異世界転生から3年。人間だけど、魔王軍幹部としてダラダラしてます   作:ラハズ みゝ

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61話 集う幹部

 幼い容姿、緑髪のショートヘア、とても武装とは呼べないであろう水玉模様のワンピース。一見ただの子供。俗に言う"ロリ"というやつ。そして、透き通る翠色と青藍色のオッドアイ。

 

「あんた、全然魔力を感じないんだけど! 魔族じゃないってのは本当なのね‥‥‥」

 

 驚いているのか呆れているのかといった微妙な表情で俺を見る少女。

 

「褒めてるのか貶してるのか分からないけど、どうも」

 

 とりあえずこいつがまともに会話できるのかどうかを探る。ヘルブラムみたく初見の相手にいきなり攻撃を仕掛けるようじゃ、俺の命がいくつあっても足りないからな。

 

 すると少女は首を傾げ、それから目を丸くした。

 

「あんた、ヒロターセ! 私とまともに会話ができるの!?」

 

 少女から思いもよらない言葉が発せられた。

 

「は?」

 

 え、"まともに会話ができるの?"って‥‥‥。向こうも俺のこと探ってたの? 俺の方が試されてたって展開なの??

 

 少女は急に跳び跳ねて喜び出す。

 

「良いわ良いわ! あんた第一印象最高!! すっごく期待が高まってるわ!!」

 

 何だこの少女‥‥‥話が読めん。

 

「そりゃまぁ‥‥‥ありがたいんだけどさ、最初からずっと気になってることがあってだな」

 

「良いわ言ってみなさい! ヒロターセ!」

 

 かなりご機嫌だな‥‥‥。

 

「それ。その名前、間違ってるから」

 

「名前?」

 

「俺、"ヒロターセ"じゃなくて"ヒロト"。ヒロトって名前なんだ」

 

 一体誰からどう伝わってそんな異世界風な名前に改名されたんだ俺は‥‥‥。魔族は伝言ゲームが苦手なのか?

 

 少女は目を丸くした。リアクションが分かりやす過ぎる。

 

「そうなの!? "ヒロターセ"じゃないの?」

 

「うん。"ヒ、ロ、ト"」

 

 すると今度は頬を膨らませてどこかあさっての方角に向かって怒り出す少女。

 

「誰よ私に嘘教えたヤツ!! 許さない!!」

 

 なんだか忙しない奴だな‥‥‥。

 

「――まぁいいわ。ヒロト、自己紹介がまだだったわね」

 

 少女はこちらを向いて言った。

 

「私はカタストロ。魔王軍幹部にして、最強の女よ!!」

 

 平たい胸をポンと叩いて自信満々の少女――カタストロ。‥‥‥魔王軍幹部か。まぁ薄々勘づいてたけど。

 

「おう、どうぞよろしく」

 

 と、ようやく挨拶を終えることができた。

 

「さ、そろそろお城へ行かなきゃね。ついてきなさい、ヒロト!」

 

 カタストロは踵を返して歩き出す。あの性格‥‥‥、容姿こそ幼いが、きっと幹部の中でも主導権を握っている方ではないだろうか。ヘルブラムほど常識が通じない訳でもなさそうだし。

 

 ‥‥‥さて、今のところ危険はなさそうだな。俺は境界壁(シールド)を解いた。

 

 ――え? いつ境界壁(シールド)を展開したのかって? ‥‥‥最初からだよ、魔界に着いた時から。

 

 幹部十人が集結する魔王軍会議。従者(メイド)さんが出迎えてくれるとはいえ、興味本位やら何やらで幹部の誰かが俺のところに来ることくらい想定していたさ。ヘルブラムという良い例があるのだから。

 

 この赤黒い不気味な景色。俺の境界壁(シールド)の色合いにピッタリなのだ。俺が境界壁(シールド)の中に籠っていてもそう簡単には気づかれまい。

 

 カタストロは出会い頭に攻撃を仕掛けてくるような野蛮なヤツではなかったので、安心した。俺は魔王城への行き方も知らないし、大人しく彼女についていくことにした。――というか、断ったらそれこそ攻撃されそうだし‥‥‥。

 

 

 *  *  *  *  *

 

 

 道中、薄暗くどんよりした空気が変わることはない。不気味な雰囲気が続く。その中をカタストロはずんずん進む。ヒロトは少し駆け足気味で彼女の背中を追う。

 

 沈黙の空気に耐えかねたヒロトは口を開いた。

 

「魔界に着いたら魔王城所属の従者(メイド)さんが案内してくれるって聞いてたんだけど」

 

 カタストロは振り向かない。

 

「あー、そうなの? それならもう来ないと思うわよ」

 

 ヒロトは首を傾げる。

 

「え、どうして?」

 

「私があんたと一緒に居るから」

 

 当たり前のようにカタストロは答えるが、ヒロトは従者(メイド)が来ないというのを全く理解できない。従者(メイド)目線で、カタストロがヒロトのところに現れるのは予定になかっただろうが、それで"カタストロが居るから案内に行かない"、というのが分からないのだ。

 

 "カタストロが案内役として動いてくれるからサボろう"、とはならないはずである。ヒロトは魔王軍の従者(メイド)が主に忠実なことをよく知っている。

 

「もうすぐ着くわ!」

 

 カタストロの呼びかけに、ヒロトの従者(メイド)についての思考は止まった。今はそれよりこちらの方に注意を払わなければならないからである。

 

 ヒロトは、カタストロの華奢な背中から奥の景色へと視線を滑らせていく。うっすらと現れ始める、檻に囲まれた巨大な影。何階建てなのか分からないほど複雑にいくつもの塔が聳え、そしてヒロトの目と鼻の先には、立派な門が佇んでいた。

 

 あまりの迫力に足を止めて身震いをするヒロト。

 

「ほら、入るわよ」

 

 カタストロは全く動じずに歩を進めている。

 

「そんなにあっさり入って良いもんなの、ここ?」

 

「何意味の分からないことを言ってるのよ? 早く来なさいよ!」

 

 まるで親戚の集まりのようなノリでカタストロが門を通っていくので、ヒロトは自分が持っていた魔王軍の堅苦しいイメージに疑問を抱きながら、小走りで門を通過した。

 

 その後もカタストロは身の丈に合わない巨大な扉を両手で押し開き、何ということもなく魔王城へ入っていく。ヒロトはそれを追った。

 

 あちこちに扉や階段があり、何がどこに繋がっているのかヒロトが混乱する一方で、カタストロは少しも迷わずに進んでいく。

 

 数分進んだところで、カタストロは足を止めた。ただ彼女の背中を見て追い続けていたヒロトは、カタストロの正面にある扉を認識して理解する。

 

「ここにみんな集まってるんだな‥‥‥」

 

 カタストロはやはり振り向かずに、一つ頷いた。そしてその扉を、開いた――。

 

 その空間には円状の広いテーブルがあり、既に八人が席に腰かけていた。然る場所であるのでそう考えるのは至極当然であるが、ヒロトはそれ以前に彼らが然るべき存在であると、その溢れんばかりの覇気によって理解させられた。

 

 カタストロとヒロトを含めて――――――――――――――――ここに十人の魔王軍幹部が集った。

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