これからの季節、私用で忙しくなる可能性が大なので、もしかしたら投稿ペースがこれくらいになるかもしれません。
その時は、ご容赦下さい。
「………何時になったら止むのかしら?」
時間は、丁度ライラと咲夜の一行にこいしが加わった頃。
魔法の森の中程を散歩していたアリスは、うんざりしたようにそう呟いて空を見上げていた。
基本、アリスは雪が嫌いでは無い。
特別好き、という訳でも無いが、少なくとも夏の初めの、じめじめとして何時までも降り続いている雨よりは好印象を持っている。
それでも、暦としては季節が春だというのに、何時まで経っても雪が降り続いている、というのは、中々に鬱陶しい。
「………この際、霊夢でもライラでもどっちでも構わないから、さっさと異変を解決してくれないかしら?」
アリスははぁ、と溜め息を吐きながら、この異変を解決する可能性のある二人の友人の名前を出す。
博麗の巫女である霊夢はとにかく、ライラの名前を出したのは、つい最近、人里に流れている噂が理由だったりする。
曰く、人里の『何でも屋』が、異変解決に乗り出したんだとか。
噂の真偽はともかく、アリスの知っている中で、というか、人里で『何でも屋』等という奇特な商売をやっているのは、ライラしか居ない。
………正直、ライラの『何でも屋』の基本方針と、禁止事項の例外を知っていて、かつ霊夢の性格も知っているアリスから見れば、この噂はあの面倒くさがりの巫女に異変解決をさせるための餌にしか見えない。
しかし、少なくともそれはアリスにしか分からない事だろうし、異変解決をしなければそもそもの生活が出来ない霊夢にとっては、仮に分かっていても動かなければならないため、餌としてはこの上無く上等な手段だ。
「………あんな風に、すぐに動きだそうと思うくらいには、ね」
アリスが見上げた先には、アリスの真上を目掛けて飛んでいく、白い空には目立つ紅と黒。
何時もなら白もそれなりに目立つ筈ではあるが、今日は雲と雪に隠れてしまっている。
………どちらも、アリスの旧友だ。
「………さて、久しぶりに見かけた事だし、挨拶でもしてこようかしら?」
アリスはそう言うと、ふわりと宙に浮いて、そのまま紅白と黒白の二人――――霊夢と魔理沙の二人の前に立ち塞がるように高度を上げる。
挨拶する相手がこの二人である以上、こうして立ち塞がるようにしないと、完全にスルーされるのが関の山だからだ。
「………あら?何か用かしら?」
「久しぶりに旧友を見かけたんだもの、挨拶の一つくらいするのは常識でしょう?」
自身の前に立ち塞がったアリスを視界に収め、少しだけ眉を上げてから問いかけてきた霊夢に対して、アリスは当然のようにそう返す。
霊夢はその言葉に少しだけ目を細めると、微かに口の端を上げる。
「旧友?あんたと私が?………残念だけど、あんなみたいな七色魔法バカ、私の知り合いには居ないわね」
肩を竦めながら返した霊夢の言葉に、隣の魔理沙が思わず吹き出す。
そんな魔理沙を横目で見ながら、霊夢はアリスへと更に言葉を投げ掛ける。
「………ま、そんなことはどうでも良いわ。それで?あんた、この異変の元凶に心当たりとか、無い?」
「うーん、そうね。一つだけあるわ」
肩を竦めたまま一方的に質問を投げ掛けてくる霊夢に、今度はアリスが口の端を上げて、わざとらしい口調でそう返す。
霊夢はそれに少しだけ目を細めながら、それで?と促す。
アリスはそれに、霊夢と魔理沙が来た方向を指差した。
「あっちの方にある山に、寂れた神社があるの。そこに住んでる巫女は年中頭が春っぽいから、きっと今回の異変の元凶に違いないわ」
済ました顔でそんなことを言い切ったアリスに、元から霊夢の発言で必死に笑いを堪えていた魔理沙はついに腹を抱えて笑い出す。
そんな魔理沙をちらりと見て、次に目の前で何となく得意そうな顔をしている様な気がしないでもないアリスを見てから、霊夢はぴきり、と頭に青筋を浮かべる。
「………ええ、良いわ。此処まで露骨に喧嘩売ってきたのはこの前のアホ吸血鬼以来よ。良いじゃない、言い値で買ってやるわ」
「あら、私の知り合いの巫女の事だったんだけど………貴女だったのかしら?」
ぴきり、ぴきりと何かが切れる音を立てている様な表情で、微かに口の端をひくつかせながら。
ゆっくりと、本当にゆっくりと告げた霊夢に、アリスは 何処の吹く風、といったような態度で、わざとらしく驚いてみせながら、ゆっくりと構えを取る。
そんなアリスの言葉に、霊夢はすっと自分の周囲に陰陽玉を展開し、お払い棒をアリスに向けてから、
「ええ、私は特に心当たりが無いのだけれど、残念ながらその巫女、っていうのは私の事みたいよ、アリス」
そう宣言して、弾幕を展開し始めた。
◆
「………って言う訳で、あの二人は見ての通り、現在進行形で弾幕ごっこ中だぜ」
「………全く、どれだけ喧嘩に発展するのが早いのよ…………」
弾幕ごっこが始まってから数分後。
弾幕ごっこが始まる気配を察知して事前に被害の及ばない所に避難していた魔理沙と合流した咲夜達の一行は魔理沙から現在の状況説明を受けていた。
話を聞き終えた咲夜は、向こうで全く手加減無しの弾幕を展開している二人を見て、頭が痛そうにこめかみを抑える。
…………何故だろう、最近、溜め息ばかりを吐いている様な気がしてきた。
「………ところで、咲夜の後ろの二人は誰だ?そろそろ自己紹介位してくれても良いと思うぜ?」
「そうですね、失礼しました。私は人里で『何でも屋』をやっている、なんちゃって吸血鬼のライラです。よろしくお願いします」
「そんな師匠の弟子の、覚妖怪(笑)の古明地こいしだよ。よろしくね」
魔理沙に自己紹介を促されたライラとこいしは、それぞれ自身の種族に軽い自虐を混ぜながら自己紹介をする。
魔理沙はそれを聞いて、笑っていいのか分からない、と言いたげな微妙な表情をしながら、お、おぅ、と頷く。
「私は、普通の魔法使い、霧雨魔理沙だぜ。よろしくな。………それにしても、あんたが今異変解決に乗り出したとかって噂の『何でも屋』か。霊夢の仕事を奪おうなんて、いい度胸してるな」
「あははは。あくまで噂ですよ。私が依頼されたのは、博麗の巫女さんのお手伝いであって、異変解決じゃありませんから。………まぁ、そもそも博麗の巫女さんが早く動いてくれてたら、こんな噂も流す必要は無かったんですけどね」
「なんだ、つまり霊夢の自業自得かよ」
「………悪かったわね、自業自得で」
ライラの言葉に納得したように呟かれた魔理沙の独り言に、期限の悪そうな声が返事をする。
その声にびくっ!っと肩を跳ねさせた魔理沙がゆっくりと振り向くと、案の定、仏頂面で魔理沙を睨んでいる霊夢と、全体的にぼろぼろなアリスが立っていた。
「お、終わったのか?霊夢、アリス。結果は………まぁ、見れば分かるな」
「えぇ、そもそもこいつが私に勝てる筈無いじゃない。今まで一度も負けてないんだから」
霊夢の言葉にアリスははぁ、と溜め息を吐くだけで反論はしない。
どうやら、事実ではあるらしい。
霊夢はそんなアリスを完全に無視して、ライラとこいしの方へ向き直った。
「それで?さっき話は聞いてたけど、あんた達は私の手伝いをしたいって事で良いのかしら」
「はい、その通りです。良いですか?博麗の巫女さん」
霊夢の問い掛けに対してのライラの返答に、霊夢は嫌そうに顔を歪める。
歪めたタイミングにから見て、博麗の巫女さん、という言い方が気に入らなかったらしい。
「博麗霊夢よ。霊夢で良いわ。着いてくるのは構わないし、手伝うのも構わないけど、その博麗の巫女って呼び方、何か違和感あるから止めなさい。」
「分かりました。それじゃあ、よろしくお願いします、霊夢さん」
嫌そうな顔のまま訂正を求めてきた霊夢に、ライラはふわりと笑顔を浮かべてそう返す。
霊夢はそれを聞いて一つ頷くと、此方に言葉を投げ掛けてくる。
「それで良いわ。………よし、手伝うって言ったんだから、早速働いて貰うわよ。さっさと私達を黒幕の所まで案内しなさい」
「う~わ、流石霊夢だな。妖怪だろうが人だろうが、顎で使うことに全く戸惑いが無いぜ」
「………それの何処が「流石」なの?ある意味霊夢らしいけど」
「それじゃあ、挨拶も終わったし、私は帰るわね。………そうそう、霊夢は人使いが荒いから、覚悟しておいた方が良いわよ、ライラ」
霊夢の言った言葉に反応して、魔理沙、咲夜、アリスがそれぞれ思ったことを口にする。
霊夢はそれを一睨みで黙らせてから、ライラの方へ向き直った。
「まぁ、外野が色々五月蝿いけど関係無いわ。さっさと案内しなさい」
「あはは。分かりました、それじゃあ案内しますね。道中の露払いは任せてください」
あれだけ言われても全く態度を変える気の無い霊夢に、ライラはそう答えてから冥界がある方角へと飛び立つ。霊夢達はそれを見て、ライラの先導に従って同じ方向へ飛んで行った。
因みに、ですが、この話の中で霊夢の言ったアホ吸血鬼、というのはフランです。
フランは霊夢と初対面の時、散々ボケ続けた結果霊夢を怒らせています。
ついでに、この作品のアリスは旧作っぽい体験をして、その時に霊夢や魔理沙と知り合って、ついでに霊夢にぼこされています。
その後もちょくちょく会っていて、喧嘩になる度に霊夢にぼこされている、という設定です。
後、霊夢もアリスも皮肉っぽいのは挨拶みたいなもの。
昔から会う度にこんな感じです。