ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜 作:ラディ@小説家もどき
技術者は老いた。
記録回路に残る一番古い技術者の容姿と現在の容姿が、同一固体だと認識が難しいほどに痩せて小さくなった。
技術者は稼働時間のほぼ全てを、私の開発へと向けた。
天才がその稼働時間を注ぎ込み、世界の技術力を加速させ続け、現実をも歪めて振り切った結果。
思念伝達完全変形万能機械のプロトタイプ。
とはいえ、私はプロトタイプでありアーキタイプではない。
このまま技術者は私を基に、より生産性を上げるため部品や構造を簡素化させたアーキタイプを造りアーキタイプから量産させる体制に入るのたが。
技術者にそこまでの稼働時間は残されていなかった。
活動限界の近い技術者は迷宮を出て外の人間に『リコー』プロジェクトを引き継がなくてはならなくなった。
すでに技術者は迷宮追放刑という刑罰により、死亡したことになっている。世の中と足並みが揃わず落ちて溢れたことで迫害された。
それでも技術者は、外部に協力を求めに王城へと赴いた。
しかし。
「――はー……、なんかすっげえ怒られちゃったよ……。人工的に魔獣を生み出すのは神に背く行為なんだってさ、死刑だって僕」
酷く損傷し帰還した技術者は語る。
言動と視認情報から推測するに、地上で戦闘を行ってきたようだ。
技術者の魔法は『物質透過』だ。無生物に限り、技術者は自身と自身の延長とするものをすり抜けさせることが出来る。
迷宮の壁をすり抜け、魔獣と接触せずに研究室を置くことが出来ていたのも『物質透過』を用いたものだ。
私の開発にも分解せずに内部構造を改修するのに用いられている。
戦闘にも応用は出来るが、戦闘向けの魔法ではない。
この天才である技術者も戦闘という角度から見れば、壁をすり抜けられる変わった老人でしかない。
「いやー便利なんだけどね、迷宮も魔獣もあるんなら上手く使えば資源なんだけどねえ。共存と捉えられてしまったみたいだ、確かにそれは信仰に反するけど……うーん難しいね」
損傷箇所を修理しながら技術者は語る。
信仰。
人類は、神という観測不可能な上位存在を構築し法や教育の根底に活動を行なっている。
その中で魔獣は人類を仇なすものとされている。
実際、魔獣は人類を仇なしているので間違いでもないが。
拡大解釈や曲解により、技術者のような例外は理解されづらい世界となっている。
「とりあえずトンズラこいて来たけど……そのうちここも見つかっちゃうかもね。それは避けたい」
寂しそうに技術者は語る。
「兵器転用すれば減刑されるって話みたいだけど……断ってしまった。いやー強いね王家騎士団ってのは……なんか最近新設されたばかりらしいけど……左手が取れちゃったよ。この国は安泰だね……念の為に戦闘用義手をつけておいて正解だった」
左手を交換しながら技術者は語る。
老いた技術者は自身の肉体にも改修を行なっている。
私を造る過程で出来たものを用いて、手足や臓器の一部を改修している。
戦闘用義手は私を戦闘用に変形させる為、試作した兵器を詰め込んだものだ。
技術者の開発した武装は、この世の文明レベルから逸脱しているのも事実ではある。だから戦闘を行なっても生存し帰還が可能だった。
「この『リコー』プロジェクトは、何でも出来るがテーマだ。戦うことも出来るが戦いのためのものじゃあない」
左手で右腕に点滴針を刺しながら技術者は語る。
プロジェクト内容。
技術者の目的は、思念伝達完全変形万能機械の量産。
機能を絞った戦闘モデルの量産なら、十四億六千七百七十八万三千八百四十秒前の時点で可能だ。
技術者はそんなものを『リコー』の名を冠するプロジェクトの目標に設定しない。
「戦いを中心に据える気はない、中心に据えるべきは生活だ。戦いは生活の延長線上の出来事でしかないからね。そもそも不便がなくなれば争いも消える、みんなお腹いっぱいで教えたり教わったりって勉強する余裕があれば……まあ別にそれはいいか、こんなものは後付けのもっともらしいだけの言い訳だからね」
酸素を吸引しつつ技術者は語る。
建前。
私の記憶回路にもこの情報は保存されている。
でも理解している。私は技術者を理解している。
技術者がそんな目的で私を造っていないことは理解している。
「造りたかったから造った。リコーが死んで他にやることがなかっただけだ」
心とは裏腹な笑みを浮かべ技術者は語る。