ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜 作:ラディ@小説家もどき
私もそう思う。
なんというかマー坊は強いし便利だけど、その強さは暗木さん有りきというか……。
厳密には違うけれど、暗木さんの戦い方は私の着装合体と近い。攻略者自身の運動性や戦闘能力を戦闘ペットによって底上げして武器にするタイプです。
マー坊は強いけど、暗木さんが強いからマー坊も強いというのが私の認識なのです。
「はあ馬鹿者が……確かに今の悪樓は弱っているし本領を発揮していないだけだ。そいつは水を操るのだぞ、陸ではただの魚だ」
ヴィオラは呆れ果てながら、乱丸さんへと返す。
水を……そっか。
「待って、じゃあマー坊が海に入れば沢山の水を操って凄まじい力を発揮できるってこと? だったらその力で一気に黄竜王を――」
「世界を滅ぼしたいのならそうしろ、私は知らんぞ」
私が気付くより早く向水先輩がその可能性を語ろうとしたところで、ヴィオラは被せるように言い放つ。
「悪樓は水を操る、それに際限はない。海に浸かればこの世界の海を全て悪樓に掌握されるのだぞ」
ヴィオラは呆れつつ、マー坊の能力について語る。
…………え? 際限が……ない?
「まずこの日本は簡単に海に沈むだろう。水を一ヶ所に集めれば何処かの海は干上がるだろう。あっという間に、悪樓の気分で世界の形が変わる」
淡々とヴィオラはマー坊の力を語り。
「黄どころの話じゃあない。小娘共の足りない知性では必死に考えても理解できぬかもしれんが」
冷たく平らに、堂々と不敵に。
「海は広いんだぞ」
ヴィオラはそう、宣った。
当然。
でも当然すぎて想像が出来ない。
地球の表面における海の割合は七割。
三割の陸地の中で、人が暮らすのに適した場所に人類はなんとか繁栄している。
人類の暮らしからしたら、それ以外の七割が意思持って襲いかかる災害となる。
海は広い……広すぎて想像が出来ない。
でも……どれだけ私の想像力が乏しくてもこれだけはわかります。
それは、世界の終わりです。
「……じゃあまあ、マー坊を海に浸からせるのはナシとしてだ。それでもマー坊は黄竜王の力に影響されず、最大限の警戒を押し付けることが出来るのは事実というのは理解できた。ありがとな」
冷静に百一君はヴィオラを正面に抱え直しながらお礼を言う。
「んー、ちゅーしてくれたからな。いっぱい話して飽きた、風呂にはいりたい」
百一君にぎゅっとくっつきながらヴィオラは柔らかい声でそう返した。
ここで情報共有を一旦終えて、百一君は此花ダンジョン攻略作戦を考え始めた。
解散後。
私は高浜攻略隊の訓練用グラウンドにて剣を降る。
購入した二本目のロングソードを振って手応えを確かめたかったのです。
うん。いつも使っているものよりも軽く、私の力でも十分に扱える。
六花なしでどれだけ戦えるのか……、流石に百一君のようには不可能ですが……小災級くらいなら。
でも恐らく黄竜王は自身の守りを盤石にするため、強力なモンスター……壊災級や滅災級相当のモンスターを大量に集めていると考えられます。
戦闘ペットなしでの攻略か……、まあ百一君の作戦を待ちましょう。
「ふー…………ん?」
一息ついて、汗を拭っていると遠くに見覚えのあるシルエット。
暗木さんが一人で黄昏ているのが見えた。
何か考え事でしょうか。
まあ先程の話の後で、何も考えないわけがない。
何か思うところはあると思います。
突然自分の戦闘ペットが世界を滅ぼしうる力を持っているなんて告げられたら、私なら……どうするでしょうか。きっとショックを受けるでしょう、不安にかられます。
だから多分、暗木さんは知っていたんだと思います。
思えば温泉の時も、小倉から伊方への船旅も、暗木さんはマー坊を水へつけないように努めていました。
そもそも戦えることを隠していたり、マー坊自体の解析も嫌がっていました。
あれはきっと「ついにバレたか」の考え事だと思います。
…………少しだけ私の中に不安が過ぎる。
「……暗木さん、めんどくさくなってる…………?」
私が不安をつぶやいた頃には、遠くに見えていた暗木さんは消えていた。
追いかけようにも姿は見えない。
まあ、これは結局ただの杞憂でこのあと宿で普通に会いましたが。
私の稚拙な杞憂は想像力不足で大外れして安心したのも束の間。
このあとに起こる想像もできないほどの出来事に、私は自分の想像力のなさを痛感するのと同時に。
暗木さんの強すぎる意志に、ただ驚くことしか出来なかったのでした。