今日は4月1日。
年度初めの日でもあるが、世間一般的にはもう一つ大きなイベントの日でもある。
『エイプリルフール』、年に一度嘘を吐いてもいい日であり、それに肖って企業が色々とこちらを笑かしに来ようとネタを披露する日でもある。
尤も泥棒相手に嘘を吐いてもいい日だなんて、そんな物はありはしないのだが……。
今日は久方ぶりの休日でもあり、俺はブラックマーケットに足を運んでいた。
このブラックマーケットにも上記のイベントの風が舞い込んでいるのか、行きつけのBARがBARBERに変わってやがったし、銃の横にネジ一本を添えた商品を売る店もチラホラいる。
ブラックマーケットだけにブラックジョークがお好きなのか?
俺も笑えねぇ冗談を言うくらいには毒されてるのが現状だ……。
こうして歩いていると、目の前からやけに大きな荷物を抱えた人物が歩いてくる。
やたらと変な商品ばかり抱え込んでいるところを見るに、見る眼がねぇのか騙されやすいのか……。
御気の毒にと思いながら、通り過ぎようとするとふらついたそいつが俺にぶつかり荷物を落としてしまう。
立ち去るにも立ち去れねぇから、拾うのを手伝おうとすると聞き覚えのある声が耳に届く。
「す、すまない……。前を見てなかった私の問題だ」
「いや、気にするな……って、サオリ?」
「ん? せ、先生!?」
ふと目線を上げるといつもの黒いキャップにノースリーブのインナーと白いコートを着崩した大人びた少女であり、アリウス分校の生徒である錠前サオリがいた。
……まぁ、こいつなら買うよなと思わず納得してしまった自分がいるが、そこは良いだろう。
「まさかこんなところで出会えるなんて……」
「俺も会うとは思わなかったな。少し持つぜ」
「あ、あぁありがとう。先生はどうしてここに?」
「今日は休暇でな、そっちは?」
「最近の騒動に一段落して……姫に一日自由にしてきていいと言われて……」
「それで買い物を……」
あのサオリが自分の自由に買い物をする日が来るとはな……。
出会い方は最悪で、その後も妙な頑固さと自己肯定感の低さが目立っていたが、随分と好調に見える。
こいつが老婆心って奴なのかなんて思いながら、サオリの荷物を半分持つとアイツが買ったものが目に映る。
「こいつは……自腹か」
「ん? あぁ、そうだが……」
「そうか……」
「何か気になる事でもあったのか? しかし、それにしても今日のブラックマーケットは凄いな、生まれて初めてここまで変わった種類の商品を見たぞ」
上機嫌で楽しそうに語るサオリの横で俺は商品に目を通す。
『いくらでも剥けるマトリョーシカうんめえ棒』
『チョコレートの香りでお口も美味しくマックスチョコ歯磨き粉』
『ワンハンドで美味しくペットボトル入りポップコーン』
『美味しく敵を倒そうアーモンドチョコクレイモア』
『ひもを引っ張れば即発熱テルミットグレネード』
これ以上見るのは止めとくか。
ろくでもねぇものばっかり買ってるのには、ツッコむべきかどうか。
「先生は何か買わないのか?」
「ん……? あぁ。まぁ、なんだ。サオリ」
「なんだ?先生」
「楽しんでるか?」
「……あぁ、もちろんだ!」
大量の荷物を持って笑顔で微笑むサオリを見て、俺はほくそ笑む。
全ての運命が変わったあの夜の鬼気迫った表情をし続けたサオリの表情と、今のごく普通の少女のような表情、どっちがいいかなんて言うまでもない。
馬鹿を見ている愚者かもしれないが、それでも幸せそうな彼女と共に俺は帰るのだった。
ユニガムさんリクエストありがとうございました!!
エイプリルフールネタ……サオリちゃんはこういうの沢山買うって信じてる
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