ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜   作:ラディ@小説家もどき

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05フェアじゃあない

「大丈夫か? 少し強く投げすぎたか?」

 

 僕は里里に向けて心配の声をかける。

 

「いえ、そんなことはありません……私が……思っているより鈍臭いだけです」

 

 里里はエスメラルダから顔を出して返す。

 

 稽古中、里里は受け身を取り損なって地面に手を着いて手首を捻った。

 その勢いのまま肩口から背中を痛打した。

 

 なので僕の戦闘ペット、エスメラルダで包んで回復治療を行っている。

 

 でも驚いたな……いや鈍臭いとまでは思わないけれど、これだけ鍛えて体を動かしている人間にしては動きが悪い。

 

 なんなら調子が悪いのかと思うくらい……いや違うか。

 

「……あれだな。考え過ぎているというか、一個一個の動きが正解なのかどうかを気にしすぎな気がするな」

 

 僕は里里の動きの悪さについて、思うところを伝えることにした。 

 

「僕も別に人様に偉そうに言えるような攻略者でもないんだが、武道ってところにおいては僕の方が多少なりと経験値があるから少しわかる」

 

 一応、自分を棚上げにしているところも伝えて。 

 

「僕は大体のことを大体の人間は一回で出来るわけないと思っている。これは里里が鈍臭いとかではなく、稽古とはそういうものだからだ」

 

 素直に僕の中の考えや感覚を開示し。

 

「里里からは……これで合ってるっけ? とか、こうだっけ? あれこっち? って迷いが、身体の動きを邪魔しているように見える」

 

 具体的に里里に対して思ったことを言ってのけた。

 

 これは稽古だから失敗なんか気にしなくていい、怪我に気をつけて無茶さえしなければいい。

 今は色んなことことを試すための時間だ。

 

 僕が気を使わせて焦らせてしまったのだろうか。

 それとも何か里里に思うところがあるのだろうか。

 

 このまま続けてもまた怪我をしてしまう恐れがあるので、一回ちゃんと話をしておきたい。

 

「はい…………その通りです。私は昔から何をやっても駄目で……人の何倍も繰り返さなければ人並みのことをするのも難しいくらいに、何も出来ないのです。だから初めてやることはそもそも間違ってないか不安で仕方ないのです」

 

 里里は少し俯いて、自身を開示し始める。

 

「私は母にも諦められていました……。人工授精をして、子供を産んで育てらることを勧められていた……でも私は、才能のない『かめ』でも、攻略者として一人前になりたくて……ただひたすら鍛えきました。逆をいえばここまでやらないと、私には何も出来ないということです」

 

 少し投げやりに、しかし決意を込めた声で里里は自身について語った。

 

「なるほどね……はあ…………少し待っていろ」

 

 僕は里里の話を咀嚼し、回復中の里里にそう言ってその場を離れて。

 

 私用の荷物から自前の携帯ゲーム機を持ってきた。

 

「……? これはなんですか?」

 

 エスメラルダから左手を出してゲーム機を受け取って、里里が問う。

 

「これは【ノンプリンス☆ノンプリンセスⅢ〜幾年経とうと私たちは恋をする〜】だ。ノンプリシリーズの正当ナンバリングタイトル三作目、無印の百三十年前とⅡの十年後という二軸で物語が進む……まあ乙女ゲーだ」

 

 僕は誰にも言ってこなかった趣味について語る。

 

「はあ。私はこういったものに明るくないですが、綺麗な絵ですね」

 

 ノンプリⅢのオープニングムービーを見ながら里里はそんな感想を述べる。

 

「……乙女ゲーというのはいわゆる女性向けの恋愛シミュレーションゲームだ。主人公の女の子を通して、様々な男性キャラクターとの疑似恋愛やドラマストーリーを楽しむゲームなんだ」

 

 僕は乙女ゲーというカルチャーについて語り。

 

「つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。なんならかなり乙女だ、男として育てられても乙女止められなかった」

 

 僕は僕自身を開示する。

 

 少し声が震える。

 これは、流石に誰にも言ったことがない。

 具体的に言葉にするのも初めてのことだ。

 

 でも里里も僕に自分を開示した。

 僕も応えて答えてやらないと、フェアじゃあないと思った。

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