今日は、特別な日。
なんと!先生が教官として来て下さる日なのだ!
あの大演習からそれなりの月日が経って、再びどこまで成長したのか。
個人個人、見て下さるとの事だった。
「メルナー!そろそろ時間よー!」
「分かりましたっす!今行きます!」
先輩に呼び出されて、急いで支度を済ませて、先生が居る場所へと向かう。
朝から先生は、ずっと他の隊を見ていたらしく、ようやく私たちアルファ隊の出番になったわけだ。
駆け足で向かうと、他の隊の子たちが、木陰でゼーゼーと肩で息をしながら休んでおり、そんな最中先生はグラウンドの真ん中で私たちのことを待っていてくれた。
「久しぶりだな、お前さんら。いい顔つきになってるじゃねぇか」
先生の言葉が胸に染みる。
最初に先生に会った頃は、私たちのことを見向きもしてくれなかった。
あっという間にイオリ先輩を叩きのめして、次の瞬間には私のお腹に突き刺さる先生の拳。
あっという間にダウンしてしまった。
その時に堕ちる前に見えた先生の表情は、あからさまな失望だった。
そこから私は、先生とヒナ委員長に鍛えてもらって、最後には先生から褒めてもらうくらいに成長できた。
あの演習は、私のこの先長い学園生活の中できっと最も大事な記憶になるはずだ。
「メルナ!かかってきな」
「はいっす!教官、胸をお借りします!」
「だから先生って……いや、今はいいのか」
いつの間にか、私の番になっていた。
訓練用のペイント弾を装填した銃を構えて、先生に向かって射撃を開始する。
「視線も体幹も悪くねぇな」
逐一私に小さな評価を下しながら、先生は軽々と私の射撃を避けていく。
心にモヤモヤが募る。
私だってこれでも一人前の風紀委員だ。
先生に、そんな軽々しく相手をしてもらうほど舐められて、それでいいなんて済ますはずがない。
「教官!ギア上げるっす!」
「いいぜ、殺す気で来な」
手足と目に神秘を流し込んで、射撃をしながら先生を中心に円を描くように走り始める。
これでも避けられる。
団体ならともかく、個人じゃまだ先生には届かないのかな……
いや、まだ諦めたくない!
「ぁぁあああ!!!」
マグチェンを急いで行い、先生に向かって急接近を行う。
ヒナ委員長の動きを思い出せ!
私はアルファ隊のメルナ、ヒナ委員長の手足となって動く部隊なのだから、ヒナ委員長の補佐として情けない姿は見せられない!
先生の懐まで潜り込んで、銃を構え、即座に発砲を開始する。
これも避けられる。
近くに行ってしまったせいで先生に銃をつかまれる。
「っ!」
先生の握力なら私の体重くらいは支えられるはず。
先生の手に持った銃を支えにして蹴りを放つ。
パンと軽い音が鳴って、私の体が止まる。
左手だけで私の蹴りを止めて、そのまま足を掴まれる。
先生が銃を持っていた右手を離す。
このまま殴ってくるのかな。
なら、まだ私に勝ち目はある!
足を掴まれて宙ぶらりんになった状態で、銃を構える。
こんなに至近距離なら外すわけが無い!
「ナイストライ」
私が引き金を引くよりも早く、胴体に鈍い衝撃が走る。
先生の右手には、マグナムの姿が見える。
この演習中に、他の隊の先輩たちに使う様子がなかったから忘れていた。
負けちゃったけど、でも……
え、へへ……先生にマグナムを使わせられた……やっ、た……!
冷たい感覚と共に、意識が浮上する。
「おっ、起きたな」
眼前に先生の顔が広がる。
さっきの冷たい感覚はどこ行ったのか、顔がどんどん熱くなる。
私は先生に膝枕をされていたようだった。
「きょ、教官っ!おはようございます!」
「だから先生だっての、お前さんそんなに物覚え悪い方だったか?……訓練は終わったからな。今は休憩時間だ」
ふふっ、ただ私がこのやり取りが好きなだけなのだが、それを先生に言うつもりは無い。
だって私だけのものにしたいから。
この感情もこの想いも。
「あっ、メルナがニヤついてる!」
「げっ、ライ先輩」
先生の背中から同じ隊のライ先輩が顔を覗かせる。
ニヤついているつもりなんてなかったんだけどな。
「げっ、だってさぁ!ナマイキな後輩だなぁこのこのぉ!!」
「ホントよ、先生に銃を使わせるなんてナマイキ〜!!」
いつの間にか、他の先輩方も増えて、私のほっぺたをムニムニされまくる。
「むげっ、ひぇんぱいがたっ、やめてくださいっす!」
「俺の周りでやるのはやめてくれねぇかなぁ」
それは絶対に辞めない。
私たちの意思がひとつになった瞬間でもある。
だってみんな先生のことが好きなんだから。
Kronos-Ouranosさんリクエストありがとうございます!
アルファ隊の子達というリクエストながらほぼメインはメルナちゃんになってしまったのは申し訳ない……
メルナちゃんは、時折本編にも出てきてる風紀委員モブの子ですな。
1年生ながらアルファ隊にいる結構なエリートちゃん