ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜 作:ラディ@小説家もどき
ああ、自由に生きたい。
つまらないのは嫌だ。
もっと面白いものを、もっと楽しく。
もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと。
こうして、暗木ヒカリは満たされたくなった。
私は魚にマー坊と名付けた。
悪樓と呼ばれてきたことはわかっていたし、他にも色んな呼び名があったけど。
名前によってかたちをつけたくなかった。
だから可愛くて優しい名前にしたかった。
魚について調べるために手に取った図鑑の著者が子供の頃マー坊と呼ばれていたから、そのまま私はマー坊と名付けた。
マー坊と混ざった私は、あらゆるものを見限った。
何もない田舎、何もない親。
ここはつまらない、もっと面白くないとダメだ。
だから私は資料館で出会った学者の人の話に乗って故郷を出て色んなもののある高浜大居住区へと移り住んだ。
面白くないとマー坊は海を目指そうとする。
混ざって繋がった私を幾度も海へと歩かせようとした。
私はそれに抵抗するように、面白さを求めて色んな居住区を渡り歩いた。
水を売って。
子供の出来ない気持ちいいだけのセックスをして。
モンスターを殺して。
色んなモノを食べて。
色んなモノを見て、聞いて。
利用されすぎないように。
怖がられないように。
嫌われないように。
好かれすぎないように。
楽しく適当に、なるべく面白おかしく。
そして私は札幌に流れ着き。
乃本百一氏と出会った。
世にも珍しい本物の男性ってだけでとでもなく興味を引くのに、信じられない強さや可愛くて人になる戦闘ペット。
もう面白すぎて夢中だった。
乃本氏やヴィオラちゃんだけじゃあなくてミライちゃんも、里々ちゃんも、成子ちゃんも、ランちゃんも。
みんな面白くて、私は迷宮攻略分隊のみんなを好きになった。
楽しかった。楽しかったんだ。
色んなとこ回って、大規模ダンジョン潜って。
それを黄竜王とかいうわけわかんないやつに無茶苦茶にされて、腹が立った。
そしてその怒りにマー坊が触発されて、私の行動と思考をより短絡的で破滅的なものに変えた。
マー坊はいつでも誰かの願いに応えようとしてしまう。
そういう神様なんだ。
優しくて不器用で可愛い、そんな神様なんだ。
だからもういいんだよ。
みんなを助けられたのなら、もういいんだ――――。
「――――……ぼば……っ⁉」
私は意識を取り戻して、口から息を吐き出す。
依然として私は上下左右もわからない水の中。
でも一つ分かるのは目の前に、乃本氏がいることだった。
え、なんで乃本氏が……まさかマー坊の水に飲み込まれたの? そこまでマー坊は見境なく暴れてるの?
なんて混乱する私の口を、乃本氏は唇で塞ぐ。
え? なに、いや私わりとベロチュー好きな方ではあるけどこんな時に――なんて考えたところで乃本氏はそのまま私に息を吹き込む。
空気を送って……、嘘でしょ私を助けに来た……?
いや、あり得る。
乃本氏は人命最優先を掲げている、目の前で人が海に落ちたら飛び込む。
そしてなんか……言葉はないけど伝わってくる。
乃本氏はこの状況を解決する気なんだ。
「――――……っ」
私から唇を離して乃本氏はハンドシグナルで、私に何かを伝えようとする。
これも何となくわかる。
マー坊の場所を聞いているんだ。
私は感じるままにマー坊の方を指す。
水全体からマー坊の思いが流れ込んでくるけど、その流れの元は私にはわかる。
それを見た乃本氏は私をぐっと抱き寄せて、背中に貼り付いていたヴィオラちゃんが光輪を展開して水の中を突き進む。
水の抵抗から庇うように乃本氏は私を胸に抱き寄せ、何度か唇を重ねて私に空気を送る。
そしてどんどんと水が冷たく、そして硬くなって来たところで。
近くにマー坊を感じる。
私はマー坊に向けて、硬い水の中で手を伸ばす。
思いは水を伝わり、マー坊も私に気づく。
手は届かない。
マー坊に集まる海への恐怖がマー坊を悪に、災害へと変えていく。
もういいよ、マー坊。
ここにあなたを縛るものはない。
一緒に帰ろう、一緒に旅をしよう。
楽しいことはまだまだもっと。
私と一緒に、みんなでもっと。
マー坊の心に私の思いが重なる。
マー坊に影響を受けたように、私の思いがマー坊へと影響を――――。
なんか十三垓だかなんだかの海水で世界を覆って、マー坊はあらゆる生き物を殺し。
もちろん日本もあっという間に海に沈んで。
当然乃本百一とか向水ミライとかモンスター人間とか外国で機を伺っていた乃本百一の兄であるとこの大和百太郎とかもみんな即死して。
モンスターもダンジョンも全部巻き込まれて。
なんか紫竜王とか白竜王とかも死んで。
私も死んで。
地球から殆ど生物が死滅し。
世界は滅亡して、この話はここで終わりを迎えたのだった。
おしまい。