海馬瀬人は異世界転生でも全速前進DA! 作:Red_stone
機械帝国に囚われる前に脱出した海馬たちはスカゴブリンの誘導に乗り、ギャング達の本拠地までやってきた。そこで顔を合わせたキングゴブリンとデュエルをすることになり、見事に勝利を納めたのだった。
「すべてお話ししましょう。奴らの残虐なる行いを」
「残虐だと?」
「奴らは他の種族を奴隷にして山で働かせているのです! あんな山からは何も出ない。得られる資源など何もないというのに……」
「ふぅん。機械に働かされる人々か。まるで立場が逆だな」
「日に何人も倒れているのです。デュエルギャングも、元は奴らが奴隷にした人々の知り合いから伝わってその非道を止めるために――」
「は、それは怪しいがな。虐げられる者が善人とは限らん。それも、虐げられる者の”自称”仲間ではな」
海馬は揶揄する。そういった”自称”弱者は社長をしているとよく見る。自分は虐げられているから仕方ないのだと言い訳して犯罪行為に勤しむ者は枚挙に暇がない。
「ううう。……ですが、機械帝国を止めなければ。こうしている間にも奴らの犠牲者の骸が積み上がっているのですよ」
「それで、奴らはそこまでしてでも聖杯とやらを欲しがっているのか?」
とはいえ、海馬の興味はそこにはない。ただ聖杯を見つけて遊戯との再戦を果たす。奴隷労働のことなどどうでもよいが、必要であれば足を運ぶのも厭わない。
「はい。どれだけの犠牲を出してもそれさえ見つければ良いのだと――。どうか、どうか……苦しんでいる人々のためにも……」
キングゴブリンが『アイアンフォール』の惨状を、機械帝国の非道を涙ながらに訴えていたところに、乱入してくる者が居る。
まあ、その説得は海馬の心には響いていなかったけれど。
「――キングゴブリン様! それ以上は言う必要はありません! 頭を下げる必要もない! オレたちはお前なんかに頼らなくても機械帝国を倒せる!」
「こ、これ。人喰い虫よ、大事な話に入ってくるんじゃない。余らにはこの方の力が必要なのじゃ……」
「え……虫?」
エリアがぼそりと呟いた。
「虫だと? 馬鹿にするな――オレには戦士の誇りがある! 貴様らなどに頼る必要などないと、オレ自ら証明してやる。デュエルディスクを構えろ!」
「根拠のない自信。跳ねっ返りだな、デュエルディスクも貴様のような者に使われるのでは哀れというもの」
「貴様……! オレのことを馬鹿にするか! キングゴブリン様に勝ったのだってマグレに決まっている! 本物の闇のデュエルならば!」
「ふん、ガキだな。口先だけ威勢のいい奴ほど剣を振り回したがるものだ。貴様のような雑魚が俺の相手など――思いあがるな!」
「……! どちらがビッグマウスか、思い知らせてやる!」
「ふん、貴様ごときブルーアイズの輝きの一片すらも落とせぬと知れ」
「「――デュエル!」」
デュエルを始めてしまった。エリアは慌てふためている。
「キ、キングゴブリンさん。これ、本当の闇のデュエルですよ! どうか二人を止めてください!」
「い、いや……余が言っても聞くかどうか。そちらはどうなのじゃ?」
「海馬さんは私の言うことなんて聞きませんよぉ」
「う、うむ――頃合いを見て止めるというのであればどうじゃろう。あやつもこの拠点を守る精鋭の一人。1ターンで負けるような男ではない」
「え、ええ――」
キングゴブリンとエリアが見つめる先でデュエルは始まる。
「オレは……モンスターをセットしてターンエンド!」
・裏守備モンスター1体
「ふん。随分と悠長な事だ。デュエルは一瞬一瞬の判断が命取り、様子見などしていて勝利を掴みとることなどできはしない! 俺のターン、ドロー!」
「……ッ! なんて気だ。正体の分からないモンスターが怖くないってのかよ!?」
「この俺に恐怖などない! 俺は手札から儀式魔法〈白竜降臨〉を発動!」
「何だって!? 儀式カード……〈カオス・フォーム〉ではないのか!」
「この俺に常識は通用しないと言ったはず! 手札の〈ミノタウルス〉を生贄に捧げ〈白竜の聖騎士〉を儀式召喚!」
・白竜の聖騎士 ATK1900
「……なんだよ、儀式召喚までしておいてたったの攻撃力1900かよ! 驚かせんな!」
「俺は更に〈ブラッド・ヴォルス〉を召喚! 〈白竜の聖騎士〉でセットモンスターに攻撃、【ブルーエッジ】!」
・白竜の聖騎士ATK1900 VS セットモンスター
「馬鹿め! 伏せたカードは〈人喰い虫〉、せっかく召喚した儀式モンスターも破壊だ。残念だったな!」
「……馬鹿め」
だが、聖騎士の放った斬撃により人喰い虫はそのまま墓地に送られた。何の効果も発動することもなく。
「な……なんで?」
エリアが疑問をこぼした。
「白竜の聖騎士は裏守備モンスターに攻撃したとき、裏守備のまま破壊する効果を持つ。いかなるリバース効果であろうと無意味と知れ」
「……何い!? そ、そんなカードが」
「さらに〈ブラッド・ヴォルス〉でダイレクトアタック! 【デーモン・スラッシュ】」
「ぐわあ!」
・ブラッド・ヴォルス ATK1900
〇人喰い虫LP4000⇒2100
「そして白竜の聖騎士のもう一つの効果を発動! 自身をリリースすることでデッキから〈青眼の白龍〉を降臨させる!」
「……ぐっ。レベル8の超強力モンスターをそんなポンポンと――ッ!」
「もっとも、この効果を使ったターンはブルーアイズは攻撃できないがな」
「セットモンスターの処理から、ブルーアイズの召喚まで見据えていたという事か。なんてデュエルタクティクス……!」
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
・青眼の白龍 ATK3000
・ブラッド・ヴォルス ATK1900
「だが、オレ達も馬鹿にされたまま引き下がる訳にはいかない! モンスターをセット!」
「……ふん。こりもせずまた人喰い虫でも伏せたか? 白竜の聖騎士を墓地に送ったからといって通用する戦術だと思うか?」
「馬鹿にするなと言った! これは新しき戦術! 俺は手札から〈太陽の書〉を発動、これでオレのモンスターは表側攻撃表示へと変更される!」
セットされたモンスターの正体が明かされる。そこにエリアがハテナマークを浮かべて首を傾げた。
「え……? でも、それなら始めから攻撃表示で出せば」
「奴の目的はリバース効果だ。太陽の書ならば攻撃されることなく効果発動ができる」
「その通り! 俺の伏せたモンスターは〈擬態する人喰い虫〉! 貴様のブルーアイズを破壊し、その攻撃力と種族を得る!」
こんもりと積もった木の葉、そこから素早い動きでブルーアイズに取りついた虫。じっと見つめたかと思いきや、その姿を変化させて同じ姿に化けてオリジナルを噛み殺す。
・擬態する人喰い虫 ATK:450⇒3450、種族:昆虫族⇒ドラゴン族
「なんだと……! 貴様の虫が、俺のブルーアイズと同じ形に……! 貴様ァ」
「さらにこの擬態する人喰い虫は戦闘では破壊されず、ドラゴン族の効果では破壊されなくなった!」
「擬態する人喰い虫でブラッド・ヴォルスに攻撃! 【イミテーション・バーストストリーム】!」
「ブラッド・ヴォルス……!」
◆擬態する人喰い虫 ATK3450 VS ブラッド・ヴォルス ATK1900
〇海馬LP4000⇒2450
「ふはははは! いくら貴様がフィールドに強力モンスターを出そうと、それだけでデュエルを征することができるほど甘くはない! ターンエンド!」
「俺にデュエルを説くな! 不愉快だ! 俺のターン、ドロー!」
海馬は引いたカードを見て一瞬止まる。
「くっくっく。ブルーアイズの攻撃力は3000。俺の擬態する人喰い虫は超えられない。超えられたとしても、戦闘で破壊することもできない」
「それは先刻聞いたわ! 俺はモンスターをセット、さらにカードをセットしてターンエンドだ!」
「くくくく……! 恐れを成したか。それとも逆転のカードでも引いたのか。俺のターン、ドロー。――そのセットモンスターに攻撃! 【イミテーション・バーストストリーム】!
「かかったな! 罠カード発動! 【攻撃誘導アーマー】、自分の攻撃で自ら滅ぶがいい!」
「させるかァ! オレは手札から速攻魔法〈我が身を盾に〉を発動! ライフを1500払い――」
〇人喰い虫LP2100⇒600
「擬態する人喰い虫の破壊を無効にする!」
「……ふ。だが、攻撃は止まらん!」
「なんだと……まさか、そのカードもリバース?」
「いいや。こいつは破壊されることで効果を発動するモンスター、〈ジャイアントウィルス〉! 貴様に500の直接ダメージを与える!」
「500!? ぐおおお!」
驚いた人喰い虫の体をウイルスが襲う。猛烈な虚脱感、残りライフはたったの100。だが、盤面は己の方が押しているのだと気丈に立ち上がる。
〇人喰い虫LP600⇒100
「だが、俺のライフは残った!」
「さらにデッキから2体のジャイアントウィルスを攻撃表示で特殊召喚!」
「な、なにィ――」
「くくく。貴様がこいつを戦闘で破壊すれば500のダメージが与えられ、貴様は敗北するのだ」
「……ッ!」
苦しんだ様子を見せる人喰い虫。闇のデュエルなのだ、ライフが100まで削られれば苦しいのも当たり前である。
目の前にあったはずの勝利がいきなり遠のいて、思わず膝をついてしまう。
「もうやめてください!」
「……少女か」
「もういいでしょう!? デュエルを中断してください。海馬さんのデュエリストとしての腕前は十分分かったはずです。ジャイアントウィルスの効果であなたのライフが削り切られる前にサレンダーを――」
「だが、自爆特攻すれば直接ダメージを喰らう前に戦闘ダメージで海馬瀬人、貴様は負ける」
人喰い虫は立ち上がる。まだ自分は負けていないと。
「……ほう。まだ諦めないと言うのか?」
「ほざけ。攻撃力3450の擬態する人喰い虫が居る。不利なのはお前の方だ」
「覚悟は見せてもらった。良いだろう、デュエルを続ける。――俺のターン! ドロー!」
「――来い」
「俺は手札から魔法カード〈思い出のブランコ〉を発動、ブルーアイズ復活!」
「だが、そいつの攻撃力では擬態する人喰い虫を倒せない! そして、戦闘でも破壊することはできない!」
「ならば必殺技でその壁を穿つまで。俺は、さらなる魔法カード〈滅びの爆裂疾風弾〉を発動!」
「な……なんだ、そのカードは!?」
「このターンの攻撃を放棄する代わりに、相手フィールドのすべてのモンスターを破壊する! やれ、ブルーアイズよ!」
魔法カードの力を得て、ブルーアイズが大きく息を吸い込んだ。輝く光――規格外のブレスがすべてを殲滅するのだ。
「ぐ……うおおおおおおお!」
その殲滅のブレスが過ぎ去った後は、何も残されていなかった。
「そして、俺の場には二体のジャイアントウイルスが居る。これで終わりだ【ウイルスソー……」
「待ってくれ!」
ジャイアントウイルスがその球体の姿を膨らませた。恐ろしき攻撃が人喰い虫に向かって放たれる、その直線上に割り込んだ人物がいる。
「キングゴブリン様!?」
「お前とて余の仲間じゃ! 今度こそ見捨てたりするものか!」
玉座を離れ、人喰い虫の前で彼を守るように腕を広げたキングゴブリン。
「あなたが居なくなれば誰が皆を守るのですか!? 逝くのなら、愚かなオレ一人だけでいい!」
押しのけるように自分が前に出た人喰い虫。
「嫌じゃ! 余はもう――己の魂に嘘を吐きたくない!」
「キン……」
「ふん! 興が削がれたわ! どこぞなりとも行くがいい!」
海馬がデュエルディスクをしまったことでジャイアントウイルスの姿が消える。命拾いしたと知った二人は安堵のため息を吐いた。
「海馬さん、意外と優しいところもあるんですね」
「誰がだ。俺はお涙頂戴など好かん。……キングゴブリンともども吹き飛ばしては機械帝国の情報が入らん。――ただそれだけだ!」
「……ふふっ」
「何を笑っている!?」
「いえいえ」
「……俺はただ、人々を脅かす兵器とやらが気に食わんだけだ」
「何を遊んでいる!? さっさと機械帝国の情報をこの俺に話すがいい!」
激高する海馬に、キングゴブリンはあたふたと説明を始める。