新任教師『次元大介』短編集   作:レイゴン

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EXに挙げそびれた短編です


いっぱい食べる貴方が好き

「……ふー、これで今日は〆でいいか」

 

時刻は既に深夜1時。

明日の仕事に備えて、早く寝たいところではあるが、それ以上に……腹が減った。

 

今日は便利屋達も夜ご飯が要らねぇってのに加えて、当番を呼んでなかったのもあり、1人で黙々と仕事をし続けたら、飯を抜いてこんな時間になっちまった。

 

凝った体を解しながら、席を立ち、そのまま冷蔵庫の方へ向かって何かねぇか漁り始める。

 

「……豚ひき肉に、トマト缶、玉ねぎに人参…ニンニクか」

 

明日の朝の献立も考えながらだからな、あんま派手に使えねぇが、おっさん一人分の飯だからな。

 

使っても問題なさそうなのを考えれば……よし、あれを作るか。

 

昔、とある国に忍び込んだ晩にアイツと食ったあの飯を。

 

ボウルの中に豚ひき肉を入れて、そこに細かくみじん切りにした玉ねぎを半分、粗挽きの胡椒に粉チーズ、バジルをちぎって、あと隠し味にソーセージをみじん切りにしたものを入れてよく捏ねる。

冷蔵庫から取り出したばかりだからか、痛いくらいに冷てぇが美味い飯の為だ。

男なら黙って捏ねてろ。

ざっと毛羽立つくらいまで捏ね合わせたら、そいつを好きな大きさに丸めて、軽く小麦粉をまぶして、油を引いたフライパンで焼いていく。

中まで火を通す必要はねぇ、あくまでも固めるためのもんだからな。

 

焼いてる最中に隣のコンロに鍋を出して、そこに赤ワイン、トマト缶、粉末のデミグラスソース。

すりおろしたニンニクに、さっき残しておいたもう半分のみじん切り玉ねぎ、こいつらを一緒に煮て、そこに焼いたミートボールを入れる。

 

煮込んでる間に、パスタ……腹減っちまってるしここは300gやっちまうか。

 

空いたフライパンを除けて、たっぷりの水が入った鍋を沸かして、そこに塩を入れる。

塩はまぁ、少し水を舐めてしょっぱいくらい、入れりゃいい。

 

隣で煮込んでるミートソースから軽く灰汁を取りつつ、沸いたところでパスタを茹で、んでもって茹で上がったら、水気を切って、ミートソースの中にぶち込んで混ぜる。

 

味が絡んだあたりで、皿に盛り付けて……最後にチーズをかけて、バジルでも千切って散らしゃ……

完成、ミートボールパスタ。

 

昔、カリオストロの城下町で喰ったやつを俺なりに再現した奴だ。

まぁ有り合わせのもんだから、厳密には違ぇだろうがな。

 

赤ワインのボトルを開けて、グラスに注いで……

 

「いただきます」

 

フォークにミートボールを突き刺して、口に運ぶ。

そうそうこの味この味。

挽肉だけで作るやつも美味いんだが、ソーセージの野性味ある肉がいい仕事をしてる。

そこにチーズの旨味が、肉の味を押し上げてくれてる。

口の中に肉の味があるうちに赤ワインを流し込む。

酸味と渋みが、肉の味をより引き立ててくれる。

ガキにゃ、分からねぇ感性だろうなぁこれはよ。

 

ソースにしてもトマトがベースで変わったもんは特に入れちゃいねぇんだが、一緒にミートボールも煮込んだおかげでこっちにも旨みがたっぷり詰まってる。

 

黙々とパスタを食べ進め、酒を飲む。

 

こんな深夜のお陰か、いつもよりも飯が美味い。

にしても、1人で食うのも久しぶりだな。

飯が美味いには美味いんだが……何か足りない。

 

……いやいや、有り得ねぇだろ。

俺らしくない。

俺が、絆されてるのか?

 

俺がふと思った疑問、それに対する一つの答え。

俺は思いついた傍からそれを否定する。

 

便利屋達が居ないことに、俺が寂しさを感じているという結論を。

 

「ったく、こういうのは俺の柄じゃねぇんだがな……」

 

キヴォトスに来てからの日々は向こうに居た時に負けず劣らず濃い。

ルパンの奴と仕事するのも悪くねぇが……

同じくらいアイツらと仕事をするのも悪くねぇと俺はそう思っているみたいだった。

 

ま、俺とあいつらは大人とガキ、先生と生徒、ビジネスパートナーの関係だ。

それ以上でもそれ以下でもねぇ。

 

俺のようにいつかここを離れる奴が、あいつらに過干渉するのは、酷な事になりかねない。

 

黙々と飯を運び入れる。

 

半分まで来たあたりでやたらドアの向こうが騒がしくなって、その音は徐々にこちらに近づいてくる。

 

「ただいまー!……あっ!なんか先生が美味しそうなもの食べてる!!」

 

「なんですって!先生、私に一口ちょうだい!!」

 

「ムツキ、社長……ご飯は、食べたでしょ……」

 

「で、でも、この匂い……すごくお腹が減ります……」

 

勢いよく開かれたドアの先には、いつもの4人がいる。

 

「おい、お前ら今何時だと思ってんだ?ガキは歯を磨いて寝ろよ」

 

「そんな時間にこんな美味しそうなの食べてる先生はどうなのかしら?」

 

「俺は大人だからな、例外だ」

 

「ずるーい!!」

 

さっきまで静かだった部屋に一気に喧騒が戻る。

口に含んだワインの味が、さっきよりも甘くまろやかに感じたのは、きっと俺の気のせいだ。

 

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