書いたのが二回ほど消えてしまったのもあり、アイディアが思ったより出てこなかった事もあり、遅くなってしまいました。
それと、いつもの通り、「これはこんなキャラじゃない!」と思っても、温かい目でスルーしてくれると嬉しいです。
東方のキャラって、性格が掴みにくいキャラばっかりなので…………
それと。話は変わりますが、吸血鬼異変と紅霧異変の話のタイトルが変わっています。
流石に前のは少し、単調過ぎたかな、と思いまして。
ですが、内容は変わっていないので気をつけてください。
「…………ですから、外にも書いてある通り、『何でも屋』では妖怪退治は請け負っていません。異変解決なら
例外が無い事もありませんが、妖怪退治に関しては例外無くお断りしています」
現在では『紅霧異変』と呼ばれている異変から約半月。
異変以来、急激に来客者数の増えた人里の『何でも屋』にて、唯一の従業員であるライラは、これまた半月前から増えた依頼内容に内心溜め息を吐きながら、丁寧に断っていた。
一応、建物の外に置いてある看板にも、『妖怪退治はお断りさせてもらっています』と書いている筈なのだが、この手の依頼をしてくる人は一向に減らない。
この半月に来た主なものを挙げると、
・太陽の畑に住んでいる花妖怪の退治
・妖怪の山に住んでいる天狗の退治
・吸血鬼など居るだけで害悪。紅魔館の吸血鬼の退治
等々。
特に最後の依頼に関しては、どうして吸血鬼であることを公言しているライラに依頼してきたのか分からない。
そんなに言うなら、そもそも吸血鬼に依頼するべきではないだろうに。
「………ちっ、使えねぇな」
依頼主の男は、ライラの態度と言葉で、これ以上粘っても無駄だと判断したのだろう、捨て台詞を残して去っていった。
ライラは暫くそのままで居て、男の姿が完全に消え、足音も聞こえなくなってから一気に肩の力を抜き、軽く背伸びをする。
「うーん、本当に何で無理だって何回言っても妖怪退治の依頼が来るんだろ?まだ情報が回ってないだけかな」
ライラはそんなことを言いながら、置いてある椅子に座り直す。
そのままぼんやりと、どうすれば妖怪退治の依頼をしてくる相手が減るのか、ということを考えていると、こんこん、と扉をノックする音が聞こえてきた。
「………はい、少々お待ちください」
ノックの鳴る音と同時に、意識を仕事の時のものに切り替えたライラは、そう言ってから扉の前まで行き、扉を開く。
扉の向こうに居たのは、十歳程の年齢の、紫色の髪に花飾りを着けた少女。
「初めまして。今日はどんな依頼でしょうか?」
その少女にライラは、丁寧な言葉で問いを投げ掛けた。
◆
「………はぁ、どうしましょうか…………」
昼を少し過ぎ、太陽が少しずつ傾き始めて来た頃。
往来のそれなりに多い人里の道で、紫色の髪をした、十歳程に見える少女――――稗田阿求は一人途方に暮れた様子でそんなことを呟いた。
何故彼女がこんな風に途方に暮れているのか、と言えば、始まりは唐突な阿求自身の思いつきに起因している。
数日前、彼女が編纂している『幻想郷縁起』の、花妖怪の項目を書いていた時に、ふと思ってしまった一つの考え。すなわち、
――――そう言えば、花妖怪本人に会った事は無かった気がします。
というものだった。
確かに、本人に会った事は無くとも、彼女の様な有名な妖怪であれば、情報はそれなりにある。
ともすれば、その情報だけで、阿求が話を聞いたことのあるそこまで強くはない人妖達と同じか、もしかしたらそれ以上に書けてしまうのではないか、とさえ思えてくるくらいには、情報がある。
しかし、それでも、それでも、だ。
流石に本人に会わないまま書き上げてしまうのは、間違いなく不味い気がする。
………と、そんな訳で、花妖怪――――風見幽香に会うために護衛が欲しかった訳なのだが、阿求の行動はそこで詰まってしまった。
「…………いや、分かってはいましたけど。大体そうだとは思っていましたけど」
簡単に言えば、護衛が見つからなかった、と言うだけの話である。
もちろん、多分そんなことになるだろうと予測はしていた。
風見幽香は幻想郷の中でも、間違いなくトップクラスの危険度を誇る妖怪なのだ。
そんな妖怪に会いに行く等、殆ど自殺行為として受け止められるようなことで、護衛もまた然り。
そんな相手の元に行くと聞いて、それでも護衛をしてくれるのは、正気では無いか、余程自分の実力に自信があるかの二つだろう。
「………やっぱり、諦めるしかありませんか…………」
阿求はそう言って、もう一度溜め息を吐こうとして、ばんっ!と近くで鳴り響いた音に驚いて、そちらの方を向く。
向いた方法には、明らかに機嫌の悪そうな男と、男が出てきた一つの建物に、そこに掛かっている『何でも屋』の文字。
男は、忌々しげにその看板を見つめてから、大股で立ち去って行った。
その様子をすぐ近くで見ていた阿求は、そう言えば、と最近聞いた噂を思い出していた。
半月程前から人里で有名になった、何でも屋の噂だ。
曰く、吸血鬼が一人で経営しているが、人里内での信用度は高い。
曰く、引き受けた依頼の成功率はほぼ十割。
曰く、その戦闘能力も非常に高く、護衛等の依頼中に他の妖怪に襲われる事は度々あったが、依頼主共々怪我をしているのを見たことが無い。
と言った感じである。
「………これが最後、駄目元で頼んでみましょう」
阿求はそう呟くと、『何でも屋』と書かれた看板のある扉をノックする。
少ししてから、扉の向こうから「はい、少々お待ちください」と声が返ってきた。
声の高さから、恐らく女性である事が伺えた。
………だからと言ってどうと言う事は無いのだが。
と、そこでがちゃり、と音がして扉が開く。
中から出てきたのは、和服とロングコートが融合したような奇妙な服を着た、蒼銀の髪を持つ、阿求よりも恐らく五~六歳程歳上の少女の様な姿をした妖怪だった。
妖怪は、阿求の方へと視線を向けると、にこりと綺麗な笑顔を浮かべて、
「初めまして。今日はどんな依頼でしょうか?」
そんな問い掛けを、阿求に投げ掛けてきた。
◆
「…………成る程。太陽の畑、及びその行き帰りの道での護衛、ですか」
依頼者である少女―――阿求を建物の中に上がらせて、椅子に座らせる。
そうしてから、阿求から話された依頼内容を聞いて、ライラはそうとだけ呟くと、何かを考える様に人差し指をこめかみに当てる。
それを見ていた阿求の内心は、半分ほどが諦めで覆い尽くされていた。
流石妖怪でも、あの風見幽香の相手をするかもしれない、というのは嫌なのだろう、と。
「………一つ、聞きたい事があるのですが、良いですか?」
「はい、どうぞ」
突然のライラの質問に、阿求は内心驚きながら、表面上は平静を取り繕って話すように促す。
ライラはそれに、一つだけ聞いておきたかった事を口にした。
「太陽の畑の妖怪は、戦闘能力の非常に高い妖怪だと聞いています。頼まれた以上は全力で護衛をやらせていただきますけど、それでも守りきれない可能性はゼロではありません。………それでも、依頼しますか?」
ライラが聞いてきたのは、阿求の予想に反して、阿求のした依頼に対しての危険性の示唆と、それでも依頼をするか、という最終確認。
阿求はそれに、一瞬だけライラの言葉が飲み込めないようにぽかんとした表情をした後、すぐに表情を戻して頷いた。
元々、ライラに言われるまでもなく、危険性は理解していたのだ。
今更、危険だから、という理由が、風見幽香に話を聞きに行くことを諦める理由になりはしない。
「…………そうですか。分かりました。契約は成立です。それじゃあ、よろしくお願いします、阿求さん」
阿求の返答にそう言って返したライラは、そのまま阿求を安心させるように笑顔を浮かべて見せる。
阿求もそれに笑顔を返して、それから日時について話す。
「三日後の昼過ぎ、場所は此処ですね、分かりました」
阿求の指定した日時をすぐにライラは了解する。
阿求はそれを聞いてから、座っていた椅子から立って『何でも屋』を後にする。
………何となく、此処が有名になるのが分かる気がする。
人当たりの良い性格に、噂を信じるならば、高い実力。
それでいて驕りは無く、危険なものにはしっかりと忠告まで入れてくる。
………確かに、これなら人気が出るだろう。
そんなことを思いながら、阿求は自分の家への道を歩いて帰って行った。