今日は、トリニティの補習授業部の奴らに勉強を教えていて、随分と遅くまでシャーレを空けていた。
あいつらの天然さ加減にも慣れてきたところだったが……それにしても、もう少し賢くなってくれと思うばかりではある。
深夜、俺は車を走らせながらシャーレへと向かっていると、電柱の上にぶら下がっている人影を見つける。
普段だったら無視してもいいんだが……こういう仕事に就いてる以上見過ごす訳にも行かないだろ。
車を止めて、歩いていくとぶら下がってる人影が俺の知ってる人物であることに気付く。
「……ヒヨリか?」
「あ、先生……!」
向こうも俺の存在に気が付いたようで、大きな口を開けて驚くと同時に、地面へと落下する。
大きな衝突音が聞こえ、急いで落下地点へと走った。
「大丈夫か、お前さん」
「いたたたぁ……はい、大丈夫です。そ、それよりもなんで先生がこんな場所に」
それはこっちのセリフではあるのだが……
とりあえず、補習授業部の為に仕事をしてきて、その帰りだったことを伝える。
「それで、お前さんはどうして……猿の仲間って訳でもねぇだろ?」
「さ、猿っ!?ひ、酷いですっ!私はただスマホを充電したくて……」
話を聞けばなんでも小説を読んでる最中に充電が切れて、そこからファミレスで充電を行ったり……まぁ、盗電行為を繰り返して、電灯の給電システムから盗もうと考えたらしい。
「な、なんですか……そんな哀れなものを見る目で……! 私の人生はどうしてこうなんでしょうか!!腐った食べ物しか食べられずに死んじゃうんです!!うわぁぁぁぁあああん!!」
「……はぁ、おい。乗れ」
「うわぁぁぁああ……え?の、乗れって……ど、どこに連れて行く気なんですか!?」
「シャーレだよ」
見てられなくなった俺は、車のドアを開けてエンジンをかける。
しばらくすると、ヒヨリがおずおずと乗り込んでくる。
シャーレに着いてから、ヒヨリを休憩室に通して、俺は台所に立つ。
「腹減ってるか?」
「え、え、え……えっと、お腹は空いてます……あ、あの……」
「充電器は好きに使え」
ジャケットを脱いで、エプロンを着てから俺は冷蔵庫の中からソーセージとピーマン、玉ねぎを取り出してそいつらを刻み始める。
「あの、えっと……使っていいんでしょうか……リーダーからは、人の世話にならないようにと言われていて……それに、人の好意には裏があるって……」
フライパンに、油を敷いて火をつけ、刻んだピーマンと玉ねぎとソーセージを炒め、別のコンロで水の入った鍋を沸かし始める。
「なんだ?俺が何か裏があるって?」
「先生には、姫ちゃんを助ける時に返せないほどの恩をもらったのに……それでさらにこんなことをしてくださるなんて……どう考えても……や、やっぱりもう私はおしまいなのでしょうか!」
「喧しいな、別れた時に言っただろ。ガキの世話はともかく仲間は別だってよ」
具材に火が通ったところで、手早くケチャップを入れて、炒めながら酸味を飛ばし具材と絡めていく。
沸騰した鍋にパスタを入れて、茹でながら茹で汁で、炒めたケチャップを伸ばす。
「あとな。ガキが腐った物を食ってるって聞くのは、気分が悪ぃ」
茹で上がったパスタをフライパンに入れて、絡め合わせ、皿に盛る。
ヒヨリの皿にはタコさんウィンナーも添えておく。
「まずは食え、色々解決すんのはそっからだ」
「っ、う……」
ヒヨリのお腹が大音量で鳴る。
「くっくっく、他のスクワッドには言わないでやるよ」
「うわぁん!こんな醜態を晒してしまうなら、一つも二つも変わらないですよね!」
そういって、ヒヨリは、見ていて気持ちがいいくらいに山盛りのナポリタンをかっ喰らっていく。
「美味いか?」
「おいひぃでふ!!……うわぁぁぁん!!こんなに美味しいご飯生まれて初めてです!!」
「くっくっく、そいつは良かった」
口の周りをケチャップで汚しながら食べていく様は、年相応の少女に見える。
「あの先生……もしよかったら」
「あぁ、他のスクワッドも連れてきていいぜ」
「うわぁん……完全に終わりですね。でも……ありがとうございます、こんなに美味しいご飯みんなにも食べさせたくて……!!」
頬をリスみてぇに膨らませながら、ヒヨリは涙を流している。
腹も膨れりゃ、少しは前向きになるもんだ。
と言っても……こいつの悲観主義がマシになるにはまだまだ時間がかかりそうだな……
「あ、あの先生?おかわり頂いてもいいでしょうか?」
ユニガムさんリクエストありがとうございました!
ヒヨリの独特の言い回しというか、あの図々しさというか、図太さ大好き
愛され末っ子は可愛いのは世の必定なのですな