大人が嫌いだった。
私にとって、私の見たものが世界の全てだった。
可愛い後輩たち、大切な大切な先輩から託された砂まみれの学校、そして……汚い大人。
普段は、口当たりのいい事ばかり言って、いざとなったら見て見ぬふりをする無責任な薄情者。
自分の利益の為なら、子供だって騙して、食い物にする意地汚い卑怯者。
それが私が出会ってきた大人だった。
だから私は、仮面を被って、あの子たちを護るために心を固めて、相手を見極めようと意固地になった。
あの人と出会う前……私はそんなつまらない人間だった。
「おい、ホシノ。何上の空になってる、次はお前さんの番だろう」
「うへ〜、ごめんごめん。おじさんも年でねぇ、ついついボーッとしちゃっててね……はい、先生の番」
いやはや、我が事ながら随分と硬い頭をしていたよねぇ〜。
先生の時だって、最初はのんびりとだらしない姿を見せて、油断を誘おうとしたりしたんだよねぇ。
でも、先生はそれを見抜いていたんだろうね……
軽い音を立てながら駒が進んでいく。
私は今、シャーレの休憩室で先生とチェスを打っている。
早指しってのもあるけども、おじさんそういうの苦手だからねぇ〜。
ゆっくりと駒の動く音を聞きながら、遊んでいる。
「ホシノ、アビドスの奴らはどうだ? 最近は顔出せてねぇからなぁ」
「うへ〜……まぁ、みんな概ね元気だよ〜? もうそろそろ夏だしねぇ〜。
ノノミちゃんが、今度皆で水着を買いに行こうって話してるし……
セリカちゃんも、ゲヘナのアコちゃんと上手くやってるみたいだし
アヤネちゃんは、相変わらず見事なちゃぶ台返ししてくれるし〜
シロコちゃんは、最近クイックドロウの上達が凄くってねぇ、今度先生も見に来てよ」
こんな青春を過ごせるのも、目の前の大人のお陰だ。
シャーレの先生……次元大介先生。
クールなところも、情に厚いホットなところも……私の見てきた大人とは、全く違う人だった。
アルちゃんたちに見せてもらった映像……この人の過去を見て、先生の今までを知って、私は改めて今の先生の凄さを思い知らされた。
先生は、辛いことも痛いことも経験して、それでもあぁやって自分を貫いている。
おじさんには、それは出来なかったなぁ〜……
「……ホシノ、お前さんはどうなんだ? 笑えてるか?」
「私?……うん、もちろんだよ」
ほんと先生には敵わないなぁ……
そんなの当たり前に決まっている。
先生のお陰で、私は笑えている。
こんな私にも、唯一信頼できる大人が出来たのだから。
「そうか……なら良かったよ。ほら、チェック」
「うへっ!?……ね、先生はどうなの?」
「俺か……そうだな」
私達は先生に救われた。
先生が私を頼って、私も先生を信じて、最後の作戦を行った。
先生は、私のお陰だと言ってくれたけども……
私だけだったら、ただの無駄死にになっていたと思う。
先生は、他の学校でも活躍していることは知っている。
きっとみんな先生に色々思う感情があると思う。
だけど、肝心の先生はどうなのだろうか。
先生は、今は笑えているのかな。
「確かに、色々あったが……人生過ぎたことは全て笑い話だぜ。それに、仕事の報酬は貰ってるからな」
「報酬?お金とか?」
「金が全てじゃねぇよ」
「え、じゃあ、なんなの?」
「さぁな。チェックメイト。ほら仕事の続きやるぞ」
「あっ、先生っ、教えてよ〜!」
私の頭をぐしゃぐしゃと撫でて、仕事場に戻っていく先生の後ろ姿を見て、私は思わずその腰に抱きつく。
我ながら子供っぽい行動だ。
私がそっと顔を覗き込むと、先生は優しく微笑み返してくれる。
その顔を見て、私の胸が暖かくなるのを感じる。
キヴォトスには、薄情者も卑怯者も、色んな大人がいる。
貴方と出会って、私も少しは変わったと思う。
それでも、まだ大人には心を開けない、信用出来ないそんな子供な私。
でも、私には背中を預けれる先生がいる。
私は、先生のことが大好きだから。
だから、もう少しだけ、子供のままでもいいのかな……なんて。
貴方の笑顔をみて、そう思えたんだ。
40分クオリティなので悪しからず
最近曇らせ多かったので、湿気で味直ししたかったんですよね。
湿気で味直し??