東方廻現想   作:リーグルー

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第三話投稿です。

今回は独自解釈が含まれています。

そういうのが大丈夫な人だけ、読んでいってください。


03; 捨食の法

こんこんこん、と扉をノックする音が、浅い眠りから意識を覚醒させようとしていたアリスの耳に響いてくる。

アリスはその音で完全に意識を覚醒させ、上半身だけをベッドから起こすと、扉をノックした人物に、入ってくるように声を掛けた。

 

 

 

「失礼します。………もしかして、起こしちゃいましたか?アリスさん」

 

 

 

扉をノックした人物――――ライラは、アリスの言葉に従って、部屋の中に入ってくる。

そのまま、くるりと一度部屋を見回すと、それだけで今の状況をほとんど的確に判断したらしく、申し訳なさそうにそう聞いてくる。

 

 

 

「いいえ、ちょうど今起きた所だから、気にしなくて良いわ。………それより、その手に持っているものは何かしら?」

 

 

 

アリスはライラに答えると、部屋に入ってきてから少しだけ気になっていた事を問いかける。

アリスの部屋に入ってきたライラはその両手に、鍋のようなものを抱えていたのだ。

 

 

 

「あ、これですか?アリスさん、そろそろお腹が空く頃かな、って思ったので簡単なお粥を作ってきました」

 

 

 

アリスの問いかけに、ライラはそう答えると近くにあった机にその鍋を置く。

アリスは、ライラの答えに、少しだけ不思議そうに首を傾げてから、納得したような表情になって、ライラの間違いを訂正するために口を開いた。

 

 

 

「………そういえば、教えてなかったわね。基本的に、私みたいな『魔法使い』には食事は必要ないわ」

 

 

 

「あれ、そうなんですか?」

 

 

 

初めて聞いた、という顔をするライラに、アリスは人間が魔法使いになる為の方法である、『捨食の法』という魔法の説明を簡単にする。

ライラはその説明を聞くと、少しだけ考え込むような表情になった後、

 

 

 

「………すみません、アリスさん。少し失礼します」

 

 

 

そう言って、ひょいと自身の右手の掌をアリスの額に当てた。

 

 

 

「少しだけ、その『捨食の法』っていうのがどういうものなのか調べさせてもらっても良いですか?嫌でしたら、私の干渉を拒んでくれれば私は調べられなくなりますから」

 

 

 

ライラはそんなことをアリスに言うと、アリスの額に掌を当てたまま、一度目を閉じる。

そして、

 

 

 

「………『任意同調』、開始」

 

 

 

そう呟くと同時に、アリスは、ライラがアリスの額に触れている掌から、自身の体の中に何かが入り込んでくるような感覚を覚える。

何かが入り込んでくる、と言っても不快感がある訳ではなく、特に拒むような要素がある訳でもない。

アリスの体に入り込んできたその感覚は、少しの間アリスの体を動き回った後、ふっと元から何も無かったかのように消え去る。

それと同時に、軽く目を閉じていたライラは目を開き、納得したように一つ頷いた。

 

 

 

「………今のは何?」

 

 

 

「あ、えっと、簡単な解析魔法です。アリスさんの中の、『捨食の法』がどういう魔法なのか、簡単にですが調べさせてもらいました。………結論から言えば、少なくとも病気になってる間は普通の人間みたいに、食事をして、睡眠をとった方が良いと思います」

 

 

 

アリスの問いかけに、ライラはそう答える。

それにアリスは不思議そうに首を傾げた。

『捨食の法』を使っている以上、魔法使いは食事や睡眠を必要としなくなる。

………まぁ、アリスはその中でも、基本的に普通の人間と同じ様に食事や睡眠を取るのだが………それはただの習慣なだけで、どうしても必要、という訳ではない。

なので、例え病気になった所で、食事や睡眠が必要になるとは思えないのだ。

と、アリスがそこまで考えた所で、ライラはアリスの思考を読んだように一つ頷く。

 

 

 

「いえ、別に食事や睡眠が必要、という訳ではありません。アリスさんの言う『捨食の法』というのは、簡単に言えば空気中の魔力を使って、使用者の体を『捨食の法』を使用した時の状態に留めようとする魔法なんです。なので、病気や怪我も普通の人間や、再生能力の強くない妖怪よりは早く治ります」

 

 

 

ここまでは良いですか、と言ってきたライラに、アリスは小さく頷いて答える。

………正直に言えば、特に調べようとも思わなかったので大まかな効果しか知らなかったのだが、ライラの話と、何を言いたいのかはそれなりに理解出来た。

 

 

 

「つまり、食事や睡眠を取れば、その二つに使う筈だった魔力を病気を治す方に使えて、早く治る、ということで良いのかしら?」

 

 

 

「はい、正解です。流石アリスさん、本職の魔法使いだけあって理解が早いです。」

 

 

 

ざっくりとしたアリスの予想に、ライラはあはは、と笑ってそう言葉を返す。

それを見たアリスは、先程から少しだけ気になっていた事を問いかける事にした。

 

 

 

「………話は変わるけど、ライラ。あなた、随分魔法に詳しいのね」

 

 

 

「えっと………さっきの解析魔法もそうなんですけど、昔、二百年前位に会った魔法使いさんに教えてもらったんです」

 

 

 

「?………魔法使いには会った事はあるのに、『捨食の法』は知らなかったの?魔法使いなら、大体殆どが使っている魔法だと思うのだけれど」

 

 

 

ライラの答えに、ふと湧いてきた疑問。

アリスはそれを、そのまま口に出してライラに問いかける。

普通、魔法使いである以上は、『捨食の法』をどの魔法使いも使っている。

そもそも、『捨食の法』を使うか使わないかが人間という種族と魔法使いという種族の境界のようなものとなっているので、それも仕方ないだろう。

………確かに、この幻想郷にも『捨食の法』を使っていない、自称普通の魔法使いが居るが、あれは例外中の例外だろう。

 

 

 

「あはは………あの人は規格外でしたから。その『捨食の法』を使ってなくても、人間の域を外れ切ってましたし」

 

 

 

そう言って笑うライラの顔には、何処か懐かしむような、呆れたような表情が浮かんでいた。

 

 

 

「………あ、っと、そろそろ私は退室しますね。食器は後で取りに来ますから、何時でも好きな時に食べてください。後、何かしてほしい事があったら言ってくださいね?」

 

 

 

ライラは、最後にそう言ってアリスに向かって笑顔を浮かべると、くるりと扉の方を振り向いて歩いていき、そのまま扉を開けて、部屋から出ていった。




説明


任意同調
解析魔法の一種。主に生物や魔法を解析する時に使う。
生物を解析するには、被解析者の承認が必要であり、拒否されてしまえば解析は出来なくなる。酷く扱いにくい魔法でもある。
その代わり、魔法の解析に関しては優秀で、酷く難しい魔法でもない限りは、殆ど数瞬で魔法の効果を解析出来る。
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