遅くなった上に、久しぶりだったので感覚が掴めず、グダグダした文になっている可能性があります。
そこをご了承の上、お読みください。
見渡す限りの黒のあちらこちらに、無数の目が浮かんでいる、初見の誰もが『気持ち悪い』と衝動的に思ってしまう空間。
能力の使用者本人やそれを知る人妖が『スキマ』と呼ぶ空間の中で、八雲紫は異変解決の為に発生している二つの戦闘を見ていた。
片方は、ライラと妖夢によって行われている剣術のみでの戦闘。
終始妖夢が手玉に取られ続けている、どう見てもライラが勝つ様にしか見えない戦いである。
こちらに関しては、幾つか予想外の事もあるが、それでも概ね想定内に収まっている。
こちらは、特に問題が起こる事も無く終わるだろう。
問題が起こるとするならば、もう片方の戦闘の方。
紫はそう思いながら、ライラと妖夢との戦闘が見れる方とは違う方にある、もう一つの小さなスキマへと目を向ける。
そこで行われているのは、白玉楼の主、西行寺幽々子と、霊夢達四人とで行われている弾幕ごっこ。
圧倒的な勢いで幽々子の方が追い詰められていっている、これまたどちらが勝つかは一目瞭然の戦闘だ。
こちらに関しても、全体として、『霊夢達に幽々子が弾幕ごっこで負ける』という結果として見るならば、紫の想定の範囲内だった。
想定外なのは幽々子が追い詰められていくその早さ。
予想を大幅に越える速度で、より正確に言えば『ライラが霊夢、魔理沙、咲夜と共に幽々子に弾幕ごっこを仕掛けたら』と仮定した場合とほぼ同程度の勢いで幽々子は追い詰められていく。
その要因となっているのは、間違いなく一人の妖怪の少女。
古明地こいしというそのさとり妖怪は、本来ならば地底にいなければならない存在だ。
それを、紫は知っている。
と、言うよりも、実際に、会った事がある。
かつて、幻想郷の地下である旧地獄を治めてくれる存在を探している時に出会ったさとり妖怪姉妹の妹。
紫が、自分の古くからの友人以外の地上に居る存在の中で、初めて厄介な相手だと認識した相手だ。
「………ライラと繋がりがあるのは予想外だったけど。これなら思っていたよりスムーズに事が運びそうね」
彼女の実力をよく知る紫は、ぽつりとそう呟いて、すぐに気を引き締める。
この異変は既に、紫にとって予想外の事が起こりすぎている。
今回は偶々、それらがほぼ全て紫にとってプラスに働いているが、それでもまだ『最大の爆弾』が残っている。
これだけ予想外の事が起こっている以上、最早この異変は紫にとって未知数のものなのだ。
だからこそ、紫はこの異変の『最大の爆弾』に注意を払って、すぐに、その異変に気が付いた。
「………不味いわね。これは………!」
そう呟いた紫が何か行動を起こそうとする前に、今回の異変の『最大の爆弾』――――西行妖が、黒い瘴気をその幹に纏わせながら、その花を開花させ始めた。
◆
―――どくん、と心臓が不自然に大きく跳ねる感覚に、霊夢は勘に従って、嫌な感覚のする方へと顔を向けた。
「う、あ、ああぁぁぁぁァァァァ!」
それと同時に、先程まで向いていた方向から断末魔のような悲鳴が聞こえてくる。
霊夢がそちらに顔を向けると、先程まで戦っていたこの屋敷の主、と名乗っていた亡霊が、自身の体を抑え込むように両腕で体を抱え込みながら、黒い瘴気に纏わりつかれて消えていくのが目に入った。
同時に、ただでさえ強く警鐘を鳴らしていた勘が、さらに強く警鐘を鳴らし始めた。
「何よ………これ……」
霊夢はそう呟きながら、一緒に戦っていた筈の二人、咲夜と魔理沙の方に視線を移す。
………二人は、各々ナイフと爪を、それぞれの喉に突き立て、自殺をしようとしていた。
「な!………まずっ…!」
霊夢は、突然の二人の行動に大きく目を見開きながら、それを止めようと二人の元へと飛んで行く。
しかし、霊夢の位置からでは、二人どころか、片方を止めることさえ間に合わない。
そのまま、爪とナイフはそれぞれの首に吸い込まれて行って………
「さっせるかぁぁぁぁ!」
突如響いたそんな声と共に、魔理沙と咲夜はガクン、と気を失ったように一気に脱力した。
そのまま重力に引かれて落ちていく二人を、声の主が咲夜を、霊夢が魔理沙をそれぞれ支える。
「ふぅ、危ない危ない。二人も危なかったし、私も一瞬能力に飲まれかけて危なかった~」
「あんたね、どこ行ってたのよ、こいし」
「ずっと此処に居たよ?ちょっと能力が暴走しかけてドロンしてただけでね」
霊夢の問いかけに今までと同じように言葉を返す声の主―――こいしに、霊夢は一つ溜め息を吐く。
明らかに緊急事態だという事を、この妖怪は分かっているのだろうか?
「それくらい分かってるよ。じゃなきゃ普段は使わない切り札的な能力まで使わないから。………こっちはまだあんまり制御出来てないから、出来るだけ使いたく無いんだけど」
「………今、私何か喋ったかしら?」
「ん?いや、私が心を読んだだけ。………それより、霊夢。来るよ」
こいしは霊夢の発言に対する回答を適当な所で切り上げて、西行妖の方に向き直る。
霊夢もそれに合わせて向き直ったのとほぼ同時に、西行妖から多数の弾幕が吐き出され始めた。
霊夢とこいしはそれぞれが支えている二人を見てから、弾幕を避けようとして、
―――生与『空咲』
何処からか聞こえてきた声と共に、自分達と弾幕との間に現れた、五枚の花弁を持つ花のような透明な盾を見て、足を止めた。
弾幕は透明な盾にぶつかり、盾そのものに吸収されるように吸い込まれていく。
こいしはそれを見て、何かに気付いたように安堵の溜め息を吐く。
「大丈夫だった?こいし、霊夢さん」
「うん、全員怪我一つ無いよ!」
つい先程までは誰もいなかった筈の二人の背後から、そんな言葉を掛けられる。
満面の笑みを浮かべながら振り返ったこいしに釣られるようにして振り向いた霊夢は、そこで声の主―――ライラの姿を見て固まった。
「ねぇ、ライラ。その姿、何?」
霊夢の口をついて出た言葉は、別れる前とライラの翼や髪の色が違う事を指して言った言葉では無かった。
それだけだったら、過去にあちこちの色を変える迷惑妖怪を退治したことがあるので驚く程のものでもない。
だからと言って威圧感があるわけではない。
他の大妖怪達と対峙した時のように、押し潰されるような妖力を感じるわけでもない。
ただ、自身の最も信頼する勘が言っていた。
目の前の妖怪は、自分達とは別のものなのだ、と。
だからこそ、霊夢はそんな質問を口に出して、ライラはそれに困った様に笑って答えた。
「何、と聞かれると、答えにくいんですけど………まぁ、あれです。それなりに不味い状況になりそうだったのでなった、何時もよりも強くなった状態みたいなものだと思ってください」
「………要するに詳しくは話したくないのね。分かったわよ。じゃあ、とりあえず、あのでかい桜の木をどうにかしましょう」
言葉を濁して答えるライラに、詳しく答える気が無いことを察した霊夢は、すぐに切り替えて自分達と西行妖を隔てている花のような盾を見る。
花は絶え間ない弾幕によって、その花弁の三枚を綺麗に染めていた。
「咲夜と魔理沙は此処に置いていくとして、ライラ。あんた、これより強い盾を作れる?」
霊夢の質問にライラははい、と答えると、とん、と足で地面を一度打ち鳴らす。
それと同時に、咲夜、魔理沙、こいしを囲むように、立方体の障壁が展開された。
「………師匠?なんで私もこの中に入れられたの?」
「その障壁が壊れた時の保険だよ。多分壊れないと思うけど、もしかしたら壊れるかも知れないからね。もしも壊れちゃったら、二人を守っててほしいんだ。お願いできる?」
こいしの質問に対してのライラの返答に、こいしは少しだけ考えた後、うん!と笑って了承する。
ライラはそれに笑い返すと、霊夢の方に向き直った。
「さて、霊夢さん。サポートします。あの迷惑にも起きようとしてる桜の木の真下に昔使われた封印の基点があるので、それを使ってぱぱっと封印してしまいましょう」
「あら、封印だけで、基点まであるの?思ってたよりは楽な仕事じゃない。そうね、さっさと帰って炬燵に入ってお茶も飲みたいし、すぐに封印しちゃいましょうか」
霊夢の方を向いたライラの簡単な説明に、霊夢は同意するように答える。
そうしてから、二人は一度ちらりと目を合わせると、西行妖の封印の為に同時に動き出した。
今回で春雪異変は終わらせる予定だったのに、思ってたより進まなかった………………
それはさておき、此処では本文に乗せられなかった補足をば。
Q、何故こいしが心を読んでいるの?
A、今作品のこいしに追加されている能力である、『矛盾を受け入れる程度の能力』の影響。
これにより、現在のこいしは『本来のさとり妖怪と同じくサードアイが開いていて、心が読める能力を持ちながら、サードアイを閉ざした状態の無意識を操れる能力も使える』という高性能状態。
因みに、今作のこいしが無意識なように見えないのもこの能力の影響。
Q、霊夢、ライラ、こいしはどうして西行妖(正確には封印の基点の、目覚めかけている西行寺幽々子の体)の能力の影響を受けていないの?
A、霊夢は無意識に能力の干渉から浮いているからで、こいしの場合は『無意識下での洗脳に近い暗示』を 無意識を操って無効化しているから。最後にライラは、とある理由で概念的、精神的な干渉そのものを全く受け付けないから。
Q、どうしてライラの配色が変わったの?
A、第二形態をはっきりと分かりやすくするため。
因みに、この第二形態のライラが今作のバグキャラ四天王の一人。
能力も進化して、全能力値が格段に跳ね上がって、理不尽性能を発揮しており、この状態なら今作の最強キャラのツートップの一角。
Q、どうして紫は見てるのに手伝わないの?
A、手伝おうとする前にこいしとライラが出てきたから。
要するに、手伝いは必要ないと判断したから。