異世界転生から3年。人間だけど、魔王軍幹部としてダラダラしてます   作:ラハズ みゝ

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73話 会議の後は

 ギルシュは席を離れ、何も言わずに破壊された扉から出て行った。

 

 そういえばこの部屋の修復はどうするのだろうか。‥‥‥ってまぁ、こんな大規模な城なんだからそれくらいどうとでもできるのだろう。

 

 続いてヴァウラ、エンドール、アーク、植物の(?)も退室していく。植物に関しては何か蔓のようなものが地面を這って進んでいる。色々不気味だ。

 

「ヒロト、俺らも帰ろうぜ」

 

 ヘルブラムの言葉に「ああ」と頷きながら、俺は空いた席を眺める。

 

 会議が終わると軽い挨拶も無しに去っていく。魔王軍幹部たちの関わりってそういうものなのか――と感じた矢先。

 

「ねぇねぇヒロト君!! 私の屋敷に寄っていかない!? ゆっくりお茶でもしながらお話しよ!! ね?」

 

 カトレイヌが席を立ち、ここぞとばかりに俺に向かって距離を詰めてきた。境界壁(シールド)に両手を張りつけ、目を輝かせてフンと荒い鼻息を吹く。怖い。境界壁(シールド)があると分かっていながら、俺は思わず後退りしてしまった。

 

 ドン引きしていることを悟られまいと俺は笑んでみせるが、どう頑張っても苦笑にしかならない。

 

「あー、えっと‥‥‥」

 

「――ヒロトは私と行くのよ」

 

 俺が反応に困っているところに、カタストロがさも当たり前であるかのようにそう言った。

 

「そうなのか!?」

 

 ヘルブラムが目を丸くして驚く。

 

 いや、いつ俺がカタストロと行動すると決まったんだ? ボケているだけだよな。ツッコミ待ち、なんだよな? ‥‥‥カタストロ、どうしてお前は真顔なんだ?

 

「行くって、どこに?」

 

 俺は恐る恐る訊いてみる。するとカタストロはまたも当たり前であるかのように一言。

 

「ヒロトの屋敷」

 

「は、俺の‥‥‥?」

 

 俺は唖然として、しばらく沈黙が流れた。

 

 

 

「――ちょっとぉ、ヒロト君戸惑ってるじゃない! ‥‥‥さてはカタストロ、一方的にヒロト君を連れていこうとしてるわね!?」

 

 カトレイヌは目を細めて追及する。

 

 ――はい、仰る通りです。俺は心の中で即答した。そしてカタストロの反応はというと‥‥‥。

 

「一方的なんかじゃない。だって私、会議に来る時からヒロトと一緒に居たもの。どう考えても私に優先権があるわ」

 

 どう考えてもそうはならんだろ。あの時は前触れもなくカタストロの方から押し掛けてきて、魔王城の場所を知らない俺はついていかざるを得なかったのだ。

 

 というか、優先権云々言ってるが俺の意思は尊重され得ないのだろうか。何されるか分からないから不用意に発言できないのだが。

 

 ヘルブラムが呆れた様子でため息をつく。

 

「お前らやめろよ。ヒロトが困ってるだろうが。‥‥‥ヒロト、こんな奴らに構わず行こうぜ」

 

 ‥‥‥ありがとうヘルブラム、できればお前にも大人しく帰って欲しい。頼むから俺を解放してくれ。

 

「どうしてヘルブラム(あなた)がヒロト君と仲良しそうにしてるの?」

 

「仲良しだと思い込んでいるだけよ。相手にしなくて良いわ」

 

 突然冷たい眼差しでヘルブラムを睨むカトレイヌとカタストロ。ヘルブラムは口をぽかんと開けたまま凍結したようにピクリとも動かなくなってしまった。

 

 いや二人とも辛辣過ぎるだろ。俺も大概だけど。幹部内でのヘルブラムの扱いどうなってんだよ。さっきからヘルブラムだけまともな会話させてもらってないぞ。

 

 おバカキャラのテンプレが定着しちゃってるじゃん。

 

「ねぇヨシノ! 私とカタストロ、どっちがヒロト君と行動するべきだと思う!?」

 

 カトレイヌが判断を仰いだのは、着物姿の幹部――ヨシノ。カタストロもヨシノの方を見る。ヨシノは何を面白がってか、席に残ってカタストロとカトレイヌのやり取りを眺めていたようだ。‥‥‥ところで選択肢がカトレイヌと行くかカタストロと行くかの二択しかないのはどうしてだろうか。

 

 急に話を振られて少し驚くヨシノ。

 

「わらわに委ねるかの‥‥‥」

 

 いや待てよ? 客観的に話を聞いていた彼女なら、この話し合いで俺の意思が全く汲み取られていないことに気づいているはずだ。落ち着きがあって頭も良さそうな雰囲気だし、俺を解放してくれるのでは‥‥‥?

 

 しばらく考えて、ヨシノは発言した。

 

「――カトレイヌ、今回はカタストロに譲ってやらぬか?」

 

 ‥‥‥。

 

「今日のカタストロは生き生きとしておる。会議であれほど積極的に発言するカタストロを見るのはいつ以来のことか‥‥‥。その理由が、きっとヒロトにあるのだろうな」

 

 カタストロは自分の表情を隠すようにそっぽを向いた。

 

「わらわはもう少し、その明るいカタストロの様子を見守ってみたいと思っておる」

 

 ヨシノの考えを聞いて、カトレイヌはしょんぼりと肩を落としながらも、諦めがついたように目を瞑った。

 

「‥‥‥確かに今のカタストロはなんだかとっても元気そうだし、ヨシノがそこまで言うなら今回は諦めるしかなさそう。――でも!」

 

 パッと目を開き、カタストロを指差すカトレイヌ。

 

「次にヒロト君とお話するのは私だからね!!」

 

 カタストロは振り向かずにそっぽを向いたままだ。

 

「さて、わらわたちも解散とするかの。従者(メイド)たちが待っておるだろう」

 

 そう言ってヨシノが席を立つと、カタストロは即座に俺の方を向き、笑顔で言った。

 

「さぁヒロト! 行くわよ!!」

 

「はぁ‥‥‥」

 

 仕方なしと、俺は席を立つ。結局、俺の意思は全く加味されないまま話し合いが決着してしまった。

 

 発言しなかった俺も悪いかもしれない。でも、魔王軍幹部に囲まれた状態で一人反論するだなんてできる訳がない。俺、人間だからね?

 

 ‥‥‥つまり幹部に目をつけられた時点で、俺の未来がめんどくさくなることは確定していたのだ。

 

 魔界に着いたあの時、どうにかカタストロを振り払えていればもしかしたら――なんて、今さらどうこう考えたって無駄。

 

 これから俺はどうなってしまうのやら‥‥‥。

 

 ヨシノとカトレイヌが退室し、俺は境界壁(シールド)を保ったままカタストロについていく。

 

 ――それじゃあみんな、来世で会おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ、何か忘れているような? ‥‥‥いや、気のせいか。

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