海馬瀬人は異世界転生でも全速前進DA!   作:Red_stone

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第3話 デュエルギャングの親分

 

 

 二人は宿へ行った。

 

「あの……海馬さん? えと……同じ部屋……なんて」

 

 エリアは少し顔を赤らめて手をもじもじさせている。海馬を上目遣いに見ているその姿は見る者によってはたまらないだろうが――

 

「子供は寝る時間だ。貴様がベッドを使え、俺はやることがある」

「え……」

 

 その取り付く島もない様子に、エリアは思わず頬を膨らませる。なんか常に自信満々で、やることなすことに口を出せなくて成り行き上でこうなっている現状。その揺らぐことのない様子に安心すると同時、それ以上にもやもやした気分になってしまう。

 

「お前はこの町が味方だと思っているのか?」

「それは――どういう?」

 

 膨らんだ頬が引っ込んだ。背中に冷や汗が流れて、思わず窓の外が気になってしまう。エリアもこの場所を知っているわけではない。旅行者以上のことなど知らないのだ。

 

「こんな町で仕事をしているのだ。機械帝国にも、ギャングどもにもかかわりを持っていないはずがない。デス・シザースが現れたことを考えると、機械帝国の縄張りかもしれんな」

「そ……そんな。普通の人々まで協力しているんですか?」

 

「嫌々か金か、どの理由で従っているかまでは知らんがな。……卑怯者に限って人質を取りたがる。おそらく、貴様はすでに俺の仲間だと認識されているだろう」

「――。あの、海馬さん……」

 

「そんな顔をするな、放り出すような真似はせん。明日は早く出る。だから、エリアよ。貴様は心配せず寝てしまえ」

「……えと。はい。ありがとうございます。じゃあ、寝ますね」

 

 エリアがベッドに潜り込む。海馬は椅子にどっかと座り込んで、自分のデッキを確認し始めた。横には奪ったデッキが二つ、敵の武器を知らなければ勝てはしないと分かっているのだ。

 

「海馬さんは寝ないんですか?」

「仮眠は取る。敵地での行動は慣れている、俺ならば二日や三日警戒し続けることができる。が、お前には無理だろう」

 

「う……はい」

「――」

 

 困るエリアをよそに、海馬は黙々とカードをめくっていた。カードをめくる音がメトロノームのように響いて……いつの間にかエリアは眠ってしまった。

 

 

 

「エリア、起きろ」

「……うう。もうちょっと寝かせてよ、ギゴ――」

 

「起きんなら抱えていくが」

「えっ!? あっ、海馬さん!? えと、あの――」

 

 起きると、まだ窓の外が薄暗い。かなり早い時間で、朝ごはんの時間でもなかった。

 

「外に兵器どもが居る。脱出するぞ」

「ええっ!? な、なんで」

 

「デス・シザースとの一戦を嗅ぎつけられたのだろう。ここでの戦いに意味はない。……行くぞ」

「ひゃっ。え、あの――あう。はい」

 

 いきなりお姫様抱っこされてしまった海馬に、エリアは顔を赤面させてしまう。まあ、その海馬本人はお子様どころか女そのものに興味がなさそうな顔をしているけれど。

 

「掴まっていろ!」

「きゃっ! わあああ!」

 

 窓をぶち破り、外へ駆ける。

 

「――目標、脱出を確認」

「確保、確保。奴をデュエルで確保せよ」

 

 表で待っていたロボット達が一斉に動き出した。

 

「ふん。ポンコツどもめ、この俺に追いつけるものか!」

「ひゃああああ!」

 

 パルクールじみたすさまじい挙動で壁を駆けあがり、家と家の屋根を飛び越え、飛び降りたかと思ったら着地の勢いでさらに加速。

 エリアにしてみたらもうめまぐるしく動き回る背景で悲鳴を上げるしかない。

 

「――こっちだ!」

 

 紫色の小鬼が呼びかけてきた。海馬はそいつに従い、その家に入る。

 

「地下だ! 地下に通路がある!」

「貴様は――」

 

「話は後だ。ここに入ってくれ」

 

 地下の通路、先の見えない長いトンネルの横にロッカーがある。海馬はエリアをお姫様抱っこしたままそこに入る。

 小鬼は細工をした上で、自身もロッカーに入った。

 

「目標、地下への移動を確認」

「トンネル……動態反応、なし。逃げられたか?」

 

「ロッカーを発見、確認開始」

 

 海馬たちが入って行ったロッカーを開け、中身を確認する。絶地絶命――

 

「何か?」

「ロッカーは空。トンネルの先へ追跡を開始する」

 

 そう、ロッカーの中には何もない。ロボット達はトンネルの先へ、存在しない海馬たちを追いかけていく。

 

「――ふう。撒いたみたいだな」

 

 ロッカーの奥の板を押しながら小鬼が出てきた。その仕掛けはただの二重底だ。壁に見せかけたそこに海馬たちは居たという訳だ。

 

「で、貴様は俺になんの用だ?」

 

 ロッカーから出てきた海馬が小鬼を見下ろす。まるで貴様も敵だと言わんばかりの眼光で、エリアとしては少し焦る。

 

「くっくっく。なるほど、さすがにゴブリン突撃部隊を倒しただけのことはある。大した胆力だ」

「御託はいい。何の用だと俺は聞いたぞ」

 

「ああ、用だったな。俺たちのキングがお前に会うそうだ」

「キング……! ふん、ギャングどもをまとめるだけの奴が偉そうな自称を名乗るものだ」

 

「テメエ。……くっく。いや、キング自らお前の実力を確かめなさるとのことだから、精々痛い目を見て後悔するといい」

「で、そのキングとやらはどこに居る?」

 

「ああ、あっちの道はスカだ。キングにつながる道は――こっちなのさ」

 

 バ、とロッカーの反対側に立てかけてあった板を外すと、小さな横穴が開いていた。いやが無くても薄暗いトンネルでは見落としがちな場所だ。

 

「……チ。俺に膝を付かせようと言うか」

「あ……あの、海馬さん」

 

「良いだろう。この屈辱の礼はキングとやら本人にたっぷりと味あわせてやるとしよう」

「……へへ、こっちだぜ。と言っても一本道だがな」

 

 そして、細いトンネルを10分ほど這いずって出た先は、やはり洞窟だった。

 

「ふふふ。レベル8の青眼の白龍を手足のようにあやつり、機械帝国の中でも悪名高きデス・シザースを倒した人間が貴様か……!」

 

 その先には王様気取りでマントを纏い、玉座に腰かけたゴブリンが座っていた。場所は汚くても、傲岸不遜な態度で上段から海馬に声をかける。

 

「ふぅん。なんだ、キングとはこんなものか。こんな小さきものに何か成せるものか。どうせ機械帝国にやられて泣きつく算段なのだろうさ――フハハハ!」

「貴様、このキングゴブリンを愚弄するか?」

 

「事実を言ったまで。貴様にはデュエリストの誇りも強さも感じん! この俺に認められたければ、デュエルで証明して見せろ!」

「いいだろう。……ならば、我が圧倒的なパワーの前に膝を屈するがいい!」

 

「「――デュエル!」」

 

「余は〈ハウスダストン〉を召喚! さらにカードを二枚伏せてターンエンド!」

 

・ハウスダストン ATK:0

 

「ワハハハハ! 怖気づいたか! たかが攻撃力0のモンスターを壁にするとはな。貴様らのデュエルなど、デュエルとも呼べんカードめくりだ! 俺のターン、ドロー!」

「ほざけ! このモンスターの効果が発動したとき、貴様は絶望することだろう!」

 

「ならば絶望させてみるがいい――圧倒的な攻撃力の前でも戦う意思を保っていられるものならな! 俺は〈ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-〉を召喚!」

「攻撃力1200、その程度の攻撃力で……!」

 

「焦るな、もちろんこれだけではない。俺は手札より魔法カード〈ドラゴンを呼ぶ笛〉を発動! 手札から二体の〈青眼の白龍〉を呼び出す! さあ、現れよ我が魂、ブルーアイズ!」

 

 攻撃力3000、その威容が天を突く。青眼の白龍が2体、もはやデッキの上に手を置いてしまいそうになるほどのプレッシャーが襲っている。

 

「さあ、サレンダーするなら今のうちだぞ。これは闇のデュエルではないが、その小さな体では堪えるだろう」

「……は! 攻撃力3000で何を吠える!? 余のモンスターを恐れぬのなら攻撃してみるがいい!」

 

「ふん。挑発か――その伏せカードに自信があるようだが。ならば破壊するまで。手札から魔法カード〈スタンピング・クラッシュ〉を発動! 破壊するカードは、右のカード!」

「なんだと!? ぐっ、〈ディメンション・ウォール〉が……!」

 

「あれは……戦闘ダメージを跳ね返すカード!?」

 

 破壊されたカードの余りの凶悪さにエリアが目を見開く。なるほど、確かにキングを名乗るだけのことはあるらしい。あれがなければ海馬は3000のダメージを跳ね返されていた。

 

「ふん、やはり攻撃を誘うカードか。だが、2枚目はあるまい!」

「ぬぅぅ……!」

 

「そして、貴様は500ポイントの直接ダメージを受ける!」

「ッなんだと!? っくぅ!」

 

〇ゴブリンキング LP4000⇒3500

 

「ブルーアイズよ、その雑魚モンスターを粉砕せよ。【破滅のバーストストリーム】!」

「ぐっ。ぐああああああ! だが、このモンスターは破壊された時に発動する効果がある。【ダストフォーリング】!」

 

◆青眼の白龍 ATK3000 VS ハウスダストン ATK:0

〇キングゴブリン LP3500 ⇒ 500

 

「なに!?」

「相手の場にダストンを送る。現れよ、〈グリーン・ダストン〉に〈ブルー・ダストン〉よ!」

 

「だが、続く攻撃で貴様のライフは0となる!」

「いいや、相手フィールドに呼び出したダストンと同じ数、2体の〈ホワイト・ダストン〉を余のフィールドに呼び出す!」

 

 白い箱のような塵の精霊が、守備力0ながらも彼を守るように現れた。

 

「ッチ。雑魚を壁にされてはプレイヤーに攻撃は届かんか。ならばロード・オブ・ドラゴンで攻撃。【ブレス・コール】! さらにブルーアイズで攻撃!」

 

 魔術師のように見えるそいつがドラゴンを呼ぶ笛を吹いて衝撃波でホワイト・ダストンを撃破する。さらにもう一体のブルーアイズがダストンを破壊してキングゴブリンのフィールドは空となった。

 

「守備表示で特殊召喚された俺の場のダストンは攻撃に参加できない。俺はこのままターンエンド!」

 

・青眼の白龍 ATK3000 ×2

・ロード・オブ・ドラゴン ATK:1200

・ダストン×2

 

「ならば余は永続罠を発動! 〈人海戦術〉!」

「人海戦術だと!?」

 

「このターンに破壊されたレベル2以下の通常モンスター、2体の〈ホワイト・ダストン〉の意思を受け継ぎデッキより現れよ――〈スカゴブリン〉! 〈異次元トレーナー〉! 守備表示だ」

「モンスターを補給されたか。だが、鎧袖一触で粉砕される程度の雑魚に挽回されるような盤面ではない」

 

「――クズだと馬鹿にするなよ。余達は迫害されて生きてきた。この醜い体によって! だが、同じように迫害された者達で寄り集まって戦ってきたのだ! 余らの結束の力を見せてやる!」

「け、結束の力……だと?」

 

 以前は否定していたそれを口にされ、海馬は僅かに動揺する。その力を彼が本当に持っているのだとしたら。

 

「余の、ターン!」

 

 キングゴブリンは勢いよくカードをドローする。

 

「……引いたぞ、これが余達の希望。結束の力の具現。圧政に対する弱者の牙! 余は余を――〈キングゴブリン〉を召喚!」

「攻撃力0のモンスターで何を……!?」

 

「キングゴブリンの効果、【小人の結束(ノームズ・ユニティ)】! 自身以外のフィールドの悪魔族の数×1000の攻撃力を得る!」

「だが、貴様に場には居るのは2体の雑魚モンスターのみ!」

 

「我らは生き延びるためにならなんでもやってきた! 敵に媚びを売っても……生き残るため! 屈辱を舐めてでも!」

「まさか……俺の場のダストンが!?」

 

 海馬は驚愕とともに自分のモンスターを見る。前のターンに召喚されたダストン、それは敵自身の力を高めるための偽りの味方。獅子身中の虫。

 

「キングゴブリンの攻撃力は4000! これでブルーアイズを上回った! だが、余は大局を見て動く! ロードオブドラゴンに攻撃、【キングプレッシャー】!」

「攻撃力……4000だとォ!? ぐおおおおおお!」

 

・キングゴブリン ATK:4000 VS ロードオブドラゴン ATK1200

〇海馬LP 4000⇒1200

 

 攻撃力4000の凄まじい攻撃が襲う。吹き飛ばされて地に倒れた海馬の口に苦い土の味が触れる。

 

「ははははは! 闇のデュエルであれば実際のダメージがあった。命拾いしたな、海馬瀬人よ。カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「――おのれ。おのれおのれおのれェ! この程度のダメージで俺を倒したなどと調子に乗るな! 必ずや俺のブルーアイズで貴様のキングゴブリンを破壊してくれる。――俺のターン、ドロー」

 

 海馬は立ち上がり、カードを引いた。だが、その表情はすぐれない。

 

「ふふふ。余のキングゴブリンの攻撃力は4000、倒せるモンスターなど居ない!」

「だが、貴様のモンスターを減らせば攻撃力が減る! ブルーアイズよ、二体の雑魚モンスターを踏み潰せェ!」

 

 その言葉通りに二体のモンスターが踏み潰され、キングゴブリンの攻撃力は2000へと下がる。

 

「だが、ブルーアイズがあと一体足りなかったな」

「俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

「余は発動済の人海戦術の効果で〈なぞの手〉と〈屋根裏の物の怪〉をデッキから特殊召喚! これでキングゴブリンの攻撃力は元に戻る!」

「――ぬぅぅぅ」

 

「余のターン、ドロー! 海馬瀬人、貴様の思惑は読めているぞ。今のキングゴブリンの攻撃力は4000、貴様のライフを削り切るためにはモンスターを1体召喚して攻撃力を上げる必要がある。ならば二枚の伏せカードで守り切り、次のターンでそいつを狙えば余のライフを削り切れるとな」

「……」

 

「まったく、キングゴブリンを倒すとは良いブラフだ。だが、残念だったな。――その戦法は通じない! 余は手札から魔法カード〈思い出のブランコ〉を発動! 〈ホワイト・ダストン〉を墓地から守備表示で特殊召喚!」

「――これで貴様のキングゴブリンの攻撃力がまた上がる」

 

「その通り! 【ノームズ・ユニティ】で攻撃力は5000にまで上がる! 貴様の魂を砕いてやろう、青眼の白龍に攻撃、【キングプレッシャー】!」

「甘いぞ、キングゴブリン! 俺は罠カード〈攻撃誘導アーマー〉を発動! 自分の攻撃を自分で喰らうがいい!」

 

「ならば罠カード〈身代わりの闇〉! デッキから〈D・ナポレオン〉を墓地に送ることで破壊を無効にする!」

「なんだとォ!」

 

「これで貴様のライフは……0だ!」

 

・キングゴブリン ATK:5000 VS 青眼の白龍 ATK3000

〇海馬LP 1200⇒200

 

 キングゴブリンのオーラがブルーアイズを打ちのめす。さらにプレイヤーの海馬にまで。

 

「なに!? なぜライフが0になっていない!」

「俺は罠カード〈ハーフ・アンブレイク〉を発動していた! この効果により、ブルーアイズは破壊されず、ダメージも半分となる!」

 

「お、おのれ……凌がれたというのか! だが、貴様のライフは200。次のターンになれば今度こそ貴様は終わりだ!」

「それは貴様のターンが来ればの話だ! 俺のターン、ドロー!」

 

 轟、と風が吹いた。待ち望んだカードが、海馬の元へやってきた。

 

「俺のフィールドに貴様のモンスターを送り付ける戦術。特攻させようにも貴様の場の攻撃表示のモンスターは攻撃力5000のキングゴブリンのみ、戦闘破壊は自殺行為に他ならない。……だが、こざかしいわ!」

「な――なにを!?」

 

「俺は手札から儀式魔法――〈カオス・フォーム〉を発動!」

「ぎ、儀式魔法だと!?」

「儀式魔法ですか! 海馬さんはそんなカードまで扱えるのですか!」

 

「場のブルーアイズをリリース! 昏き海より万物を畏怖させる咆哮を響かせよ、〈青眼の混沌龍〉!!」

 

・青眼の混沌龍 ATK:3000

 

「だが――攻撃力は3000! キングゴブリンの5000には届かない!」

「混沌龍でキングゴブリンを攻撃! その咆哮を前に相手フィールド上のすべてのモンスターは跪く! 『ブルーアイズ・ハウリング』!」

 

 混沌竜が咆哮を響かせると、キングゴブリンのモンスター達が守備表示になってしまう。

 

「こ……これは!? だが、キングゴブリンの守備力は攻撃力と同じ!」

「抵抗は無駄だ! この効果は敵の攻撃力・守備力を0にして貫通効果を得る!」

 

・キングゴブリン DEF:5000⇒0

 

「貫通……だと!? それでは!」

「この一撃で幕を引いてやろう。キングゴブリンは我が魂で粉砕すると約束したな。――ブルーアイズ・カオス・ドラゴンでキングゴブリンを攻撃! 【混沌のバーストストリーム】!」

「ひ……! うぎゃああああ!」

 

・青眼の混沌龍 ATK3000 VS キングゴブリン DEF:0

〇キングゴブリン LP500⇒0

 

「ふん、格付けは済んだな。とっとと話してもらおうか……機械帝国について、貴様たちの知りえるすべてを」

「ううう。……分かりました、すべてをお話ししましょう。奴らの残虐なる行いを」

 

 敗北したキングゴブリンは勝者の前に跪いた。

 

 

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