キヴォトスの夜は、昼間の喧騒と打って変わって、静寂が支配する。
若人達の笑い声も、そこに住む人々の営みの音も、夜は静かに闇の中に包み込む。
それがこの街、学園都市という街……しかし、この夜は違った。
闇の中、絶えず聞こえる男女の息遣い。
閃く一筋の光。
鳴り響く銃声。
D.U.のスクランブル交差点。
その中央で、二つの人影が互いに銃口を向けて踊っていた。
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シャーレ、ここの居心地も随分と慣れ、住み慣れた我が家……なんて、そんなふうに思っちまうほどの時間をここで過ごしてきた。
仕事が常に舞い込むこの街で、先生をやってきた俺にとっちゃ、退屈することのない日々を駆け抜けてきた。
と言っても……決して1人ではない。
月夜を見ながら、吐き出した煙草の煙が彼女の方へと流れていく。
「ここに居たのね、先生」
「嬢ちゃん、良い子は寝る時間だぜ?」
「嬢ちゃん呼びはやめてって……貴方は言っても聞かないんでしょうね?」
彼女……西条レイナ。
キヴォトスで唯一、シャーレに自由に出入り出来る合鍵を所持している女。
当然渡したのは俺だが……決して仲間だからって訳じゃねぇ。
腕が立たないからって訳じゃない。
こいつの銃の腕は中々のもんだ、キヴォトス全生徒と比べてもTOP10には入るだろう。
女だからって訳でもねぇ。
女は信じねぇが、こいつには背中を預けたっていい。
今まで積み重ねた仕事の成果が、こいつを信頼たる奴だと証明している。
じゃあ何故か、こいつは何か俺に隠し事をしている。
ルパンだって、素顔を明かさねぇくらいの秘密はある。
それでもな、俺の勘が。
目の前の女を信じるなと強く訴えかけてくる。
当たって欲しくねぇとそう思いながら、俺はこいつを傍に置いておいた。
「それで、何の用だ? 今日は冷えるぜ、風に当たりに来るほど何かに熱中でもしてたか?」
「まぁ……そう、ね」
レイナは、珍しく微笑みながら俺へと歩み寄り、隣に来て、柵に体を預けながら、月を見上げる。
「先生、貴方と会って、色んなことがあったわね」
「……人生を振り返るなんざ、らしくねぇな。
……あぁ、色んなことがあったな」
「ゲーム開発部と一緒に冒険したり……」
「補習授業部の奴らと馬鹿やって、ミカの件じゃ世話になったな」
「えぇ……ほんと死にかけたわ。
それでも、楽しかった。本当に……。
こんな生活がもっと続けばいいのにって」
何かを決意したそんな表情で、レイナは俺の懐から煙草の箱を盗み、そこから1本取り出した。
あぁ……ほんと。
「先生、お願いがあるの」
彼女は、その白い唇に煙草を咥えて、一言。
きっと人生で最後の、そして最大のお願いを口にした。
「
あぁ……ほんと。
俺の勘ってのは、最悪なものほどよく当たる。
「俺と、アイツらの関係……知ってるだろ」
「えぇ、それでも……お願い、入って」
煙草の先同士が、触れ合ってしまうほど近づき……俺は口から煙草を吐き捨てた。
「これが俺の答えだ」
「……そう……そう、なのね」
レイナの目が大きく見開かれ、そして咥えた煙草をポッケに仕舞い込み……大きく笑い出す。
「ふっ、ふふっ!あはははは!! そうよね、貴方なら、次元大介、貴方ならそうすると思っていたわ」
「……レイナ。聞かなかったことにしてやる。戻る気はねぇのか」
「名前……。何よ、貴方から始めた物語でしょう! ねぇ、ガンマン!」
レイナは、俺に向かって銃口を向ける。
「世界で一番強いガンマンさん!
貴方は今から……
私達の敵よ」
引き金が引かれ、俺の頬が赤く切り裂かれる。
あぁ、これだから。
これだから女って奴を信じるのは嫌なんだ。
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命を賭けたダンスは、黒と白のスーツを赤で彩り、汚し、月明かりがスポットライトのように二人の姿を照らす。
女性が語りかける。
「次元大介! どうしてそんなに辛そうな顔をするの?」
男性が返す。
「終わりが近いからさ」
勝負は尋常だった。
互いに卓越した腕を持った者同士。
互いの手の内の全てを知った者同士。
互いに背中を預け合った者同士。
その差を分けたのは、ただ。
心を許したか。
たったその一点だった。
1つの銃声と共に鮮血が吹き上がる。
赤く汚されていく白い髪をアスファルトに広げて……。
赤い瞳を空へ向けながら、少女は息をする。
死にゆく体を、最期まで動かそうと。
「ふふっ、あはは……そう、届かなかったのね……私は……結局、大人に……なれなかった」
そう、暗い暗い夜空に向けて、少女は呟き、その息を、短くも長かったその生涯に幕を下ろした。
かつて背中を預けた少女だったものに向かって、帽子を深く被り直し、男性は少女のポッケから零れた……赤く濡れた煙草を咥えて、火をつけ、声をかけた。
「……レイナ、お前は誰よりも大人だったぜ」
ガガミラノ先生、コラボ許可頂きありがとうございました!
実は身内で何回かコラボを書いていただいてるので、この回が少しでもお返しになれば良いのですな
美しく麗しく可愛く、そして儚いそんな西条レイナちゃんが活躍するお話はこちらから『https://syosetu.org/novel/386119/』