ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜 作:ラディ@小説家もどき
身体をくねらせて超質量体当たりで、モンスター人間を狙う。
まだ動くのか……っ、あんなに焼かれて……絶災級の耐久性はとんでもなさすぎる。
それに速すぎる間に合わな――――。
緑竜王の身体がモンスター人間に接触する寸前。
鬼の形相の乃本が凄まじい速さで割って入り、モンスター人間突き飛ばして庇う。
乃本は緑竜王の体当たりをモロに貰い。
ぐしゃぐしゃにひしゃげながら、打ち上げられ。
裂けた身体から血を撒いて宙に舞う。
「ェェェエエエスメラルダアァ――――――――ッ‼」
僕は乃本へエスメラルダを伸ばして、回収する。
エスメラルダを通じてバイタルを確認。
心臓は動いている、呼吸もギリギリ。右目も弾け飛んだようだ。
でも臓器も無茶苦茶で骨もぐちゃぐちゃだ、生命に関わる重症。
いや今の衝撃で重症で済んでいることが既に奇跡だ。
というかなんだこの身体……骨密度も筋密度も神経系もそもそも細胞レベルで、違う。
男女差……? いやあり得ない、ここまでの差はもう別の生物……いや人間を超えている。鍛えてどうこうとかの話じゃあないぞ……。
「――俺……ば、放置でいい……。ほっとけ……ば、治る……っ、民間……人……は……?」
砕けた顎を無理やり動かし、吐血に溺れながら乃本が問う。
「喋るな‼ 民間人? モンスター人間は…………離脱したようだ! おそらく無事だ‼ ……っ」
僕は乃本を寝かせながら辺りを見渡して答える。
なんてことだ……。
僕の迷いで、僕がモンスター人間を止めていれば……。
何が乃本の負担を減らすだ……っ。
全てが中途半端……、くそ……っ泣きそうだ。
男でもない、女にもなりきれない。
そして攻略者としても落第点。
頭では徹底した遂行こそが攻略作戦に最も重要だということを理解している。
でも直感的な判断を捨てきれずに、迷った。
しかもその迷いは、甘えだ。作戦外の民間人に、甘えた。
さんざっぱら男らしくと、誰より前に出て危険に飛び込んできて。
やっとこさ冷静に、無茶をせずに役割に徹するようになったのに……っ。
なにやってるんだ、僕は。
なんなんだ、僕は。
結局何にもなれちゃあいない、自分らしさすらわかっていない。
全てが半端で、何も出来てない。
自分が嫌になる……っ僕は何がしたいんだ――――。
「…………が……っ、ごば、げえぇぇ…………かっ、はー……はー、このまま……だと、民間人に……被害が、出る……っ」
口から信じられない量の血を零しながら、乃本は焦点が定まらない目から焦げ付くほどの熱を放ちながら。
「躊躇うな……っ、た……畳み掛け……ろ。ここ……で、終わらせる……」
そう言った。
熱。
瀕死になりながらも止まることのない乃本から燃えるような熱く暑く厚い思いが、僕の網膜から伝わり頭と心を焦がす。
熱はあっという間に燃え上がる。
僕の中の半端な迷いや悩みや躊躇いという不純物が、焼けて落ちて。
心の純度が上がっていく。
ああ、全部が鮮明に、はっきりとしていく。
僕がどうしたいか、何をしたいか。
僕がなんなのか、何になりたいのか。
僕は、乃本が好きだ。
でもこれは恋じゃあない、憧れだ。
男になれない僕の、男に対する憧れ。
女になりきれない僕の、性的な幻想への憧れ。
攻略者として落第点の僕の、強さとしての憧れ。
つまり僕は、乃本になりたいんだ。
男とか女とか攻略者とかじゃあない。
乃本のように、迷いなく自分の力で脅威をねじ伏せる存在になりたかったんだ。
乙女ゲーの超絶イケメンスパダリに甘やかされるヒロインとしての欲求は、乙女ゲーで足りている。
僕は乙女ではあるしスカートや長髪も化粧もちんちんも興味はあれど、ヒロイン自体に憧れはない。
欲するはヒーロー、白馬に跨り颯爽と全てを解決するプリンスとしての活躍。
僕の中の乙女がこの憧れを恋に落とし込んでいた。
恋にすり替えることで、諦めようとしていた。
喜怒家で男になることを強制され矯正されてきて、抑圧された乙女が生んだ錯覚だ。
ああ、スッキリした。
僕はシンプルだ。
僕はこのまんま、男でも女でもないままで。
前人未到の活躍によって。
父や周りの奴らを捻じ伏せたいだけなんだ。
終わらせる。
僕が終わらせるんだ。