エデン条約での一件が終わってから、俺は久しぶりにミレニアムのエンジニア部の元を訪れていた。
要件は主に二つ。
一つ、俺のマグナムの整備。
普段は俺が自分の手でやってるが、あれだけ派手な戦闘の後だ。
プロに任せた方が確実ってなもんだろう。
二つ目は、最近トキとネルの二人が喧嘩中に壊したペン立ての依頼だ。
トキとネルには、しばらくの間出禁をくれてやったが……まぁ、あの様子じゃしっかり反省はしてそうだな。
ペン立てに関しては既に依頼済みだからな、それの受け取りと整備をしてもらうのが、主な目的だ。
様々な機械が稼働し続けているこのエンジニア部専用の作業室は、相変わらず喧しく部屋に入ると久しぶりと言わんばかりに、様々な歯車が動く音が俺を出迎える。
「ウタハぁ!頼んでたもんはどうなった!」
こんだけ喧しいと普通に喋ってたら聞こえるもんも聞こえなくなっちまう。
なので、仕方なく大声を出すが、返事が聞こえねぇ。
しばらく待っても特に聞こえないため、俺はそのまま中を探索することにした。
しばらく歩くと、しゃがみ込んで何か絶え間なくぶつくさ喋っている紫髪の少女を発見する。
「違うな……このままでは駄目だ……」
「おい、ウタハ。何してんだ?」
俺の声がようやく届いたのか、ウタハが何か金属製の物を持って、振り向く。
「あぁ、先生、いらっしゃい、今日はまだ……そうか、もうそんな……すまないが、もう少しだけ待ってくれるかい? 少し苦戦していてね」
「ん? あぁ、分かったが……何作ってんだ?」
「先生に依頼されたペン立てだよ。少し機械の機嫌が悪いみたいでね」
「……あぁ、まぁそういうこともあるだろ」
コップ状のそれを作るのにそんな手間でもかかるか?と思ったが、まぁ相棒の機嫌に振り回されるってのは身に覚えがあるからな。
しばらく待ったあと、出力完了の知らせと共に機械音声が流れ、出来上がったその金属製のコップをウタハが手に取る。
「おぉ、いい出来じゃねぇか、なぁウタ──「ダメだぁっ!!!」ウタハぁ!?」
出来上がったそれを、ウタハが勢いよくがらくたの山目掛けてぶん投げる。
パッと見は、よく出来たが……一体何に不満があったのか。
「私の……私の作りたかったペン立てはこんなものじゃない! 見てくれ、切断処理も甘い上に二重になっている部分の曲面が図面通りではない。それに耐久性も脆弱過ぎる……これでは22口径の弾丸すら防げない……」
「んな、ペン立て如きで──「それは違う、先生」」
「これは、マイスターとしての矜恃なんだ。先生からの依頼に中途半端なものを出したとしたら……私は恥ずかしくて、ミレニアムの学内を歩くことすら出来ない」
学生とはいえ、外部の依頼も受けているウタハだ。
金を貰ったのならプロとしての意識を持つべき。
その拘りに徹底的に妥協しない考えは、好感が持てるな。
「本当はこいつの整備も依頼したかったが……分かった。ウタハ、とことん付き合ってやる」
「あぁ、その銃も見させてもらうが……まずはこの依頼。エンジニア部の名にかけて完璧にこなして見せよう!!」
そうして、俺とウタハの1個のペン立て作りが始まった。
「どうだ?ウタ──「これではダメだっ!!」ウタハぁ!!」
「お、今度は──「ダメだ……!!」ウタハァ!!」
幾度ものトライアンドエラーを重ね、道中……
「先生、このパーツを足して自走機能を追加するのはどうだろうか?」
「便利かもしれねぇが、机の上は書類だらけでろくに走れねぇぞ」
「くっ、ついでに自爆機能も──「ウタハ?」ハハッ、冗談さ」
ウタハのロマンと俺のポリシーがぶつかる時もあり……
「だから、俺はシンプルなのが好きなんだよ!」
「先生と私では音楽性の違いが甚だしすぎる!」
そして、日が落ちて、月が昇った頃。
「こいつで……」
「先生……完成だ」
出来上がったペン立ては、雷ちゃん型のペン立てへと仕上がった。
元はただのコップ型のものを頼んでたはずだったんだが……何処でズレた?
「あぁ、満足だ、先生。これなら私も安心して渡せる」
俺の肩持たれかかって満足そうな顔つきで眠るウタハの顔を見ていると自然と許せてしまった。
ODさんリクエストありがとうございます!
このウタハ、実は既に2徹してまして……
ウタハは演歌、次元ちゃんはジャズなので同じロマン主義でも結構細部が違って喧嘩するのでは?とか思いつつ書きました
いやぁ、早く運動会イベやりたいですね
応援団ウタハを出したいんですな