………サブタイトルが思いつかなかった………
「アリスさん。本当にありがとうございました」
ライラがアリスの家で最初に目覚めてから三日。
熱も下がり、体調もすっかり万全になったライラは、改めてアリスに頭を下げていた。
………三日前に、アリス自身が礼は要らない、と言った筈だが、それでも礼を言ってくるのは、単に忘れただけなのか、それとも律儀な性格をしているのか。
「お礼は要らないわ。三日前にもそう言ったと思うけど?」
「あはは、そういえば言ってましたね。でも、アリスさんが助けてくれたことに、変わりはありませんから。お礼を言うのは当たり前ですよ」
素っ気なく返したアリスに、ライラは笑いながら当たり前のように迷いなくそう答える。
………どうやら後者だったらしい。
「………まぁ、それはいいわ。それで、ライラ。あなたはこれからどうするのかしら?」
ライラの言葉を聞いて、はぁ、と一つ溜め息を吐いたアリスは、ふと思い出したように、ライラにそんなことを問いかける。
ライラを看病している三日間の間に、アリスはライラにこの幻想郷の大まかな地理は教えていた。
しかし、今のライラ、何処にも繋がりを持っていない妖怪、という立場は、ライラが住むことの出来る場所を極端に狭めてしまっているのだ。
それに、今の時期も時期である。
それなりに雪が降り積もってしまっている今の時期は、例え住む場所を決めていても、家を建てるのに極端に適していないからだ。
だからこその質問に、ライラ少しだけ困った様に笑って頬を掻いた。
「あはは………住む場所自体は、アリスさんの話を聞くと此処が私にとって一番都合の良い場所ですから、最終的にはこの魔法の森に住むことになると思いますけど………春になるまでどうするか、っていうのはまだ決めてないんですよね。………今の私だとそれだけは当てがなくて。」
あはは、ともう一度笑った後、ライラは考え込み始める。
アリスはそんなライラの事を見て、はぁ、と一つだけ溜め息を吐いてから口を開いた。
「………行く当てが無いなら、しばらく此処に泊まっていくと良いわ」
「………へ?良いん…………ですか?」
アリスの言葉に、ライラはまるで考える事さえしていなかった、とでも言いたげな、酷く驚いたような表情でアリスに聞き返す。
………確かに、少しも考えてなかったのかもしれないが、それにしても少し驚きすぎでは無いだろうか?
「勿論よ。私が最初に言い出した事だし、今更撤回なんてするつもりも無いわ」
「でも………」
「それに、この家って一人で暮らすには少し広すぎるの。だから私は迷惑だとは思わないし、泊まっていってくれるのなら歓迎するわ」
アリスの言葉を聞いて、それでもなお遠慮しようとするライラの言葉を遮って、アリスは言葉を言い切る。
それを聞いたライラは、それでも少しだけ迷うような素振りを見せてから、
「………それでは、迷惑になるかもしれませんけど、しばらくの間、よろしくお願いします。アリスさん」
そう言って一度笑顔を浮かべてから、頭を下げた。
「よろしく、ライラ。………あぁ、そういえば忘れてたけど、ライラ。あなたって、刀を持ってたりしたかしら?」
「え?あ、はい。持ってましたけど、それがどうかしましたか?」
思い出したようにそんなことを言ってきたアリスに、ライラは首を傾げながらそう答える。
アリスはその答えに、納得したように頷いて、座っていた椅子からゆっくりと立ち上がる。
「いえ、あなたを見つけた時に、それと一緒に刀も見つけたの。もしかしたらって思ってたんだけど、やっぱりあなたのものだったのね」
アリスが口にした言葉に、ライラは一瞬だけ間を置いてから、アリスの言葉を理解して目を輝かせる。
………ライラにとって、その刀は何か大切なものであるようだ。
「本当ですか!ありがとうございます、アリスさん。無くしたと思って諦めかけてたんです!」
花が咲いた様な笑顔を浮かべてお礼を言ってくるライラに、アリスは小さく笑みを浮かべて返す。
そのままくるりと振り返り、その刀を取りに行こうとして、突然、かくん、と体から力が抜けた。
「あ………れ……?」
まるで時間の流れがゆっくりになったように、アリスの視界が少しずつ傾いていく。
そんな中でも、頭の回転だけはいつもの通りで、アリスはすぐに自分が倒れている事に気が付いた。
それでもアリスの体はアリスの言うことを聞かず、動かないままで、アリスはせめてすぐに来るであろう衝撃に備えて目を瞑り――――直後、ふわり、と優しく受け止められた。
「………凄い熱がありますね。ごめんなさい、私のが感染しちゃったみたいです。今は動かないで下さいね?すぐにベッドまで運びますから」
ひんやりと、少し冷たい掌をアリスの額に当てながら、アリスを受け止めたライラはそう言って、その小さな体の何処にそんな力があるのか、アリスの体を軽々と抱き上げる。
そのままゆっくりと、出来るだけアリスに付加がかからない様にアリスのベッドまで運んだライラは、丁寧にアリスをベッドへと寝かせる。
「はい。それじゃあ、治るまで安静にしていて下さいね、アリスさん。出来るだけ魔力も使わないで、何かあったら私に言ってください。アリスさんには沢山恩がありますし、元はと言えば私をせいでもあるんです。何でもしますから」
ライラはそう言って笑顔を浮かべると、ひょいと踵を返す。
「じゃあ、薬とか、必要なものを持ってきますから。ちゃんと安静にしていて下さいね?」
そして最後にそれだけ言うと、何処か少しだけ焦ったように、小走りで部屋を出ていった。