(自称)純白の天使降臨異変〜楽園の素敵な巫女達〜   作:ライムα

2 / 5
本当は先月出す予定で書いてました。


第二話 にとりを訪ねて

 にとりに会うため、妖怪の山へ向かっている霊夢と魔理沙。二人が空を飛んでいると小さな影が行く手を遮った。

 

「ちょっと待てー!ようやく見つけたぞ博麗の巫女に白黒の魔法使い!吸血鬼…は居ないか。」

 

「なんだ、メディスンじゃないの。私達暇じゃないから遊びたいなら妖精たちのとこにでも行きなさい。」

 

霊夢はそっけなく言うと魔理沙に合図をして再び進もうとした。するとメディスンは険しい表情で両手を広げ叫んだ。

 

「このまま大人しく行かせるわけないでしょ!さぁ、来なさい!私自慢のお人形!」

 

メディスンが叫ぶと同時に巨大なロボットが霊夢達の前に現れた。それは短く揃えた金髪をなびかせ頭には大きなリボンが装着されておりどこかメディスンに似ている。肩から白い蒸気を吹きながらそれはいきなり霊夢に殴りかかった。

 

「!?」

 

霊夢は間一髪で避けると御札弾をロボット目掛けて飛ばした。しかし御札弾は全て装甲に弾かれてしまいロボットはびくともしなかった。

 

「ふっふーん。そんな弾幕ごときでこのお人形が壊れると思ったら大間違いよ!さぁ、博麗の巫女らを叩きのめしてあげなさい!」

 

メディスンが叫ぶとそれに呼応するように胸パーツがスライドして開くと中から無数のミサイルが飛び出した。

 

「そんなの全部叩き落してやるのぜ!」

 

魔理沙はそう言いながらミサイル目掛けて魔力弾を放つ。ミサイルは一つ残らず爆散すると中から毒霧が噴き出した。

 

「うぉっマジか!」

 

魔理沙は毒霧を吸わないように口を抑えながら後退した。それを見ながらメディスンは高笑いして叫ぶ。

 

「あはっ!引っかかったわね白黒!今回もしっかり毒を入れてあるわよ。もちろん…ミサイル以外にもね!さぁさぁどんどん行くわよ!」

 

メディスンがそう言うと今度はロボットの腕が外れると霊夢目掛けて撃ち出された。霊夢は咄嗟に結界を張ると結界を少し傾けながら腕に当て、腕の軌道をずらした。なんとか軌道はそらせたもののかなりの威力だったのか結界には大きなヒビが入っていた。

 

「ん~少し本腰入れないとヤバいかしらね…。」

 

霊夢は結界を見つめながらそう呟くと起爆札を数枚取り出した。

 

「私達も暇じゃないし、一気にケリをつけさせてもらうわよ!」

 

霊夢はそう叫ぶとロボットに向けて起爆札を飛ばした。起爆札は腕や足や胴体、そして頭に張り付く。

 

「せいぜい派手に散りなさい。」

 

霊夢がそう言いながら指を鳴らすと起爆札は一斉に爆発した。

 

「おお〜凄えな。霊夢いつの間にこんなの作ってたんだよ。」

 

「ふふん。巫女は修行だけが強くなる方法じゃないのよ!こうやって道具もレベルアップさせれば倒せない敵なんて居な…。」

 

霊夢はそう言いかけると先ほどの爆発で発生した煙の中から白い蒸気が噴き出ると同時にミサイルが飛んできた。霊夢達は毒霧の散布を避ける為にミサイルを壊さないよう左右に避ける。ミサイルは明後日の方向に飛んで行き遠くの方でぶつかり合い爆散した。霊夢はそれを見ながら言う。

 

「あのロボット硬いわね。普通の攻撃じゃ弾かれて終わり…かといって爆発でも無傷か…。いよいよ私は打つ手なくなったわね。」

 

霊夢がそう言うと魔理沙はニヤりと笑い返す。

 

「ちょうど良かったのぜ。最近硬い敵に対しても貫通させられるようにマスパ改良したばっかだったから試し撃ちしてみたかったんだよな〜。」

 

そう言いながら肩をくるくる回すとミニ八卦炉を構えながら続ける。

 

「このマスパは普通のより用意の時間が必要だから霊夢ちょっとあいつの攻撃を少しの間防いでくれ。」

 

「分かったわ。」

 

霊夢はそう言うと自分達の前に結界を幾重にも張った。それを見た魔理沙は満足そうに微笑みミニ八卦炉に魔力を溜め始めた。

 

「ふん。何をしようとしてるか知らないけどこの子には敵わないわよ!さぁ、あんなちゃっちい結界なんか破っちゃいなさい!」

 

メディスンがそう叫ぶとロボットは腕を撃ち出した。腕は結界に当たるとメリメリと音を立てながら結界に拳を押し込む。

 

「いい調子よ~!そのまま結界を破って白黒共々満身創痍にしてあげなさい!」

 

メディスンは手を叩きながら楽しそうに言った。霊夢は顎の汗を拭いながら魔理沙の方を向いて叫ぶ。

 

「魔理沙、マスパはまだなの!?こっちはもう破られそうだから早く!」

 

霊夢が言うと魔理沙はニヤニヤ笑いながら返す。

 

「何だ霊夢もう限界か?最近修行サボってただろ〜。」

 

「うるさいわね!そもそも私の結界は対弾幕用であって、こんな強力な物理攻撃は想定して作ってなかったのよ!」

 

霊夢はそう言いながら結界により力を込めた。結界は更に輝くとヒビを修復し、ロボットの腕を弾き飛ばした。ロボットはその衝撃で後ろにのけ反り隙が生まれた。

 

「今よ魔理沙!新しくなったマスパとやらを見せてみなさい!」

 

霊夢が叫ぶと魔理沙は十分に魔力のこもったミニ八卦炉をロボットに向ける。

 

「おーけーおーけー。こっちもちょうど魔力を溜めきったところだから見せてやるぜ!狙いは、そうだな…。」

 

魔理沙はロボットを下から上へとさっと眺めて続ける。

 

「首だな!」

 

そう言いながら魔理沙はミニ八卦炉に溜めた魔力を一気に解放する。

 

「恋符『マスパレーザー!!』」

 

ミニ八卦炉からは圧縮されたマスパが撃ち出された。それはレーザーの如く伸びてゆきロボットの首を焼き切るとその衝撃でロボットは木端微塵に弾けた。それを見たメディスンは頭を抱えて叫ぶ。

 

「な、なんてこと!?私が改良に改良を重ねたお人形の装甲を破るなんて…!あ〜もう!覚えてなさ…!」

 

「行かせないわよ?」

 

逃げようとするメディスンの頭を霊夢はがっちり掴みながら言った。霊夢は霊力を高めながら続ける。

 

「全く…こんなロボット作る暇があるなら、新しいスペカの一つでも描いてればこんなことにはならなかったのに。それじゃ、覚悟はいいわね?」

 

霊夢がそう言いながら片手を挙げるとメディスンは顔が青ざめながら叫ぶ。

 

「く、こうなったら直接毒を…!」

 

そう言いながらメディスンは爪を霊夢に刺そうとした。しかし霊夢はサラッとかわすと周りに色とりどりの弾幕を浮かべながら言う。

 

「往生際が悪いわよ!霊符『夢想封印!!』」

 

霊夢の周りに浮かんでいた色とりどりの弾幕が一斉にメディスンに向かって撃ち出される。メディスンは集中砲火で声も出せずに吹き飛ばされた。魔理沙は霊夢に近寄りながら言う。

 

「相変わらず霊夢のスペカは派手で綺麗だな〜。ま、火力は私のマスパには敵わないがな…。」

 

魔理沙はそう言いながら笑った。しかしいつもだったらここで一言二言返すはずの霊夢が今はなぜか上の空。魔理沙は心配そうに続ける。

 

「大丈夫か霊夢…?」

 

そう言いながら肩に手を置くと霊夢はハッとして返す。

 

「え?あぁ、ごめんごめん。ちょっと考え事してたのよ。」

 

「考え事?」

 

魔理沙が不思議そうに聞き返すと霊夢は静かに頷き続けた。

 

「えぇ。というのも…ここ最近、袿姫が異変起こした辺りから安全な弾幕…つまり『弾幕ごっこ』としての戦いが幻想郷から失われつつある気がするのよね…。」

 

「…ほぅ?」

 

霊夢はそう言いながら『夢想封印』のスペルカードを取り出して続ける。

 

「弾幕ごっこ…もとい『命名決闘法』は元来種族や個々の力量差に関係なく、皆が“安全”に勝負をするための幻想郷の賢者達によって定められたルール。これは、幻想郷に居る限り絶対に守らなくてはならない。なのにこの前は、袿姫をはじめとして寄生霊に操られた多くの妖怪なんかが“殺意”のこもった弾幕を使ってきていた。“ごっこ”では済まされないくらい強い威力の…ね。にも関わらず私達や紫でさえもその違和感には気付けなかった。今までの当たり前が当たり前ではなくなっていたのに気付けなかったのよ。こんな事が自然に起こるはずがない…明らかにこれも異変よ。」

 

霊夢はそう言いながら険しい表情で目を細めた。あまりにも長く難しい話に魔理沙は目を白黒させながら尋ねる。

 

「つまり…どういうことなんだぜ?」

 

魔理沙が聞くと霊夢はスペカをしまいながら答える。

 

「誰かが意図的にこの世界からスペカ…つまり『命名決闘法』の存在を抹消しようとしているわ。おそらくスペカという記憶ごとね。」

 

霊夢の言葉に魔理沙は怪訝そうな表情をしながら言う。

 

「存在の抹消なぁ…。にわかには信じられない話だが、確かに霊夢の言う通り袿姫が異変起こしてきたタイミングで明らか殺意マシマシの攻撃をされる事が爆増した気はするのぜ。それこそメディスンのロボットとかな。魔法実験とかキノコとかで毒性のあるものをよく目にするから分かったんだが、さっきメディスンが扱っていた毒は人間の体内に入ったら確実に死んでいた。…これも、前に神綺が言ってた真の黒幕?とかって奴の仕業なんかな。」

 

魔理沙はそう言いながら顎に手を当てていた。霊夢は首をコキコキ鳴らしながら返す。

 

「そうなのかは分からないけれど袿姫に異変を起こすように焚き付けた奴と同一人物の可能性は十分あるわね。まあ、今ここで私達が考えていても仕方がないしとりあえず当初の目的地であるにとりのところに向かいましょうか。ほら、魔理沙行くわよ。」

 

霊夢は手招きしながら再び妖怪の山へ向かう。魔理沙もミニ八卦炉をふところにしまうと霊夢の後ろに張り付くように箒を飛ばした。

 

〜あれから10分ほど飛び続けるとようやく妖怪の山が見えてきた。

 

「ふぅ、やっと着いたわね。さてさてにとりのラボはどこらへんだったかしら…。」

 

霊夢はそう呟きながら下を向いた。魔理沙も一緒になってラボを探しているとこちらに向かって飛んでくる人影を見つけた。

 

「ん、あれ誰だ?文…じゃなさそうだな。おい霊夢、あれ誰かわかるか?」

 

魔理沙はそう言いながら霊夢の肩を叩いた。

 

「ん〜どれよ…。」

 

霊夢はそう言いながらこちらに向かって来る人影を見つめた。それはどんどん近づくにつれて次第に形がハッキリしてきた。黒いコウモリのような羽、たなびく黒い服、そして…紅く艷やかな長い髪。じっと見つめていた霊夢は正体に気がつくと途端に嫌な顔をして呟く。

 

「うげっ、あいつはまさか…。」

 

霊夢の呟きを聞いた魔理沙は不思議そうに尋ねる。

 

「何だ霊夢、知り合いか?私は見たことないけど…。」

 

「知り合いなんてもんじゃないわよ。あいつはこの前の…。」

 

そう言ってる間にも爆速で近づいてきたそれは霊夢達の前でピタッと止まった。その時の風圧で霊夢と魔理沙は若干後ろに押しやられる。飛んできた人は長い髪を耳に掛けながら言った。

 

「ん?お前は確かこの前結界通った後一番最初に出会った巫女じゃないか。こっちの金髪のお嬢さんは初めましてだな。」

 

そう言いながら霊夢と魔理沙を交互に見た。魔理沙は戸惑いの表情を浮かべながら尋ねる。

 

「あー…えっと…どちら様…ですか?」

 

魔理沙が恐る恐る尋ねると羽を伸ばしながら赤髪の少女は答える。

 

「そんなかしこまらないでくれ。私は、リム・ミリストロって言うんだ。見ての通り吸血鬼のおねーさんでレミリアやパチュリーの大親友!そこの博麗の巫女とはこの前友達になった。」

 

リムがにこやかにそう言うと霊夢は横から口を挟む。

 

「いつ私があんたとお友達になったのよ。あと私の名前は博麗の巫女じゃなくて博麗霊夢!ちゃんと覚えときなさい!」

 

霊夢は腰に手を当てて言った。魔理沙はそれを見ながらふっと笑いながら続く。

 

「私の名前は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ!」

 

魔理沙はそう言いながら箒の上に立ち決めポーズをした。リムは興味深そうに魔理沙を見ながら言う。

 

「へぇ…ここにはパチュリー以外にも魔法使いが居るのか。お手合わせ願いたいが、あいにく私も急ぎの用事があるからなぁ…。残念だがまた今度だ!」

 

リムはそう言ってまた爆速で飛び去った。残された魔理沙達は首を傾げていたが自分達もにとりに急ぎの用事があるので再びラボを目指した。

 

〜滝壺にあるやや大きめの建物。霊夢達は扉の近くに降り立つとそこに取り付けられたインターホンを押した。すると付属のマイクから雑音混じりのにとりの声が聞こえてくる。

 

「やぁ、盟友たちじゃないか!もしかして、スマホに何か不具合でも起きたのかい?」

 

にとりが快活な声で言うと霊夢は少し困ったように返す。

 

「ん〜…スマホというかなんというか…とりあえず詳しく説明したいから中に入れてくれる?」

 

「ああ、わかったよ。鍵は開けるから中に入ったらまっすぐ進んで突き当たりを右の部屋に入ってきてくれ。」

 

言い終わると同時に扉からガチャリと鍵の開く音がする。霊夢は重い扉を開けると二人は言われた通り突き当たりの部屋を目指して歩き始めた。ラボの中はヒンヤリとした空気が満ちており、ところどころから機械の動くような重低音が聞こえてくる。魔理沙はラボの中を興味津々の様子で眺めており、そのまま中の散策に行ってしまいそうだったので、霊夢は魔理沙の手をガッチリ掴んでいた。

 

「凄いラボだな…。私もこのくらいの規模の研究室を家に作りたいんだけどなぁ…。」

 

「その前にまずあんたの家のマジックアイテムを片さなきゃでしょ。足の踏み場もないくらい突散らかしてるんだから。」

 

そんな事を話しながら二人は長い廊下の突き当たりを右に曲がった。その奥には灯りのついた一つの部屋が見える。霊夢達はずんずん進みスライド式の扉を開けると中に居たにとりが振り返り言った。

 

「いらっしゃい。適当に座ってもらって構わないよ。」

 

中にはいくつかの椅子と作りかけの小さな機械が数個置いてある。その部屋の奥ではにとりが一台のスマホを片手に振り向いていた。

 

「お邪魔するわよ。」「お邪魔するのぜ〜。」

 

二人はそう言いながら中に足を踏み入れると、ちょうど扉の死角になっていたところから声が聞こえる。

 

「なんだ、お前らもにとりに用事だったのか。」

 

霊夢達は予想外の声にびっくりして少し後ずさった。そこには先ほど出会ったリムが座っていた。邪魔にならないようにするためか吸血鬼の羽はマントで隠している。少しの間沈黙が続いてから魔理沙が返す。

 

「びっくりした〜…。確か、リムだっけか?何で居るのぜ?」

 

魔理沙が不思議そうに尋ねるとリムはあくびまじりに答えた。

 

「レミリアが私の分のスマホを注文してくれたから受け取りに来たんだよ。外の世界じゃ当たり前の道具だったが、私は持ってなかったからな。」

 

そう言いながらリムはにとりの持っているスマホに視線を向けた。にとりはちょうど最終点検を終えて赤いスマホカバーをつけているとこだった。

 

「…これでよし!待たせたねリムさん、これが君のスマホだよ。」

 

にとりはそう言いながらリムにスマホを手渡した。スマホを受け取るとリムは、子供のように目を輝かせながら眺めた。

 

「おお、外の世界で使われてたやつと全くおんなじだ!ありがとなにとり!」

 

リムが満面の笑みで礼を言うとにとりは微笑みながら返す。

 

「ふふっ礼を言うのはまだ早いよ。これから最終機能テストとしてしっかり電話が繋がるかどうか試してもらうよ。私がやった時は大丈夫だったが万が一ということもあるしね。ということで、その中に紅魔館の方々の番号は登録してあるから試しにその中からかけてみてくれ。」

 

「おう、とりあえずレミリアにかけてみるか。」

 

リムはそう言いながらスマホの電話帳を開き、「レミリア·スカーレット」の文字をタップした。スマホから数コール聞こえた後にレミリアの声が聞こえてきた。

 

「あら、リムじゃない。私に電話してきたということは、無事にスマホを受け取れたみたいね。」

 

「ああ、今は実際に繋がるか試したとこだったが問題ないみたいだな。んじゃ、要件はこれだけだ。じゃーな。」

 

リムはそう言って電話を切った。その様子を見ていたにとりは満足そうに頷きながら言う。

 

「うんうん、特に問題もなさそうだね。そいつの使い方も簡単にだけど説明はしたし…これでリムさんの要件は一件落着だ!」

 

そう言いながらにとりは霊夢達の方を振り向き続ける。

 

「さてと、次は君たちの用件を聞こうか。何か問題があったみたいだが、詳しく教えてくれ。」

 

にとりがそう言うと、魔理沙はスマホの画面に動画サイトを映しながら不審なアカウントが動画サイトを荒らし回っていることを伝えた。

 

「…『純白の天使ラフレシア』…ねぇ。よし分かった。確認してみよう。」

 

さっきまでの笑顔とは打って変わり、真剣な表情で言うとパソコンに向き直るとものすごい速さでタイピングを始めた。にとりはしばらくの間唸ったり独り言を呟きながらカタカタキーボードを叩きマウスをカチカチ鳴らしていたがやがて小さくため息をつきながら振り返った。

 

「…ダメだ。そんなアカウントは見つからない。それどころか私のパソコンじゃそのコメントすら見れない…。存在が確認出来ないんだ。」

 

「え…そ、そんなはずないのぜ!ほら、ちゃんとアカウントもあるしコメントも書いてある!嘘じゃないぜ!」

 

魔理沙が慌てたように叫ぶとにとりは片手をサッとあげて返す。

 

「ああ、わかってる。別に君のことを疑いやしないさ。(…そんなフェイク画像を作る技術も無いだろうしね。ボソ)そもそもそんなコメントしていたら他の人の目にも止まって、今頃は多数の通報で自動的にアカウントが消されてるはず。その様子がないということは、おそらく何らかの方法で私にアカウントを感知されない様にしたんだろうね。…凄い技術だ。」

 

「感心してる場合じゃないのぜー!」

 

魔理沙はそう言いながらにとりの肩を掴み、前後に揺さぶった。その後ろで霊夢は顎に手を当てながらふと口を開く。

 

「ちょっとそのパソコン見せてもらってもいい?」

 

霊夢が尋ねるとにとりは不思議そうに言う。

 

「別に構わないけど、このパソコンからじゃ件のアカウントは見れないよ。」

 

「ええ、分かってるわ。ちょっと気になる事があってね…。ああ、魔理沙のスマホもちょっと借りるわよ。」

 

霊夢はそう言うと、魔理沙のスマホをパソコンの横に置き右手をパソコン、左手をスマホにかざして静かに目を閉じた。やがて目を開けると霊夢は神妙な面持ちで振り返り言った。

 

「このパソコンとアカウントから同じような力を感じたわ。おそらくはこのパソコンからあのアカウントに指令が行ってコメントを書いている…といったとこかしら。」

 

霊夢は魔理沙にスマホを返しながら説明した。にとりは眉をひそめながら言う。

 

「つまり…このパソコンに何かしらの術が掛けられていて、それが原因で純白の天使とやらが生まれたってことかい?」

 

にとりが尋ねると霊夢は静かに頷きながら返す。

 

「予測ではあるけれど、ほぼ間違いないわね。」

 

「そーすると、このパソコンに細工した奴を探し出して退治しなきゃいけないわけだ。」

 

魔理沙は霊夢の後ろからパソコンを指さして言った。霊夢も頷きながら付け加える。

 

「そうね。まずはこの異変の首謀者を見つけないと。ん〜でもどうやって探したものかしらね…。」

 

霊夢はそう言いながらパソコンをコンコン叩いた。するとそれまで退屈そうな顔をしながらもずっと話を聞いていたリムが口を開いた。

 

「それなら、私が探してみてやろう。」

 

リムはそう言うと霊夢は怪訝そうな表情で返す。

 

「一体どうやってよ…?」

 

「まあ見てな。」

 

リムは霊夢に近づくと肩に手を置いて言った。そしてパソコンに右手をかざすと小さく独り言のようなものを呟いた。するとパソコンから小さな光球が浮き出た。

 

「これ魔導書に書いてあった逆探知魔法じゃないか!結構むずいやつなのにいとも容易く…凄いのぜ。」

 

魔理沙が呟くとリムは笑いながら言う。

 

「よく知ってるな、流石は魔法使いだ。」

 

リムがそう言うと魔理沙は照れ笑いをしながら嬉しそうに返す。

 

「へへ、まあな。前にパチュリーが使ってたの見て覚えてたのぜ。」

 

「そうかそうか…っと、そろそろ結果が分かるぞ。」

 

リムがそう言った瞬間光球は眩く光るとそこから一筋の光が伸びた。

 

「これがどんどん伸びていって首謀者の元へ…あれ?」

 

光球から出た光はなぜか下に降りていった。

 

「ん〜これは、このパソコン…いや、地底を指しているということなのか…?」

 

にとりが呟くように言うと霊夢も頷いた。

 

「下に伸びてるし首謀者は地底からこのパソコンに力を送ってるんでしょうね。多分。」

 

霊夢が言うと魔理沙は苦笑いしながら返す。

 

「おいおい適当だな…。ま、とりあえず次の行き先は決まったな。」

 

「そうみたいだな。だがその前に…。」

 

リムはそう言いながら振り向いたと思うといきなり霊夢の方に殴りかかった。

 

「え、ちょ、何!?」

 

霊夢はそう叫び目をギュッと瞑った。するとリムの拳は霊夢の横をすり抜け背後の扉に当たった。拳は大きな音と共に扉を貫いた。リムは拳を引き抜くと低い声で言う。

 

「そこに居るのは分かってるぞ。気配は上手く消せているようだが、それだけじゃ私は誤魔化せねーからな。ほら、姿見せてみろ。」

 

リムはそう言いながら指をポキポキ鳴らす。リム以外は突然の出来事に呆気に取られながら扉を見つめていた。壊れた扉の穴から紫の閉じた瞳が見えると楽しそうな声が聞こえる。

 

「凄い凄い!よく私に気づいてくれたね〜。お姉ちゃんだって無意識の私は気付けないのに。」

 

そう言いながら扉の向こうに居た人物はばっと開けた。そこに立っていたのは黄色っぽい色の服に緑のスカートを合わせた少女だった。髪の色はスカートと同じ緑色で短く揃えており、その上から帽子を被っている。少女はニコニコ笑顔で続ける。

 

「は〜い、こいしちゃんだよ〜。霊夢に魔理沙、久しぶりだね〜!」

 

こいしと名乗る少女を見たリムはきょとんとして霊夢に尋ねる。

 

「おい、あの子お前らの知り合いなのか?何であんな気配殺せるんだ…?」

 

リムがそう言うと霊夢は少し困った様な表情で返す。

 

「ん〜気配を殺してるというか無意識の力で気付かれないだけというか…。まあ、隠密行動が得意なのよ。」

 

リムはあまり納得はしていないようだがとりあえず頷いた。

 

「ふ〜ん…。まあ、知り合いならいいさ。私はてっきり不審者か何かだと勘違いしちまったよ。悪かったな。」

 

リムはそう言いながら戦いの構えを解いた。こいしはトコトコ部屋に入ると椅子に座りながら返す。

 

「全然大丈夫だよ〜。それより紅い髪のお姉さん凄い腕力だね。力だけだったら勇儀ねえと張り合えるくらいには強いよ!」

 

こいしはそう言いながらリムの身体を下から上まで見ると興味深そうに尋ねる。

 

「お姉さん…もしかして吸血鬼?レミ姉ちゃんとかフランちゃんとかと同じで。」

 

こいしが尋ねるとリムは少し驚いたように返す。

 

「…!マントで羽隠してるのによく分かったなぁ。それにレミリア達の知り合いだったのか。」

 

「うんそうだよ〜。フランちゃんとはなんやかんやあってお友達になったの!私と張り合えるくらい強いから遊び甲斐があるのよね〜。」

 

こいしは笑いながらそう言うとリムは目を輝かせて言った。

 

「なに!?お前フランと渡り合えるのか!なぁ、今度紅魔館に来た時でいいから私とも戦ってみないか?退屈はしないぞ!」

 

リムが言うとこいしも目を輝かせた。

 

「お姉さんも遊んでくれるの!?やった〜じゃあ今から行こうよ!」

 

「そうするか!私の背中に乗りな!紅魔館までぶっ飛ばすぜーー!」

 

二人はハイタッチするとドタドタラボを飛び出して行った。残された三人は啞然としていたが、魔理沙が沈黙を破った。

 

「色々あったが…私達も地底に行くか?」

 

「そうねぇ…ん?ちょっと待って!光が人里の方にも伸びてる…!」

 

霊夢はそう言いながら光球を指さした。見ると確かに光は地底の方向の他に人里の方向にも伸びている。魔理沙は頭を掻きながら言う。

 

「ほんとだ…。てことは、人里と地底に少なくとも一人ずつこのパソコンに力を送っている元凶が居るってことか。」

 

魔理沙の言葉ににとりも頷きながら加える。

 

「そういう事…だろうね。地底はともかく人間達が暮らす唯一の集落である人里なんて襲われたら、最悪幻想郷のバランスが崩れかねない…。」

 

「考えたくないわよね〜、そんな事。」

 

突然にとりの話を被せるように背後から声がした。三人は驚き振り返るとそこに立って居たのは、長いさらさらの金髪をなびかせ、紫のワンピースを身にまとった美しい女性だった。霊夢は女性を見るなり嫌そうな表情をして尋ねる。

 

「何しに来たのよ…紫。」

 

Next Phantasm

 

 

  毎度おなじみのおまけ

   〜紅魔の素敵な住民たち〜

   リムVSこいしの巻

 

 にとりのラボをあとにしたリムとこいしは紅魔館の門前に到着していた。門の前では美鈴が小さく寝息を立てていたがリムが近づくとパチっと目覚めた。

 

「あぁ、おかえりなさいリム様。こいしさんもいらっしゃいませ。妹様はお部屋にいらっしゃいますよ。」

 

美鈴はそう言いながら門を開けた。こいしはニコニコ笑いながら返す。

 

「ありがと美鈴さん!でも実は今日ここに来るのはフランちゃんと遊ぶためじゃないんだ〜。」

 

こいしがそう言うと美鈴は不思議そうに尋ねる。

 

「ほう…それでは本日はどのような御用向きで…?妹様じゃないとすると、お嬢様ですかね。」

 

「あ~違う違う。こいつは私に用事だ。」

 

リムが笑いながらこいしの頭をぽんぽんと叩くと美鈴は少し驚きながら言う。

 

「そうだったんですか…!まだこちら(幻想郷)にいらしてから一月も経っていないのにもうこいしさんと仲良くなるとは、びっくりですよ。にしてもよく見つけられましたね…。」

 

美鈴がそう言うとこいしも頷きながら言う。

 

「やっぱり美鈴さんもそう思うよねぇ。私もまさか気づかれると思ってなかったからびっくりしちゃったよ〜!美鈴さん以外にもこんな事できる人居るもんなんだねぇ。凄い人なんだねぇ…。」

 

こいしはそう言いながらリムを舐め回すように見た。するとリムは少し照れくさそうに返す。

 

「ははっそんなに褒めんなって。たまたま物音やらで気付けただけで姿が見えたわけでも気配を感じれたわけでもないし…。っとそんなことより…美鈴、紅魔館の奴らを今から全員外には出さないでくれな。今からちょっとばかし暴れるからさ。」

 

リムがそう言いつつ剣を造り出す。こいしもそれに合わせてナタを取り出した。二人を交互に見て美鈴は戸惑いながら言う。

 

「ちょちょ、どういうことですか!?お二方とも何でいきなり戦闘態勢…!」

 

リムは剣の峰を肩に乗せながら返す。

 

「ん?あぁこいつがフランと互角の力を持ってるって言ってたんで戦ってみたくなったんだよ。」

 

「ちっちっち。お姉さんそれはちょっと違うな〜。」

 

リムが話す横でこいしが人さし指を立てて左右に振った。

 

「ん?何か違ったか?」

 

リムが尋ねるとこいしは不敵に笑い答える。

 

「私はフランちゃんと互角の力を持ってるんじゃないんだよ。」

 

こいしは自分の前にナタを構えて続ける。

 

「フランちゃんを“凌駕”する力を持ってるんだよ。」

 

リムは一瞬ぽかんとしながらもすぐに剣を握る手に力を込めて返す。

 

「…そうか!」

 

リムが声を発すると同時に二人の刃物が火花を散らした。ガキンという鋭い音を響かせながら二人は鍔迫り合いを繰り広げる。

 

「わわ、ほんとに始めちゃいましたか。仕方ないですね…メイドさんたちには外出ないでもらうとして、御二方!絶対紅魔館壊さないでくださいよ!」

 

美鈴はそう叫ぶと慌てて紅魔館内に入っていった。二人はそんな事お構いなしに睨み合っている。

 

「わぁ〜やっぱりお姉さん力強い〜!流石吸血鬼だね。」

 

こいしはリムの剣を押し返そうとナタを持つ右手に力を込めながら言った。

 

「まあな。力だけだったらフランよりも強い。それと…私の名前は、リム・ミリストロだ。」

 

リムがそう言うとこいしもニコリと笑いながら返す。

 

「そうなんだね〜。私の名前は古明地こいし、これからよろしくね〜リム姉さん。生きてられたらだけど!」

 

こいしはそう言いながらリムの剣を弾き返した。リムは衝撃でよろめいたがすぐに立て直すと、地面に片手を着いた。するとこいしの足元が怪しく光だしそこからいくつもの剣が飛び出した。こいしは咄嗟に飛び退き間一髪で剣を避けた。

 

「おお〜これ避けるか。それならこれはどうだ?」

 

リムはそう言うと自分の周りにいくつもの魔法陣を生み出し、そこから剣をこいしに向けて射出した。

 

「おっとっと…リム姉さん攻撃の種類多彩だね〜。」

 

こいしはふらふらと剣を避けながら続けて言う。

 

「う〜ん、地上だとさっきの地面から剣をずばーって出るやつやられちゃうし…うん、決めた!空中戦と行こうか!」

 

こいしはそう言いながら空高く舞い上がった。リムはバッと顔を上げるとにやりと笑いながら言う。

 

「ふふっ。空中は吸血鬼の独壇場だと言うことを思い知らせてやるよ!」

 

そう言いながら足に力を込めながら羽を開き、次の瞬間こいしを追いかけるように飛び上がった。リムは片手に剣を握りしめながら叫ぶ。

 

「行くぜこいしーー!…あれ?」

 

しかし、先ほど飛んで行ったはずのこいしの姿はどこにも見当たらない。リムは首を傾げながら辺りを見回した。

 

「おっかしいな…?私に怖気づいて逃げたか…?」

 

リムが呟くと後ろから耳元で囁くような声が聞こえる。

 

「私、メリーさん。今、貴女の後ろに居るの。…なんてね!」

 

その瞬間リムの背中に突き刺されたナタが胸から飛び出た。

 

「おお!?」

 

リムは一瞬顔を歪め、よろめいたがすぐに持ち直し持っていた剣を後ろに向かって刺した。しかし全く手応えはない。

 

「あははは!どこに向かって攻撃してるのかなぁ?そんなところには居ないよ〜♪」

 

こいしは楽しそうな声を響かせながらリムの前に姿を現した。リムに顔を近づけ、眉をひそめて続ける。

 

「それにしても…リム姉さんフランちゃんと比べて動きが鈍いんだね〜。フランちゃんだったら今の攻撃くらい余裕で避けちゃうのに…これじゃすぐに勝負ついちゃうかな?」

 

「そんなつまんないことにはしないさ!」

 

リムはそう言いながらこいしに向けて剣を一振りした。しかしこいしはふらりと避け、またリムの背後に回り込んで言う。

 

「だ〜か〜ら〜。どこに向かって攻撃してるの?全く…もっと相手の二手も三手も先を読んで行動しないとね。あ、そうそう。このナタ返してもらうね。」

 

こいしはそう言うと両手でナタの柄を掴み、両足をリムの背中につけて思い切り踏ん張った。その瞬間リムは胸から飛び出たナタの刃を左手で掴んで言う。

 

「その言葉、そっくりそのまま返すぜ!」

 

そう言うと同時にリムはナタの刃を前に引き出した。こいしはナタに引っ張られ、柄をぎゅっと握りしめたままバランスを崩し、リムに寄りかかった。

 

「歯、食いしばれよ!」

 

リムはそう叫びながら剣を逆手に持ち替え、自身の腹に思い切り刺した。剣はリムの腹を貫通し、後ろに居たこいしの脇腹も斬り裂いた。こいしは慌ててナタを引き抜き、脇腹を抑えながら離れて言う。

 

「貴女…本当に攻撃の種類が多彩だね。今のは私もびっくりしちゃったよ…。」

 

こいしは帽子を深く被り直して続ける。

 

「私は貴女の事をどこか私やフランちゃんよりも下に見ていたのかもしれないね。ごめんごめん。」

 

こいしはそう言いながらナタを投げ捨て、代わりに包丁を取り出した。

 

「ナタのほうがリーチ長いから最近変えてみたわ良いけど、やっぱり使い慣れた子の方が良いね!」

 

こいしはそう言いながら包丁の背中を優しく撫でた。リムもつられて剣に目をやりながら言葉を返す。

 

「そりゃあ使い慣れた武器の方が良いに決まってる。そっちの方が武器の癖なんかがわかってるし、何より武器と使い手の相性もあるしな。」

 

リムが言うとこいしは指を指して頷く。

 

「そう!そうなんだよねぇ〜。ナタも弱いってわけじゃないんだけどやっぱりこっちの方が私のスタイル的にも合ってたんだよね〜。それじゃ無駄話はこのくらいにして…次は殺す気で行くね。」

 

こいしはそう言うと大量の弾幕を撃ち出した。弾幕は四方八方に広がりリムに襲いかかる。

 

「おっと、お前も霊夢みたいに弾幕?とやらを使うんだな。」

 

「幻想郷の住民なら皆使ってくるよ~。貴女は外から来たばっかだから知らないだろうけど。ほらほら、よそ見してたらほんとに死んじゃうよ!」

 

こいしはそう言いながらリムの背後から再び包丁で刺そうとした。しかしリムは振り返り、剣で包丁を弾いた。

 

「そうそう何度も同じ手を喰らうかっての。あと何でお前が私は外から来たって知ってるんだ?」

 

リムが飛んでくる弾幕を斬り伏せながら尋ねるとこいしは包丁を指先で撫でるように触りながら答える。

 

「ん〜とね〜この前貴女が入ってくるとこ見てたから。それより傷治るの早すぎない?一応貫通してたはずなんだけど。」

 

「ああ、吸血鬼は再生能力がバカ高いからな。これくらいなら怪我のうちに入らん。」

 

リムはそう言いながら剣をもう一本造り出し、左手に構えて話を続ける。

 

「ん〜剣をお前らで言う『弾幕』みたいに射出するのも良いけど、やっぱ私が持って直接斬りに行くのが一番相手を仕留めやすいな。つーわけで。」

 

リムは両手に持った剣をクロスさせ、カンカン音を鳴らす。

 

「ここからは私もガチスタイルで行かせてもらうぞ!」

 

リムはそう叫ぶと自分の足元に魔法陣の足場を描くと、思い切り踏み込みこいしに向かって突撃した。こいしは包丁でリムの攻撃を受け流し、満面の笑みで言う。

 

「そう来ないと!私もテンション上がって来ちゃった!」

 

そう叫び自分もリムのふところを狙って包丁を突き刺す。二人は激しくも楽しそうに戦い続けた。

 

「リム姉こいしちゃんにもあの攻撃使ってるよ…。いくら再生能力が高いからって流石に自分ごと剣を刺すのは私でも出来ないわ。」

 

そう言いながらフランは咲夜が淹れたお茶を一口飲んだ。隣ではレミリアと咲夜が苦笑いをしている。先程美鈴がリムとこいしが外で戦っているから紅魔館の外に出ないようにと警告しながら走り回っていたのを聞き、テラスまで観戦しに来たのだ。レミリアもお茶を一口飲んで言う。

 

「リムは昔からそうだけど、勝つ為だったら結構手段選ばない所があるからね。」

 

「へぇ〜例えばどんな?」

 

フランが尋ねるとレミリアはティーカップをカチャリと音を立てて置くと戦いを眺めながら話し始める。

 

「ここに来る前の話だけど、ヴァンパイアハンターの基地を壊滅する為に私とリムの二人で乗り込んだ事があるんだけどね。当然あいつらも反撃するわけよ。機関銃とかぶっ放されたから私は当たらないように物陰に隠れたんだけどね。」

 

レミリアは椅子に深く座り直して遠い目をしながら続ける。

 

「リムは『すぐ治る!』って言ったかと思えば全身に銃弾浴びながら剣持って突撃したのよね…。」

 

「それは…最高にイカれてるわね。」

 

フランはそう言いながら戦いに視線を戻した。二人は息切れをしておりその様子は戦いのクライマックスを物語っていた。こいしは膝に手を付きながら言う。

 

「ふぅ、ふぅ。リム姉さん凄いね。ここまで私と遊んでくれたのはフランちゃんと貴女くらいだよ〜。でも私も疲れちゃったから次でもうおしまい!」

 

こいしがそう言うとリムも呼吸を整えながら返す。

 

「ああ…そうだな。私も結構疲れたよ。流石フランと渡り合える力持ってるだけあるな。」

 

リムはそう言うと魔力を貯めながら続ける。

 

「この一撃で終わらせるとするか。お前も隠し玉があるなら早いとこ出したほうがいいぞ?もう無いなら早いとこ負けを認めな。じゃないと三途の川を渡ることになるぞ。」

 

「ん〜とりあえずその攻撃見てからかな。そうじゃなきゃ準備中に貴女死んじゃうからね。それに…避ける必要は無いよ。」

 

こいしが笑顔で言い放つとリムはフッと笑って返す。

 

「最後まで口の減らないやつだな。だが、自分の実力に自信があるやつは嫌いじゃない!」

 

リムはそう叫ぶと同時に巨大な魔法陣を描いた。リムは魔法陣の中に手を突っ込むと中から紅魔館の半分ほどの大きさの剣が飛び出した。こいしはもちろんフラン達も引き攣った笑いを浮かべた。

 

「待って待って待って、あんなのこいしちゃんに当たったら絶対ヤバイよね。」

 

フランがそう言うとレミリアも立ち上がりながら返す。

 

「それどころかここら一帯吹き飛ぶわよ!流石に止めないと…!」

 

ギャラリーの心配を他所にリムは腕をプルプルさせながら言う。

 

「これが最後だ。隠し玉があるなら出せ。無いなら降参しろ。」

 

リムが言うとこいしは少し退屈そうに返す。

 

「だから〜その攻撃見てからだってば。どうせ当てられないだろうけどね。」

 

「…後悔するなよ。」

 

リムはそう言うと大剣を振り上げ、更に魔力を溜めている。レミリアとフランが咄嗟に飛び出そうとすると美鈴が二人の前に腕を差し出して行く手を阻んで言う。

 

「行く必要はありませんよ、お嬢様方。心配してるような惨事にはなりません。大丈夫ですよ〜。」

 

美鈴が言うとレミリアは怪訝そうに尋ねる。

 

「大丈夫って…あんなに大きいの振り下ろそうとしてるのよ?」

 

レミリアが聞くと美鈴はにこやかに笑って答える。

 

「いえ、リム様は“振り下ろしません”。絶対にね。」

 

「どーしてわかるの?美鈴。」

 

フランが不思議そうに尋ねると美鈴は微笑みながら返す。

 

「ふふっわかりますよ。あの方は戦闘狂な一面こそありますが、紅魔館…そして我々家族を大切に思っています。だからこそ、私達を傷付けるような攻撃は絶対にしません。」

 

「ふ~ん。まあ、美鈴がそこまで言うならこのまま見届けようかしらね。」

 

レミリアはそう言いながら椅子に座り直した。フランも少し心配そうにしながらも椅子に座る。一方でリムは魔力が溜まりきったのか妖しく光る大剣を掲げながら叫ぶ。

 

「行くぞこいし!せいぜい受け止めろよ!」

 

リムがそう言うとこいしは不敵に笑って言う。

 

「うんうん早く来な〜。出来るもんならね。」

 

こいしはそう言いながら包丁をしまった。リムは小さく舌打ちをするとこいしに向かって大剣を振り下ろす。しかしこいしは避けようとも防ごうともしなかった。全員が固唾を飲んで見守る中、こいしの目と鼻の先まで刃先が下ろされたところでリムは大剣を止めた。

 

「ほら、やっぱり勝利より家族を優先しましたね。」

 

美鈴が嬉しそうに言うとレミリアも頷き言う。

 

「正直美鈴の言う事は半信半疑だったけれど、信じてみて良かったわね。流石、誰よりもリムと付き合いが長いだけあるわ。」

 

「いえ、大したことはありませんよ。」

 

二人はそう言いながらリムとこいしの方に向き直った。リムは小さくため息をつくと大剣を魔法陣にしまいながら言う。

 

「はぁ…私の負けだ負け。流石にこの攻撃をここで放つことは出来ないさ。」

 

リムがそう言うとこいしは近寄りながら返す。

 

「やっぱりそうなんだね〜。私もあの攻撃放たれたらちょっとやばいなーって思ったんだけどね。そんな攻撃をフランちゃん達が巻き込まれる距離でやるかなーって思ったから一か八かやらない方に賭けたんだ。リム姉さんが家族想いの人で私も助かったよ。」

 

こいしは言いながらリムの顔を覗き込む。リムは少し恥ずかしそうに頬を赤らめて返す。

 

「うるせーよ。ここ吹き飛ばしたらホームレスになっちまうだろうが。」

 

「ふふっそれもそうだね〜。そういう事にしとこうか。」

 

こいしはそう言いながらニカッと笑ってみせるとリムもつられて笑った。

 

「それにしてもリム姉さん本当に強いね〜。フランちゃんより強いんじゃないかな?」

 

こいしがそう言うとリムは肩をすくめて答える。

 

「さあ?最近フランとやり合ってないからなぁ。」

 

「ふ~んそっか。まあ二人で遊んだらいよいよ紅魔館壊れちゃうかもね。」

 

「はは…んな事になったらレミリアにぶっ殺されちまうよ。気をつけなきゃな。」

 

リムは苦笑いしながら返すと伸びをした。体中の骨をパキパキ鳴らすと一呼吸して、言う。

 

「あ~疲れた。咲夜ちゃん!聴こえてるならお茶淹れてくれるか?」

 

リムが言うとすぐに咲夜が姿を現して答える。

 

「はいかしこまりました。こいし様もお淹れしますか?」

 

「じゃーお願いしまーす!」

 

「了解しました。では失礼します。」

 

咲夜は頭を下げ、姿を消した。こいしも伸びをしながら言う。

 

「んーふぅ。それじゃ、私はフランちゃんのとこ行こうかな~。先行ってるね〜。」

 

こいしはそう言うとフラン達の居るテラスに向かった。リムもその後を追うようにテラスへと飛んで行った。その後リムは穴空けるわ血まみれにするわやらかした一張羅を前に一人涙を流した事を知るものは居ない。

 

  終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。