンスターは居る。なるほど先のザコとは違うようだ。……が、焦ったな。モンスターを倒すのは、モンスターの攻撃ばかりではない! 手札から魔法カード〈ブラック・コア〉を発動。手札1枚と引き換えに、貴様のモンスターを除外する!」

「なんだと!? 私のデス・シザースが……!」

 

 機械ながらも、驚愕の気配が丸わかりだった。そして、効果ダメージを与えるその効果も海馬は知っている。

 

「大方次のターンでブラッド・ヴォルスの攻撃力を下げ、戦闘破壊による効果ダメージを狙ったのだろうが――貴様ごときの戦術を見透かせぬ俺ではないわ! ターンエンド!」

「……私のターン! ドロー!」

 

 サソリ型ロボットの身と言えど、これにはさすがに余裕を無くした様子だった。戦術はすべて言い当てられていた。……だが。

 

「私は手札から2枚目の〈デス・シザース〉を召喚!」

「ふん、手札にあったか。だが、その攻撃力はブルーアイズどころかブラッド・ヴォルスにも及ばん!」

 

「伏せていた罠カード、〈砂塵の大竜巻〉を発動。貴様の伏せカードを破壊する」

「ぐ……! 破壊されたカードは〈攻撃の無力化〉」

 

 攻撃力を下げられても、このカードがあれば攻撃を止められるはずだった。が……破壊されてはその効果は使えない。海馬は初めて苦渋を味あわされた。

 

「さらに装備魔法〈流星の弓ーシール〉を発動!」

「馬鹿な……そのカードは攻撃力を1000下げる代わりにダイレクトアタックを可能とするカード。だが、貴様のデス・シザースの攻撃力は1000。……まさか!」

 

「私はこのカードを貴様のブラッド・ヴォルスに装着! これでデス・シザースの攻撃力が上回った! 【デッド・バイト】!」

 

◆デス・シザースATK:1000 VS ブラッド・ヴォルスATK:900

 

 サソリ型ロボットがそのハサミで魔獣人を両断する。そして、地に落ちた上半身を掴んで――海馬へ投げた。

 

「デス・シザースは破壊したモンスターのレベルの500倍の直接ダメージを相手に与える。――【ギロチン・キャスト】!」

「直接ダメージだと!? ぐ……おおおおおお!」

 

〇海馬LP:4000⇒3900⇒1900

 

 半分になった魔獣人がなぜか爆発した。海馬は吹き飛ばされ、しかし腕を振り回しつつもなんとか両の足で地に着地する。

 

「おのれ……! まさかデュエリスト未満のオンボロロボットに、この俺が膝を付かされそうになるとは。――この屈辱、必ず倍返しにしてくれる!」

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー! ……貴様のデス・シザースは低攻撃力ながらも、その特殊能力による直接ダメージは甚大だ。もしブルーアイズを破壊出来ていたらダメージは4000、俺は負けていた」

「ならば、守備表示にして己が身を守るか? それに対する戦略を私が用意できていないと思うのならな」

 

「――だが、そのモンスターには一つ致命的な欠陥がある。俺がそれを教えてやろう!」

「デス・シザースに欠陥などナイ」

 

「俺は〈異次元の戦士〉を召喚、デス・シザースに攻撃――【ディメンションエッジ】!」

 

◆異次元の戦士ATK:1200 VS デス・シザースATK:1000

 

「デス・シザースの方が攻撃力が下……だが、私は罠カード〈恐撃〉を発動。墓地のキラー・トマト2枚を除外して異次元の戦士の攻撃力を0にする!」

「そ、そんな海馬さんの異次元の戦士が返り討ちに。でも、攻撃力1000ならまだライフは900残るはず!」

 

 エリアが悲鳴を上げる。

 

「否、異次元の戦士のレベルは4。貴様には2000の直接ダメージを受けてもらう! 貴様の未来などナイ。――まずは戦闘ダメージを受けろ」

 

◆異次元の戦士ATK:0 VS デス・シザースATK:1000

〇海馬LP:1900⇒900

 

「ぐ……ぬおおおお!」

 

 デス・シザースのギロチン攻撃の衝撃波が海馬を襲い、海馬は呻き声を上げる。さらにデス・シザースは直接ダメージを与えようと、そのはさみを海馬に伸ばす。

 

「これで終わりだ、【ギロチン・キャスト】!」

「――海馬さん!」

 

「させん! 俺は〈異次元の戦士〉の特殊能力を発動! 戦闘を行った相手と自身を除外する、【ディメンションリープ】!」

 

 異次元の戦士の両断された体は異次元の歪みに飲み込まれていた。死した後で発動した効果が、今まさに海馬を両断しようとしているデス・シザースを引きずり込み次元の彼方へ追放する。ピ。

 

「なんだと……! 私のデス・シザースが異次元に飲み込まれただと」

「貴様のモンスターは破壊したモンスターを墓地に送らねば発動しない! その僅かな隙を逃さんのが真のデュエリストと知るがいい!」

 

「す、すごい……海馬さん!」

 

 エリアはただ感心するばかりだった。レベル8のモンスターでの力押しばかりでなく、攻撃力の弱いモンスターでも特殊能力を組み合わせて弱点を突くだなんて。

 

「ば、馬鹿な……」

 

 相手のサソリ型ロボットも愕然としている。もはや彼に自身を守る手段は残されていない。

 

「そして、俺のブルーアイズにはまだ攻撃が残っている」

 

「て、撤退行動。かい――」

「俺の目の前から消え失せるがいい、他者を害することしか知らぬ鉄クズ風情が! 【滅びのバーストストリーム】!」

 

〇デス・シザース LP:2400⇒0

 

「……ピ。損傷、甚大――」

 

 どおおおん、と爆発音がして――デス・シザースの姿は消えていた。闇のデュエルに負けた者は次元が下がる。

 

 海馬は席に戻る。

 

「つまらんことに時間を使った。店主、飯は」

「へい、ミルクだ。ちょいと待ちな、最高の一皿を用意してやるさ」

 

「……ふん」

 

 そして、海馬は飯が出てくる前にエリアと会話する。

 

「奴らが機械帝国とやらか。どうやら強いデュエリストを始末しているようだな」

「そうですね。デュエルギャングたちと戦っていますから……あなたもデュエルギャングと誤解されたのかもしれません。……でも」

 

「どうした?」

「海馬さんは強すぎる。きっと、デス・シザースを倒したことで機械帝国も海馬さんのことを敵視するようになったはず」

 

「ふははははは! 構わん、むしろ好都合だ」

「え……? 好都合? それは――」

 

「そもそも俺は兵器とやらが気に食わん。そして、ギャングどもは纏まりも持っていないのだろうからな。おそらく、機械帝国とやらの方が聖杯に近いだろう」

「ええ……と。そういう……ものですか?」

 

「目星くらいは付けているだろう。まずはそちらから潰し、邪魔者が居なくなったところでゆっくり探せばいいだけだ」

「――海馬さんは、本当にお強いんですね。もしかしたら、本当に聖杯を……」

 

「たわけが」

「えっ!?」

 

「聖杯など手段の一つに過ぎん。使えぬと分かったらうち捨てるまでよ。俺には夢がある。宿命のライバルを打ち倒した、その先にこそ……我が栄光のロードがある!」

 

 傲岸に宣言した海馬に、エリアどころかバーの客たちまで呆気にとられ――彼の男気に拍手を送るのだった。

 

 

 

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