異世界転生から3年。人間だけど、魔王軍幹部としてダラダラしてます   作:ラハズ みゝ

17 / 90
17話 まずは神経衰弱! その二

「遊び‥‥‥ですか?」

 

 セシリーはトランプを見つめながらそう言った。

 

「そう、遊び。楽しむことが目的なんだ」

 

「しかし何故、楽しむことをお求めになったのですか?」

 

 ティアナが尋ねた。すごく不思議そうな表情である。こいつらやっぱり楽しむことを知らないんだな。或いは疾うの昔に忘れてしまったのだろう。

 

「うーん、難しいな。楽しむことに理由はないっていうか、楽しむことが理由の根底であるというか‥‥‥。俺たち人間は、楽しんで生きたい種族なんだよ」

 

 楽しむことを知らないこいつらに、その価値を見出ださせて、もっと人生を謳歌してほしい。せっかく人間よりも色々と可能性を秘めた種族なのだから、それを活かしてほしい。

 

「さぁやるぞー! 一番多くカードを集めた奴の勝ちだ。どうやったら勝てるか、よく考えるんだぞー」

 

「「承知致しました」」

 

 まぁ相手は初心者なのでもちろん手加減をするさ。ただ真剣勝負であることに変わりはない。とりあえず二人がどんな感じでやるのか様子を見てみるか。

 

「じゃあまずはセシリーからやってみよう」

 

「はい」

 

 セシリーは、彼女から見て手前にある二枚を同時にひっくり返した。数字は――――「4」と「9」。

 

「数字が違うから、カードは元通りに裏返してな」

 

「なるほど」

 

 セシリーは言われた通りにカードを戻した。最初はそんなもんだ。むしろ最初に当てる方がすごい。

 

「次はティアナ」

 

「では引かせていただきます」

 

 ティアナは少しカードを眺めてから、離れた二ヶ所からカードを選んだ。数字は「6」と「K」。こちらも外れだ。ティアナは「合いませんでした」と残念そうに一言言って、カードを戻した。

 

 今気づいたが、二人ともカードを二枚同時に返している。これでは戦略の幅が狭まりそうだ。俺の説明が悪かったのだろう。まぁ、ここで俺がお手本として一枚ずつめくれば良いだろう。

 

「じゃあ俺の番だな」

 

 俺は手前のカードを一枚ひっくり返した。数字は「4」。この数字は最初にセシリーも引いていたな。場所も覚えている。だが、ここでは当てない。いきなり俺がコンボを決めては戦意喪失させてしまうかもしれないからな!

 

 俺は適当に中央のカードを返した。数字は「5」。

 

「あぁ、違ったか‥‥‥」

 

 カードを戻した。そうして、順番は回っていった。

 

 

 *  *  *  *  *

 

 

 ――しばらくして、だんだんと盛り上がってきた。‥‥‥戦況的には。

 

「‥‥‥」

 

「‥‥‥」

 

「えぇ‥‥‥」

 

 二人とも真剣になるのは感心なのだが、真剣すぎて静かだ。

 

 戦況としては、まずは俺がリードし、後からセシリーたちもコツを掴んできたようで、少しずつカードを増やしているところだ。

 

 まぁ精々頑張ってほしいものだな。人間の賢さにどこまで足掻けるか、見物だ。

 

 

 *  *  *  *  *

 

 

「5」と「5」。「3」と「3」。「J」と「J」。「A」と「A」‥‥‥。

 

 ちょっと待て。セシリーとティアナの暴走が止まらん。さっきからもうあの二人しか回ってないぞ? どうなってんの?

 

 まさかこやつら、この短時間で急成長を遂げたというのか!? いかん、トランプを教える立場である俺の威厳が! ここで止めなくては!!

 

 ――ようやくおれのターンが回ってきた。が、セシリーとティアナの勢いが凄まじかったあまり、カードの数字を記憶できていなかった。こうなったら一か八かでも当ててやる! それが俺だ!!

 

「6」と「Q」。

 

 その後、セシリーが四コンボし、さらにティアナが三コンボして、ゲーム終了。

 

 セシリーは二十二枚、ティアナは二十四枚。そして俺が八枚。

 

「私の勝利、ということでしょうか」

 

「そのようですね。私は惜敗。ヒロト様は――」

 

 何かを言おうとしたセシリーを俺は制した。

 

「皆まで言うな。‥‥‥というか、どうやってあんなに連続で点を取ったんだよ?」

 

「特にこれといった戦術を用いた訳では‥‥‥」

 

「場所を記憶しただけなのですが、ルールに反していたでしょうか?」

 

 セシリーとティアナは交互にそう言った。

 

「まさか返されたカード全部を覚えてたってのか‥‥‥?」

 

「「はい」」

 

 おいおいマジかよ。それほど賢くないと見ていたが、純粋な記憶力は化け物だったよ。学生時代にそれだけの力があれば有名人間違いなしだぞオイ。

 

 俺は、強くて記憶力も高いこの化け物たちに改めて恐怖心を抱いた。

 

 しかしまだ諦めん。この程度で俺は屈しない。記憶力が高いならそれ以外の能力で勝てばいいのだ。

 

 え? 主旨が変わってるって? ‥‥‥何だっけ。あれだろ、俺が遊びの先輩としての威厳を見せる、だったな。何も変わってなんざいないさ。

 

「次だ次! 次は‥‥‥」

 

 記憶力があまり作用しないやつがいいな。‥‥‥そうだ!

 

「ババ抜きだ!」

 

 セシリーとティアナは再び首を傾げた。これまた聞いたこともない言葉を聞いたからだろう。フフフ。これならお前たちの特性は活かせまい!

 

 俺は先ほどと同様にルールを説明した。

 

 どちらかというと最初の手札が大きく左右する、所謂"運ゲー"だ。今度こそ俺が勝ち、威厳を取り戻す!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。