カランコロンと、小気味良い酒に浮かぶ氷の音がグラスに反響する。
時刻は深夜3時、俺は電気を消したシャーレの執務室で机に腰かけながら、窓の外を眺めつつ、バーボンを呑んでいる。
ちなみにだが、絶賛ユウカには禁酒令を出されている……が、まぁそれは置いておこう。
こんな時間だが窓の外の夜景はまだ電光で煌びやかにイルミネーションの如く光り輝いている。
この景色も随分と見慣れちまったもんだ。
シャーレでの仕事が始まってから、随分と長く経つ。
便利屋共は、いつも騒がしいし、イズナは何かとくっついてきやがるし、ユウカは母さんかと言いたくなるほど口煩い。
ただそんなアイツらを俺は快く思っている。
絆されたとかそんな話じゃねぇ、ただ……ルパンがアミを誘おうとしたりしたのも今の俺と同じような気分だったのかもしれねぇな。
ガチャリと背後のドアのノブが動く音が聞こえ、俺はマグナムに手を伸ばし、その後見えてきた人物を捉えて手を離す。
「カヨコ、どうした?いい子は寝る時間だぜ?」
「先生こそ……部屋の電気なんか消して、何してるの?」
そう聞かれた俺はそっと氷を揺らしながらグラスを見せる。
「……ユウカに怒られても知らないよ?先生」
「お前さんなら黙ってくれるだろ?」
「はぁ……悪い大人だよね」
溜息をつきながら、カヨコは俺の隣に腰掛ける。
「ん?どうした?カヨコ」
「なんでも……ねぇ先生?あのさ」
月明かりに照らされるカヨコの瞳は俺のことをジッと見つめて、少し躊躇いながら口を開く。
「みんな寝てるから聞きたかったんだけど……先生は迷惑じゃない?」
「ハルカみてぇなこと言い出したな?迷惑……か」
グラスの中の氷をくゆらせながら、酒を煽り……少し考え込む。
「頭のいいてめぇの事だ。俺がどう言い繕っても勘づいちまうだろうから言うが……確かに騒がしい毎日だとは思うさ」
「っ……「でもな、それと同じくらい楽しく仕事をやってるぜ?」……ほんとに?」
「こんなつまらねぇ嘘をついたところで得するとは思えねぇな」
その言葉を聞いたカヨコは、俺の肩に頭を倒して、そのまましばらく無言を貫いたが、ようやく口を開くと少しだけ嬉しそうな声色で話し始める。
「……なら良かった、ハルカとかムツキとか社長に……もちろん私も、結構問題児だからさ」
「くくっ、気にすんな。ルパンの世話に比べりゃお前らはまだまだ可愛い方だよ」
カヨコがムッとした珍しい表情をとる。
感情を表にはあまり出さないタイプの子なんだがな。
「……なら、先生のこともっと困らせてあげようかな?」
「子供が背伸びするもんじゃねぇよ」
そう俺が言うと、カヨコはそっと手を出して、俺の手からグラスを取ると机の上に置いて、ぎゅっと指を絡めてくる。
そしてそのまま俺の体を押し倒して、覆い被さる。
「先生……抵抗しないの?」
フッと笑って、自分の勝利を確信して顔を近づけようとしたタイミング。
握りあっている腕の力を咄嗟に入れて重心を変え、そっとカヨコを胸に抱き寄せる。
「接吻1つで緊張するようなケツの青いガキとやる気はねぇよ、カヨコ」
「っ……」
月光で分かりにくいが、カヨコの耳は赤く染っている。
「……先生──「カヨコちゃん?なぁにしてるのかな?」……ムツキ」
扉の方を見るとそこにはムツキが立っている。
「抜けがけはダメだって言ったよね」
「……言ったかな」
「アルちゃんを泣かせたいの?」
「はぁ……狡いこと言うね。ムツキも」
こういうドロドロしたもんは苦手なんだがな。
ムツキに窘められたカヨコは、そっと手を離して再び俺の横に並ぶ。
「カヨコっち?」
「これくらいはいいでしょ……普段スキンシップ多いんだし」
「……むっ、カヨコちゃんもずるいこと言う」
そういったムツキも、とてとてと歩いて俺の隣に並ぶ。
「お前ら、詳しくはあえて聞いてやらねぇが……仲良くしろよ」
「それは当然だよ、みんな大切な仲間で親友だもん」
「安心して、先生が考えてる事は有り得ないから」
両肩にかかる2人分の重さに耐えながら俺は酒を飲む。
俺ぁいつかここを出ていく。
ただその時にこいつらの涙が見えねぇようなそんな最後を迎えさせてやりたい。
俺達に涙はいらない。
これで現状Twitterに挙げたものは全部です
ではでは、またどこかで