異世界転生から3年。人間だけど、魔王軍幹部としてダラダラしてます 作:ラハズ みゝ
――
「‥‥‥それが、
アズサの話を反芻しながら呟くダリアに、アズサは頷かずに目を瞑る。嘘を伝えた訳ではないが、まだ隠している事実があるからである。
「王国への復讐心。それだけであれほどの
総数は十万を超える
「悲しいお話です‥‥‥。我が国を原因にして今回の惨劇が起こっていただなんて」
ミーリアは肩を落として悲壮を露にする。そこにユリウスは歩み寄り、ミーリアの肩にそっと手を置くと首を横に振った。
「それは違うさ。
ユリウスは微笑んでいた。その態度が、アズサは気に食わなくて眉をひそめる。ミーリアは顔を上げてユリウスに笑みを返してみせた。
「‥‥‥ありがとうございます、ユリウスさん。少し気持ちが楽になりました」
「しかし厄介だな、魔王軍というのは。一度行動を起こすだけでああも人の人生を狂わせる」
アーベルは神妙な面持ちだった。彼は
「――息をするように責任転嫁か‥‥‥。初めから期待などしていなかったが、お前達には心底失望した」
アズサはユリウスらの会話を聞いていられなくなった。彼女にしては珍しく、およそ自分に影響を及ぼさないはずの他人の話に苛立ちを覚えていた。
「国王が行った"根拠のない国外追放"によってハーレという少年の人生が大きくねじ曲げられたのだ。魔王軍幹部が王国を攻めて来ようが、その判断がなければ彼はきっと冒険者となって活躍できただろう」
「アズサ、何をそんなに躍起になっているんだい? 魔王軍がいなければそもそも王国が攻められることもない。あのワガママな国王が何をしていようが、魔王軍を倒せば平和になる。それで良いじゃないか」
ユリウスが言った。アズサにはおかしかった。ユリウスはそもそも偉そうにしている性格なのでこの反応も不自然じゃない。しかしなぜ――。
「人間の言動に問題があると言っているのが分からないのか。このままでは魔王軍などいなくとも人は死に続けるぞ。国の希望であるはずの勇者が、国民一人の命を軽んじるのか?」
世俗的に間違ったことは言っていないはずなのに。
――何故、他の者達まで自分に対して奇妙なものでも見ているような目をしているのか。
「少し落ち着いてくれアズサ」
ダリアがアズサを制止しようとする。
「何が言いたい兵士長」
「何があったか分からないが、今の君は些か冷静さに欠く」
――これを聞いて初めて、アズサは自分が過剰に熱くなっていることを自覚した。
我に返ったアズサは頭を押さえてため息をついた。
「一体どうしたって言うのさ? 君の塔で勝手に話し合いをしている件についてはともかく、君が自分以外のことでこうも取り乱すなんて」
ユリウスが尋ねる。アズサはしばらくそのまま黙っていた。そして呼吸が整ってから、口を開いた。
「確かに今のは少し熱くなり過ぎた、すまない。‥‥‥だが、依然として考えは変わらない」
自分以外のことは大抵どうでもいい。今さら綺麗事を言うつもりはない。
「この国の政治は間違っている。それを国王に進言する」
ただ――――――。
「そう約束したからな」
アズサは知らぬ間に、心に留めていたことまで呟いてしまっていた。森の奥に住まう魔王軍幹部――ヒロトとの約束。
ユリウスにはその言葉があまりに衝撃的で、目玉が飛び出んばかりの勢いで目を見開いた。
「約束!? アズサ、君は今"約束した"と言ったのかい!? 僕とだってそんなもの交わしてくれたことないのに!? 一体誰と!?」
「煩い。お前にそれを教える義理はないし、そもそも教えるつもりもない」
アズサは軽くあしらった。ここで
「あらあら~、"秘密の約束"ですね! アズサさんは意外とロマンチストなんですね~」
「余計なことを言うなミーリア。めんどうなことになるぞ」
目を輝かせるミーリアをアーベルが止めようとするが、もう手遅れだった。
「"秘密の約束"‥‥‥!! そんなにも‥‥‥アズサと濃密な関係なのか‥‥‥」
ユリウスは後退りし、ぶつかった椅子に倒れるように座り込み、すっかり脱力してしまった。
「ユリウス、お前は何がしたいのだ‥‥‥」
ユリウスの言動が理解できないダリアは呆れていた。アズサはそっぽを向いて言う。
「知らん。一番目障りで耳障りな男を無力化できたのだから、このまま放っておけばいい」