ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜   作:ラディ@小説家もどき

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03結局

 それが男らしさなんだろ、それが男として生きるってことなんだろう。

 僕の真ん中から、真っ黒な熱が噴き出す。

 止まらない、ああ、どうしようもない……っ。

 

「ふざけるな……ふざけるな貴様あぁ――――――っ‼」

 

 僕は思いのままに、心をそのまま吐き出してぶつける。

 

「な……っ! なんだ、何してんだ作戦行動中だぞ……!」

 

 僕の声に驚いて、乃本が反応を見せる。

 

「僕は攻略隊所属、喜怒乱丸だ‼ こっちはエスメラルダ! 防御力と回復治療を兼ね備えたスーパー戦闘ペットだ!」

 

「へえ、そりゃあすげえな。衛生治療兵か、俺に怪我はない他を診て回れ」

 

 堂々と名乗る僕に、乃本は端的にそう返すが。

 

 僕は止まらない。

 

「貴様は男なのに……男らしく……そんなの男らしくないじゃないか‼ 正々堂々、真正面から立ち向かってこそ! 怪我も恐れず戦うのが男だろ‼ こんなの……こんなの男らしくない……っ‼ 僕がなるべき男は、そんなものじゃあない!」

 

 ただひたすら僕の中の男を捲し立てる。

 

 わかってる、こんなものは単なるいちゃもんでしかないことはわかってるんだ。

 

 それでも……僕は生まれて今に至るまで二十二年間を男として、男らしくあるために生きてきたんだ。

 それが本当の男が優秀な戦闘ペットの陰に隠れ戦場では逃げ回る姿を見て、認められるわけがない。

 

 これを認めてしまったら、僕の人生は……僕が僕として生きてきたことを否定することになる。

 

「……あー? いや作戦行動下において性別による差異なんかつけてる暇はないだろ。在るのは精々個体差、俺は俺だしおまえはおまえだ。別にわざわざ男にならんでも、女のまま遂行出来れば関係ない。必要なのは遂行能力であり、重要なのは結果でしかない」

 

 乃本は熱くなる僕と対照的に、冷めた……いや落ち着いた様子で僕の思いに理屈で答える。

 

 ……くそっ、泣きそうだ。

 わかるよ、僕だって馬鹿じゃあない。

 攻略隊所属の攻略者だから、理屈はわかる。

 

 でも、それじゃあ――。

 

「僕は……なんのために――――」

 

 そんな男らしさの欠片もない泣き言を漏らしそうになったところで。

 

 乃本の背後から獅子型のモンスターが鋭い爪を振り下ろして襲ってくる。

 

 当然、僕が前に出ようとした。

 僕が真正面から受ける気で動こうとした。

 

 しかし、乃本は凄まじい速さで振り返り。

 踏み込みから一挙動でモンスターの腹部にローリングソバットを突き刺す。

 

 ソバットでめり込んだ腹部からモンスターに流れ込んだ力は、肉や骨を砕いて進み。

 

 モンスターを破裂させて、ぶっ飛ばした。

 

 遠心力や重心移動、抗力や反力を余すことなく乗せて打ち抜いている。

 それだけじゃあない……、発勁ってやつか? あまり詳しくないが中国武術で用いられる出力方法のようなものだったと思う。

 

 僕は空手をやっているから、この蹴りの凄さがわかる……。千や二千じゃあ効かない、何万何十万何百万とただひたすら打ち込んでこないとこの蹴りは打てない。

 

 これは性別とか才能とかじゃあ片付けられない。

 男とか女とか関係ない、人を超えている。

 

 彼は超人なんだ。

 

「無茶をすんな馬鹿たれ、怪我治すやつが怪我してどうすんだよ」

 

 乃本は何事もなかったかのように、僕へと語り出す。

 

「災害作戦における負傷者の治療を行える衛生治療兵は作戦の要だ。相手はモンスターだからジュネーブ条約を守ってはくれないからな」

 

 冷静に、僕を諭すように語りを続ける。

 

「逃げろとか下がれなんてことは言わねえ、だが無茶のしどころは考えろ。今のおまえは男でも女でもなく攻略者だ、最善が何かってことだけを考えて動き続けろ」

 

 僕の心を直接打つように、確実に届く言葉を並べて。

 

「おまえは自分が思っている以上に、戦略的な価値がある。日本を救うのに必要な存在だ」

 

 にこりと、可愛い笑顔で僕が一番欲していた言葉を言ってのけた。

 

 乃本の言葉に、僕の心が動く。

 心臓が跳ね上がる、鼓動が高鳴る。

 血液が身体を駆け巡って、じわじわと全身が熱くなる。

 

 悪くない気分だ。

 

「やってやるさ……っ」

 

 高鳴る鼓動に僕は勇ましく、呟いた。

 

 まあ家に帰って、少女漫画を読んでいる時にこの胸の高鳴りをやっと恋なんだと気づくと同時に。

 

 僕はどこまでいっても結局、乙女なんだと自覚してしまったのであった。

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