第11話:私と彼らは協力する?
エレベーターに乗り込む。
乗り込む途中でエディ(本物)が目を覚まして襲ってこないか不安になったくらいだが、杞憂だったみたいだ。
密室のこのエレベーター内で事故が起きればひとたまりもないんだろうなと不謹慎なことを思いつつ、ザックとレイチェルの2人から少し離れた位置に立つ。
『オイッ!!黙ってねェでさっさと次のフロアについて教えやがれッ!!!』
『ザック、落ち着いて。』
さっきからずっとこんな調子だ。レイチェルの言う通りだ。
もしも本物のエディが共に行動したのなら戦闘になっていたことだろう。エレベーター内で戦闘なんて聞いたことないが、レイチェルが可哀想だ。
私としても到底まともにザックとやり合えない。何よりもレイチェルに被害が及ぶのは間違いないし、彼女が何をしでかすのか分かったものじゃない。
『ザック……?僕はわざわざ君たちを案内してあげてるんだよ。しかも僕だって彼らが頭の奥底で何を考えているかなんて知ったことじゃないさ。たまたま共感したから一緒にいただけでね。』
少ししてエレベーターが到着を知らせる音を鳴らした。
にしてもこのエレベーター、ボタンが無いんだけどどうなってるんだ?本編ではそんな事なかったような気がするんだけどなあ。
エレベーター内の明かりは少しずつ消えていく。すでに自分の役目は終えたとばかりの様子だ。
どうだっけな、確かこのフロアは…………
外に出て、辺りを見回してみる。
そうだ、銃撃、電気椅子、毒ガス、剣山などなど、多彩な拷問で痛めつけてくるんだったな。
私にサディストの気持ちは分からないが、このフロアの彼女には共感能力に著しい欠損があることは分かる。
『おい、なんだよっ、これ、開かねぇーじゃねェかっ!!!!』
『ザック………』
レイチェルは呆れてそうに見える
こんな会話もあったっけな。
それでもザックが大鎌を振り続けて少し経った頃……
「ハ~イ! 画面越しにて、失礼致しますわあ」
「私が…このフロアの断罪人…キャシーよ!」
声の主の言う通り、よく見ると部屋の隅に設置されているモニターにはこの場にそぐわない程に楽しそうな表情を浮かべた女性がこちらを見てきた。
キャシー……
罪人を傷みつける拷問官、看守?どちらでもいいか。
その在り方に酷くこだわっている人物だ。
ザックが特に罪人としてここでは酷い扱いを受けるんだったか。
レイチェルとザックの関係を切り裂くことにも楽しみを見いだしているように感じられる人物でもある。
挨拶を終えるとザックの方を見る。
心底、軽蔑したような表情だ。
『アハハッ!!ザック、あなたって本当にバカな男ねぇ!!!』
『ァア!?!?うるせェ!!!!!』
他人を馬鹿にしたような口調でそう嘲笑うキャシー。
ザックはそれに激昂する。
『ザック、もうやめたほうがいい。鎌も悪くなるから……』
さっきから言いたそうにしていたな。
レイチェルの言葉で少し冷静になったのか、渋々と鎌を振り下ろすのをやめた。
『オイッ、そこで見てねぇでさっさとここから出しやがれっ!!!!!』
……
その後の展開は殆ど本編通りだった………と思う。
ただザックの怪我が予想以上に大きくなってしまった。
私としてもある程度はザックの負担を軽減するようにはしたつもりだ。
これは私の原因だ。
2人がどう思っているか分からないが、こちら側の味方が増えたからザックは無意識に私にも気を払っていたように見える。
それが一連の拷問の中で必要以上に傷を増やし、身体を痛めつけてしまった。
なんとかキャシーの嫌がらせも佳境に入り、私たちは例の銃殺用の部屋に移った。
『面白いわよ、ザック………。 撃たれた痛みでちょっとは理性的になったかと思ったけど、これだもの。』
ザックはレイチェルに向けていた鎌を自身に突き刺した。丁度、キャシーに仕向けられています薬によって理性が効かなくなっていたところだったのだ。
『ザック………ッッ』
驚愕するレイチェル。
それを見てさらに笑うキャシー。
少しすると壇上から降りてきた。
なかなかレイチェルに斬りかからない様子を見て焦っているのだろうか。
ザックにトドメを刺そうとしている。
不味い、動けるのは自分だけだ.........
『…………パーンッ!!!』
危なかった
間に合って良かった………
私はザックとは比べ物にはならないが、それでも身体は万全には程遠い状態だ。
自然治癒チートがあると言っても無敵でもなんでもない。昨日からまともに眠れていないのだ。
レイチェルに頼ることはできない。
私から見て少し遠くで、拳銃を手に持っていたのが見えていた。
かなり危ないところだった。当てていれば良かったのかもしれない。
もしレイチェルが外していたとしたら……
ここは現実だ。何が起きても不自然じゃない。
弾が壁に反射して私の方にでも向かってきたら一撃で私は確実に仏様になる。
……あ、
今世ではキリストだから仏ではないのか………
少し下らないことを考える余裕ができたのでザックの様子を確認する。
『………………』
どうやら完全に意識を失っているみたいだ。また暴れられたら私とレイチェルが合わさったとしても悲惨な戦闘になったことだろう。
何とかキャシーという脅威を排除できたことに安心する。
だが、それも束の間、安堵からなのか瞼が重くなってきた。
次第に意識が遠のいていく。抗えそうにないのが分かる。
誰か、、、
人影が近づいてきた。まさか、キャシーだろうか。
……
『お休みなさい…………』
レイチェルがそう言った……と思う。
本当にそうなのか分からないけれども、そんな気がした…………