異世界転生から3年。人間だけど、魔王軍幹部としてダラダラしてます 作:ラハズ みゝ
――一時間ほど前に遡る。
魔王城に勤める
彼女は本来、ヒロトを魔王城へ案内する役割を当てられていた。しかし、リンネはそうしなかった。
「あぁ‥‥‥、どうしてカタストロ様が人間と一緒に居るのよ!! ――でも気配を察知されなかっただけマシだったわ」
ほとんどの魔界の者は、魔王軍幹部であるカタストロに畏怖の念を抱いている。彼女の
魔王軍会議においてヒロトを間者だと疑うギルシュは、ヘルブラムの言葉には一切耳を貸さなかったが、カタストロの意見には理由を問うた。そして幹部一同はカタストロに注目した。
カタストロは警戒されており、また彼女の意志はしばしば尊重される。カタストロとの対立は好ましくないというのが理由の一つだ。
魔王軍幹部はともかく、リンネや他の魔族のカタストロに対する認識は、"目を合わせれば死ぬ"というほどのものである。
リンネは職務を放棄した。それでも命が惜しかったのだ。
「はぁ‥‥‥、会議が終わるまではとても戻れないわ‥‥‥」
本来ヒロトを迎えるはずだった場所をリンネはぐるぐると歩き回っていた。
――――その時、
「誰か遅刻かしら? ヴァウラ様だろうなぁ」
そう言いながらリンネは
しかしリンネは表情を曇らせた。現れたのは、魔王軍幹部ではなかった。
「あのー、魔王城ってどこにありますか?」
現れたのは、四人。魔族ではない。魔界へは基本的に
つまり、
リンネは臨戦態勢に入った。魔王軍幹部であるヒロトを除いて、魔界に魔族以外の種族が侵入した時点で紛れもない敵だと断定できるからである。
――――ところが先頭に立っていたはずの、やる気のないような半目の男は、既にリンネの顔面を掴んでいた。
リンネは驚きを隠せない。警戒していたはずなのに、あまりに呆気なく距離を詰められた。
「お姉さん、少し鈍すぎるよ」
リンネの顔面は発火した。青い炎があっという間にリンネの全身を覆った。リンネは声にならない叫び声をあげて、もがいた。
――――魔王城に勤める
魔王城には多数の
空間が隔絶されている魔界においてリンネのように魔王城に勤める
「殺してええん? 魔王城の場所訊かんと?」
仲間の一人である少女が訊いた。やる気のない男は答える。
「明らかに世界から隔絶されている空間だ。広さはあっても地形は複雑じゃない。魔王といえど、規格外な巨大都市を確立させるほどの容量はないだろ」
男は手を緩め、解放された"顔面だったもの"は黒く灰となって消えた。
そうして数人は移動を始めた――。
* * * * *
魔界に侵入した四人は、ヒロトら魔王軍幹部が集う一室に到達した。それが現在のことである。
破壊された扉の向こうから、四人。
まずエンドールが動いた。
「――
空間に衝撃が走った。空気は、淀んだ。
ヒロトの思考は間に合わない。扉が破壊され、次の瞬間に魔王軍幹部らは動き出しているのだ。
しかしその割には、やけに静かであった。
「え‥‥‥。今これ、どうなってんの?」
幹部も、扉の向こうから来る四人も、誰一人動いていない。ヒロトにはそう見えている。
実際はそうではない。
エンドールの
今、この空間における速度は極度に低下している。ヒロトには動いていないように見えているが、実際は少しずつ動いているのだ。
ヒロトが《
ヒロトには理解できない。だが――――
「大人しくしとこ」
ヒロトは下手に動かないことにした。
脳内における発言は、実際の発言の何倍も正確であり、高速である。《
《
(あれ? ここって魔界だったわよね‥‥‥? どうして部外者が侵入しているの!?)
カトレイヌが問う。
(例の間者ってのが
カタストロは冷静に分析していた。他の幹部も、それほど動揺していない。アークは簡潔にまとめた。
(とりあえずあいつらを捕まえて喋らせよう)