ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜 作:ラディ@小説家もどき
「なるほどな、なら心はまだ燃えているんだな。だったらあんた、このまま攻略隊に合流しないか? 元自の話を通せる人間が攻略隊にいる、俺たちに関することも理解している人物だ。問題なく迷宮災害根絶に参加を――――」
百一はそれを聞いて九十郎さんを攻略隊へ勧誘し始める。
確かにこの人なら攻略隊でも大活躍できるだろう。
これだけ動けてあんなに気配を殺せる超絶達人みたいなこと出来るのなら年齢は関係ない。
それにSランクである乃本百一の推薦と、佐々崎先生の工作があれば男であることとかを隠して攻略参加も出来るかもしれない。
「いや……これで俺の任務は完了だ。俺の稼働時間の残りは恐らく三日程度だからな。とっくに対応年数は過ぎているのに九十七年も……よく動いたもんだろう」
優しく、柔らかく爽やかに、九十郎さんはそう言った。
「……し、失礼っ……………………………………本当だ」
僕は即座に九十郎さんの身体に触れて診察を行って言う。
九十郎さんの肉体は限界だった。筋繊維の回復はしていない、背筋を伸ばしているのも話しているのも無理をしている状態だ。
内臓の活動も、アクセルを離して惰性で走る車のように緩やかに活動を停止しようとしている。
安静にしていれば一ヶ月……いや九十郎さんの肉体強度なら数ヶ月は持ったかもしれないが、ここに来るまでの運動量で命は削れている。
僕の見立てた余命は……三日。
こんなに正確に、かつ冷静に自身の余命を測れるのにも驚いたが。
何より当然のように、この装備を百一へと引き継ぐために平気で命を削れる精神性……いや狂気に驚いた。
ここまで長生きして、ここまで仕事を全うして、もう安らかに過ごしてもいいだろう。ヘルパーの可愛い明日花ちゃんに看取られて余生を過ごせばいいだろうに。
この人は、本当に最後の最期まで命を使い切ろうとしているんだ。
「…………はあ……、老いると無駄が多くなって困るが。言わせてくれ」
少し眉をひそめ、ため息混じりに九十郎さんは前置きを述べ。
「日本を頼むぞ、百一番。俺は弱火でじっくりと命を燃やしたが、使い切った。おまえもその命で日本を救え」
目から炎がゆれるくらいに真摯な眼差しを百一へ向け、低く通る声でそう言った。
「……言われるまでもないが、聞いておく。後は任せろ、九十番」
百一も九十郎さんの言葉に真摯に返す。
一瞬だけ室温が上がった気がした。
これが男同士の会話……、いや戦士の会話だ。
命を遂行の勘定に入れている者同士の言葉。
「さて、そろそろ戻る。ヘルパーの明日花ちゃんが心配するからね。キュートばあちゃんは戻るよ」
百一の返しににやりと笑って、柔らかい声で九十郎さんはそう言って椅子から立ち上がる。
帰りは僕がおぶっていこう、少しでも体力を温存してもらった方が良い。
なんて考えていたところで。
「いや、残り三日あるならうちの隊の射撃訓練を手伝ってくれ。基礎的な部分だけでいい」
百一は余命三日の九十七歳の老人に向けて、そう言った。
「……なっ、ええ…………」
「……流石に…………いや面白いけども……」
僕とヒーちゃんは絶句する。
鬼かこいつ……、ここまで守ってきた装備を提供してもらってまだ何かさせる気なのか?
人の心が……人命最優先を掲げる百一が……なんなんだこいつ。
「確かに……そうだな、その通りだ。まだ三日ある、良いだろう。残りカスだが有効に使おう。ありがとう……最期まで命を使い切れる。心から感謝する」
慄く僕をよそに、九十郎さんは今日一番の笑顔でそう言った。
ああ、やっぱり僕は男にはなれないな。
この狂気的な精神性を、心の何処かで肯定できていないのだから。
ここから武装類を百一のマジックバッグに収納し、ヴィオラが崖を崩して保管庫を破壊した。
そして翌日というか数時間後。
九十郎さんは本当に迷宮攻略分隊に小銃の持ち方や構え方以前の銃口の管理や弾薬の確認などの基本的な扱い方教えに来てくれた。
そのまま三日間、みっちりと教えてくれた。
さらには私に化粧品の使い方まで教えてくれた。
九十郎さんの変装や化粧の技術は凄まじい、本当にためになったし化粧品も少し分けてくれた。
柔らかい物腰で、私たちができるようになるまで丁寧で厳しく教えて。
そして、私たちが丁寧に小銃を扱う姿を満足そうに見届けて。
四日目には、現れなかった。