ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜   作:ラディ@小説家もどき

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03言って欲しかったのは

 一瞬乃本氏の動きが止まったのでこのまま畳み掛ける。

 私は乃本氏の顎先目掛けて拳を振るが。

 

「……っ」

 

 少し真剣な顔つきになった乃本氏は、下がらずに私の腕の内側に潜り込むように躱し。

 

 そのまま伸びた腕を掴んで、一本背負いで私を投げ飛ばす。

 

 投げ……っ、勢いを利用したとはいえ六花と私の重量をこんなに容易く……。

 

 でもこれは悪手です。

 私はありえない挙動で、受身も取らずにそのまま二本の足で着地して即座に構える。

 

 六花、つまりリビングアーマーは基本的に念力のような力で身体を浮かしている。

 それほど強い浮力があるわけでないので、私が中に入った状態で飛んだりは出来ませんがこの浮遊を利用しての姿勢制御は行えます。

 この浮遊感を利用してロケットパンチや、機動力を生み出しているのです。

 

 距離が空いた、助走距離として調度良い。

 着地とほぼ同時に、私は左肩を突き出して真っ直ぐ乃本氏へと突っ込む。

 

 高速移動によるショルダータックル。

 

 六花の重量は約七十キロ、私の体重が…………私の体重はおいといて。

 百二十キロ超える重量の体当たり、これをいなしたりは出来ない。

 

 絶対に勝つ。

 私は攻略者として生きていく――――。

 

「いいのよ、大丈夫。里々ちゃんもお母さんみたいに、子供を産んでしっかり育てれば生きていけるからね」

 

 赤点のテストを見ながら、体育の徒競走でビリを取ってきた私に母は優しくそう言った。

 

 親心だったんだと思う。

 何をやっても人並みに出来ない、周回遅れの私が気に病まないように……母は私を安心させるために度々私に人工授精を勧めた。

 

 母自身が私を身ごもり出産して育てることで、専門的な職にない母は国からの援助や補助によって安定した暮らしを得た実体験からの言葉というのはわかっていました。

 

 現在の日本の人口は六千万人、三十年前の約半分にまで減少している。これは深刻な問題であり、その中で子供を産んで育てることは立派なことというのもわかっています。

 

 母が私を大事に思ってくれて、愛しているからこその言葉ということは、わかっている。

 

 でも、違う。違うんだよ、お母さん。

 私が聞きたかったのは、言って欲しかったのは――――…………。

 

 いや、もういい。

 違うかどうかは、私が努力と根性で証明するしかない。

 

 私が私をもって、私は私を証明する。

 

 だから認めない、私は認めない。

 乃本氏のような、シンデレラなうさぎを認めるわけにはいかない。

 

 そんな私の思いと想いの重さが身に纏った六花に共鳴し、呼応するように出力を上げて応える。

 戦闘ペットは攻略者の精神力でさらに力を発揮する。

 これは私と六花の最高速度、私の勝ちだ。

 

 高速ショルダータックルで接近する私に対して乃本氏は、逃げずに構える。

 

 乃本氏は真正面から深く腰を落とし。

 右足で大きく踏み込んで。

 私の接触に重ねるように。

 

 右の拳で打を放つ。

 

 無謀だ。

 その一撃ごと、弾き飛ばす。質量差は絶対――――。

 

「――――ッ⁉」

 

 凄まじい乃本氏の一撃による衝撃で六花が私から剥がされ弾け飛ぶ。

 

 なっ、なにが――――なんて思考をする間もなく。

 

 乃本氏は私のお腹への突きを寸止めした。

 

 負けた。

 完全にこれ以上なく、完敗だ……。

 

 私はその場でへたり込んでしまう。

 

 信じられない技量……、男女差とかそんな話じゃあない。

 生身で……戦闘ペットを用いる攻略者を素手で打倒……常軌を逸している。

 

 単なる才能とかで片付けられる話じゃあありません。

 人間なのかどうかも疑わしい……怪物……いや、超人とでも言いましょうか。

 

 いったいどれだけの鍛錬を積めば、人は人を超えられるというのか……。

 

 頭の中でぐるぐると混乱しながら少しずつ現状の把握に務めていると。

 

「……まあ確かに俺はヴィオラより弱い、兄弟でも一番弱かった。だから必死に鍛えてきた。認めてもらえたら有難い」

 

 そんな私を見て、乃本氏は手を差し伸べながら笑みを浮かべて私にそう言った。

 

「ええ、認めざるを得ないですわね」

 

 私はそう返して、乃本氏の手を取った。

 

「うん、かなり鍛えこんでいる手だ。今の実力を作るのは日々の訓練だけだからな……努力だけじゃあどうにもならないことだらけだが、努力なしでどうにかなることもない。俺も精進するよ」

 

 私の手を握って、私の心の一番真ん中にある敏感な部分を優しく撫でるような言葉を向ける。

 

 おへその辺りが熱を持ち、耳も熱くなる。

 なにこの感じ……なんか、これって。

 

「色めき立ってんなよ小娘……っ!」

 

 そんな声に振り向くと、巨大化した乃本氏の戦闘ペットに睨まれて。

 

 私の中の謎の感情は、一旦吹き飛んだのでした。

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