「先生!今日は何の日か知ってるかしら?」
休憩中、椅子に体を預けて、書類仕事で疲れた脳を休めているとアルが元気よく部屋に入って、俺に向かってそう声を上げた。
「今日?」
本日は11月11日。
秋も過ぎ、寒空が広がり、そろそろクリスマスも近づいてくる。
そんな特に何の変哲もないただの平日だ。
「ふふん、先生も分かってないようね、今日は親しい人とポッキーゲーム?とやらをする日なのよ!」
自信満々に彼女は、チョコ菓子の箱を片手に声を上げる。
朝からいねぇと思ったらそれを買いに言ってたのかと少し呆れる反面、彼女が口にしたゲームのことを思い出していた。
そいつは大して興味がなかったが……ルパンの野郎が、日本に居た時にナンパした女とやってたな。
確か、最終的にキスをするための余興だろ?
アルがそんなのに誘ってくるなんざ、随分とマセたもんだ。
ふと視線をズラすと笑いを堪えるのに必死になっているムツキが映る。
あぁ、そういう事か……。
「おい、アル。そいつがどういうもんか知ってるのか?」
「え?一緒にポッキーを食べるって言う……」
まぁそれもあながち間違っちゃいないんだが……。
席を立って、俺はアルへと近づく。
彼女の手にある箱から一本チョコ菓子を取り出し、アルの顎を掴んで、咥えさせ……。
「んひゃっ!?」
「……」
驚くアルの目を見つめながら、俺は反対の端を咥えて、少しずつゆっくりと咀嚼し始める。
アルの目がグルグルと回り、顔が赤くなっていく。
俺は咀嚼を続け、ゆっくりと少し、また少しと距離が近づいていく。
そして、アルが覚悟を決めたように瞳を閉じた時、俺は余分に取るように首を振ってポッキーを折った。
軽快な音と共にアルの額を軽く小突く。
「折れちまったから俺の負けだな。くっくっく……残念だったな、アル?」
「あ、あわ、あわわ……!?」
残ったポッキーを口に放り込み、味わいながら、俺はまた席に着く。
「せ、せせ、先生!」
「次から何か知らねぇこと吹き込まれたら、てめぇで調べてから誘うんだな」
「…………っ!!」
顔を真っ赤にして慌てているアルは、俺の発言を聞いてムツキの方へと勢いよく振り向く。
「あはははははっ!!アルちゃんやっぱり最高〜!!」
「ムツキッ!!!」
「あはは!!ごめんってば!!」
その視線についに耐えきれず、ムツキが大声で笑う。
笑われたことで、さらに顔を真っ赤にしたアルはムツキに走って駆け寄り、ムツキもそれから逃げるように走り始める。
仲がいいことこの上ねぇな。
あまりドタバタされんのは好きじゃねぇが……。
でもこいつらの様子を見るのはそんなに悪かねぇと思っている。
そう思っていると、走っていたムツキが俺の隣を通って、俺の耳に顔を寄せる。
「先生、後でムツキちゃんともやってね?」
「あ?お前さん分かってて──「くふふっ」」
「ムツキ、今回のはダメよ!!待ちなさぁい!!」
「あっ、じゃあまた後でね〜」
そう元気に手を振ったムツキは、部屋の外に出て、アルもまた彼女を追って出ていってしまう。
部屋に残されたポッキーの箱から一本取り出し、俺はそれを食べる。
「俺にはちと甘過ぎるな」
1人残された部屋で、俺はそう言葉を口にするのだった。
30分クオリティで失礼
時系列ガン無視のいつかの平和な日常だと思っていただければ……