ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜   作:ラディ@小説家もどき

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04ここにいるの

「すごーい!」

 

 幼体が跳ねるように色めき立つ。

 

 おお、鎧程度でこれだけ色めき立つのなら私の第一形態でも見せてやったら弾け飛ぶのではないか? まあこの路地は狭いし物を壊すかもしれんのでやらんが。

 

 鎧を見せたことで幼体は鎧娘を信用したようで、鎧娘に懐いた。

 

「……なるほど、この居住区の地図は頭に入れてきています。こっちですね」

 

 幼体から渡された紙切れを見て、鎧娘は幼体の手を引いて歩き出したので着いていく。 

 

 しばらく歩いたが幼体の歩幅があまりにも小さくて遅いので、鎧娘が抱きかかえることになり私が荷物の袋を持つことに。

 

 この私が荷物持ちとは……まあ幼体を運ばされるよりはマシだが……、全ては鎧娘があの程度の幼体と荷物くらい一人で運べぬほど脆弱なのが悪い。

 

「あー! 卵が入ってるので袋を振らないでください!」

 

 荷物の袋をくるくると回しながら運ぶ私に、鎧娘が声を荒げる。

 

「卵だと……? 何の幼体を孵す気なんだ……、そもそも誰が産んだんだ……」

 

 私は鎧娘の言葉で袋を回すのを止めて、袋を見ながら尋ねる。

 

 卵……竜が新たな竜を出現させる際に自身の生命と引き換えに産み出すものだ。

 

 遥か昔に私も卵から生まれたし、先代の緑が今の緑を産んだ際に卵を見たこともある。

 

 竜は悠久の時の中で自身という存在を更新する際に、卵を遺しその卵から新たな竜が生まれる。

 私も遥か昔に先代の黒が遺した卵から生まれた。

 

 いやもう遥か昔過ぎて何も覚えとらんが……この世界でも卵を遺して更新するような存在がいるのか……?

 そしてそんなものを孵化させて……人らは何をしでかすつもりなんだ。

 

「タマゴは、にわとりさんでしょー」

 

 鎧娘に抱えられた幼体が私に向けて言う。

 

「そうか『にわとりさん』か……何者なんだ……」

 

 私は卵から孵るであろう存在の名を呟いた。

 

「……無精卵です。孵りません」

 

 鎧娘は呆れたようにそう言った。

 

 なんだかんだで幼体の頬をつついたり。

 幼体に歌わせてみたり。

 私が少し踊って見せたり。

 

 そんなことをしながら歩いていったところで。

 

「なるほど……」

 

 足を止めて、鎧娘が呟く。

 

「? なんだここは、誰もおらぬぞ」

 

 私は辺りを見渡して言う。

 

 足を止めた場所は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 石には何やら文字が彫ってあり、花を飾っていたり飲み物かなんかを置いていたりする。

 なんだ? 何かしらの信仰とかなんたらのやつか? 人らはこういう存在しない何かを信じて、具体性を持たせることで思いと想いの重さを強めることをする。

 

 実際これで前の世界ではなかなかの強個体が現れたりもしていたし、白もなんか影響されて神がどうとかなんたら言い出したりしていた。

 

 私にはない考え方……。

 結局自分は自分でしかない、他からの影響や他への影響は自分の行動による結果でしかないのだ。

 

 いや関係のないことを考えすぎたな。今は幼体の目的である『おかーさん』の所在の方が優先だ。

 

「おかーさん、ここにいるの」

 

 幼体は並ぶ石の一つを指さして、そう述べる。

 

 ? 意味がわからん……いや?

 私は微かに感じた匂いを追って、鼻から空気を吸い込む。

 

 ああ……なるほど。

 ここは死体処理場か。

 

 空気に死の匂いが絡んでいる。

 焼いて骨を埋める場所、迷宮では死ぬと迷宮が飲むから私にはピンとこないが人らの文化なのだろう。

 

 そして飲んだ死体の、死に際に強く願った思いと想いの重さを反映させて迷宮は新たに何かを生み出す。

 

 この鎧娘の使う剣も、迷宮で死んだ誰かが「これがあれば」みたいな後悔や無念から生み出されたものだろう。

 

 もっというと鎧の方も多分だが何かしらの思いと想いの重さを反映して迷宮が生み出したやつっぽい。迷宮転生ってやつだ。正確には知らんが、極稀にそういうことが起こり得る。

 

 つまり、迷宮の外で死んだ者は死にっぱなしということだ。

 

「おかーさん、前は攻略者だったの。でも前に起こった迷宮災害で、人が足りなくて、戦いに行ったら死んじゃったの」

 

 鎧娘の腕から降りて、石の前に立って幼体は説明する。

 

 ふむ、戦いで死んだのか。

 そりゃあ仕方ない、弱ければそういうこともある。

 それだけの話だ。別に珍しいことでもない。

 

「そうですか……」

 

 鎧娘は幼体の話を聞いて、静かに返す。

 

 そこから、幼体が『おかーさん』に向けた話をしたり。練習していた歌を披露したりして。

 

 幼体が満足したところで、幼体の住処へと送り届けた。

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