海馬瀬人は異世界転生でも全速前進DA!   作:Red_stone

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第5話 強制労働と刺客

 

 

 キングゴブリンの話を聞いた海馬とエリアは、強制労働の現場へと足を運んでいた。

 

「……これが」

「そう、これが機械帝国の所業。ここでは余らの仲間たちが倒れて動けなくなるまで酷使されている……!」

 

 それは一見すれば鉱山奴隷のようだった。彼らは人力で穴を掘り、土砂を運んでいた。忍び込んだここから見えるだけでも数十人、下手すれば数百人が無理やり働かされている。

 

「ふん」

 

 海馬が鼻を鳴らす。目に映る感情は憎悪、だがそれは”正義の怒り”などと呼べるようなものではない。その軽蔑は、働かされている者達にすら注がれているのだから。

 

「か、海馬様……? 助けてくれる……のでは」

「くだらん。なぜ俺がそんなことをしなければならん」

 

「え? えと――」

「こんなものは唾棄すべき非効率だ。人を傅かせることのみが生き甲斐の、何も成すことのできぬ悲しき大人どもの自己満足に過ぎん。まさか兵器が、このような光景を生み出すとはな――」

 

 キングゴブリンは海馬の激情に戸惑っている。まあ無理もあるまい。彼はただ流浪の者達をまとめあげて反乱軍を作り上げた。だが、それだけだ。

 海馬のように世界企業を率いた経験もなければ、組織を操る手腕も持ち合わせていない。KC社を作り変えて世界的な企業まで押し上げた海馬の手腕など想像することさえできやしない。

 その視線で見てみれば、こんなものは自分が偉いと勘違いした馬鹿が作り上げた愚行に他ならない。発掘作業ではなく、発掘作業をさせる偉い自分に酔い痴れている。

 

「あの……海馬さん。怒ってます?」

「俺ならば、こんなことをしでかした馬鹿は即刻解雇するな」

 

 まあ、結局怒っているというより馬鹿馬鹿しくてやる気も湧かない。ライバルへ挑む栄光のロード、の枝葉にしても格落ちが過ぎる。

 こんな敵に躍起になる方が悲しくなるというものだ。

 

「――クキキ。大層な御託だな。思いあがった馬鹿はよく吠える」

 

 そこに鋭い声が投げかけられた。弓を持つ一つ目の機械、そいつを海馬は見たことがある。人々などというがここは人間界ではない。異形の者たちが街並みに溶け込んでいる不可思議な世界だった。しかも、それがカードに描かれたモンスターと同じとくれば。

 

「〈ボーガニアン〉、機械帝国の刺客という訳か」

「な……ボーガニアンだって!? 暗がりから獲物をしとめる暗殺者が姿を現したというのか!」

 

 狼狽するキングゴブリン。機械帝国で知られた暗殺者らしい、実力は折り紙付きということだが。それも、キングゴブリンを含めた低レベルの者での話。

 

「キキ。お前は危険だ――海馬瀬人、レベル8のブルーアイズの手足のように使いこなす二人間。さらには儀式召喚の召喚反応まで検知している、凄まじい力を持つデュエリストに違いない。放置すれば、いずれ機械帝国の脅威となるだろう」

「ふ。俺は昨日ここに来たばかりだが……なるほど、こんなくだらないことをして悦に浸るだけのことはある。蟻一匹逃さぬ監視体勢――よくもそれだけ人手の無駄使いができるものだと感心してしまうよ」

 

「貴様! ……キキ。だが、その監視体制のおかげで貴様のことを発見できた。ここで始末させてもらう!」

「ならばデュエルで押し通すのみ! 構えるがいい!」

 

 両者、互いにデュエルディスクを引き抜いた。

 

「「――デュエル!」」

 

「キキ、俺の先行。俺は〈ボーガニアン〉を召喚! さらにカードを二枚セットしてターンエンド!」

 

・ボーガニアン ATK:1300

 

「ならば俺のターン! ドロー! 貴様のごとき相手はこの俺の敵ですらないと思い知らせてやろう!」

 

 轟、と風が吹く。

 

「データによれば貴様は1ターンでブルーアイズを召喚するということだが」

「見せてやろう! 俺は手札から〈フォトン・サンクチュアリ〉を発動! 2体のフォトントークンを特殊召喚!」

 

「召喚を使わずに2体の生贄をそろえた!」

「俺はこの二体をリリース! 現れよ、〈青眼の白龍〉!」

 

「……だが、パワーのみでは俺は倒せん! 我が暗殺デッキの真の恐ろしさはこれからだ!」

「ふぅん。ブルーアイズで攻撃、【破滅のバーストストリーム】!」

 

 ブルーアイズが敵の小さな機械など丸ごと粉砕してしまうほどのブレスを放った。その脅威が彼と彼のモンスターに迫りくる。

 

「かかったな! 攻撃力のみを妄信する馬鹿にはトラップがよく刺さる! 攻撃と言った瞬間、貴様は終わっていたのだ! 絶望に堕ちろ――トラップオープン〈聖なるバリア -ミラーフォース-〉!!」

 

 ブレスがバリアに遮られる。どころか、そのバリアはだんだんと輝きが増して――

 

「ブルーアイズ……!」

「貴様の場のモンスターは全滅だ!」

 

 反射したブレスがブルーアイズを消し去った。海馬のコートが揺れる。一瞬目を閉じた。だが、カッと目を見開いて宣言する。

 

「ブルーアイズ……。ブルーアイズよ、その痴れ者を打ち砕け! 【破滅のセカンドストリーム】!」

「なんだと……!? 破壊したはずのブルーアイズが、なぜ……? ぐおおおおお!」

 

・ブルーアイズ・ホワイトドラゴン ATK3000 VS ボーガニアン ATK:1300

〇ボーガニアン LP:4000⇒2300

 

「あ……海馬さんの場に、魔法カード?」

「俺は速攻魔法〈銀龍の轟咆〉を発動していた。バトルフェイズに復活したブルーアイズは攻撃が可能」

 

「ぐぐぐ……」

「貴様ごときにブルーアイズが倒せるなどと思いあがらぬことだな。俺はこれでターンエンド!」

 

・ブルーアイズ・ホワイトドラゴン ATK3000

 

「――ッ! 永続トラップ〈強化蘇生〉を発動! レベルを1、攻守を100アップして墓地の〈ボーガニアン〉を蘇生する!」

「……そのカードはスタンバイフェイズに発動する効果を持っているはず」

 

「その通り! 〈ボーガニアン〉は貴様に600ポイントの直接ダメージを与える! 『アロー・オブ・ロッド』!」

「チ……! 小賢しい真似を」

 

〇海馬LP:4000⇒3400

 

「そして、貴様のそのパワーこそが貴様自身を殺すのだ! なぜなら俺のデッキはそんな奴を倒すために作られたものなのだからな!」

「――ふん。この程度の機械どもにはパワー以外の戦術を引き出すことなど不可能なだけの話、俺の戦術を分類できると思うな!」

 

「余裕な顔をしていられるのも今のうちだ。貴様のモンスターで貴様が滅べ! 俺は手札から二枚の魔法カード〈ミスフォーチュン〉を発動! ブルーアイズの攻撃力分の直接ダメージを喰らうがいい!」

「なに……!? ミスフォーチュンだとォ!? ぐ……おおおおおお!」

 

 ブルーアイズは雷鳴にうたれてよろめいた。その巨体がかしぎ、ふらりと足を踏み出してしまう。……そう、主である海馬へと。

 

〇海馬LP:3400⇒1900⇒400

 

 ブルーアイズに踏み潰された海馬は苦悶の呻き声を上げた。

 

「クキ、キキキキ……! これで貴様の残りライフは400、次の俺のターンにボーガニアンの効果が発動すれば貴様は終わりだ。……いや、もうカードを引く力さえも残っていないか?」

「――」

 

 闇のデュエルはダメージが現実化する。それも直接ダメージであれば、より苛烈に。海馬もボロボロになって今にも倒れそうになっている。

 

「〈ボーガニアン〉を守備表示に。そしてカードを1枚伏せてターンエンド! 所詮貴様は人間、機械帝国に逆らおうなどとは愚かな事よ! 身の程を知るがいい!」

「……身の程を知れ、だと」

 

・ボーガニアン DEF:1100

 

 海馬が顔を上げる、憎悪の目線を向ける。

 

「なんだ……!? この気は……!」

「我が戦いのロードに、貴様のような凡骨が入り込む余地などない! 覚えておくがいい! 貴様はブルーアイズの逆鱗に触れたのだ!」

 

 海馬が初めてボーガニアンに視線を向ける。今までは馬鹿にして適当に相手をしていたが、ここで本気の気迫が叩きつけられる。

 

「――う。おお……」

「俺のターン!!!」

 

 あまりの気迫の前にうろたえるボーガニアン。だが、彼も刺客として有名になるだけの実績は持っている。ただやられたりはしない。

 

「俺は永続罠〈安全地帯〉をボーガニアンに装備! これでボーガニアンは戦闘・効果では破壊されなくなった! どれだけのパワーがあろうと、守備表示である限り俺のライフを削ることはできない!」

「……言いたいことはそれだけか?」

 

「な――」

 

 海馬は叩きつけるようにカードを発動する。

 

「俺は魔法カード〈大融合〉を発動!」

「融合だと!? 儀式召喚だけではなく、融合すらも扱えると言うのか!」

「それに、大融合? 融合、じゃない……!」

 

「これは3体以上専用の大型融合魔法! あらゆるモンスターの頂点に君臨する、史上最強にして華麗なる究極のモンスターを見るがいい。現れよ、〈青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)〉!!!」

 

 三つ首のブルーアイズが姿を表す。ぎょろりと3つの視線が彼を射貫く。その凄まじい威容を前に、ボーガニアンでは怯えることしかできない。

 

「だ、だが……俺のボーガニアンは攻撃では破壊されない!」

 

 けれど、戦闘破壊はされないとそのモンスターを盾にする。それがボーガニアンのやり方、攻撃力で勝った敵をかわして直接ダメージで勝利を納めてきた。

 

「アルティメットでそこの痴れ者に攻撃! 粉砕せよ【破滅のアルティメット・ストライクストリーム】!!!」

「なにを――」

 

「大融合で融合したモンスターの攻撃は貫通する! モンスターを破壊できぬなら、貴様自身を打ち砕くまで! ふははははははは!」

「そ、そんな……ああああああああ!」

 

 3つのブレスが、盾としたモンスターをも貫いて彼を襲う。悲鳴を上げ、恐怖にその一つ目を大きく見開いて――逃げる暇もなく飲み込まれる。

 

・青眼の究極竜 ATK:4500 VS ボーガニアン DEF:1100

〇ボーガニアンLP:2300⇒0

 

「ふん。口ほどにもない相手だったな」

 

 海馬は次元の彼方まで消し飛ばされたボーガニアンを一顧だにせず呟いた。コートをバッと翻し、歩いて行く。

 

「お、おお……やはりあなたならば我らを解放できる! 機械帝国の奴らを……!」

「興味はないと言ったはず! この発掘作業――その奥底はそちらか」

 

「なにを……?」

「俺の目的は聖杯のみ。行くぞ、エリアよ」

「あ、はい!」

 

 海馬は拝むキングゴブリンを無視してずんずん歩いて行くのだった。

 

 

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