犯罪都市、同僚はスパンコールドレス着用没落令嬢巨乳ロリ   作:胡椒こしょこしょ

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シャワーの水音、それぞれの夜

ホテルの一室。

その中の浴室には、一組の男女。

 

女の方は輝くような金髪。

大きなお尻と胸に反比例して引き締まったお腹。

砂時計型のプロポーションに整った顔立ちのギャル。

ニヤニヤと浮かべた笑みは容姿も相まって、異性に対して健康的かつ蠱惑的な色香を発していた。

 

一方、対する男の方は大きく肥大した腹に、経年劣化が伺えるくすんだ肌。

中年らしい生え際の交代した頭に、よく言えばブルドックのような脂肪が目立つ顔付き。

目の前のギャルとは父と娘ほどの年齢差である。

だというのに、男はギャルに後ろから胸で身体を洗われながらも、鼻の下を伸ばしていた。

 

「はい、しゅ~りょ~! そんじゃ、ウチは一足先に部屋で待ってっから~」

 

「お、もういいの? おじさん、ぱるるちゃんともうちょっとお風呂でイチャつきたいな~」

 

「え~、それも確かに良いけどぉ~……おじさんの、マジで気持ちよかったもん❤ だから早くベッド行きたい……的な? ……ダメぇ~?」

 

「クッ、ククク……わかったわかった、ベッドの方でちょっと待ってなさい。おじさんもすぐに上がるから」

 

ギャルは身体を流すと、男に先に浴室から出る旨を知らせる。

その言葉に男は難色を示すも、ギャルから耳元で囁かれて下卑た笑みを浮かべながら許可する。

親と子ほども離れた年頃の美少女、それもそんな相手が自分の男としての象徴に対して魅了されていることに雄としての優越感を覚えたのだろう。

気を良くしたのか懐の深い大人の男を演じる。

 

「はぁ~い❤ そんじゃ、ベッドメイキングして待ってっから……❤」

 

ギャルは間延びした口調でそう言うと、ひらひらと手を小さく振りながら浴室から出る。

身体を流し、湯船にゆったりと使った男はニヤニヤと充足感に溢れた笑みを浮かべていた。

 

「クックックッ、小娘め……なんてふしだらなんだ。まったく……」

 

浴槽に背を預けてやれやれと言わんばかりの口ぶりで笑みを浮かべると、ほどほどに温まってから立ち上がる。

浴室から出て体を拭くと、バスローブに身を包む。

 

ベッドメイキングを済ましているであろう少女との逢瀬をまた楽しもうと更衣室を出る。

その瞬間、目に入る光景に絶句して足を止めた。

 

キングサイズのベッドが置かれた客室。

そこには改造セーラー服に身を包んだギャル。

手にはピンクのシュシュが持ち手に付いた釘バットが握られていた。

 

「べ、ベッドメイキングは……そ、そもそも何を……なにをしてるんだ、お前は!?」

 

「娘くらいの女と遊べて楽しめたっしょ? ほんじゃ、まっ次はウチのお仕事(お楽しみ)の時間っしょ♪ あんまはやく壊れんでよ〜? 出来れば長く楽しみたいじゃん?」

 

「ま、まさかお前……待っっっ!?」

 

先ほどとは異なり、凄惨な笑みを浮かべたギャルは持っていたバットを振りかぶる。

丸腰のまま、腰を抜かして尻餅をつく男。

その制止の声も虚しく、バッドは男の額に無慈悲に振り下ろされた。

 

 

「あ〜、もしもしー、セセらん? 終わったよ〜! 話も聞けたし、コレクションも手に入った! 今度持ってくね〜、にしてもこんな万年筆一つで頭カチ割られるなんて、おじもマジ運ないよね〜w」

 

『お疲れさま、パルミラちゃん。楽しめたようでなによりだよ』

 

「まぁね〜、今回のおじはエッチ上手かったし、仕事の方でもよく啼いてくれたんよ〜! 豚の屠畜場っていうの? 小学生の頃にそこで聞いた豚の鳴き声並みにアガったもん! ピギィ〜って!w」

 

『……へぇ、愉快な子供時代を過ごしたんだね』

 

ベッドに腰掛けて、足をバタバタとさせながら楽しげに電話するギャル……パルミラ・ラドヴィッチ。

ベッドに腰掛けた彼女の足元はボロ雑巾になった中年男性を中心に血溜まりが広がり、ひどい有様。

新入りのルームサービスが見れば卒倒するような状況である。

 

「あ、そーだ! そう言えば昨日セセらんが言ってた新人クン? から電話あってさ〜! バチピストンキメてる時で生返事っちゃったけど、明日会う予定なんだわ」

 

『そうなんだ。あ、そうだ。エリカちゃんも一緒に行動してるからね、久しぶりの再会になるんじゃないかな?』

 

「え、マ!!? エリカっちも居るんかぁ〜余計楽しみだわ〜!」

 

楽しそうに笑うパルミラ。

その表情はまるで旧友との約束をこぎつけたかのように明るい。

さながら裏社会を右往左往してる我楽多とは思えない仕草だ。

 

「んで、その新人クン大丈夫そ? いうても調べる限り、今回の案件もそんなヤバげではないけどさぁ……電話した感じナヨいっつーの? ちょい不安あるのはそこだよね〜」

 

散々笑ったあと、スンと表情が消える。

真面目な表情、ビジネス面を考えてると言った表情だ。

その表情のまま、彼女は新人とやらは力不足ではないのかと測る。

 

そんな彼女の言葉を聞いて、セセラは通話越しに鼻で笑った。

 

『おいおいおいおい、何を言い出すかと思えば。僕がわざわざ声かけてねじ込んだんだよ? そこに関しては心配は要らないさ。……君なら分かるだろ?』

 

「ん、まーねー! むしろセセらんが選んだんなら別の心配した方が良いくらいっしょ!」

 

『ごもっともなことで』

 

パルミラの言葉に電話口のセセラは芝居がかった大仰な口調で返す。

 

『でもま、中学からの同級生としてのよしみで教えてあげるけど、僕は彼に期待してるんだ』

 

「期待?」

 

『千尋谷小学校の唯一の生き残り……、きっとこの街で面白く駆け回る姿を見せてくれるってさ……!』 

 

「あーはいはい、いつもの奴ね~。わかったわかった。……とりまやることやったから、ウチもう切るね〜」

 

若干昂ってるかのような、青年の声。

そんな彼の様子にいつも通りだと言わんばかりにおざなりに流すと伸びをする。

そして体についた血を落とすためにもパルミラは2度目のお風呂へと洒落込もうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふ~ん、こういう感じの部屋なのね」

 

「いやあの……うん、ごめん」

 

「なにが? 別に何も思ってないわ。家主でもないのだからケチつけようがないでしょ?」

 

 

アンゴは私を見て、申し訳なさげにシュンとしている。

周りを見れば、露出度の高い多分……アニメとかのフィギュアやグッズがズラっと並べている。

デスクに置かれたゲームの箱らしきものには蕩けた女性の顔が描かれていた。

 

……まぁ、別に驚きとかはないわ。

アンゴは寂しいから一緒に居て欲しいとアタシが首を縦に振りやすい理由を作ってくれただけ。

部屋に入れた要素の一つとして1割でも哀れみがあったということは確定的だもの。

アタシを呼んでも良いように部屋を整える時間なんかあるはずがない。

 

……それにそもそもここは彼の部屋。

なら、アンゴの好みの部屋の内装になっていようが、アタシには何も言えない。

 

寧ろ、こんなことで神妙な顔されても困るわ。

アタシなんか外で明らかにこちらを見下した親父に乱暴されそうになったりしているんだから。

この程度で嫌がったりとかしないわよ……ただ、目の前の無害な青年も男なんだなって思うだけ。

そんなことよりも……。

 

「それで……お風呂借りても良いのよね!? やっぱなしとかはなしよ??」

 

「そ、それはもちろん……あっ、そうだ。ちょっとこっち来て……」

 

彼に言われるがままについていく。

入ってすぐの右側2番目のドア。

 

ここだけ質感が違う……浴室へと続くドア。

そこを開ける。

浴室には浴槽とシャワー、洗い場とイスがある。

 

アンゴは壁についているボタンを指さす。

 

「ここを押したら呼び出しがなるから、何かあったら僕のこと呼んで」

 

「そうね……着替えは何か適当にパジャマになりそうなものを置いておいて。どうせ、女物の服とかはないんでしょ?」

 

正直、なんというか……恋人がいたりとかはなさそうに見えるし?

いやでも……もしこれでさっき着ていたドレスよりも露出度の高い……そう、ビキニとか水着? とか置かれてたらどうしよう……。

メイド服とか……。

 

そうなったら、着るしか……ないわ、よね……❤

う、うんっ、家主が用意したんだものっ❤ それで家から追い出されたら本末転倒だわっ❤

も、文句は言うっ! 絶対言ってやるけどっっ!! 

用意された服、き、着てあげるわよ……! か、感謝しなさいよね……❤

 

「……あー、うん」

 

「なにその反応。……まさか、あるの?」

 

アンゴはなんとも言えない表情で目を泳がせる。

は? ……あるの?

アンゴやこの部屋の様子を見ても、女っ気なんかまったく感じない。

となると……。

 

「なに、女装趣味的な? アンタそういう趣味があるの?」

 

「ご、誤解だ!! 僕はただクオリティの高いラディカル☆バスタちゃんのクオリティの高いコスチュームが売っていたから買える内に買ってコレクションしておきたかっただけなんだ!」

 

「えぇ……あぁ、そう……」

 

慌てて否定するアンゴ。

なんだかよくわからないけど……女装趣味はないってことなのかしら?

いやそれにしたって、購入の理由がよくわからないわ……。

買える内……? らでぃかるばすた??

う~~ん……、まぁ、いいか……。

 

「女性ものの服があるなら、それでいいわ。どこか、置いておいて」

 

「え”っっ!? い、いや……結構、そのコスプレ用というか、そういう衣装なんだけど……」

 

「別に気にしないわよ、それに一回も袖通されてないんでしょ? ……新品の服が着れるなんてこの街に来てから中々ないもの。アタシが有効利用してあげる……何か文句ある?」

 

アタシが尋ねると、アンゴは顎に手をやる。

何とも言えない顔で考え込んでるわ……なによ、何かあるの??

 

「いや文句はないし、コレクションと言ってもタンスの肥やしになってただけだし、そこら辺気にしないけど……、で、でも一回見てみよ! 割と見る人によっては結構キワドイ服だし!」

 

「アタシがさっきまで来てたドレスと比べたら?」

 

「そりゃドレスの方がキワドイけど! ちょ、ちょっと待ってね……」

 

いそいそと奥の扉から部屋の中に入っていくアンゴ。

……正直、ドレスよりも露出少なめなら別に気にならないんだけど。

今更感あるわ。

……あ、戻って来た。

 

「服はコレ、でラディカル☆バスタちゃんはこんな感じ! どう、かな……?」

 

服自体は大きめのビニールに入っていて如何にも未開封品といった感じ。

そして、アンゴが右手に持ってるピッチピチの魔法少女衣装に身を包んだ金髪ツインテールの少女のフィギュア。

右手で杖を振りかぶっていて、左手で目元付近でピースをしている。

豊満な体つきに魔法少女スーツが貼りついていて、胸は横側が見えている。

 

多分、子供たちが見るような類の魔法少女ではないんでしょうね。

まぁ、でもこれなら別に問題ないかしらね。

 

前なんてただの布の帯で胸の見えちゃいけない部分だけ隠すようなデザインだった。

しかもそれでも隠し通せているとは言えなかったんだもの。

今は見えるとしても横側だけ、それどころか肘まである手袋に腿辺りまでタイツがある。

前よりもあったかそう……。

 

「良いわよ、別に。ていうか前よりもあったかそうじゃない。寝巻だけじゃなくて、外にも着ていこうかしら?」

 

「えぇっ!? い、いやそれは……辞めといた方がいいかも……?」

 

アタシがそう言うとおずおずとした態度を取るアンゴ。

……ん? なんかちょっとにやけてる、少しうれしそう……?

それに鼻の下もちょっと伸びているような……。

 

……ふ~~~~ん?

コイツ、たしかこの『らでぃなんちゃら』が好きなのよね?

そして、アタシはまぁ? 自分で言うのもなんだけど美少女だし?

アタシが好きなキャラクターのコスプレをした姿、想像してんの??

へ~~~~なるほど、ふ~~ん……❤

 

「ま、とにかくそれ着るから。封開けてそこら辺、置いといてよね」

 

「わ、わかった!」

 

なにちょっと嬉しそうにしてんのよ。

キモ……ふふっ♪

 

 

あったかいお湯の粒が身体を撫でる。

その度に身体中がゆったりなって、癒される。

身体のべたつくような感覚も、ボディーソープとボディタオルがあればすっきりとした気分になる。

 

シャンプーとリンスがあるのもありがたいわ。

水浴びで済ませていた時とは比べ物にならないリラックス体験。

やっぱり、お風呂は良いわ。

ママとパパが生きていたころ振りかしらね……。

 

そう考えると、中世の使用人みたいねアタシ。

こんなにゆったりと、人の目も気にならないような場所は久しぶりだわ。

あぁ……癒される。

これで湯舟も溜まっていたら完璧……なんて、欲しがりすぎよね。

 

「ずっとお湯を浴びたいわ……。けど、借りている分際でいつまでも水を浪費するのは良くないわよね。ただでさえ一番風呂譲ってもらったんだから」

 

そう思い立つと、お風呂の椅子から立ち上がって浴室から出る。

近くに置かれた大きなタオルでしっかりと体の水気を取ると、ドライヤーまで使っちゃう。

そして……目の前の魔法少女衣装。

 

「んっ……よいっしょ、結構身体にぴったり貼りつくのね……。胸……収まりきらないんだけど。フィギュアよりも小さいんじゃないの? ……よいしょっ! んっしょ……んしょ……」

 

 

 

 

 

今日、結構急いで汗も掻いた。

そんな僕に更に追い打ちをかけるように額を垂れる。

 

正直、僕は今……ナイトクラブに入る時よりも緊張している。

なにせ、目の前に現れるのはバスタちゃんのコスプレをした少女。

奇妙な成り行きの産物であるとはいえ、気を強く持たなければならない。

 

美少女が自分の好きなキャラクターのコスを目の前で着ている。

その破壊力に僕は備えないといけないのである。

道を踏み外さないように。

ここで踏み外せば下心で部屋に招いたことになるだけでなく、結局僕も彼女にセクハラをしていた親父たちと同類だということを示すことになってしまう。

 

すぅ~~~、はぁ~~~~。

深呼吸、しんこきゅ……。

 

「先にお風呂、いただいたわ。すっごく気持ちよかった……ありがとう」

 

「おぉ……」

 

布の覆いで隠した扉が開くとき。

そこには、バスタちゃんが確かにいた。

いや、髪の色だったり、顔付きだったりと細部は違う。

当然だ、まったく同じなわけがない。

 

けれど、僕の抱いていたバスタちゃんへのイメージ。

あどけない容貌ながら、凶悪な胸というミスマッチさ。

それがまるでこの世に顕現したかのように目の前に広がっていたのだ。

 

フリフリタイツには実った太ももの肉がみちっと乗って視覚誘導。

ぴっちりとした素材のスーツはエリカちゃんの恵まれた身体のラインをありありと世に示す。

そして実在の人物が着ることを考えて少しデチューンされているからか、伸縮の利く素材であるにも関わらず収まりきらず横乳が丸見えだ。

胸布も両方ともとある部分がぽちっと膨らんでいた。

 

しきりに胸を布に収めようとして片腕を上げるものだから腋が見える。

湯上りで体温が高い故か、そんな腋からほくほくと湯気が上がっているのが見えた。

 

うおっっっっ!!!?

っぅぅ~~~~~~、危なかった。

想定以上の出来だ。

 

湯上りなのが威力を底上げしている。

僕の想定以上だ、これがエンタメであるのなら素晴らしいと大手を振るって拍手してスタンディングオベーションしているくらいだ。

ん? スタンディングオベ? マスタべ? ……やめろっっっ!!!!

 

クソっっ、頭がどうかしちまっている……。

あまりのクオリティの高さに驚きだ……ネオアームストロングもかくや。

似せようとか全くないのに似る、これがカップ焼きそば現象と言う奴だろうか……?

 

「ねっ、ねぇ! ちょっと……なにボッーとしてんのよっ❤ さ、さっさとお風呂……入りなさいよね❤❤」

 

「う、うん……わかったよバスタちゃん」

 

「は?」

 

「あっ、ちがう! エリカちゃん!」

 

「……ふふっ、何言ってんのよアンタ❤ 良いからさっさと入っちゃいなさいよ」

 

おかしそうに口に手を当てて笑うエリカちゃん。

どうやら不快には思われなかったようだ。

よかった……。

 

簡単にご飯も振舞うつもりだから、さっさと入っちゃって上がらないと。

それにしても、あんな顔が真っ赤になるまでホカホカになるなんて……シャワーだけでも堪能してくれたのかな?

……なら、今度またこういう機会があったら湯舟を貯めてみてもいいかもな。

 

なんて思いながら、浴室へと向かった。

 

 

 

夜、既に時計の針はてっぺんを過ぎて1時を指している。

普段はまだ起きている時間だけど、今日はカーペットに身体を預けて目を閉じていた。

 

あの後、ご飯を作ってエリカちゃんと共に食べて、今就寝に至る。

彼女に振舞ったのは簡単に作るペペロンチーノ。

冷凍保存していた豚肉とアスパラ、えのきを適当に放り込んで炒めてオリーブオイルに麺のゆで汁を入れて乳化させたものである。

辛みは適当に七味を振りかければそれっぽくなる。

 

正直、彼女のご両親がご存命だったらもっと良いもの食べているだろう。

僕の月並みのイメージで申し訳ないが、A5ランクの牛肉だとかキャビアやフグ、フォアグラとか?

それでも人の作ってくれたまともな食事はいつぶりかと言いながらもおいしそうに食べてくれた。

おおっ……心が痛いな、世知辛さを感じて。

まぁ、路上生活をする羽目になっていたと考えれば無理もないことなんだけど。

それはそれとして、バスタちゃんの服を着た少女と向かい合って飯を食べるのはこう……視線のやり場に困ったものだ。

味なんか覚えてない。

 

まぁそんなこんなで歯磨きもしてもらいつつ、こうして眠ろうとしているわけだが。

 

生憎、僕の部屋には来客用の布団もなければ寝袋、ソファの類もない。

あるのは人をダメにするタイプの柔らかく沈みこむクッションに、内部に電熱線が張り巡らされているあったかくなるカーペット。

 

当然、エリカちゃんはベッドに寝かせてある。

自分はベッドに寝転んで、少女は床に転がせておくわけにはいかないだろう。

それに、エリカちゃんは日頃から外で寝ていたんだ。

こんなときくらい、ベッドを使わせてあげたいなって思った。

 

そこまでは良い、そこまでは良いんだ……。

 

「っぅ~……、身体いてぇ……」

 

どうやら僕はカーペット越しとはいえ、床に寝るのは無理らしい。

身体の節々が痛い。

こう硬さはないが……平面さとクッション性のなさ?

それが結構背中を痛めつける。

 

クッションを枕代わりにしているので、首はまだマシだがそれでも普通の枕よりも首の位置が悪い。

結果、寝苦しいし、眠れないったらありゃしない。

割と今日、結構疲れてたんだけどな……そんな睡魔でもこの苦痛をごまかす麻酔がわりにはならないらしい。

痛みに強い自信はあったのだが、それでも眠る時となるとちょっとね……。

単純に寝付けない。

 

「すぅ~……はぁ……」

 

もういっそのこと、起きちゃうか。

ベッドは使えない以上、横になるというよりはクッションにもたれかかる形ならまだマシか……?

 

「……ねぇ」

 

「わっ、な……なに?」

 

急にベッドの方からか細い声が聞こえる。

必死に寝ようと閉じていた目を開いて振り返ると、ベッドの上からエリカちゃんがこちらを見ていた。

どうしたのだろうか……眠れないのか?

 

「どうしたの、エリカちゃん? 何かあった?」

 

「恥ずかしいんだけど、そ……そのっ、一緒に寝てくれない?」

 

「え……え”っ!? そ、それは色々とマズイというか……!」

 

上目遣いでこちらを見つめるエリカちゃん。

その申し出に、多分これまでにないくらいに焦る。

背中に脂汗がジトッと浮かんだくらいだ。

 

付き合ってもない男女が一緒のベッドに眠るのはマズイ。

それに、なによりも目の前の少女はバスタちゃんのコスを着ているのだ。

ホント、ホントにマズイ。

自分の理性が信じられなくなるくらいだ。

 

「あ、当たり前でしょ! こっちだって、変なことしたら承知しないんだから!!!」

 

「だ、だよねぇ!?」

 

「ただ、こうして……襲われたりとか、そんな心配もなくベッドの中で眠れると……そのっ、色々考えちゃうの」

 

「……色々?」

 

エリカちゃんを包む毛布がもぞもぞと動くと、表情を曇らせる。

話が、変わって来たな。

 

「パパとママが生きてた頃は、いつも寝かしつけてもらったわ……アタシの中の、あったかい記憶。路上の冷たさの中で思い出さないようにしていた。……その時のことを思い出しちゃったの」

 

「エリカちゃん……」

 

「こんなこと、普段だったら考えないようにしてて……出来てたことなの。こうして、アンタのおかげで安心な場所で、温かいベッドに包まれて……ちゃんと傍に人が居て、独りじゃなくて……そんなこと考えてると、眠れなくて……。だ、だからねっ……そのっ、添い寝……してくれない?」

 

「……いいよ」

 

なにがバスタちゃんのコスが~だよ、バカバカしい。

目の前の少女は、子供だ。

しかも、両親を喪って一人で路地で暮らして……その日の暮らしはフリーハグとかいう尊厳を切り売りすることで成り立たせている少女だぞ。

 

こうして、僕の部屋くらいで安心してくれている。

これは純粋に嬉しいことだ。

けれど、それで昔の両親のことを思い出してしまって眠れないのなら……傍にいてあげるべきじゃないか。

 

それをお前……理性がどうとか、マズイとか……。

はー、キモすぎるわ。

自分が嫌いになりそう。

 

そんな次元の話じゃない。

これは、小さな女の子を安心させてあげるというだけの話だ。

それなら、答えは頷き以外ないだろ?

 

「ホントっ!? お腹、さすってくれる!? ぱ、パパがよくやってくれたの……」

 

「うん、寝ちゃったら無理だろうけど、出来るだけ撫でるよ。それでもいい?」

 

「パパもそうだったから、大丈夫! それじゃ、早く来て!」

 

満面の笑みを浮かべるエリカちゃん。

そんな笑顔を見せてくれるなら、了承してよかった。

そう思っていると、彼女は僕に早くベッドの中に来るように言いつつ左腕で毛布をめくりあげる。

 

瞬間、彼女が左手で持ち上げている毛布。

その中の光景に僕は食虫植物を幻視した。

 

暗く微かに見える、魔法少女服に着飾った身体。

腕を上げた際に見えた腋や身体からの湯気がこもって、霞んで見える。

赤らんだ肌は、ニコっと笑った顔とある種のコントラストを感じさせて……。

胸も横になっているからか、横にふにゅと潰れていた。

形容するなら蟲を誘って甘い香りを出している食虫植物。

僕の頭は彼女を見た瞬間、恥ずかしげもなくそんな例えを出力していた。

 

あっ……やっぱり、まずかったかも……。

 

 

 

「それでね、路地裏でとても大きなネズミが出てね……あれは危なかったわ。大きさ的にも昔、アタシが屋敷で暮らしてた頃に買ってたぺス……大型犬が子犬だったころくらいの大きさはあったもの。トウキョウってそこら辺も規格外なのね……って、ちょっと! 撫でるの忘れてる!」

 

「あ、うん……ごめんね。確かにトウキョウはかなりデカめのネズミが路地裏に結構いるらしいね……にしても大型犬の子犬くらいの大きさはヤバいでしょ。なにか変な物でも食べて異常成長しているのかな……」

 

エリカちゃんの横に寝そべって数分。

エリカちゃんはまるで子供がその日のことを親に報告するように、これまで自分が見聞きしたことを僕に語りだす。

誰かに話したかったのだろうか、楽しそうだ。

 

……にしても、顔が良い。

この至近距離で、僕にあどけない感じで笑いかけてくるんだ。

正直、暗くて助かった。

明るかったら直視出来ていないだろう。

 

それに、子供特有の体温の高さから毛布の中はほかほか。

毛布の中の空気が顔に当たる度に、なんだか良い匂いがする。

そんでもって、彼女のぺったりとした肌が度々触れるのだ。

 

右手でお腹を撫でる度に、汗に濡れた肌を撫ぜる。

ピクッと身体が揺れたかと思うと、マットレスに体重を預けて左手に巻き付けた腕を強く締めてくる。

 

「ふふっ、……えいっ!」

 

「ほわっ!? ……ど、どうしたの?」

 

「もうお腹撫でるのいい! 頭撫でて!!」

 

「わ、ワカッタヨ……」

 

僕の顔を見上げながら、抱き着いてくるエリカちゃん。

昼間のフリーハグをしている時の媚びた口調や利発そうな我楽多の先輩としての口調とは違った、子供のわがままのような口調。

年相応の振る舞いだ……もしかしたら、これが彼女の素なのか。

それとも、安心できる環境かつかつての両親を思わせる状況で甘えているのか。

微笑ましい……微笑ましくはあるんだ。

ただ……!

 

しっかり抱き着いているから、豊かな胸が無茶苦茶当たってる!!!!

身体を微かに擦りつけるように甘えてくるので、ムニュムニュ当たり所が変わっているんだ!

しかも暖かな体温と共に、鼓動と彼女の息遣いが身体を伝って感じられる始末。

極め付きには、汗でペタついている足が僕の足にまで絡んでいるのだ!

 

ヤバいヤバいヤバい。

踏み外す、色々踏み外すってコレ。

まるで鉄骨渡り中に背中を押されてるみたいな危うさだ。

アレが当たらないように、腰ガン引きしてるくらいなんだよ!?

 

ね、眠れ……!

早く眠って意識を手放すんだ!!

目を閉じて力を抜けば眠れるはず……!

 

撫でさせられている所、申し訳ないけど……これはエリカちゃんを守ることにも繋がるんんだ!

だから悪く思わないでくれ……!

頼む、だから僕! 早く意識を落としてくれぇぇ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……案外、眠れたわ」

 

閉め切ったカーテンの隙間から日光が差し込む。

外からはチュンチュンと雀の鳴き声が聞こえてくる。

昼くらいになると、ほとんどカラスの鳴き声になるので、小鳥にとっても朝が一番平和な時間なのだろう。

 

眠れるか不安だったが、どうやら僕は結構疲れていたらしい。

よくよく考えれば、昨日は初めての我楽多体験で色々疲れていたのに加えて豊島まで行ったんだ。

そりゃ身体ヘトヘトだよね。

 

「ん、んんぅ……?」

 

「あ、エリカちゃん。おはよう……ちょっと離してね? ご飯用意するから」

 

「んむぅ……んぅ……やだ。もっと、一緒、ねよ……」

 

「いやいやいや、今日も色々情報集めるんでしょ? ほら、離し……て……!」

 

布団をめくればホカホカと熱気を帯びたエリカちゃんが、朝に弱いのか寝ぼけ眼で僕にしがみついてくる。

丸一日毛布に包まって、人に抱き着いていたのだろう。

夜は良い匂いだと思っていたが、ベッド全体が女の子の香りに、寝汗の匂いを足したような……一言で言うなら甘臭い匂いになっていた。

前髪などの髪の毛が頬などに張り付いている。

 

そんな彼女をなんとか引きはがす。

改めて俯瞰すると、仰向けになったことでたゆんだ胸元……。

バスタちゃんコスも汗を吸ったからか、どこか色が仄かに濃くなっているような気がする。

これは……ある意味凶器だ。

目に毒と言う奴だね……見るのはやめておこう。

 

起き上がってよたよたと台所に向かう。

この後はまた米倉スズの情報を集めないと……そうだ、その前にパルミラさんと合流しなきゃじゃん!

 

時刻は10時。

昼近い。

 

慌てて、携帯を見るとメッセージで10分ほど前に『今起きた~、ちょっち頭すっきりさせないとなんで~12時にここ来て~』とメールが貼られている。

良かった、連絡ぶっちや待ちぼうけみたいな状況にはなってないみたいだ。

 

寧ろ、同じくらいに起きたみたいだな。

……まぁ、昨日電話出た状況的にも、パルミラさんもヘトヘトなんだろう。

 

リンク先を見ると、とある浅草のアパートの位置情報が表示される。

家……かな?

 

次行く所はここかな。

エリカちゃんのドレス、乾いただろうか?

……ぶっちゃけ、ドレスよりもバスタちゃんコスの方が露出度は低いんだよなぁ。

エリカちゃんも温かいと言ってたし、アレ本人の言ってた通り着てもらうか?

いやでもアレは僕にとっては目に毒だし、今は汗でベトベトだしなぁ……。

 

まぁそれは今考えても仕方がないか。

それよりもだ……。

 

「冷蔵庫にあるのは卵に味噌、わかめの残りと焼き鮭の干物……これならお米も炊くか」

 

自分一人だけであれば手がかかることはやりたくないが、今はエリカちゃんが居る。

それっぽい暖かみのある朝ごはん、作ってやろうじゃん。

 

そうと決まれば、僕は米を磨き始めるのだった。




正直、自分は自分の性癖に正直にストレートしか投げれないっす!
ですので、少しでもいいなと思っていただけましたら最高っすね。

ちなみに、よくわかりませんが18歳以上の皆さんは、僕の最新の活動報告に上げている今回の話における夜主人公が寝た後のロリ巨乳の動向が書かれた小説のリンクを見ていかれますね。
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