ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜 作:ラディ@小説家もどき
「へー、どう? 掴めた?」
私は空のボトルを受け取って、手応えを尋ねる。
「あー……微妙だな。これかなって思ったら、次の瞬間違うと思ったり。ミスったと思ったら良い出力ができたり。かといって再現しようとすると出来なかったり…………まあ鍛錬中って感じだ」
タオルで首元を拭いながら乱丸は所感を答える。
「ふーん、まあ面白いんならいいんじゃない? 試行錯誤ってなんだかんだ楽しかったりするし」
私は訓練場のベンチに腰を下ろしながら、適当に返す。
来たはいいけど、やる気はない。やる気が出るまで座って待つことにした。
「いやぁ……実はあまり楽しくないというか、煮詰まってはいる。単純に武の道というのは終わりがないし、これは見た目よりかなり緻密な身体操作を要求される。反復練習しかないのはわかってはいるが……実戦投入には遠すぎてな。なかなかに辛い」
乱丸も休憩に入るタイミングだったのか、私の隣に座りつつ現状について語る……けど。
「……? ならやめたら良いんじゃない? 私はナンセンスを真面目に取り組むって人生において凄く重要で大事なことだと思ってるけど、流石にしんどいならやめていいでしょ」
私は乱丸の語りに対して、率直な感想を伝える。
「特に乱丸は攻略者として回復役っていう超重要ポジションでそれに見合うクレバーな判断能力や身体能力を有しているんだから遂行に徹するだけで私たちを攻略に導けるし」
さらに続けて現状の乱丸に対する評価を語る。
一緒に組むまでは雑魚王子の認識だったというか、名実ともに雑魚王子だったけど。
今の乱丸は超優秀な回復役だ。
こんなに動けて、クレバーに継戦を意識できる回復役は札幌でもそうそういない。
回復役は医学畑の人がなることが多いので、あんまり動けない人が多いからね。
前に出つつ無茶をしない、自身の価値を理解しつつ最大限に回復能力を使える位置取りができる回復役はかなり優秀だ。
だからこそ。
「あくまでも趣味性の強い『ワンチャンどっかで出来たらいいな』くらいのものなら面白いと思える範囲でやらないと本末転倒だよ。苦痛は遠ざけようとするのが生物としての本能、だから私たちはモンスターを殺してダンジョンを消しているんだからね」
私は根を詰めすぎないように、釘を刺す。
エスメラルダで回復ができるとはいえ、オーバーワークは疲れを残す。
今は準備段階だけどちゃんと攻略作戦行動中、趣味に興じるのはいいけど辛い思いまでしてやることじゃあない。
せめて無茶なオーバーワークをするんなら、こんなわけのわからない体当たり訓練より医学的な知識をエスメラルダにフィードバックさせる方に費やす方が有用だ。
間違った努力を美化できるほど、余裕のある世界じゃあない。
「……暗木、これマジなんだ。僕はマジに大規模攻略や絶災級討伐において火力としても機能したいと思っている」
私の釘刺しに対して、乱丸は真摯な眼差しを私に向けて言う。
私はそれを聞いて。
「へえ面白い、詳しく聞かせて」
やっと見つけた今日一番の面白そうなことに、私は前のめりに食いついた。
そこから乱丸は語り始めた。
どうにも、乱丸は自身の分隊内における活躍に不満……いや不足があると考えているようだ。
玄海居住区でのモンスター掃討で、自身が戦えていれば私が一対三で戦うこともなかったし。
自身が戦力としてモンスター討伐組に参加していれば、成子ちゃんに怪我をさせずに済んだかもしれなかったし。
そもそも青竜王の『幻惑』が効かなかったら、乃本氏を単独で大規模ダンジョンへ向かわせたりなんかもしなかった。
自身が戦えたら攻略速度が上がる。
攻略速度が上がれば負傷や損傷が減る。
乃本氏の負担も減らせる。
多角的な火力はあっての損はない。
自身が対モンスターへの火力を出すには、戦闘ペットではなく自身の技を鍛えるしかない。
まあ、そんなことを乱丸はつらつらと語った。
「――だから僕が、現状一番戦えない僕が戦力として計上されたら攻略がより楽になると思うんだ」
乱丸は語り終えた。
なるほどね。
理屈や理由はわかった、納得感もありそうな空気は感じた。
でもね。
「ふーん。まあわかるけど……
「な……、ええ……?」
私はがっかりしながら感想を述べると、乱丸は困惑の声を漏らす。