ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜 作:ラディ@小説家もどき
向水先輩のように、多彩な戦い方はしない。
近づいて斬る、それだけでいい。
縞島先輩のように、私は賢くない。
だから考えすぎなくていい、今は思いだけで動く。
乱丸さんのように、練度の高い動きは出来ない。
でも私は大事な回復役でもない、がむしゃらでいい。
暗木さんのように、自然体ではいられない。
力いっぱい、力んで空回ってぶっ飛んでいく。
そんな思いも燃料に。
「六花あ‼ 最大出力最大加速ッ‼ 最高速度でぶっ飛ばすよ‼」
私は心を燃やして大きな声で吐き出して、前へと進む。
こんな速さじゃ足りない。
もっと速く、もっともっと、速く、速く速く速く速く速く速く速く速く速く。
勤勉だけど鈍重な『かめ』ではなく……今だけは『うさぎ』になりたい。
軽やかで、俊敏で、速くて、強い『うさぎ』に――――。
私の思考が、思いが、願いで埋め尽くされたその時。
着装合体で纏っていた六花が、
私にはわかる。これはトラブルではない。
腹部や肩部や背部や腰部や臀部や大腕部や大腿部や口元や後頭部が剥がれ、手足と最低限の急所部位のみが残る。
剥がれる時に中に着ていたジャージも巻き込んで破いていくけど、替えはまだある。気にしない。
これは軽量化。
推力に対して重量を減らして速度を上げている。
さらに残った部位が少しずつ動いて空気抵抗を減らし、外れた部位はバラバラになって私の後ろを浮遊して展開される。
外れた部位同士が、浮遊から生まれる反発で私を押すようにどんどん加速させる。
ああ、これは私の思いに六花が応えたんだ。
守る鎧としてではなく、目の前の脅威を斬り伏せるための力として六花は応えてくれました。
ヴィオラの形態変化……いやどちらかといえばダビンチの変形に近い。
乃本君の言う通り、文字通り殻を破り。
謎の超弩級美人が嘯いた通り、世界を捻じ伏せるために自身を変えた。
軽装甲超高速形態……、リリリビング・アーマード・
なんか思考も速くなった気がする。
いや、これは私が今ちょっとハイなだけか。
私は『うさぎ』のように跳び回る。
分離した外装を足場に、跳ね回る。
来た。
これが私の最高速。
乃本君に注目し、完全に注意を引かれ対応している赤竜王へ一気に接近し。
ロングソードへ加速度や慣性など身体の中を流れる力を束ねて乗せて、横一線に振り抜いて。
「……っ? ⁉ っ‼ ……!」
骨ごと赤竜王の首の半分以上を切断した、肺からの空気が喉に届かずに声も出せない。
脳からの信号も身体には届かない。
凄まじい勢いで断面から血が溢れ出している。
すぐに脳も心臓も機能を停止する。
最期の言葉も語らせない。
何も残させない。
困惑の表情、赤竜王は理解が出来ていないようです。
赤竜王からしたら首元に飛んできた羽虫が、自身の首を斬り裂いたように感じているのでしょう。
でも残念、今日の私は『うさぎ』だからね。
勤勉なうさぎには誰も追いつけない。
赤竜王は崩れるように両膝を着いて。
ダンジョンが光に包まれ。
消失現象が始まる。
「全員集合! 一箇所へ集まれ‼」
余韻に浸る隙も与えず、乃本君は号令をかけ各員すぐに乃本君の元へと集まる。
史上初の大規模ダンジョン攻略並びに絶災級モンスターの討伐……私が……。
ふつふつと湧き出る思いに、私は耐えきれず。
「乃本君、良いですか?」
「ああ、どうした」
私は乃本君に声を掛けて。
「あの……百一君って、呼んで良いでしょうか?」
そんな、心の中に留めていたことをそのまま口にする。
私は乃本君を信じた。
そして私の恋を認めた。
今この勢いで、駆け抜けたい。私は今ちょっとハイなのだ。
乱丸さんと下の名前で呼び合うことで、友達になれた気がした。
向水先輩が乃本君を百一と呼ぶのとか、ミライと呼ばれてるのとか、正直ちょっと羨ましかった。
肩を並べているようで、認め合っているようで、憧れがあった。
でも今なら、私も。
「ああ、全然好きに呼べ。よくやったな里々」
あっけらかんとした乃本く……百一君の返しに、思わず変なにやけ顔をしてしまう。
今は六花で口元を覆ってないのに、弛んでしかたない。
こうして私たち迷宮攻略分隊は、太白山ダンジョンを攻略を達成したのだっ――――。
「っ!
頭上を見上げてヴィオラが叫ぶ。
視線の先にには大きな『穴』が迫っていた。
これは首を落とされ、死ぬ間際に赤竜王が放った最期の最期の置き土産。
最後の最後、ダンジョンが消滅する寸前に『穴』を叩きつけられて。
私たち迷宮攻略分隊は跳ばされてしまったのでした。