東方廻現想   作:リーグルー

26 / 27
24話、投稿します。
この話は最後まで話の大筋がふわふわしていた部分なので、グダグダしてるかもしれません。
ご了承ください。


24; そして桜は咲き始め

「………本当に私達に気付かないで通り過ぎて行ったわね」

 

 

 

ライラと妖夢が白玉楼の門番(笑)の酒の席の余興(笑)を始めた時から少し時間は遡る。

ライラが突然現れた自身の師匠と対峙している間に、二人を置いて霊夢、咲夜、魔理沙を連れ、先に進んだこいしは、階段の上の方から飛んで来た妖夢も「どうせ気付かないからスルーしてね」と三人に声を掛けてそのまま足を止めずに妖夢とすれ違い、そのまま進んでいた。

 

 

 

「当たり前だよ。さっきの剣士さんは、私達を見逃したんだから」

 

 

 

「見逃した?つまり、私達が先に進んでも何も出来ないって判断したのか?」

 

 

 

こいし達にちらりとも目線をくれずに通り過ぎて行った妖夢を目で追いながら呟いた咲夜に対してのこいしの返答に、魔理沙が心外そうな顔をしながら言葉を返す。

まるで、自分達が大した相手ではない、と言われたような気がして、良い気分では無かったのだろう。

そんな魔理沙に対して、こいしは笑いながら首を横に振った。

 

 

 

「違う違う。文字通り『見逃した』んだよ。あの剣士さんから見たら私達は道端の石と同じ。視界に入ってても『無意識に無いものだと思う』ものにしか見えてなかっただけの事だから。」

 

 

 

「………つまり、それがあんたの能力ってわけね。無意識に干渉する、ってところかしら?」

 

 

 

こいしの殆ど説明になっていない説明を聞いて霊夢が返した言葉に、こいしは少しだけ驚いた様に目を丸くする。

その後、すぐに笑ってぱちぱちと手を数回打ち鳴らした。

 

 

 

「イエス!大正解!まさかあんな適当な説明で理解してくれる人がいるとは思わなかったよ!いや~、これだから『規格外』の人は説明が楽でいいんだよね~」

 

 

 

「最初から理解させる気は無かったのね………」

 

 

 

「というか、『規格外』とか言わないでくれないかしら?心外なんだけど」

 

 

 

拍手しながら意外そうにそう言ったこいしに、咲夜は呆れたように、霊夢は不満そうにそれぞれ言葉を返す。

こいしは、そんな霊夢の言葉を聞いて不思議そうに首を傾げた。

 

 

 

「だって、霊夢からは師匠とか、さっき居た師匠の師匠と同じ感じがするし。あの二人と霊夢は揃いも揃って『見ても何も分からなかった』から同じ規格外な人達だと思ってたんだけど、違った?」

 

 

 

「い~や、違わないぜ。私が断言する。霊夢は間違いなく、その『規格外』連中のうちの一人だ」

 

 

 

首を傾げながら霊夢に質問したこいしに、霊夢の隣にいた魔理沙がうんうんと頷きながら返答する。

咲夜も魔理沙と同意見らしく、納得したように頷いていたが、まだ不満だったらしい霊夢の一睨みによって二人は押し黙った。

その後、こいしも睨みつけた霊夢だったが、頭にクエスチョンマークを浮かべながら首を傾げているこいしを見て何を言っても無駄だと諦めたのか、はぁ、と一つ溜め息を吐いてから話を変えてこいしに質問を投げ掛ける。

 

 

 

「………なら、ライラとその師匠がいる所に、あの剣士を向かわせても良かったの?元からあんたの言う『規格外』を相手にしてるんなら、もう一人増えたら、下手すると危ないんじゃない?」

 

 

 

そんな霊夢の質問に、こいしは、

 

 

 

「大丈夫だよ。だって、」

 

 

 

――――師匠に、『負け』は無いからね

楽しそうに、全く不安など無さそうに笑って、そう答えた。

 

 

 

 

 

 

「………ぐっ…ぁ…!」

 

 

 

音も無く、顎の下に強い衝撃が走る。

その勢いを抑えきれずに、少しだけ地面から浮いた体に、追撃のように再び音の無い打撃が叩き込まれ、妖夢の体は数メートル吹き飛んで階段に叩き付けられた。

痛みによって一瞬だけ飛んでいた意識が戻った妖夢は手を階段に突いて跳ねるように体制を立て直すと、相対している相手――――木刀をくるりくるりと回しながら妖夢の方を見ているライラへと自身の楼観剣を向け、構えた。

ライラはそんな妖夢の姿を見て、まだ余裕のありそうな表情で笑う。

いや、事実、まだまだ余裕があるのだろう。

何せ、ライラはなんの変哲も無いただの木刀を使っているというのに、先程から妖夢の剣は掠りもせず、ライラの木刀は何度も妖夢を捉えているのだから。

 

 

 

「………どうしました?そろそろ降参とかしてくれる気になりました?」

 

 

 

「それは断じてありませんけど、勝ち目が薄い、と思い始めたのは認めます。正直に言って、ここまでの剣の使い手を、ジンさん以外に見たことがありません。………師弟揃って化け物ですか?あなた達は」

 

 

 

笑いながら問い掛けてきたライラに、妖夢は少しだけ嫌そうに表情を歪めてそう返す。

そう、これは、ジンを初めて見た時にも感じた、紛れもない本心だった。

――――初めてジンを見たのは、妖夢がまだ小さい頃、まだ自身の祖父が白玉楼の庭師をやっていた程昔の話だった。

祖父との剣の修行中、青白い顔をして、痛そうに胃の辺りを抑えながらよたよたとやって来た閻魔に引き摺られながら、あちこちを面白そうに見渡している変わった青年、のような姿をした幽霊。

それが、ジンだった。

白玉楼の主、西行寺幽々子と閻魔の話の途中で、いつの間にか祖父とジンとで行われた木刀を使った剣の試合。

そこで妖夢は初めて、昔一度だけ祖父の言っていた『剣を極めた果て』を見た。

それを見た時、思ってしまったのだ。

このジン、という幽霊は、まるで化け物のようだ、と。

怖かった訳ではない。怯えていた訳でもない。

ただ単純に、剣を見たのに、戦っている所を見たのに、強さも、考えも、剣筋も、『何も分からなかった』だけ。

 

 

 

「………本当に、化け物です」

 

 

 

そして、いま相対しているライラも、ジンと同じ感想を抱かせる相手だった。

そのままぶつければ、鉄さえも紙のように斬ってしまう楼観剣と何度も打ち合っているのに、ただの木刀に傷一つ付けない技量の高さ。

踏み込む音も、剣が風を切る音も、剣がぶつかりあう音も、あらゆる音を存在させない静かさ。

そして、気を抜けば、姿さえ消えてしまうのではないか、と錯覚するほどの気配と殺気の無さ。

剣を合わせているのに、話をしているのに、妖夢にはライラの強さが、考えが、『何も分からなかった』。

怖くはない。怯えもない。

けれど、経験上、どうしてもライラに勝てるビジョンが浮かばない。

だから、負けても………

――――俺に追い付きたい?なら、まず使命とか仕事とか忘れて楽しめ楽しめ。難しい事と、負ける事ばっか考えてる奴は半端で終わるぞ?

そこまで考えて、急に頭の中に響いた声に、妖夢は自分の頭を強く殴り付けた。

 

 

 

「………あの、妖夢さん?どうしました?」

 

 

 

「………全く、これだから底の見えない化け物と戦うのは苦手なんです。すぐに負ける事ばっかり頭にちらつく」

 

 

 

暫く自分の方に刀を向けたままじっとしていたと思ったら、突然自分の頭を殴り付けた妖夢に心配そうに言葉をかけたライラを無視して、妖夢は一人言のように言葉を続ける。

そのまま、俯かせていた顔を上げると、ライラに問い掛ける。

 

 

 

「ライラさん、一つ、頼みを聞いてもらって良いですか?」

 

 

 

「ものによりますけど、出来ることなら」

 

 

 

ライラの返答に妖夢は楽しそうに笑顔を浮かべる。

そこに、先程までの仕事だから、という使命感のようなものは欠片も見えなかった。

 

 

 

「もう一度、勝負を仕切り直させてください。私も、今は立場を忘れて、ただの『魂魄妖夢』としてあなたに挑ませてもらいます。私の全てをぶつけさせてもらいます。だから、ライラさんも、全力を出してください」

 

 

 

そんな妖夢の言葉に、ライラは一瞬驚いたような表情を浮かべた後、はい、と笑顔を浮かべながら頷いて、するりと腰に木刀を戻した。

同時に、雰囲気も一変させたライラに、妖夢は更に楽しそうに笑みを深め、自身の最高の一撃を繰り出すために、一歩踏み出そうとして、

 

 

 

「悪ぃが、そこまでだ」

 

 

 

そんな声と共に、腕をジンに引かれて止められた。

 

 

 

「何するんですか!ジンさん!」

 

 

 

今までニヤニヤしながら黙って酒を飲んでいたくせに、妖夢が全力でやる、と決めた途端に止めに入ったジンに、妖夢は不機嫌になりながら抗議の言葉を投げる。

ジンはそれに、ただジンの抑えている妖夢の手と、剣を見るように促した。

怪訝な顔をしながら、ジンの視線を辿った妖夢は、漸く、自身の持つ楼観剣の刃が、自分に向かって突き立てられようとしている事に気が付いた。

刃を自分から離そうとするが、意思に反して自身の腕は自分に刃を押し付けようとしてくる。

その事に気付くと同時に、妖夢は自分の中に、強く、強く自分を殺したい、という衝動が浮かび上がってくることに気が付いた。

 

 

 

「これ………は…?」

 

 

 

「『西行妖』です。………もう咲き始めちゃいましたか。少し、不味いですね」

 

 

 

妖夢の呟いた言葉にライラはそう答えると、ジンの方に視線を向ける。

ジンはそれに面倒そうな表情を浮かべながら、溜め息を吐く。

 

 

 

「………あぁ、分かった分かった。さっさと行け。面倒な事言い出しても、取り敢えず終わるまではこいつを抑えといてやるよ」

 

 

 

「馬鹿にしないでくれませんか?流石に緊急事態なのは分かってますし、ライラさんを止めもしないし、大人しくしてますよ」

 

 

 

ジンの言葉に不機嫌そうな顔で言い返す妖夢。

その二人に、「ありがとうございます」と礼を言ったライラは、一瞬だけ目を閉じる。

すると、ライラの背中から生える翼の片方が紅く染まり、髪も赤と銀を合わせたような色へと変化する。

目を開いたライラは、それを確認すると、階段の先―――今、霊夢達の居る白玉楼へと一歩踏み出した。




………妖夢の性格が違う?
あれですよ、あれ。バグキャラと関わった原作キャラは基本性格が壊れてる、みたいなあれです。
…………いや、本当はもっと原作っぽくしたかったんですけど、文章力の低さと勝手に暴走し出したキャラには勝てなかったんです。すみません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。