新任教師『次元大介』短編集   作:レイゴン

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ブラック・ホワイト・イン・メリークリスマス

 クリスマス。

 

 それはかの聖人の生誕を祝う年に一度の聖なる日。

 今日は、その前日祭であるクリスマス・イブである。

 シャーレといえど、この日ばかりは仕事を早めに切り上げて、シャーレでパーティーを開こうと準備をしている。

 そんな時、アルがふと口を開いた。

 

「先生、サンタさんって本当にいるのかしら」

 

「藪から棒にどうした」

 

「サンタさんって、子供から気付かれないように家に忍び込んで、プレゼントだけ置いて次の家に向かう仕事人よね?」

 

 飾り付けをしていた彼女は、俺に向かって、真剣な顔でそう話す。

 その瞬間気がつく、こいつは冗談抜きで、本気でサンタクロースの存在を信じてる。

 

 流石に高三にもなろう女がまだ信じてるのは……如何なもんかと思っちまうが……夢は夢のまま、いつか覚めると分かっていてもそっとしておいてやりてぇって思うもんだ。

 

「あー……まぁ、なんだ。確かに凄腕だな」

 

「むむ、もしかしてサンタクロース殿の話をしているのですか?」

 

 その話にイズナが食い付いてきた。

 

「音もなく侵入し、仕事をこなせば、礼はいらぬと次の標的へ……サンタクロース殿は忍者で間違いありません!」

 

「とってもハードボイルドよね!」

 

「……あー、まぁ、そうだな」

 

 うちの頭天然組に現実を見せるのは俺の仕事じゃねぇな。

 しかし、サンタクロース……か。

 俺ぁそういうのとは無縁の世界だった。

 ガキの頃には相棒と一緒に仕事をしていたしな。

 

 と言ってもだ、こいつらに同じ道を歩ませるなんざそいつは俺の美学に反する。

 

 飾り付けられたシャーレの執務室に、レッドウィンターで採れたモミの木を飾り付けて設置しておく。

 どうせなら豪勢にしなくちゃな。

 

 まぁ、その後パーティに来たユウカから予算どれくらい使ったのか問い詰められたが、ガキが気にするなと一蹴しておいてやった。

 

 子供なんだからな、楽しい一時を楽しんでればいいんだよ。

 金やらなんやらは俺のような大人がどうとでもするからな。

 

 そのパーティーには、ミレニアム・トリニティ・ゲヘナの三大学園だけじゃなく、アビドス・百鬼夜行、そしてアリウス。

 俺の関わった全ての生徒たちを呼んで、盛大な宴を行った。

 

 派手なのは俺の趣味じゃねぇが、どうせなら全員呼ぼうと言ったのはアルの意見を取り入れただけだ。

 

 天使だの悪魔だの色々あるだろうが、このシャーレの下に置いては全員が平等であるべきだからな。

 

 だからこそ、その日は今までで一番盛大なパーティーをした。

 その様子に関しては……まぁまたいずれ話すとしよう。

 

 パーティーを終え、ほぼ全員が寝静まったそんな夜。

 

「……いい子にはサンタが来るんだ、なら悪党には俺から渡さなくちゃな」

 

 普段の帽子の代わりに黒いサンタ帽を被った俺は、そっと執務室のある階層から一つ下へと移動する。

 そこには、便利屋たちの居住区がある。

 

 電気をつけず、足音を立てず……まぁ、ある意味普段通りではあるんだが。

 

 そっと忍び込んでアイツらのいる部屋……それぞれの枕元にプレゼントを置いておく。

 

 感の良い奴らは忍び込んだことに怒りそうだが……まぁ行事だからな、目を瞑ってほしいもんだ。

 

 イズナは確かハルカと一緒に寝てるんだったか……。

 イズナとハルカの危機感知能力……あの二人は俺の知る限りでも、キヴォトスの中でもトップクラスだからよく気配を殺して、敵意なく忍び込まねぇとな……。

 

 そうやって、メンバーの特性に気をつけながら……道中一番危なかったのは、まさか部屋にトラップをしかけてたムツキだったが……それぞれの部屋にプレゼントを仕掛け、そして最後アルの部屋に入る。

 

 黒とワインレッドを基調としたモダンな部屋で、壁には『一日一惡』の掛け軸が飾られてある。

 

 寝顔を見る限り、よく寝てるな。

 

 音を鳴らさないように、自然に歩きながら彼女の眠るベッドの横にそっとプレゼントを置き、俺はそそくさと出ていく。

 

「……んぅ、誰、かしら?」

 

 その背中に声が投げかけられた。

 

 さっきまで綺麗に寝てただろうが、なんで気づきやがる。

 

「……もしかして、サンタさん?」

 

「……ぁ、あぁそうだぜ」

 

 咄嗟に声を変えて俺は顔を見せないように彼女に返事を返す。

 寝ぼけてるのならそのままでいてくれ……。

 

「本当なの、私貴方に会ってみたかったのよ……」

 

「そいつは嬉しいが……こんな夜だ、俺に会ったことは秘密だぜ?」

 

「うん!分かったわ、ハードボイルドな、アウトローだもの……約束は守るわよ……」

 

「あぁ、アウトロー同士の約束だ」

 

 眠そうな声で欠伸をしたのが聞こえ、振り向くと彼女は再びベッドに潜り込んで、スヤスヤと寝始める。

 素直で良い子な所がこいつの良いところだ。

 そしてその光が輝くからこそ、こいつの闇が光よりも濃く人の目に色を残すんだ。

 

 やれやれ……俺も大概こいつに影響を受けてるな。

 

 自分の部屋に帰ってから、俺はそう一人でほくそ笑んだ。

 

 

 翌日、昨日の片付けをしているとムツキとアルの楽しそうな会話が聞こえてきた。

 

「アルちゃんなんか楽しそうな顏してるね~?どうしたの?」

 

「ふふっ、秘密よ」

 

「えぇ~、いいじゃん教えてよ~!」

 

「ダメなものはダーメ、『アウトローの約束』なんだもの」

 

 ムツキにそう話す彼女は、誰よりも誰よりも魅力的な笑顔を浮かべていた。

 






何とか滑り込みセーフ……ってとこですかね。

皆さん、メリークリスマス!!

作者は、伐採に勤しみます
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