ダンジョン超人は美人化ペットと無双する〜30年ぶりにダンジョンから出た地上は、女子率99.999%のハーレム世界でした〜 作:ラディ@小説家もどき
「おお、どうする? どっかでお茶でもしてもう少し休むか?」
僕は一応休憩をとるか縞島に尋ねると。
「いえ、このまま戻って一気に頭へ叩き込みます。だいぶ造船についてはわかってきたので、次は動かし方ですね。車輪で動く乗り物とはかなり違うと思いますし、気象とかの影響を強く受けるので海流だったりについても入れておかないと」
縞島は笑顔で意欲的な回答をする。
「そうか、確かに船は便利だよな。陸路はどうやってもモンスターと遭遇するしダンジョンともかち合うし居住区は基本的に海に面しているし」
資料館へ歩みを進めながら、僕はそんな返しをする。
実際、迷宮攻略分隊の進行は縞島一人が担っていると言っても過言ではない。
ダンジョンまでの道のりも、ダンジョン攻略中においても、縞島の移動力にかなり依存している。
七大都市大規模ダンジョン攻略で、戦闘は最重要ではあるものの時間でいうのなら全体の二割程度。
八割は移動や野営である、縞島はこの八割を迅速で快適になものにしている。
とんでもない功績である。
「本当は航空機で空路を行けるようになると良いんですが……、いやーちょっと齧ってみたけど今のところ揚力とかいうオカルトエネルギーへの理解度が足らないから難しいかな。でもこないだヴィオラちゃんの尻尾に掴まってちょっとだけ空を飛んで少しだけイメージが出来てきたから、そのうち航空機にも挑戦したいですねー」
足を進めながら、縞島はつらつらとさらなる展望を述べる。
空路まで視野に入れているのか……、とんでもないな。
「すごいな……、なあ縞島はなんでそこまで頑張れるんだ? あんな量の資料を頭に叩き込むなんて、想像もできないほど大変だと思うんだが」
僕は素直に感銘を受けつつ、純粋な疑問……いや少しだけ心配も混ざった問いを向ける。
「うーん……。ずっと私は攻略者らしくって考えて攻略者を目指してきたけど、そりゃあもうからっきしで。身体も小さくてダビンチとも上手く戦えないから当然おちこぼれた」
つらつらと縞島は自身を語り。
「でも私は、やっとこさ自分らしさで生きていけるようになったから。もっと出来ることやりたいんですよね」
笑顔で、そんなことを宣った。
「
僕は縞島の言葉を、小さく呟く。
自分らしさ。
僕は自分らしさより、男らしさを強制されて矯正されてきた。
そんな日々の中で男らしさを吐き違えていたことを、本物の男である乃本にわからされた。
そこから僕の中の違和感をそのまま、素直に表へと出し始めた。
怪我はしない方が良い。
真正面からだけが戦いではない。
逃げも戦術である。
作戦を基に役割を徹して独断専行はしない。
回復役としての価値を自覚して行動する。
そんな、当たり前のことを出来るようになって僕はかなり攻略者として成長した。
でもそれが自分らしさなのかといえば……そういうわけではない。
僕は確かに男にはなれない、根っこの部分で僕は女だ。
でも、まだ僕は女にもなれてはいない。
依然としてスカートは履けないし髪も伸ばせる気がしない、早食いも直せないし身体を鍛えるのも続けている。
男になりたいわけじゃあない、でも男らしさというのは僕を構築するあらゆるものに深く食い込んで絡みついている。
捨てられるものではない、そういう生き方はしてきていない。
男らしくも生きられず、女らしさも出せない。
じゃあ僕の自分らしさとはどこにあるんだ?
自分らしさか……僕には難し過ぎる話だ。
なんて考えつつ資料館に戻り、再び縞島は本の山に埋もれながら情報を貪り。
僕はまたノンプリNova:Ⅱノベライズ最終巻を手に取って読みふける。
せめて何回も読んで内容を頭に刷り込もう、一字一句とかは無理だがなるべく読み込んでおこう。
……あれ、これが自分らしさか……?
ちがうか、これは単純に私が乙女ゲー好きなだけだ。これは単なる趣味趣向の範疇でしかない。
というか別にノンプリは好きだけどノンプリだけが好きなわけではないし、五本の指には入る名作シリーズだとは思うが乙女ゲーは僕が家を出て学校の寮や攻略隊の寮で暮らし始めてからの趣味だしあらゆる乙女ゲーを網羅出来てるわけじゃあない。
そもそも三十年くらい新作らしい新作も出ていない、男性声優もいないし。
ゲーム機自体も三十年前のハードをだましだまし使っている。基本的に僕が生まれる前の娯楽物だからね。
そもそもこの趣味は男らしさを強制されてきた日々の中で抑圧された僕の中の乙女の発露のようなものなんだと思う。
少なくともこのノベライズは面白いだけで、僕の自分らしさはここにはない。