ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜   作:ラディ@小説家もどき

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03小さくて幼い乙女心

「別にあんた一人で攻略速度はそれほど変わらない。結局絶災級討伐での火力は乃本氏かミライちゃんか里々ちゃんがやるし、私や成子ちゃんは陽動と拘束でさらにあんたは回復役として。役割に徹して連携することは現代のダンジョン攻略において大事なことってことくらいわかってないわけがないでしょ。学生でもあるまいし」

 

 困惑する乱丸をよそに、私は容赦なく現実的な意見を述べる。

 

 大昔は自衛隊やらそういう国防組織は技能の差はあれど基本的な行動はみんなができて、どこが欠けても誰でも補えるようにしていた。

 でも戦闘ペットの有用性に依存する攻略者は、多岐にわたる特性を持つ戦闘ペットによって足並みが揃わない。だから攻略隊では役割での振り分けを基本としているし、パーティや個人単位での管理をすることが多い。

 

 そんなことは攻略者なら当然わかっている、乱丸もわかっている。

 

「なんかそれっぽくかっこつけてるけど、理由があるからとか理屈があるからとかがイコールで『かっこいい』になるわけじゃないからね。『かっこいい』は結果論であって、かっこつけたところでかっこよくなるとは限らないわよ」

 

 私は淡々と、私の中のがっかり感を言語化していき。

 

「この話において重要で、一番面白いところは『じゃあなんで喜怒乱丸はかっこつけようとしてるのか』って部分なのよ。なんであなたは役割を超えた活躍を望むの?」

 

 しっかりと目を合わせて、今日一番の面白そうなことに切り込んでいく。

 

 面白いにナンセンスは欠かせない。

 でもナンセンスだけで、面白さは生まれない。

 

 無駄や矛盾や苦労や苦痛は達成感への(かて)でしかない。

 だから乱丸が、こんな本来意味のない努力をかっこつけてまで正当化しようとするその根幹を知りたい。

 

 間違えてるだけとか、攻略のためとか、つまらな過ぎる。

 乃本氏への負担を減らしたいってのが一番それっぽいけど、申し訳ないけどそれはただのお節介だ。

 

 あれは多分、日本を救えるなら全然死んでも良いと思っている。

 

 乃本氏は自分に対する負荷を負担とは思っていないというか、感じてすらいない。

 当然、呼吸とか歩行とか……いや新陳代謝とか心拍とかくらいに生存機能として国防を行なっている。

 彼を心配したり、身を案じるのは余計なお世話なんだろう。

 

 じゃあなんでそんなつまらないこと、頑張ってやってんのか。

 

 それの根っこ。

 この話の面白さは、そこにしかない。

 

「…………僕は……」

 

 私の謎の熱量に押されて、乱丸は。

 

()()()……()()()()()()()()()()()

 

 ぽつりと、この話の根っこを口にした。

 

「なんだろう、向水や里々や成子が……羨ましかったのかもしれない。僕は……乃本が好きで……多分これは恋なんだ」

 

 ゆっくり、乱丸は外に出したことのない想いを言葉にしていく。

 

「僕は男として育てられた。でも男にはなれなかった、僕はどこまでいっても乙女に対する憧れを消しきれなかった。育ちと自認が噛み合わなかった」

 

 一度開いた扉から、想いが溢れ出てくる。

 

「でもまだ女でもないんだ。だから……恋なんてもの、ゲームや小説の中でしか触れたことのないものが…………わからないんだ」

 

 恥ずかしそうに、でも誇らしそうに、少し辛そうに乱丸は語り続け。

 

「だから、とにかく今は乃本に僕がちゃんと力になれることを認めてもらいたいんだ。みんなのように……」

 

 最後に扉に引っかかる想いも、吐き出した。

 

 私は全てを聞き入れて、思う。

 

 ああ、乱丸思っている以上に乙女なんだ。

 なんて可愛いんだろう。

 

 これは恋。

 でもまだ拙く、やっと表に出せた幼い乙女心だ。

 多分ちゃんと初恋、でもこれは乙女として足掻く乱丸のアイデンティティに対する戸惑いも混ざっている。

 みんなと同じように、乙女たちとして好きな人に見られたい。

 そんな思いが混ざった、乙女心。

 

 この生まれたばかりの乙女心は、私が何か冷やかしを口にするだけで消えてしまうほどに純粋で尊くて脆い。

 

 大人が不用意に茶化すだけで消えてしまうような、小さくて幼い乙女心。

 私も大人だから、こんな小さな思いを気づくこともできず簡単に踏みにじれてしまう。

 理解や尊敬やセックスだけが恋愛ってわけじゃあない。

 

 初恋はこれでいい。

 だから私はこの可愛さを乱暴には扱わない。

 

「……面白い。なら思う通りにやってみなさい、無理も無茶も面白いなら良し」

 

 私はそう言って。

 

「がんばれ! ランちゃん!」

 

 笑顔で親指を立てて、全力の応援をする。

 

「ランちゃ……っ、………………ああ頑張るよ。ヒカ……ヒーちゃん」

 

 驚きつつ、ランちゃんも親指を立てて可愛らしい笑顔でそう返した。

 

 ここからランちゃんは体当たりを続けて。

 打撲だらけの身体をエスメラルダで回復して。

 また体当たり。

 

 乙女心を燃やして、ランちゃんはただひたすらに憧れの男の子に褒められるため当たって砕ける。

 

 いいね、面白い。

 私はこういうのに触れていたい。

 

 だからさっさと四国ダンジョンなんて面白くないものは終わらせてやろう。

 

 まあ全然、私はサボるんだけどね。

 

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