新任教師『次元大介』短編集   作:レイゴン

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コラボ回です


朧月夜に散るは、黒羽

 キヴォトスの夜は、昼間の喧騒と打って変わって、静寂が支配する。

 若人達の笑い声も、そこに住む人々の営みの音も、夜は静かに闇の中に包み込む。

 

 それがこの街、学園都市という街……しかし、この夜は違った。

 

 闇の中、絶えず聞こえる男女の息遣い。

 

 閃く一筋の光。

 

 鳴り響く銃声。

 

 

 D.U.のスクランブル交差点。

 その中央で、二つの人影が互いに銃口を向けて踊っていた。

 

 

 

 ────────────────────   

 

 ────────────   

 

 ──────

 

 

 

 シャーレ、ここの居心地も随分と慣れ、住み慣れた我が家……なんて、そんなふうに思っちまうほどの時間をここで過ごしてきた。

 

 仕事が常に舞い込むこの街で、先生をやってきた俺にとっちゃ、退屈することのない日々を駆け抜けてきた。

 

 と言っても……決して1人ではない。

 

 月夜を見ながら、吐き出した煙草の煙が彼女の方へと流れていく。

 

 

「ここに居たのね、先生」

 

「嬢ちゃん、良い子は寝る時間だぜ?」

 

「嬢ちゃん呼びはやめてって……貴方は言っても聞かないんでしょうね?」

 

 

 彼女……西条レイナ。

 キヴォトスで唯一、シャーレに自由に出入り出来る合鍵を所持している女。

 

 当然渡したのは俺だが……決して仲間だからって訳じゃねぇ。

 

 腕が立たないからって訳じゃない。

 こいつの銃の腕は中々のもんだ、キヴォトス全生徒と比べてもTOP10には入るだろう。

 

 女だからって訳でもねぇ。

 女は信じねぇが、こいつには背中を預けたっていい。

 今まで積み重ねた仕事の成果が、こいつを信頼たる奴だと証明している。

 

 じゃあ何故か、こいつは何か俺に隠し事をしている。

 

 ルパンだって、素顔を明かさねぇくらいの秘密はある。

 それでもな、俺の勘が。

 目の前の女を信じるなと強く訴えかけてくる。

 

 当たって欲しくねぇとそう思いながら、俺はこいつを傍に置いておいた。

 

 

「それで、何の用だ? 今日は冷えるぜ、風に当たりに来るほど何かに熱中でもしてたか?」

 

「まぁ……そう、ね」

 

 

 レイナは、珍しく微笑みながら俺へと歩み寄り、隣に来て、柵に体を預けながら、月を見上げる。

 

 

「先生、貴方と会って、色んなことがあったわね」

 

「……人生を振り返るなんざ、らしくねぇな。

 

 ……あぁ、色んなことがあったな」

 

「ゲーム開発部と一緒に冒険したり……」

 

「補習授業部の奴らと馬鹿やって、ミカの件じゃ世話になったな」

 

「えぇ……ほんと死にかけたわ。

 それでも、楽しかった。本当に……。

 こんな生活がもっと続けばいいのにって」

 

 

 何かを決意したそんな表情で、レイナは俺の懐から煙草の箱を盗み、そこから1本取り出した。

 

 あぁ……ほんと。

 

 

「先生、お願いがあるの」

 

 

 彼女は、その白い唇に煙草を咥えて、一言。

 きっと人生で最後の、そして最大のお願いを口にした。

 

 

 

ゲマトリアに(煙草に)入って?(火をつけて?)

 

 

 

 あぁ……ほんと。

 俺の勘ってのは、最悪なものほどよく当たる。

 

 

「俺と、アイツらの関係……知ってるだろ」

 

「えぇ、それでも……お願い、入って」

 

 

 煙草の先同士が、触れ合ってしまうほど近づき……俺は口から煙草を吐き捨てた。

 

 

「これが俺の答えだ」

 

「……そう……そう、なのね」

 

 

 レイナの目が大きく見開かれ、そして咥えた煙草をポッケに仕舞い込み……大きく笑い出す。

 

 

「ふっ、ふふっ!あはははは!! そうよね、貴方なら、次元大介、貴方ならそうすると思っていたわ」

 

「……レイナ。聞かなかったことにしてやる。戻る気はねぇのか」

 

「名前……。何よ、貴方から始めた物語でしょう! ねぇ、ガンマン!」

 

 

 レイナは、俺に向かって銃口を向ける。

 

 

「世界で一番強いガンマンさん!

 

 貴方は今から……

 

 

 私達の敵よ

 

 

 引き金が引かれ、俺の頬が赤く切り裂かれる。

 あぁ、これだから。

 

 これだから女って奴を信じるのは嫌なんだ。

 

 

 

 ──────

 

 ────────────

 

 ───────────────────

 

 

 

 命を賭けたダンスは、黒と白のスーツを赤で彩り、汚し、月明かりがスポットライトのように二人の姿を照らす。

 

 女性が語りかける。

 

 

「次元大介! どうしてそんなに辛そうな顔をするの?」

 

 

 男性が返す。

 

 

「終わりが近いからさ」

 

 

 勝負は尋常だった。

 互いに卓越した腕を持った者同士。

 互いの手の内の全てを知った者同士。

 互いに背中を預け合った者同士。

 

 その差を分けたのは、ただ。

 

 心を許したか。

 

 たったその一点だった。

 

 

 1つの銃声と共に鮮血が吹き上がる。

 

 赤く汚されていく白い髪をアスファルトに広げて……。

 

 赤い瞳を空へ向けながら、少女は息をする。

 死にゆく体を、最期まで動かそうと。

 

 

「ふふっ、あはは……そう、届かなかったのね……私は……結局、大人に……なれなかった」

 

 

 そう、暗い暗い夜空に向けて、少女は呟き、その息を、短くも長かったその生涯に幕を下ろした。

 

 かつて背中を預けた少女だったものに向かって、帽子を深く被り直し、男性は少女のポッケから零れた……赤く濡れた煙草を咥えて、火をつけ、声をかけた。

 

 

「……レイナ、お前は誰よりも大人だったぜ」

 

 




ガガミラノ先生、コラボ許可頂きありがとうございました!

実は身内で何回かコラボを書いていただいてるので、この回が少しでもお返しになれば良いのですな

美しく麗しく可愛く、そして儚いそんな西条レイナちゃんが活躍するお話はこちらから『https://syosetu.org/novel/386119/
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