結城家の隣人転生者、気づけばハーレムに…。   作:射蓄労働者

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9話 カラオケ

 

夏休みはあっという間に過ぎ、もう2学期が始まってしまった。

そして同時にAクラスにイケメン男子が転校してきたらしい。

 

 

 

クラスの主に女子たちがソワソワしていたが、俺は、

 

あぁ‥、レンか‥。また騒がしくなるなあ‥。

 

、とその先のことを少し憂いていた。

 

 

 

 

そう考えていてから数日が経つ。

 

 

今俺はカラオケボックスに来ている。

レンの歓迎会と称して集まったらしい。

 

リトと話していた籾岡らに近づいたらいつの間にか俺も参加することに勝手になっていた。

 

 

 

レンと軽く自己紹介をしたりしながらカラオケへと移動する。

 

予約した部屋に入ると、すでに籾岡や沢田、西蓮寺らが集まっていた。

 

「あっ、来た来たー。」

 

籾岡がこちらに気づいて、ひらひらと手を振った。

 

「いやー、改めて見ると教室とはまた雰囲気違うよね、レンくん。」

 

「確かに。こうして見ると余計“王子様感”あるしー。」

 

沢田がそんなことを言いながら、ちらりとレンを見る。

 

本人はというと、少し居心地が悪そうに視線を逸らした。

 

「……その言い方はやめてくれ‥。」

 

「えー、事実じゃん?」

 

軽口を叩きながらも、女子たちの視線が自然とレンに集まっていくのがわかる。

 

個室という環境のせいか、距離がやけに近い。

 

 

「じゃあレンくんはこっちでしょ?」

 

 

 

籾岡がそう言って、レンを奥のソファへ誘導する。

リトも流れでその隣に座った。

俺も近くの空いてるところに腰を下ろす。

 

 

「……あ、じゃあこっち空いてるね。」

 

沢田がそう言いながら、俺の隣に腰を下ろす。

 

「じゃ、あたしもここー。」

 

ほぼ同時に、籾岡が反対側から座ってきた。

 

 

「ちょっと、近くないか?」

 

「いいじゃん、どうせすぐ慣れるってー。」

 

 結果的に、俺は二人に挟まれる形になっていた。

 

 

いや、そういう問題じゃなくてだな‥

 

そう思いながら向かいの席を見ると、

春菜がこちらをちらっ、と見てすぐに視線を逸らした。

 

 

 

カラオケが始まり、ララが最初にマイクを握る。

 

「じゃあ一曲目、いっくよー!」

 

相変わらずのララに、場は一気に和む。

 

その隙に、籾岡が身を乗り出してきた。

 

「ねえねえ梶羅君はなに歌う?」

 

「まだ決めてないけど……。」

 

「じゃあ私が選んであげよう。」

 

電子目次本を覗き込む距離が、さらに近づく。

 

肩が、軽く触れた。

 

 

画面に表示された曲名を見て嫌な予感がした。今どきの曲だが、なかなか癖のある曲である。

沢田がマイクを差し出しながら、にやっと笑う。

 

 

「歌えるでしょ? ほら、もう前奏始まってるし。」

 

 

‥逃げ道はなかった。

 

「……はいはい。わかったよ。」

 

半ば諦めてマイクを受け取る。

 

その瞬間、指先が一瞬だけ触れたが、沢田は何事もなかったように手を引いた。

曲が流れ始める。

 

立ち上がるほどでもないので、そのまま座ったまま歌うことにした。

 

ソファが柔らかいせいか、体重を預けると自然と姿勢が崩れる。

体制を支えるための手が、籾岡の太ももにふれた。

 

「あ、ごめん。」

 

「やーん。だいたん。」

 

そう言いながらも、籾岡はリズムに合わせて身体を揺らしていて、まるで気にしていない様子だった。

その反対側では、沢田が歌詞を覗き込むように少し身を乗り出してくる。

 

近い。

近いが、触れない。

それが余計に意識させる。

 

サビに入ると、自然と声を張る。

マイクを握る手に力が入って、今さら立ち上がることもできない。

両隣の距離感をどうこうする余裕はなかった。

ソファが沈み込み、気づけば三人分の距離がさらに詰まっている。

肩越しに、籾岡がこちらを見ていた。

 

「意外とちゃんと歌うんだ。結構上手いし。」

 

「適当に誤魔化してるだけ。これでもいっぱいいっぱいだわ。」

 

「えー、かっこいいじゃん。」

 

軽い調子だが、やけに近い。

沢田は沢田で、次にマイクを取るタイミングを計っているのか、ずっとこちらを見ている。

 

視線が合うと、にこっと笑われた。

曲が終わる。

 

画面に「演奏終了」の文字が表示された瞬間、ようやく一息つけた。

 

「はい、おつかれー。」

 

未央がマイクを受け取る。

 

そのときも、やっぱり指先がかすかに触れた。

わざとじゃない。

……たぶん。

ふと、向かいを見る。

春菜が、こちらを見ていた。

歌い終わったタイミングだったせいか、視線が合ってしまいそうになり――

 

「……」

 

彼女は一瞬だけ目を伏せ、何事もなかったようにドリンクに口をつけた。

その仕草が、さっきより少しだけぎこちない。

そんな空気のまま、曲は続き――

そして今、レンが歌い始めている。

 

 

 

その後、なんだかんだ歌い今はレンが歌い始めている。

 

意外とノリのいい選曲に、籾岡が目を輝かせた。

 

「え、レンくん歌うまっ!」

「さすが王子様って感じー。」

 

その称賛にレンは得意げになる。

 

 

そして、その時だった。

 

バンッ。

 

飲み物を取りに行ってから戻ったララが勢いよくドアを開けるとそれがレンにあたり、バランスを崩したレンが前によろける。

 

そして間が悪く立ち上がったリトと――

 

こつん。

 

「…………」

「…………」

 一瞬の沈黙。

 

「――――おぇぇぇぇ!!?」

 

即座に距離を取るレンとリト。

 

「な、な、何だ今のは!!」

 

「事故! 事故だから!」

 

部屋が一気に騒然となる。

籾岡と沢田は腹を抱えて笑い、春菜は顔を真っ赤にして手で口を覆っていた。

 

 

あっ、ルンのフラグたったわ。

 

 

主人公は相変わらずである‥。

 

 

 

 

その後もレンはリトを睨み続けていたが、ララに話しかけられると、途端に調子が崩れる。

 

「歓迎会、楽しい?」

 

「騒がしいけど‥‥、」

 

一瞬だけ、こちらを見る。

俺の両隣には、まだ籾岡と沢田。

 

春菜はそれを見て、また少しだけ視線を逸らしている。

 

さらに視線をぐるって巡らせ、

 

「……悪くはないね。」

 

レンはそう言って、視線をララに戻した。

 

 

 

 

帰り際。

「梶羅くん、また遊ぼーね!」

 

「次はもっとちゃんとしたデートね!」

 

軽いノリだが、距離は確実に縮んでいる。

 

 

その少し後ろで、春菜が小さく息を吐いたのを、俺は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

心が痛むが俺はリトに好意を向けてほしい‥、そうあってもらいたいと思った。





春菜には報われてほしい(切実)
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