実は、もっと早くに投稿したかったのですが、いろんな雑念、及び内容が思い付かなかった事により、遅れてしまいました。申し訳ありませんでした。
その結果、多少グダグダっぽくなってしまいましたが、容赦していただければ嬉しいです。
魔法の森で、ライラが紫に絡まれた日から数日。
自身の拠点となる家を建て終えたライラは、人里へと足を運んでいた。
足取りは軽く、迷いなく進んでいき、遂にある一軒の家に辿り着く。
丁度それとタイミングを同じくして、家から一人の女性が出てきた。
ライラはそれを確認すると、その女性に向かって声を掛ける。
「こんにちは、慧音さん」
「ん?あぁ、ライラか。どうしたんだ?」
ライラの挨拶を聞いて、ようやくライラが目の前にいることに気が付いたらしい女性――――慧音は、ライラの方を向いてそんな風に問い掛けてくる。
「はい、今日はこの前頼んでいた件で来てみました。………どうでしょう、ありましたか?」
「あぁ、あれか。昨日丁度見つかったところだ。行ってみるか?」
慧音の問いかけに、ライラは「是非、お願いします」と答えて、何処かへと歩いていく慧音の後を着いていく。
ライラの言う『頼んでいた件』というのは、人里の中にありながら使われず、使われる予定もない土地、所謂空き地の事だ。
ライラはそれを探す事を、紫に会った二日後に人里に来て慧音に頼んでいたのだった。
………因みに、自分で探さなかった理由は簡単で、人里の地理に詳しくなかった事と、妖怪であるライラが不用意に場所を探して人里をふらふらしていては、人里に住む人々に余計な警戒を与えてしまう、と考えた為である。
「………っと、着いたぞ。此処でどうだ?」
慧音の声にライラは顔を上げる。
そこにあったのは、家と家の間としては広いが、道にはならず、それでいて周りと同じ程の大きさの家を建てるには多少狭い、というくらいの空き地。
ライラから見れば、これ以上は無い、と言うくらいに絶好の場所だった。
「はい、もちろんです。と、言うより、これ以上は文句のつけようがありません。ありがとうございます、慧音さん」
ライラはそう言って、慧音に頭を下げる。
慧音はそれに「何、礼は要らないよ」と言ってライラの頭を上げさせると、ふと、疑問に思った、とでも言うようにライラにあることを問い掛ける。
「所で、何日か前に聞いた話では、此処に何でも屋の拠点を作りたい、と言っていたが、材料はどうするつもりなんだ?」
「あはは、実は、材料自体はもう持ってきているんです。ほら、この鞄の中なんですけど」
ライラは慧音の問いかけにそう答えると、ひょいと手に持った鞄を慧音に見せるように上に上げる。
家を一つ建てるにはその鞄の容量では明らかに足りないのでは、と言わんばかりに首を傾げる慧音にライラは何時もの様に笑顔を浮かべると、慧音に少し下がる様に言ってから、鞄からその十数倍以上も大きい丸太を取り出した。
「………これは」
「俗に言う魔道具、と言うものです。この鞄の中には、幾らでも、とはさすがに言いませんが、少なくとも見た目の百倍以上は物が入る様になっています。因みに、重さの方も色々魔法が掛かってるお陰でそれなりに軽いんですよ」
そう言いながら、ライラは次々と鞄の中から丸太を取り出していく。
その丸太がそれなりに積み上がる程に出してから、「これくらいかな」と呟く。
「………これくらい?」
「はい。此処に雨風を防ぐくらいのものを作るなら、これくらいの木材で十分だと思います」
ライラはそう答えてから、すっと手を伸ばして、積み重ねた木材に触れる。
慧音はライラが何をしようとしているのか理解出来ずに、首を傾げた。
「………?何をしているんだ?」
「今からこれを使って、此処に雨風を防ぐ小屋?みたいなものを作るんです」
「いや、そういうことを聞きたいんじゃなくてだな………」
積み上がった木材に触れるだけのことにどんな意味があるのか。
そう続けようとした慧音の言葉は、ゆっくりと目を閉じたライラが何かを呟いた途端に、辺り一帯を包むように突如発生した強い光によって止められる。
反射的に目を閉じた慧音は、光が収まったのを目蓋の裏から感じてゆっくりと目を開き、目の前に広がった光景に思わず惚けた様な表情になってしまう。
「………なぁ、ライラ。どうしてもう出来ているんだ?」
そうライラに問い掛けた慧音の目には、先程までの空き地に、周りほど立派なもの、というわけではないが、それでも完成した家のようなものが建っていた。
慧音の疑問を聞いたライラはあはは、と笑うと、慧音の質問に答える。
「これですか?私の能力です」
「能力?」
聞き返した慧音にライラは笑顔を浮かべながらはい、と頷く。
能力、というのは、妖力、霊力、魔力等、量は違えど妖怪や人間が誰しも持っているようなものではなく、その妖怪や人間が固有に持っている、特殊技能の様なものだ。
………確かに、知性を持った妖怪にはその能力を持っているものは珍しくなく、強力な妖怪であればあるほど、その反則さは天井知らずに上がっていく。
さらに言えば、慧音自身も能力は持っている。
しかし、それはそれ、である。
今の光景を説明できる能力の心当たりは、慧音には無い。
一瞬、物の形を変える能力か、とも思ったが、材料が木材しか無かった以上、それでは所々に付いている鉄の釘や明らかに木材ではないと分かる装飾等の説明がつかない。
「一体、どんな能力なんだ?」
「『幻想と現実を廻らせる程度の能力』と言います」
慧音の問い掛けの返答として返したライラの言葉の意味を理解しきれず、慧音は首を傾げる。
ライラはそれを見て、「やっぱり、これだけじゃ分かりませんよね」言いながら、近くにあった気の棒を拾って、地面にすっと線を引く。
「この線を、現実と幻想、そこにあるものと、無いものの境界として考えてください」
ライラはそう説明しながら、今度は丁度線を中央にして、対象になるように円を描いていく。
「後は簡単です。こうやって、現実の物と幻想の物、二つを同量になるように指定して、その二つの幻想、現実の概念をひっくり返すんです。さっきのもので言えば、現実にあった木材と、私が思い描いた幻想の、完成したものを入れ換えた、という感じですね。」
「あぁ、なんとなく理解はしたよ。………成る程、この前言っていた、吸血鬼である筈の君が太陽の光を浴びても平気な理由はそこにあるのか」
「はい。『太陽の光が平気になる』という特徴を現実に持ってくる代わりに、吸血鬼としての高い身体能力を幻想にやっています。」
「まぁ、それでも人間よりはちょっと高いくらいの身体能力はあるんですけどね~」等とへらりと笑って呟くライラはそのまま慧音の前に移動する。
そのまま、何だろうか、と疑問を浮かべる慧音の前に立ったライラは、再び慧音に頭を下げた。
「今日は本当にありがとうございました、慧音さん」
「来る時にも言ったが、別に大したことをしたつもりはないよ。だから、頭を上げてくれ。頭を下げられたままだと、なんというか、うん、何となく落ち着かない」
慧音の言葉にあはは、と笑い声を上げながらライラは頭を上げる。
そのまま、少しだけう~ん、と考え込んだ後、ぽん、と何かを思い付いたような表情で手を叩いた。
「それじゃあ、何でも、幾らでも依頼しちゃってください。お世話になったお礼ですから、安くしますよ?」
「………なんだ、無料じゃないのか?」
「あははは………流石にそれはちょっと………数回なら兎に角、一応商売だったりしますから」
思い付いたように意地の悪いような顔をして言った慧音に、ライラは困ったように笑ってそう返す。
反応を見るに、少しはライラもそれは考えていたのだろう。
慧音はそれを見てから、「冗談だ」と言って笑顔を浮かべてみせる。
ライラはそれにあはは、と笑い返すと、もう一度だけ「ありがとうございました、今日の所はもう帰ることにします」と言ってからひょいと踵を返して歩いていき、そのまま、慧音の視界から姿を消した。
能力説明
『幻想と現実を廻らせる程度の能力』
効果としては名前の通りですが、正直酷く分かりにくいので出来るだけ分かりやすく説明します。
簡単に言えば、等価交換っぽい能力です。
指定したものを消す代わりに、同じくらいの自分の思い描いたものを作り出す、みたいな。
ですが、某錬金のそれと違って、別に同じ属性でなくてはならない、という訳では無く、指定出来るなら別に触れる必要も無いので、相当反則仕様になっています。
ただし、思いっきり境界が関係しているので、『幻想と現実の境界』なんてものを無くされると能力は使い物にならなくなります。
つまり能力を使っても八雲さん家のわりと困ったちゃんにはまず勝てません。
………八雲紫マジチート。