#EX14 刃の心。乙女の心。
の前日譚となります
「んん〜!」
隣に居るヒナが声を上げながら伸びを行う。
ポキポキと全身の関節が音を鳴らし、凝り固まっていた肉と骨を解していく。
「悪ぃなヒナ。普段から風紀委員会の仕事で大変だろうに、こっちのやつまで手伝わせちまってよ」
「ふふっ、いいのよ。こういうデスクワークは良くやってたし……最近は、みんなでやるようになって私の仕事量も減ってるから」
そう優しく微笑む彼女の目の下には、確かに昔のような隈は見えない。
化粧をつけても消せないような隈だったが、それも消えたようで随分と労働環境は良くなったようだ。
「これも先生のお陰よ」
「はっ、俺はただ、お節介を焼いただけだ」
「そう……それでも譲ってはあげないわ」
こいつも随分と意地っ張りになったもんだ。
てめぇの考えに素直になった。
と言い換えりゃ、いいことなのかもしれねぇな。
「今日の仕事はこんなもんでいいだろ。お疲れ様」
「あ……そうなのね」
仕事が一段落したところで、ヒナには明日の委員会での仕事があるだろうから、帰らせようと声をかけると、ヒナの顔が沈み、気配が萎びたような感覚がする。
こいつそこまでワークホリックだったか?
仕事熱心なのはいいことなんだがな。
その後しばらく考え事をしていたヒナが、重々しく口を開く。
「……ねぇ、先生。その……少しいいかしら」
「あ?どうした。言っとくがこれ以上仕事はやらせねぇぞ」
「ち、違うわよ!その……私頑張ったから、ご褒美……くれないかしら?」
照れ恥ずかしそうに目を逸らしながらヒナは小さな声でそう言う。
おねだり上手とはな……
アコには悪いが……甘やかさせてやるとしよう。
「いいぜ、お前さんは普段から頑張ってるからな。何をして欲しいんだ?」
「……な、なら、その……膝枕、してほしい……」
意外かもしれねぇが、ヒナは甘えん坊なところがある。
いつぞやの風紀委員会への訓練の時も、休み時間や夜に、委員の奴らに隠れてハグとか求められてきたことは少なくない。
休憩スペースのソファに座り、俺は自分の膝を叩く。
その合図で、ヒナは、トテトテと駆け寄って、隣に座ると、少し呼吸をした後に、コロンと俺の膝に頭を乗せる。
「……や、やっぱり迷惑じゃないかしら」
「迷惑ではねぇよ、ガキはガキらしく甘えてな」
そう言って何度か頭を撫でてやると、ヒナの呼吸と脈が安定していき……いつの間にかスヤスヤと寝始めてしまった。
迷惑ではねぇとは言ったが……
こうなると煙草が吸えねぇ……
「……はぁ、仕方ねぇか」
そう独り言を零し、俺はヒナの髪を優しく撫で上げた。