(自称)純白の天使降臨異変〜楽園の素敵な巫女達〜   作:ライムα

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今回は早めに投稿〜。(当社比)


第三話 現れたのは

 「そんな嫌そうな顔しなくても良いじゃな〜い。私傷ついちゃうわぁ。…で、私が何をしに来たのかが気になっているのよね。」

 

紫が扇子をパタパタ仰ぎながら言うと霊夢が腰に手を当てて返す。

 

「そうよ。いつもよっぽどの事がない限り姿すら見せないあんたが、一体どう言う風の吹き回し?」

 

霊夢が怪訝そうな表情で言うと紫は扇子をパチっと畳んで返す。

 

「あら、もう答えは出ているじゃない。そのよっぽどの事が起こっているからわざわざ出てきたのよ。…ま、もっと具体的に言うならこれについての調査に出てきたってところかしら。」

 

そう言いながら紫はふところから一枚のカードを取り出した。霊夢はそれをじっと見ながら言う。

 

「これは、スペカ…?にしては字がかすれて読めないわね。」

 

「正確には、スペカだったものね。現に…。」

 

紫はそう言いながらカードを掲げて叫ぶ。

 

「境符『四重結界』!!」

 

しかしそれは一向に発動する気配はなかった。

 

「…ほら、すっかりスペカとしての力を失ってしまっているの。文字と一緒にね。」

 

紫がそう言うと霊夢も持っていたカードを取り出した。それらも全て字がかすれてしまっている。

 

「嘘でしょ…。『夢想封印』も『封魔陣』も全部駄目になってるわ。さっきまでは普通だったのに…。魔理沙とにとりのはどう?」

 

霊夢がそう言いながら魔理沙達の方を振り返った。しかし二人ともきょとんとして顔を見合わせて言う。

 

「スペカって…なんだぜ?」

 

「…はぁ?あんた何言ってんの。さっきもスペカの話したじゃない。」

 

魔理沙が首を傾げながら聞くと霊夢は啞然として言った。紫は目を細めて言う。

 

「やっぱり、か…。にとりはスペカについて記憶はある?」

 

「いや…私も無い…ねぇ。悪いけど何も思い出せないよ。」

 

にとりも困惑したような表情で言った。霊夢は声を震わせながら紫に尋ねる。

 

「やっぱりってどういう事よ…!」

 

「ここに来る前、藍も同じような反応を見せたのよ。これは私の推測の域を出ないけれど、神綺の言っていた元凶かは分からないけど誰かが意図的にスペルカード…すなわち『命名決闘法』の存在自体を消そうとしている可能性があるわ。」

 

「あんたも…そう思うのね。はぁ…紫と同じ結論に辿り着いたのも気に食わないけど、実は私も薄々そう思っていたのよ。」

 

霊夢がそう言うと紫はカードをしまいながら返す。

 

「その可能性くらいしか考えられないわよね。まあこっちよりも先に、まずは貴女の追ってる異変解決が先かしら。」

 

紫がそう言うと魔理沙も頷き言う。

 

「あぁ、紫の言う通りなのぜ。スペカ…だかの方の異変は神綺が前に言っていた元凶だとしたら、元凶を探し回っている袿姫達が何とかしてくれるだろ。それより今は人里と地底に出た黒幕を退治するほうが先だ。」

 

霊夢は頭が痛そうに額に手を当てて返す。

 

「…次から次へと、異変が起きてもう訳わかんないわね…まあ、まずは人里の方に居るという黒幕を退治しに行きましょうか。もっとも、今回も前に神綺の言っていた元凶の刺客だったら根本的な解決にはならないだろうけど。」

 

「ふふっ決まりみたいね。それじゃあ、邪魔しちゃったお詫びに人里まで送ってあげるわ。」

 

紫はそう言うとスッと手で宙を裂くような動きをした。すると空間が二つに割れ、ラボと人里を繋ぐスキマが現れた。紫はスキマの中に入り手招きをして言う。

 

「さあいらっしゃい。ここを真っすぐ進めば人里よ。」

 

「相変わらず便利な能力だねぇ。じゃ、私はこの純白の天使?とやらのアカウントをなんとかハックできないか試してみるよ。黒幕の方は任せたよ、盟友達!」

 

にとりはそう言って親指を立てた。魔理沙はそれに応えるように自分も親指を立てながら返す。

 

「おう、任せとけ!それじゃ、霊夢行こうぜ。」

 

「はいはい、出来れば今日中にこっちの方は解決しちゃいたいわね~。」

 

霊夢達はそう言いながら紫のスキマに入っていった。三人を飲み込むとスキマは閉じ、にとりのラボは何事も無かったかのように静まり返った。

 

 ーーーーー 

 

 一方その頃、アリスの家には神綺がソファに寝転んでいた。

 

「もうママ、ちょっと掃除するからそこどいて!」

 

アリスはそう言いながら神綺の頭をハタキで叩いた。神綺は縮こまりながら返す。

 

「あ~んやめてちょうだいアリスちゃ〜ん。ママは今元凶の調査で疲れてるとこなのよ〜もっと優しく〜。」

 

「全く…それに魔界には帰らなくて大丈夫なの?寄生異変以来ずっと帰ってないみたいだけど。」

 

アリスがハタキを肩に担ぎながら聞くと神綺はサッと起き上がって答える。

 

「大丈夫よ〜。ここ来る前にこうなる事を見越して、事前に夢子ちゃんに留守はよろしくって言ってきたから。」

 

「…言ってきた『だけ』?」

 

アリスが怪訝そうな表情で聞くと神綺は何も言わずにニコリと微笑んだ。

 

「はぁ〜夢子姉の四苦八苦してる姿が目に浮かぶわ。ママがやらないと務まらない事務もあるでしょうに…。」

 

アリスがそう言いながら頭を抱えると神綺は相変わらずニコニコしながら返す。

 

「大丈夫よ、夢子ちゃんは優秀だもの。魔界が攻め込まれでもしない限りはどんな仕事でもこなしてくれるわ。それに私は、奪われた残りの宝玉を探し出さないといけないからね。」

 

「え?盗まれた宝玉って一つじゃないの?」

 

アリスが驚いて尋ねると神綺は静かに頷いて答える。

 

「ええそうよ。奪われたのは全部で四つ。そのうちの一つの緑の宝玉は、もう破壊したから残りは三つね。」

 

「残りの宝玉は…どんなやつなの?」

 

恐る恐るアリスが尋ねると神綺の顔からは笑顔が消え去り、真面目な声で答える。

 

「…どれもこれも厄介な代物よ。まず一つ目は赤の宝玉。これの効果はシンプルね、使用者に魔力を供給し続けるというものよ。まあ、際限のない燃料タンクってところね。そして二つ目に白の宝玉。この宝玉には神気の力が宿っているわ。この宝玉は、持っているだけで誰でも神の力を纏える…つまり神になれるのよ。貴女はもちろん妖怪も人間も、ね。そして最後に黒の宝玉。正直これが一番危険な宝玉よ。これは、ありとあらゆるモノを『塗り替える』事が出来るの。」

 

「塗り替えるって…?」

 

震える声でアリスが尋ねると神綺が低い声で続ける。

 

「少し説明が難しいけれど、要は人、妖怪、妖精、神…そしてこの世界も全て例外無く他のモノに変えてしまうのよ。例えばそうねぇ…貴女の事を夢子ちゃんに変えることも出来るし犬に変える事も出来るのよ。文字通り、森羅万象全ての事物を上書き出来るって感じね。」

 

アリスは小さくため息をつきながら額に掌を当てて言う。

 

「はぁ〜なんだかもうスケールが違いすぎて全くついていけないけれど…とにかくヤバいという事はわかったわ。」

 

アリスがそう言うと神綺はやっと表情を和らげて返す。

 

「ま、アリスちゃん達は何も心配しなくて大丈夫よ〜。この事は私と袿姫に任せてなさいな。」

 

「…そう?それなら良いけれど。それじゃ、掃除するからどいてね。」

 

「はいはい、今どきますよ〜。」

 

神綺はそう言いながら立ち上がるとふらふらとベッドの方へと向かって行った。

 

 ーーーーー

 

 同じ刻、霊夢、魔理沙、紫の三人は人里に降り立っていた。人里は今日も多くの人で賑わいを見せていた。霊夢はお祓い棒で肩を叩きながら言う。

 

「ふぅ、この中から黒幕を探すのは骨が折れるわね。」

 

「ま、仕方ないさ。とりあえず霊夢は西の方私は東の方からそれっぽい奴が居ないか探してこうぜ。」

 

魔理沙がそう言うと霊夢も頷いて返す。

 

「めんどくさいけどそうするしかないわね。それじゃ、後で里の真ん中で落ち合いましょう。」

 

「それじゃあ私は引き続きスペカ異変の方を調査するわね。それじゃあまた…。」

 

どすっ。

 

紫がそう言って帰ろうとした瞬間彼女の胸を何者かの腕が貫いた。背丈は魔理沙よりやや高いくらい、黒いドレスとスカートに身を包み、短く揃えたサラサラクリーム色の髪をなびかせ、背中からは七色のクリスタルを下げた羽が生えていた。

 

「か…ぐぁ…。」

 

紫は自分を貫いた腕を掴みながら苦しそうにうめき声を漏らした。その後ろで紫を貫いた少女が手をグーパーさせながら言う。

 

「ようやく見つけたよ〜、八雲紫。アイツには止められてるけど…我慢出来ないや。お前は直接的には悪くないけれど、死んで?」

 

そう言うと紫の肩を掴み、腕を思い切り引き抜いた。紫は地面にうずくまり、その周りには真っ赤な血溜まりが広がっている。咄嗟の出来事に硬直していた霊夢達もうずくまった紫を見て我に返り叫ぶ。

 

「お前…フラン…なのか?一体何してるのぜ!!」

 

魔理沙が恐怖と困惑の入り混じった表情を浮かべながら叫んだ。フランと呼ばれた少女はめんどくさそうに後ろを振り返る。

 

「あん?あぁお前らは確か…博麗の巫女にそのおまけじゃんか。ガキは早く家に帰りな、別に私はお前らには興味無いんでね。お〜い、皆集まれ!」

 

フランが空に向かって叫ぶと間髪入れずに三方向から飛んでくる人影が見えた。それらはフランと瓜二つな見た目をしていた。

 

「お〜スキマのおばちゃん見っけたんだね〜。マジナイス私〜!」

 

「あ〜らら、もう死にかけじゃん。いつも大口叩いてた割には脆いんだね〜、ざっこぉ〜。」

 

「はぁ…紫、今の貴女はとても美しいわ。その胸の傷をはぁ…ぐちゃ、ぐちょ、音を立てながら私の手で広げて…少しずつ、貴女を壊してあげるわ。」

 

フラン達は集まって来るなり好き勝手喋りだした。紫は集まって来たフラン達を見上げながら言う。

 

「あ…んた達。どういうつもり…?」

 

紫が胸を抑えながらかすれた声で言うと胸を貫いたフランが腕についた血を舐めながら返す。

 

「あぁ?どういうつもりかって?ん〜強いて言うなら復讐…いや、自己満かな。まあさっきも言ったが、お前は直接的には何も悪くないけど死んでもらう。」

 

フランはそう言いながら炎の剣、レーヴァテインを顕現させた。それを見た霊夢はフラン達にお祓い棒を突きつけながら叫ぶ。

 

「ちょっと待ちなさい!復讐だか自己満だか知らないけど、紫は殺させないわよ!」

 

「あら…私のこと庇ってくれるのねぇ。嬉しいわよ〜霊夢。」

 

紫が冷や汗を垂らしながら笑って言うと霊夢は呆れたように返す。

 

「こんな時まで馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ。それに、別にあんたの為じゃないわ。今スペカルールが消え去りそうな状況であんたに死なれたら、私達が困るのよ。言うなれば幻想郷の為ね。」

 

霊夢はそう言うと再びフランの方に向き直った。フランの中の一人はにやにやしながら言う。

 

「ふ〜ん、ざこ人間の癖に私らに楯突くんだ。面白いね〜。ちょっとレヴァ剣貸してよ、私がこの手で自分の愚かさをそいつに教えてやるからさ。」

 

「ん、そうか。ほらよ。」

 

そう言いながらレーヴァテインを手渡すとフランは剣を振り上げながら言う。

 

「はいサンキュー。んじゃ、バイバイ。」

 

フランはそう言いながら霊夢もろとも紫に斬り飛ばそうとした。しかし次の瞬間落ちたのはフランの腕の方だった。紫はニヤリと笑って言う。

 

「ふふっそう簡単に私の首を取れると思っているならそうは問屋がおろしません。」

 

そう言いながら紫は自身の傷を一撫でした。するとスキマが閉じるように紫の傷が塞がった。後ろの方で見ていたフラン達もその様子を見てオロオロし始める。

 

「え〜嘘でしょぉ…。あいつ腕斬り飛ばすような能力あったっけ…?」

 

「腕と胴体の境界をちょっとイジっただけよ。それじゃあ後ろの貴女達も、えい!」

 

紫が手をさっと挙げると後ろに居たフラン達の腕も次々と落ちていった。

 

「私達の腕も…はぁ…こういうのもたまには良いわねぇ。」

 

「馬鹿言ってんじゃないよ。全員仲良く腕落とされてんだぞ、もっと危機感持てよ。…ふん!」

 

紫の胸を貫いたフランが踏ん張ると直ぐに新しい腕が生えてきた。他のフランも同様に腕を生やしていく。

 

「皆〜一旦帰るよ。やっぱりあいつの言ってた通り、八雲紫は一筋縄じゃいかないらしい。体制を立て直して確実に殺れるようになってからにするわよ。それじゃあ一旦私の中に戻って来て。」

 

フランの中の一人が言うとレーヴァテインを持っているフランが不満そうに返す。

 

「はぁ!?何でこんなざこを前に撤退するの!私達が力を合わせれば…。」

 

「良いから早くして。それとも、無理やり戻されたい?」

 

フランが目を細めて低い声で言うとレーヴァテインをしまいながら返す。

 

「…わかったわよ。いくら私でもオリジナルには勝てないからね。」

 

そう言いながらフランはフランに近づくと吸い込まれるように消えていった。それに合わせて紫の胸を貫いたフラン含め、他のフラン達も吸い込まれてゆく。一人に戻ったフランは羽を広げて言う。

 

「それじゃあそういう事だから。今度会った時はしっかり壊すから安心してね。じゃ、あいつにバレる前にさっさと帰るからまたね〜。」

 

「あ、ちょっと待ちなさい!」

 

霊夢が止めようとするがフランはあっという間に空の彼方に消えてしまった。それを見ながら紫はほっと一息をついて言う。

 

「ふぅ…とりあえずは何とかなったわね。流石の私もあのまま戦闘になってたらヤバかったわ。」

 

紫はそう言いながら膝をはたいて立ち上がると後ろの方から聞き覚えのある声が聴こえてくる。

 

「あれ、霊夢さん達じゃないですか。紫様もいらっしゃるなんて珍しいですね〜何かあったんですか?」

 

霊夢達が振り返るとそこには銀髪の剣士が口元に手を当てながら驚いた表情で立っていた。すぐ近くにはふよふよと半霊が浮かんでいる。魔理沙はミニ八卦炉をしまいながら返す。

 

「妖夢じゃねえか。何があったって…お前、さっきフランに紫の身体貫かれたところとか見てなかったのか?ほらここに血溜まりも…。」

 

魔理沙がそう言いながら紫の足元を指差した。しかし先程まであった血溜まりが跡形も無く消えていた。

 

「いや…見てないですね。貴女達を見掛けたのはついさっきですし…それにそんな大ごとが人里で起きたなら今頃大騒ぎですよ。」

 

妖夢が肩をすくめながら苦笑いで言うと霊夢も困惑した表情で言う。

 

「確かに…でも何で誰も気づかなかったのかしら。フランの能力に周りに気付かれない、なんてのは無いし…そもそもあいつは本当にフランだったのかも怪しいし…まだまだ分からないことだらけね。」

 

「あら、分かったことなら一つあるじゃない。」

 

「え、何よ?」

 

霊夢が不思議そうに聞くと紫は一拍置いて返す。

 

「人里に出たっていう黒幕はフランって事。」

 

「でしょうね!見ればわかるわよそんなこと。」

 

霊夢は呆れたように言い返した。妖夢は首を傾げながら言う。

 

「よくわかんないですけど、また異変が起きたんですか。この前も畜生界の埴安神が異変起こしたみたいですし、最近多いですねぇ。にしても紫様が出てくるってことは今回のはだいぶどデカいみたいですね。」

 

「そうなのよねぇ。あ、そうそう。今度また幽々子似合いに行くつもりだからその旨伝えておいて頂戴。」

 

紫がそう言うと妖夢は敬礼しながら返す。

 

「了解です!それでは私はこの辺で失礼しますね〜。」

 

妖夢はそう言うと一礼して白玉楼の方へと戻って行った。それを見送りながら魔理沙は腰に手を当てて言う。

 

「さて、今回の異変の黒幕はどうやらフラン?のようだが…次の行き先はどうする霊夢?もう一人の異変の元凶が居るであろう地底に行くか、それともフランの居城である紅魔館か。」

 

「うーん…とりあえず地底に行ってみましょう。さっきので黒幕であろう一人がフラン…なのかはわからないけどとりあえず見た目だけはわかったからね。もう一人の姿も拝みに行きましょ!」

 

霊夢がそう言うと紫はサッとスキマを開けた。

 

「はーい地底はこちらになりまーす。またさっきみたいにいきなり攻撃をされるかもしれないから、二人とも気をつけて通りなさい。」

 

紫が真面目な表情で言うと霊夢達は静かに頷き、慎重に入って行った。最後に紫が左右を確認しながら入るとスキマは音も無く閉じた。

 

 ーーーーー

 

 一方こちらは何処かしらの異空間。そこには、椅子が五個と少し大きな楕円形の机が一つ。その上にはティーカップが椅子と同じ数だけ並べられており、うち二つには淹れたての紅茶が湯気を立てていた。奥には長い白髪の女性が座って淹れたての紅茶を飲んでいる。それ以外には周りがほのかに紅いだけの何もない空間である。

 

「ただいま〜、あ~疲れた。」

 

フランがそう言いながら白髪の女性の向かいに座った。すると白髪の女性がティーカップをカチャリと音を立てて置いて言う。

 

「お帰りなさいませ破壊神。もうお帰りになる頃だろうと思って紅茶淹れておきましたよ。」

 

「ああ、ありがとうね〜時空神。…この呼び方にもだいぶ慣れたもんだよ。」

 

破壊神と呼ばれたフランはそう言いながら紅茶を一口飲んだ。時空神と呼ばれた女性は耳に艷やかな髪をさっとかけながら返す。

 

「そうですね。百年もこの呼び方を続けていれば、そりゃ慣れるってものですよ。」

 

「百年…そう今年で…まあ暦なんてもうあってないようなもんだけど、あれから数えたら百年目だね。百周年アニバーサリーだよ。」

 

破壊神がそう言いながら笑うと時空神が少し呆れたように返す。

 

「何がアニバですか。…それと、ちょうど百年目だからって紫を急いで殺そうとするのはやめてください。」

 

時空神が言うと破壊神は背もたれに寄りかかりながら足を組んで返す。

 

「なぁんだ、やっぱりバレちゃってたか。いやね、ラフレシアの様子を見てくるついでにフォーオブアカインド使ってなんとなーく紫でも居ないもんかと探してみたら、私の分身が見つけちゃったもんだから…もうこれは殺るしかないっしょってね。」

 

「殺るしかないっしょじゃないですよ全く。あの時だって、私が能力使ってなかったら人里の人間にバレて面倒なことになってたかもしれないんですよ。計画の最終段階までは極力目立たないようにしてください!」

 

時空神が眉をひそめて言うと破壊神は笑いながら返す。

 

「はいはい…それじゃ、計画が進むまでの暇つぶしにあいつらの動向でも鑑賞してようかな。」

 

破壊神はそう言いながら指を鳴らした。すると空間の一部が歪み、モニターのようになった。そこには地底に向かった霊夢一行が映し出されている。

 

「いつの間に…見てるのバレないようにしてくださいよ。」

 

「大丈夫大丈夫。これはコウモリの視界だしバレないよ。帰って来る時一体飛ばしてきたんだ〜。ほら、今から地底の異変調査らしいよ〜ご苦労だねぇ。」

 

破壊神はそう言いながら楽しそうにモニターを指差した。

 

 ーーーーー

 

 地底は地上とはまた違った賑わいを見せていた。霊夢は手で仰ぎながら言う。

 

「はぁ〜相変わらずジメジメ蒸し蒸ししてるわね。」

 

霊夢が言うと紫も扇子をはためかせながら返す。

 

「ほんとにね。住めば都ってやつなんだろうけど、こいつらよくこんな暑いところに住んでいられるわね。それじゃ、か弱い紫ちゃんは倒れる前に引っ込むとするわ〜ばいばーい。」

 

紫はそう言いながらさっさとスキマに引っ込んだ。それを見ながら魔理沙は口を尖らせて言う。

 

「ふん、何がか弱いだよ。さっきフランに胸ぶち抜かれた時もピンピンしてたくせに。」

 

「まあ別に良いじゃない。居たら居たでずっと喋っててうるさいし。」

 

「ははっそれもそうだな。それじゃ、ぼちぼち探し始めますか。まずは地霊殿にでも行くか。」

 

「ええ、そうしましょう。」

 

二人はそう言いながら地霊殿に向かって歩き出した。背後を飛ぶ小さなコウモリにも気付かずに。

 

Next phantasm

 

  おまけという名のほぼ本編

 

  〜紅魔の素敵な住民たち〜

   メイド長が生まれた日の巻

 

 ある日の昼下がりにリム、レミリア、咲夜、美鈴の四人でお茶を飲んでいる時、リムがふと口を開く。

 

「そういえばまだ私の口からあの話詳しくしてなかったよな、レミリア。」

 

「…あの話って?」

 

レミリアがティーカップを置きながら不思議そうに尋ねるとリムは足を組み直して答える。

 

「ほら、咲夜を私がここに連れてきたって話だよ。ここ帰ってくる時にいつか詳しく話すって言ったじゃんか。」

 

リムがそう言うと咲夜は静かに目を見開いて驚きの表情を見せた。その隣で美鈴も驚いたように尋ねる。

 

「あれ、話しちゃって良いんですか?この話は墓場まで持っていくって昔おっしゃられて…。」

 

「ああ、あの時はそう思っていたんだけどな。ただ、何でここに来たのか、元々はどこに居たのか、咲夜含めお前らには知る権利があるんじゃないかと思ってな。まあ別に聞かなくても良いならそれでも構わんがな。」

 

リムはそこまで言うとお茶を一口飲んだ。レミリアは少し身を乗り出して言う。

 

「その様子だと美鈴は知っているみたいね。私も興味あるからぜひ聴きたい、けれど貴女はどうしたい?ただの人間である貴女が、ヴァンパイアであるリムに拾われてここに来た…これだけで、少なくとも明るい過去とは思えないわ。聞いていて辛いかもしれない、苦しいかもしれない、それでも聴くかしら?」

 

レミリアはそう言うと真面目な表情で咲夜の方を向いた。咲夜は少し俯きながら返す。

 

「…怖くないと言ったら嘘になります。それでも、私は自分自身の過去を知りたいです!どのような運命を辿ってここに流れ着いたのか…聞き届ける覚悟は出来てます。教えてください!」

 

咲夜はそう言いながら真っ直ぐとリムの眼を見た。リムはその眼を見つめ返すと椅子に深く座り直して言う。

 

「わかった。じゃあまずは、私がお前を見つけた時から話すか。あれは、今から大体十年くらい前。いつものようにヴァンパイアハンターの要塞を襲撃したときの話だ。」

 

 ーーーーー

 

 月明かりに照らされた道を、コツコツと靴音を響かせてリムは歩いていた。彼女の視線の先には、コンクリート造りの巨大な建物が佇んでいる。入り口付近には武装した人間が数人うろついていた。近づいて来るリムに気付くと武装兵は静かに銃を構えた。

 

「相変わらずお前らの使う武器は、その銀弾を込めたショットガンしか無いんだな。」

 

リムはそう言いながら剣を構えると、武装兵はリムに向かって一斉に撃ち出した。するとリムは左手に魔力を込めると、地面に向かって魔法を放った。リムの周りは怪しく光り、銀の弾は地面に吸い寄せられるように落ちた。

 

「どうだ?友人の魔女から教えてもらった重力を操る魔法だ。ま、昔に魔女狩りをして魔法を歴史から排除したお前らには信じられんだろうがな。」

 

そう言いながらリムはゆっくりと武装兵に近づく。武装兵は化け物を見るような目で後退りながら必死に建物内に声を掛けている。リムは自分の周りにいくつもの剣を浮かび上がらせると武装兵に向かって一斉に飛ばした。

 

「かは…!」

 

武装兵達は悲鳴をあげる間も無く次々と倒れていく。リムはその中の一人を担ぎ上げると頸動脈の辺りを持っていた剣で斬り裂いた。するとダラダラと血液が流れ落ち、それを勿体なさそうに飲み始めた。やがて一滴も出なくなると無造作に放り投げ、口元を拭いながら呟く。

 

「この味は…Bか。レミリアの好きそうな味だ。さてと、腹も満たしたし今夜もお仕事と行きますか。」

 

そう言いながらリムは紅く染まった剣を片手に建物中に入って行った。

 

「はいはいはーいっと。」

 

リムは視界に入る人間に次々と剣を刺していった。人間達はいつもの様に恐怖の表情を浮かべながらリムに攻撃を仕掛けるがそのどれもが彼女に届くことはなかった。リムは歩きながら呟く。

 

「全く…どこも似た様なもんでつまんないな。銀の弾丸に六、七階程度の建物。そして、攻めてくる時は勇ましい表情をする癖に攻め込まれた途端この世の終わりみたいな絶望した顔の人間ども。たまには変わった部屋でもないもんかなぁ、隠し部屋とか…。」

 

そう言いながら歩いているとふと、壁の隙間から漏れている光を見つけた。いつもはただの壁の様になっているのだろうがリムの飛ばした剣によって一部の壁が壊れている。リムは不思議に思いながらその隙間をこじ開けた。

 

「何だ…これ。」

 

そこは何かの実験室の様な場所だった。部屋の中にはいくつもの水槽のようなものの中に溶液と人の形をしたものが入っており、中心に置いてある机の上にはいくつもの資料が散らかっていた。

 

「ここで、対吸血鬼用の生物兵器でも作ってたんかな。ご苦労な事だ。パチュリーだったらこの部屋にあるのがどんな薬品なのかとかわかったんだろうけど…あいにく私にはこれっぽちの知識もないからな。残念残念…。」

 

そう言いながら部屋を後にしようとすると、リムの視界の端に机の下で何かうごめくものが見えた。リムは驚き、剣を構えながら叫ぶ。

 

「そこに居るのは誰だ!出てこい!」

 

リムが警戒しながら言うと机の下から這い出て来たのは小さな女の子だった。目は虚で髪は短いボサボサの銀髪、薄汚れたワンピースをまとっていた。

 

「人間のガキ、か。…悪いな。」

 

リムはそう言いながら剣を振り上げた。その時何気なく視界に入った足首には足枷が付けられており、それを見たリムは咄嗟に手を止めた。

 

「足枷…?お前、この施設で育てられてるヴァンパイアハンターとは違うのか…?」

 

リムが不思議そうに尋ねても少女は虚な瞳でただリムの事を見つめるだけだった。リムは小さくため息をつきながら振り上げた剣を下ろすと、ふと目に入った資料を手に取った。

 

「これは…この部屋で行った実験のレポートか。えーと、『時を操るハンターの作成・実験・観察レポート』…。」

 

リムは咄嗟に少女に目をやった。少女は相変わらず虚な目をしている。リムはレポートに視線を戻し続きを読み始めた。

 

「内容は…。

生体No.390失敗。薬を投与した後二時間三十二分後に生体反応停止。

 

生体No.391失敗。薬を投与した直後に昏睡。生体反応は持続しているが死んだ様な物である。

 

生体No.392観察中。薬を投与した後これといった変化がまだ見られない。今は被験体という事実を隠して通常勤務中。

        

生体No.393失敗?薬を投与した直後職員二名を殺害、その後射殺。職員を殺害する時瞬間移動のような動きで近付いている事から時を操る力を扱えていた可能性大。

 

生体No.394失敗。薬を投与した後十時間二分後に生体反応停止。

 

生体No.395失敗。薬を投与した後二時間六分後に舌を噛み切って自害。表情は笑顔。

 

生体No.396観察中。精神が不安定の為度々発狂をする。発言は基本支離滅裂。

 

生体No.397失敗。薬投与直後に死亡。

 

生体No.398成功。髪が銀に染まる副反応以外は異常なし。時を操る力も扱える様子。現在は研究室にて力を自在に扱う方法を研究中。

 

…この一番下に書いてあるやつってもしかしてお前か?」

 

リムはそう言いながら少女を見るが相変わらず虚な瞳で見つめ返されるだけだった。

 

「だんまりかいそうですかい…。ん、こっちの資料はお前の事を書いてあるのか?」

 

リムはそう呟きながら机に散らばった資料を手に取った。

 

「んーとなになに…。

七月二十日 初の理性を保っての適応個体が生まれた。これからも研究を重ねて力を自由に使える時が吸血鬼共の最期だ。

七月二十五日 何度話しかけても返答は返ってこない。コミュ障なだけなのかそれとも何かの病気なのか…どちらにせよ会話が出来ないのは困る。多少な強引にでも喋らせなくては。

八月一日 398がここに来て初めて発した言葉は『もう力を使いたくない』だった。言葉は何であれ話すという行為が出来ることが分かって良かった。

八月七日 最近398が妙な寝言を発しているようだ。『お嬢様…』とかなんとか…これも薬の副作用だろうか。

八月十五日 憎き吸血鬼がたった一人でこの要塞を壊滅にまで追い込んでいるようだ…。仕方がないから私は抜け道を通って近くの森に身を潜めるとしよう。やつにこの研究室が見つからない事を祈って…。

これはさっき書いたやつか。」

 

リムは手元の資料をビリビリに引き裂きながら呟く。

 

「どうして、同じ人間にこんな事が出来るんだろうな。お前らの方が私らよかよっぽど立派に悪魔やってるよ。」

 

リムはそう言いながらしゃがむと少女の足枷を力任せに壊した。

 

「今からお前を紅魔館に連れてってやる。生かすか殺すかはあいつら次第だが…ここに残るよりよっぽどマシだ。運が良けりゃ、メイドにでもなれるかもな。」

 

そう言うとリムは少女を抱き上げ要塞から外に出ると夜空に飛び上がった。すると森の中から白衣を着た男がコソコソと要塞に戻って行く。リムはその様子を空から眺めながら呟く。

 

「さてと、最後の仕事を終わらせるか。」

 

そう言いながら右手に魔力を溜めていき、強大な魔法を要塞に叩き込んだ。要塞は耳をつんざくような音を立てながら崩れ落ちていく。少女は怯えた様子でリムの服をギュッと掴んだ。

 

「あぁ、すまない。びっくりさせちまったか。それじゃあ、紅魔館に向かうからそのまましっかり捕まっててくれよ。」

 

リムは頭を優しく撫でてやりながら言うと、紅魔館に向かって羽ばたいた。

 

 ーーーーー

 

「…と、まあこうして咲夜を紅魔館に連れてきたというわけだ。私はあの時、美鈴にまだ幼い咲夜を託したからこいつだけは知ってたんだよ。ま、口止めしてたんだけどな。」

 

「なるほど…私は、ヴァンパイアハンターの実験によって時を操る力を手に入れた…。めっちゃラッキーですね~!」

 

咲夜はそう言いながらお茶を一口飲んだ。リムは意外そうな表情で言う。

 

「へぇ〜もっと驚くか怖がるか心配だったが…強いな。流石紅魔館のメイド長は肝が据わってらっしゃる。」

 

リムがそう言うと咲夜が食い気味に返す。

 

「だってそうじゃないですか〜。その御蔭で特別な力を手に入れて、お嬢様から『十六夜咲夜』という名前とメイド長という立場を頂けたのですから。まさに運命ですよ!」

 

咲夜は鼻を鳴らして得意気に言った。レミリアは微笑ましそうに眺めながら言う。

 

「ふふっ懐かしいわね。貴女に名前をつけた時のことをちょっと思い出しちゃったわ。」

 

 ーーーーー

 

 「貴女の名前は咲夜、『十六夜咲夜』よ。」

 

レミリアはそう言いながら美鈴の手を握っている咲夜の頭を優しく撫でた。咲夜はまだ怯えた表情をしているがレミリアの優しそうに笑う表情を見て安心したのか、レミリアに抱きついた。

 

「お…じょうたま…。」

 

たどたどしい声でそう言うとレミリアは嬉しそうに返す。

 

「ふふっ貴女もそう呼んでくれるのね。それじゃあ将来は紅魔館のメイド長かな。あ、そうだ。」

 

レミリアは何かを思い出したようにポケットを探ると一つの懐中時計を取り出した。

 

「これは昔拾った物だけど、何となく貴女に持っててもらったほうが良い気がするわ。メイド長就任の前祝いってところね。ど〜ぞ。」

 

レミリアはそう言いながら咲夜の小さな手に懐中時計を握らせた。

 

 ーーーーー

 

「そういえば、何でか分からないんですけどこの懐中時計を身に着けて能力使ったら安定して時を止めれるんですよね〜。マジックアイテムの一種なんですかね。」

 

咲夜が不思議そうに懐中時計を眺めながら言うとレミリアも首を傾げながら返す。

 

「私にはわからないけれど、それを拾った時からその時計からはなにか運命的な力を感じたのよね。だから貴女に渡す時まで手放せずに居たのよ。」

 

「へぇ〜。お嬢様の能力のお陰ですかね。」

 

咲夜は懐中時計を布で拭きながら言った。懐中時計は今日もただ静かに時を刻む。

 

 メイド長が生まれた日の巻 終わり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回はおそらく今回よりお待たせするという運命が見えます。
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